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言葉に頼らず、技を盗む - (2015/10/22 (木) 09:23:02) の編集履歴(バックアップ)


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言葉に頼らず、技を盗む

体は自然、臨床は対話 【2】臨床は対話 
(7) 言葉に頼らず、技を盗む

1.はじめに

 先生やお師匠さんの技や術を盗むにはコツがあります。

 先生と同じ構えで同じリズムで体を動かしながら実演を見ることで
す。

 同時に、受け手の体もよく見て、おなかへの息のはいり具合などの
気持ちよさを感じているサインを観察しながら、それに先生が鍼や手
の動かし方などをどう変化させて対応しているかを観察します。

2.言う言葉とやることがかけはなれた方がおおい

 鍼灸や操体などの達人の先生方のおっしゃっている言葉とやってら
れることは一致しないことがよくあります。なかには言葉と行動が一
致している方もいますが少ないです。

 一致していない先生方は意地悪でそうしているわけではなく、一人
一人の経験がことなれば、行動と言葉による表現とのつながりが違っ
てくるからです。

 また、日本の国語教育では叙事の練習が少ないことも、原因のひと
つだと思います。

 日本の国語教育では、叙情、つまり、心情の表現や理解には、ぼう
だいな時間をついやします。たとえば、国語のテストには、作者の心
情を読みとりなさいという設問はたくさんあります。

 が、叙事、つまり実際のできごとを表現して伝える訓練はほとんど
していません。まして、動作を具体的な言葉で伝える練習はおこなわ
れていません。

 日本人に「心でっかち」がおおいのは、学校の国語教育のせいでも
あると思います。

 達人の先生方が鍼灸や操体などについて語るときには、ご自身が鍼
灸しているときの心情や心意気や意気込みを語ってらっしゃるだけで、
ご自身の動作や患者さんの反応について語ってらっしゃるわけではな
いことがおおいです。

 ですから、極端な言い方をすれば、先生方の言葉にまどわされてい
るうちは、技や術は盗めないと思ったほうがよいです。

 水泳選手の話を聞いたり記事で読んだりして、その水泳選手の心情
や心意気を言葉でいくら理解しても、大人になってもカナヅチの人は
泳げるようにはなれません。それと同じです。

 達人の心情や心意気を聞いて役に立つようになるのは、技や術が近
いレベルになってからです。水泳でいえば、代表選手として同じよう
な大会に出られるレベルになってからです。

 先生の心意気を語る言葉は書きとめておくなりしておけば、そのこ
ろには役に立つと思います。ただ、初心者ときに役に立つことは少な
いように思います。

3.先生の動きをマネる

 ですから、先生の言葉でなく、鍼灸操体などをしているときの先生
の体の動きをマネしましょう。

 それには、まずは構えです。どういう姿勢で、患者さんにたいして
どういう向きで構えているかをよく観察してマネします。

 構えの基本は、

「仙骨を反らせるように腰を立て、背筋を伸ばしながら腰から前にほ
んのすこし曲げ、顎(あご)を引き、肩の力を抜き、上腕は脇の下か
らテニスボール1つ分くらいはなし、肘は円をえがくようにすこし張
り、手首は折らないで、体の正中腺(へそ)を対象にむける」

という形です。

 簡単にいえば、たのしいことをやっているときの姿勢です。

 ただ、先生によってすこしづつ違いがありますし、鍼灸操体などの
技術の違いや流派によってもすこしづつ違います。

 なれてきたら、いろいろな姿勢でさまざまな施術をするときに、先
生が構えの基本を守るために、どういう工夫をしているかを観察でき
るとおもしろいです。

 つぎは、リズム。腰で体全体のリズムを見ながら、手先のリズムを
手で自分の体をたたいてマネします。

 とくに、患者さんの体の状態の変化、息の変化などに合わせて、先
生がどうリズムを変えていくかを観察し、マネします。

 あんまり派手にやると、先生によっては気にされるかも知れません
ので、そういう先生から盗む場合には、そっとやります。

 そんなこともあって、初心者のうちは、鍼灸をする動作のひとつひ
とつをていねいに解説してくれ、まちがった構えやリズムのときには
指摘してくださる先生についたほうが上達は早いと思います。

4.相性も大切

 ただ、その解説の仕方やまちがいの指摘などと、受け手側との相性
も大切ですので、そのあたりも考えてください。つまり、解説や指摘
が気持ちよく感じられるかどうかも大切です。

 体の自然についての原則や鍼灸操体などの自然則などをよく理解し
ていれば、先生のなさっていることの意味がわかりやすいでしょう。

 意味がわかって、しかも、構えとリズムが盗めれば、技や術は盗み
やすくなります。

 構えは、リズムにくらべると、先生による差は少ないです。ですか
ら、リズムが違う先生の技や術は盗みにくいといえます。

 そういう点でも相性は大切です。相性の良い先生とめぐりあえるよ
うにいろいろさがしてみましょう。

 いっしょにいてたのしい先生が見つけられるといいですね。

5.わかったことを文章にする

 さて、鍼灸操体などについてわかったことを、ときどきまとめて文
章にしてみることも、上達に役に立ちます。

 自分の言葉で自分の考え方を表現できないと、自然則の世界をつか
んでいくのはむずかしいようです。

 他人の言葉を借りて鍼灸操体などについて語っているうちは、鍼灸
操体なども借り物でしかなく、身に付いたものとはなりません。

 たとえ、先生の言葉と違ってしまったとしても、自分の鍼灸操体を
自分の言葉で語れるようになると、鍼灸操体が板についてきたという
感じになると思います。

6.まわりに伝える

 それと、まわりにどんどん伝えていくのも大切なことです。

 資格試験などの勉強はひとから習ったほうが効率よく学べるようで
すが、鍼灸操体などのような自然則にしたがうことに上達していくた
めには、まわりに伝えたほうがどんどん上達するようです。

 先生の言葉そのままで鍼灸操体などを語っているうちは、受け手に
なかなか通じませんから、通じるように工夫していくうちに自分の言
葉で鍼灸操体などを語れるようになるせいかもしれません。

7.おわりに

 いろいろなことを学んでいくのは大切なことだと思いますが、それ
が言葉による知識だけだと、鍼灸操体などを身に付けていくのにジャ
マになることもおおいです。

 言葉による知識をおぼえたあとでは、体で感じたことを心に自分な
りの言葉で思い浮かべるのがむずかしくなるからです。

 できれば、言葉で知識を読み聞きするまえに体で実感できたほうが、
鍼灸操体などは身に付けやすいと思います。


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