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術伝流操体no.21 - (2010/07/31 (土) 13:14:32) の編集履歴(バックアップ)



術伝流操体 [2]ラクな寝方をすこし強調 (8)ラクな寝方から連続操体 

ラクな寝方から連続操体

 これまで寝方別に動き、皮膚、重さの操体を解説してきました。今回
は、そのラクな寝方から操体を連続して施術する方法を解説します。

 操体を臨床の場で使いこなしていくときには、メインとなる手段です
ので、よく理解してしっかり身に付けてください。

1.ラク寝からの連続操体の手順

 ラクな寝方からの連続操体の手順は以下の通りです。

 初めに「姿勢を変えたくなったら、どんどん変えて構いません。ただ、
ユックリ動いてください」と声をかけておいてから、連続して操体をし
ていきます。

(1)ラクな寝方になってもらう

(2)イイ感じを探し、キッカケにする 

(3)付け足してイイ感じを増やす

(4)イイ感じがあるか確かめ味わい続ける

(5)姿勢を変えたくなったら終え、次へ

(…)(1)〜(5)を繰り返す

 これから、(1)〜(5)について、少しくわしく説明していきます。

2.ラクな寝方がわからないときは、横向きから


 ラクな寝方がはっきりわかる人が相手なら、その寝方を少し強調する
ように操体していきますが、初めのうちはラクな寝方がわからないとい
う人がいます。

 そういうラクな寝方になれない人には、まず横向き寝の操体(写真1)
から始めると、うまくいくことが多いです。

写真1

 前にも書きましたように、身に付けていくときには、寝方は、仰向け、
うつ伏せ、横向きの順で練習していくほうがわかりやすいし、修得しや
すいのですが、実際に臨床の場で操体するときには、これと逆の順序の
ほうが効率が良いことが多くなります。つまり、横向き、うつ伏せ、仰
向けの順で操体していきます。

 もちろん、イイ感じがはっきり自分でわかる人なら、その人が感じる
ラクな寝方から始めても、あまり効率に影響しませんが、現代では歪み
も多いし、初めからイイ感じがわからない人も多いので、受け手がラク
な寝方がわからないようなら、横向きから始めたほうが効率が良い場合
が多いです。

 寝方が横向きからが良いのは、おそらく、歪みが少ない人は仰向けで
寝るのがラクな人が多く、歪みが増えていくとうつ伏せを好む人が増え、
歪みがとても多くなると横向きを好む人が多いからだと思います。

 歪みの多い人は、最初に仰向けで操体してもイイ感じがわからなくて、
タワメの間がうまく見つからないことが多いです。

3.足指を痛くしてよりラクになってもらう


 ラクな寝方になったら、またわからない人に横向き寝になってもらっ
たら、いままでも説明してきたように足指裏のシコリを少し痛くして逃
げてもらい、足指裏の痛さが減る姿勢になってもらいます(写真2)。

写真2

 その姿勢のほうがよりラクなことが多いからです。

4.ラクな姿勢を強調するとイイ感じなことが多い

 いままで寝方別操体で説明してきたようにラクな姿勢、とくに足指を
少し痛くしてよりラクになった姿勢を少し強調するとイイ感じがあって、
そのままタワメの間にはいっていくことが多いです。

 ですから、いままで寝方別に説明してきた定番の操体の姿勢に近い姿
勢なら、それをまず試してみるのがよいと思います。試してイイ感じな
らやってみて、姿勢が変わったら、また、近いものをやってみればよい
だけです。

 問題なのは、受け手が操体慣れしていなくてイイ感じがわからない場
合と、初めてみる姿勢になった場合です。

5.イイ感じがわからないときには、重さ、皮膚、動きの順で定番を

 操者がラクな姿勢から定番の操体を思い浮べられなかったり、思い浮
んでも試してみて受け手がイイ感じがわからない場合には、重さ、皮膚、
動きの順で定番をしていきます。

 練習のときは、動き、皮膚、重さの順でしましたが、それはそのほう
がわかりやすいし、修得しやすいからです。臨床のときには、重さ、皮
膚、動きの順でしたほうが効率が良い場合が多いのでそうしています。

 つまり、重さの操体を先ずして、それから皮膚や動きの操体という順
番のほうが、現在では、全体の施術時間が短縮できることが多いし、受
け手の満足度も高いことが多いし、効果もあがりやすくなるということ
です。

 これは、重さの操体というのは体重移動をキッカケにしているので、
体の歪みの基本調整になるからだと思います。体重を移動するというの
は、体の中心、重心を移動するということで、地球の上で引力にしたがっ
て活動しているヒトという動物である私達にとって、その重心のズレは、
体の歪みの基本に関わっています。

 経絡とくに十四経は立ち姿勢での重力負荷分担であることも関係が深
いです。

 動きや皮膚の操体をしてから重さの操体をして、重心の調整をすると、
さきに動きや皮膚の操体で調整した体のバランスが少し違ってくるせい
か、もう一度、動きや皮膚の操体をしたくなってしまうことも多いよう
に思います。

