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術伝流一本鍼no.2 - (2010/08/21 (土) 09:08:11) の編集履歴(バックアップ)


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術伝流一本鍼no.2 (術伝流・先急の一本鍼・運動器編(2))
「手足陽経への引き鍼」が鍼術の基本

(1)はじめに

 今回から実技に入ります。まずは基本の基本からです。

 できるだけ読めば分かって二人いれば練習できるように書いていくつ
もりですので、読むだけでなく実際に試してみてください。

(2)手足の陽経に引く

 鍼術のもっとも基本になるのは、「手足陽経への引き鍼」です。

 これを身に付けることから、腕を磨き術を養うことは始まります。繰
り返し練習してしっかり身に付けましょう。

 「手足陽経に引く」というのは、体の体幹部、つまり、頭、首、胴の
症状、とくに体の表面に近い部分の症状を手足の陽経に鍼して軽くする
ということです。

 昔から症状が出ているところには邪気が蠢(うごめ)いていて、その
邪気を手足の陽経に鍼することで、刺鍼したほうに邪気を誘導し、手足
の末端から体の外に引き出すというイメージで伝えられてきました。

 邪気が初めから感じられる方は少ないので、初めのうちはあまり考え
なくても良いでしょう。手足の陽経に鍼をすると体幹部の症状、とくに
体の表面に近い部分の症状を軽くできると考えておいてください。

(1) 前腕の陽経側に引く

 体幹部の中でも、肩甲骨・鎖骨から上の症状は、手の陽経に引きます。

 この部位は、漢方の世界で「表位」と呼ばれるところで、手の陽経と
関連が深く、病の初期症状が現れやすいところとされています。とくに
カゼなどのときに初めに症状が現れるところと言われています。

 まず、患者さん役の人に症状を話してもらいます。今回の練習では、
患者さん役は座位が基本です。

 練習相手がいないときには、自分の肩甲骨・鎖骨から上の状態を観察
してみましょう。

 首の動作制限などが施術前後の変化がわかりやすいので、モデルとし
ては向いています。とくに首の捻転の左右差(写真1)などが治療後の
変化がわかりやすいです。

写真1

 実際に症状の出ている部分をさわったり押したりして確かめてから、
症状の出ている場所が左右どちらか確かめたあと、左右のなかで、前・
横・後ろのどこになるか3分類します。これが、どの経絡を使うか決め
るときの基本になります。

 首の動作制限などの場合には、その動作で伸びにくい部分にシコリ
が出ていることが多いです。首を右に向けにくいときには、左側横頚
部がシコっていて、そこが伸びにくいために右に向きにくくなってい
ることが多くなります(写真2)。

写真2

 さて、首のシコリが見つかったら、それと関連する手の陽経のツボ
を探すのですが、それにはコツがあります。

 経絡というのは、前・横・後ろが基本です。前・横・後ろというの
は、立ち姿勢で前から見える部分同士は経絡的に関係があるというこ
とです。横から見える部分同士や後ろから見える部分同士も同じです。

 前・横・後ろ×手足×陰陽(=体の内外)で12(3×2×2)経絡に
なっています。

 肩甲骨・鎖骨から上の表位は手の陽経と関連が深いので、手足の分
類では手、陰陽の分類では陽になるので、残るは前・横・後ろの分類
です。

 あと実際の治療では、体や手足の左右も関係するので、左右×前横後
ろで6(2×3)分類になります。

 その6分類にしたがって、前腕を調べます。手の甲の側が陽経側です。
症状が右側なら右腕、症状が左側なら左腕を選びます。そして、要穴の
多い肘から手首までのあいだで、前側なら親指側、後ろ側なら小指側、
横なら骨と骨のあいだを調べます(写真3)。

写真3

 そのあたりの筋肉の溝にそって、肘から手首にむかって指をすべらせ、
くぼんだところ、ベタベタしたところ、黒ずんだところ、押して痛いと
ころを探します。そこがツボの出ているところです。