 そういうわけで、ラクな寝方がわからない人には、横向き、うつ伏せ、
仰向けの順で、重さ、皮膚、動きの順で操体します。つまり、ラクな寝
方もわからないし、どうするとイイ感じかわからない人が受け手の場合
には、横向き寝からの重さの操体から始めるということです(写真3)。

写真3

 ただし、実際には、横向き寝の場合には、重さの操体を単独でという
よりも、皮膚の操体も交えたものになってしまうことが多いです。

 ただ、どういう操体をしていいかわからなくなったら、まず重さの操
体が試せないか考えてみたり、重さのかけ方を意識して皮膚操体してみ
るという選択肢を思い出すようにしてください。

 そして、重さの操体で済んでしまうことは、皮膚や動きの操体では省
略することが多くなりますし、皮膚の操体で済んでしまうことは、動き
の操体では省略することが多くなります。

 また、現在では、動きの操体よりも、それと同じタワメの間になる皮
膚の操体を好まれる人が多いので、ラクな動きを確かめてから、それを
少し強調する皮膚の操体をすることが多くなります。

 たとえば、仰向けからの踵踏み込みは、肩のほうに体重を移すことで
済んでしまうので、動きの操体としてはしないことが多いです。

 膝たおし、踵突き出しなどの足伸ばし、うつ伏せからの足伸ばし代わ
りの尻たたきなどは、ラクなほうにかるく動かしたあと、それをほんの
少し強調する皮膚の操体でしてしまうので、動きの操体としては確認程
度になることが多いです。

 結局、仰向けからの動きの操体として残るのは、膝裏シコリ取りの膝
裏シコリを痛くして逃げてもらう操体(写真4)くらいのことが多くな
ります。

写真4

このあたり、くわしくは、仰向けからの操体を読み直してください。

6.初めて見る姿勢になったら

 ラクな姿勢を強調すると言っても、いままで寝方別に説明してきた定
番の操体の姿勢に近い姿勢なら、それをしてみるのが良いと思います。
いままで見たことのない、初めて見る姿勢になったら、どうするか、い
くつかコツがあります。

1)伸びようとしているラインを伸ばす

 初めて見る姿勢になったときに、最初に目を付けるのは、その姿勢で
体が伸ばしたがっているラインはどこかなということです。

 操体はアクビやノビの様式化で、赤ちゃんのときにはできたことを思
い出すだけです。

 ですから、操体のタワメの間というのは、アクビやノビでイイ感じに
なったときにしばらくのあいだ同じ姿勢を続けるときの状態と同じです。
ノビという言葉で表現されるように、そういうしばらく同じ姿勢が続い
ているときには、体のどこかのラインが伸ばされ続けています。

 そのとき体が伸ばしたがっているラインをより伸ばしてあげればイイ
感じのことが多く、おなかの息もすぐに深くなることが多いです。

 もっとも現在では、伸ばすといっても動きの操体でするよりも皮膚の
操体をするほうがよりイイ感じという人が多いので、伸ばすことにつな
がるように皮膚をずらすことが多くなります。

 たとえば、仰向けで膝を曲げて倒し大腿内側を上に向けている
(写真5)の場合には、その上になっている大腿内側が伸びるように、
大腿の膝近くの皮膚を膝のほうにずらす(写真6)のがイイ感じのきっ
かけになることが多いです。

写真5

写真6

 そのとき体が伸ばそうとしているライン上で釣り合っている互いに逆
向きの二つの力の向きと、それら二つの力の境目を見つけるようにして
ください。それがわかると、よりイイ感じにしやすいです。その境目を
基準にして、伸びようとしている向きに反って互いに反対方向になるよ
うに皮膚をずらすとイイ感じになります。

 ただし、受け手の胴体の重さが反対方向の力になっているときには、
片方の方向にずらすだけですんでしまうことも多いです(写真6)。

ref(p操体あ0810#06.jpg)写真6

 もちろん、こういう場合にも反対側に手をそえて、より伸ばすことを
強調することができます(写真7)。

写真7

 どちらが良いかは受け手によります。たとえば、異性で初めての人の
場合には、下腹部に近いところをふれられると緊張してしまう場合もあ
り、そういう場合には、ふれないほうが良い場合が多くなります。

 伸ばすのがやりにくい場合には、それと反対側を縮めることをするこ
ともあります。伸びているところと縮んでいるところは前後左右表裏の
対称関係になっています。

2)体が変えたがっているところを見つける

 体が変えたがっているところは、伸ばそうとしているところ以外にも
あるかもしれません。足首、膝、大腿、上腕などの位置や向きから、動
きやすそうなところ、皮膚がズレやすそうなところ、体がいま変えたがっ
ているところを探していきます。