 もし、二つ三つ見つかったら、患者さん役と相談して、イヤな感じや
痛みの強いほうを選びます。それらが同じなら深くヘコむほうを選びま
す。

 そのツボに痛がられないように刺します。

 押し手をしっかりして軽く1、2回弾入してから、静かに刺鍼していき
ます(写真4)。

写真4

 「痛い」と言われないように患者さん役と声を掛け合いながら、患者
さん役の様子を観察しながら刺鍼します。とくに見るところは、顔と腹
です。

 顔は表情や瞬(まばた)き、腹は息の深さを見ます。瞬きが頻繁になっ
たり、息が深くなったら鍼が効いていると見てよいでしょう。

 それ以上深く刺入するのは止め、その深さで横ゆらしや旋撚などをす
こししてから、ゆっくりゆっくり抜いてきます。抜いてくる途中も横ゆ
らしや旋撚などをしたほうがよいでしょう。

 こういう刺し方を「速刺徐抜」といい、手足陽経を刺鍼する場合の基
本です。

 刺鍼後、まず、刺した場所の変化を見ます。指を滑らせてみましょう。
ベタベタした感じがなくなって、サラサラしていませんか? 見た目に
も、黒ずみが消え明るくなったり、ヘコみが減ったりします。押したと
きの痛みも減っていることでしょう。

 患部のツボも同じように変化しているか確かめてみます。動作制限な
どが改善しているか実際に動作をしてみます(写真5)。首の捻転の左
右差の場合には、首を捻転してみて左右差が改善しているか調べてみま
す。

写真5

(2) 下腿の陽経側に引く

 同じように、胴体の下のほうの症状は、足の陽経側に引けます。

 これも、腰などの動作制限などがわかりやすいと思います。よくある
のは、腰の捻転制限と前屈制限(写真6)です。どれくらいの状態か確
かめておきます。
写真6

 患者さんに症状を話してもらってから、施術する姿勢を決めましょう。
足の陽経は足裏の場合もあり、調べる場所によって患者さん役の取る姿
勢を工夫します。

 足裏が中心ならうつ伏せがよいですが、実際には、重い腰痛などでは
患部側を上にした横向きしか取れないことも多いです。ラクな姿勢を選
ぶとツボも探しやすくなります。

 また、筋の溝が腕よりも多いので、一つの溝で見つからないときは、
隣の溝に指をすべらせて探します。

 腰の前屈制限のときには、下腿の真裏、承筋〜承山のラインに多く、
捻転制限のときには、むきにくい側と逆、つまり腰の筋肉が伸びない側
の真裏よりも少し外側の飛揚〜外丘のラインが多いです(写真7)。

写真7

 あとの手順は、手の場合と同じで、出ているツボに速刺徐抜で痛がら
れないように刺鍼します(写真8)。

写真8

 刺し終わったあとには、やはり、施術か所と患部の変化を観察します
(写真9)。

写真9

※1.「痛い」と言われたら

 痛いと言われたら、自分の足三里に刺せる鍼をだんだん太くしていき
ましょう。

 筆者は、30番の銀鍼まで刺せるようになりました。10番ぐらいまで
刺せるようになると、一般的によく使われるステンレスのディスポ鍼1
番から3番を痛いと言われることは少なくなります。

 また、鍼の素材では、ステンレス鍼のほうが銀鍼よりも痛いと言われ
てきましたが、現在ではステンレスのディスポ鍼よりも銀鍼を痛がる人
がかなりたくさんいます。若い人ほど、その傾向があります。

 体の中に溜まっている化学合成物質が多いと筋肉のベタベタした感じ
が強くなり、銀鍼の筋肉との親和性の高さが、逆に、くっつきやすく、
動かすと痛い感じを与えやすいからのようです。

※2.深くて届かなかったとき

 足は大腿は、もちろん下腿でも手よりもはるかに太いので、ツボが見
つかった場所によってはツボが深くて、短い寸3ぐらいの鍼では鍼先が
ツボの底のシコリに届かない場合もあります。

 そういう場合には、回旋術を使います。どちらか一方に無理のない範
囲で捻れるだけ捻った状態からパッと刺し手を離します。どちらか捻れ
やすいほうに行うとうまくいくことが多いようです。

 こうすると、届かなかったツボの底のシコリにも変化が出るようです。
抜いてくると、表面はサラサラとして、押しても痛くなくなっている場
合が多いです。

 螺旋的な力は遠くまで届きやすいからかも知れないなと思っています。

 下腿ではツボが浅いことも多いですが、これから練習していく腰や殿
部、大腿では深い場合があるので覚えておいてください。

(3)おわりに

 くりかえしになりますが、手足陽経への引き鍼は、基本中の基本です。
なんども練習して、しっかり身につけてください。


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