 足首や膝の位置や方向が左右で違えば、その差を強調してみることが
考えられます。

 たとえば、仰向けで足の倒れ具合が違えば(写真8)、倒れている方
の足の膝裏外側にシコリがないか確かめ(写真9)、あれば、その膝裏
外側のシコリから逃げる操体をしてみる(写真10)ことなどが考えら
れます。

写真8

写真9

写真10

 大腿、上腕の向きの延長線上やそれと直交したり平行したりする線上
と背骨が交わるあたりにツボが出やすいことも今まで寝方別で説明して
きたとおりです。

 たとえば、うつ伏せで肘を肩と同じ以上に挙げている場合(写真11)
には、顔の向いている側の腕の延長の華陀経にツボが出ていることが多
く、そちらの肘を持ち上げる操体をきっかけに、指そらしとそのツボへ
の指圧をつけくわえる(写真12)とイイ感じなことが多いです。

写真11

写真12

 背骨の捻れ曲がりも目安になります。とくに腰椎の部分は胴体の前屈
後屈、左右捻転などの境目なので、よく調べてみてください。腰椎の次
は頚椎ですね。とくに首から上の症状を訴える人は首の筋肉にシコリが
出ている場合が多いです。

 首や胴体の歪みと経絡的に関係のある手足のツボもいっしょに使うと
効果が上がりやすいです。たとえば、関係する手足の指を反らすとか。

3)仰向け大の字に近くなったら

 操体してイイ感じのタワメの間をいくつか味わっていると仰向け大の
字に近い格好になるときがあります。そういうときには、その姿勢で仰
向け大の字と違っているところを強調するとイイ感じが味わえることが
多いです。

 たとえば、片足の膝だけ少し曲がって下腿の内側が上を向いていると
き(写真13)は、下腿内側にシコリがある場合が多いので、それを確か
め、そのシコリとその経絡的な関係のある指など足首から先を利用する
操体をしていく(写真14)と、より仰向け大の字に近づくことが多いで
す。

写真13

写真14

7.付け足してイイ感じを増やすコツ

 きっかけが決まったら、それに付け足してイイ感じを増やしていきま
すが、イイ感じを付け足すコツは、まず何と言ってもキュークツそうに
見えるところを動かしてもらうことです。

 そんなのわからないと言わずに、それをいつかわかるようになろうと
いう感じで、操体中の受け手をながめるようにしてください。だんだん
わかるようになっていきます。

 キュークツそうなところは、受け手の体はどうにかして変えたがって
いますから、声をかけるだけでイイ感じを探して動いてくれることが多
いので、操者はラクです。

 それ以外というか具体的な目の付け所としては、手首、足首の位置や
向き(足首の場合は反り具合も)、膝の曲がり倒れ、顔の向き、大腿上
腕の向き、背骨とくに腰椎の部分の捻れ曲がり具合などです。そういう
ところを少し強調してもらったり、キュークツそうなら変えてもらった
りします。

 そして、そういうところと経絡的に関係する手足、とくに肘膝から先
のツボに皮膚操体や指圧をしてみたり、経絡的に関係する指を反らした
りも試してみてください。

 このあたりは、今まで書いてきた寝方別の操体を読み直してみてくだ
さい。

8.イイ感じならお腹の息が深くなる

 いままでもなんども書いてきたようにイイ感じのタワメの間に入ると
お腹の息が深くなります。シコリにふれていればシコリがゆるんだり、
シコリのまわりで動悸がしたり温かくなったりするのを感じることが多
いですし、姿勢もあまり変わらなくなります。

 現在では、その日に体が求めているタワメの間に入ると、そのまま
10分以上姿勢を変えたがらないで、そのままの格好をし続けるというこ
とが非常に多いです。

9.姿勢を変えたくなったら、次へ

 姿勢を大きく変えたくなったら、その操体を終わりにしてよい合図で、
またラクな姿勢を探して、新しいラクな姿勢から次の操体をします。

 ラクな寝方がわからない人は、すでに書いたように、横向き、うつ伏
せ、仰向けの順で寝方を変えて、重さ、皮膚、動きの順で操体をしてい
きます。

 いつまでもラクな寝方がわからないという人もいますが、途中でラク
な寝方がわかる人が多いです。

 そんなふうにして、ラクな寝方からの操体を連続していきます。

10.よくある二つの例

 私は、今まで書いてきたように、ラクな寝方からの操体を連続してい
くことを臨床の場で操体を中心に施術していくときの主な手段にしてい
ていますが、受け手がとても喜んでくださっています。

 それで、読んでいるみなさんにも、ぜひ身に付けて、臨床の場で生か
してほしいと思っています。

 とはいっても、読んでいるだけではわからない人もいると思うので、
次回、次々回で、連続操体をしていくときによくある例を二つあげてお
きます。

 ラクな寝方がわからない人を横向きの操体から始めた場合のよくある
例です。ただし、実際に受け手にラクな姿勢を次々探していってもらっ
た例なので、もっとも頻繁にあるケースとは少し違っているという点は
理解するようにしてください。


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