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術伝流一本鍼no.12 - (2017/03/21 (火) 19:24:46) の編集履歴(バックアップ)


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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 12.巨刺、上下刺、対角刺

巨刺、上下刺、対角刺

(1)はじめに

 先回、一応、運動器系応急処置をまとめてみましたが、運動
器系応急処置には、他にも色々な技法があります。

 これから今まで紹介していない技法のうち比較的よく使われ、
効果が出やすいものを紹介していきます。

 その1回目は、巨刺、つまり、左右反対側に刺す技法、それ
から、上下反対側に刺す技法、左右と上下を組み合わせた対角
反対側に刺す技法です。

 応急処置の原則は、「遠くに強く引く」でした。

 患部が胴や頭などの体幹部にあるときには、「遠く」として
手足の甲が使われます。が、患部が手首・足首近くのときには、
手足の甲は「遠く」とは言えませんし、そういう場合に手足の
甲を使っても邪気を引ききれないことがあります。

 こういうときに「遠く」として使われるのが、左右反対側や
上下反対側、それらを組み合わせた対角反対側の対称点です。

 右手首が患部なら、左右対称点は左手首、上下対称点は右足
首、対角対称点は左足首になります。

 このうち、左右反対側の対称点にツボを探して刺鍼する方法
は、「巨刺」と呼ばれ、昔から有名です。

 残りの上下対称点や対角対称点を使う方法は、今まで余り文
献には出てきていないようですが、効果的なことが多いで、試
してみてください。

 巨刺、上下刺、対角刺は、肘膝から先の痛みに有効ですが、
肘膝の場合には、普通に手足の甲に引き鍼することもできます。

 巨刺などがとても効果的なのは、やはり、手首足首から先で
す。

(2)巨刺などによる応急処置の手順

 先ず症状を確認します。どういう動作をしたときに、どの辺
りが辛いかを確かめます(写真1)。

写真1

 動かすのが辛いときには無理せずに、だいたいの位置を調べ
ます。その後に、その患部の左右対称点(写真2)、上下対称
点(写真3)、対角対称点(写真4)の近くを探し、ツボが出
ていないか調べます。

写真2

写真3

写真4

 対称点の近くで一番凹む所を探します。手首足首から先、特
に指周りのツボは細かいので、指で探すのは難しいことも多い
です。

 鍼管位の太さの物を対称点の辺りに縦横十文字に滑らせて凹
んだ場所を見付けます。それから、鍼柄の頭ほどの太さの物で
押して、ツンという感じの圧痛があるか聞いて確認します。

 3つの対称点の中で、一番圧痛の有る所を施術か所として選
びます。

 焼き鳥の竹串などを加工して、太い方が鍼管位、細い方が鍼
柄位で角を丸くした道具を作っておくと便利です。

 もし患部が肘膝だったら、対称点のツボに施術する前に、対
称点と経絡的に関連する手足の甲、つまり、その対称点の延長
の手足の甲のツボに引き鍼します。

 患部が手首足首から指に掛けてなら、対称点のツボから施術
を始めます。

 施術ヵ所に、鍼柄程度の物を軽く押し付けて、痕が残るよう
にします。

 写真のディスポのように鍼管が太めの物の場合には、鍼管ご
と鍼を置くと痕から外(はず)れてしまうことがあるので、そ
ういう場合には、先ず鍼を先に痕の上に立ててから(写真5)、
鍼管を置きます(写真6)。

写真5

写真6

 対称点のツボへの刺鍼は、軽く刺鍼しながら、患者さんに患
部の様子を聞きます。

 患部を余り痛くなく動かせるようなら、辛くない範囲で、ゆっ
くり色々に動かしてもらう運動鍼をします(写真7、8)。

写真7

写真8

 できる動作をしたり戻したりという動きを、辛くない範囲で
ゆっくり繰り返してもらいます。だんだん動かせる範囲が広が
り、動かせる動作の種類が増えていけば、効果が出ているとい
うことです。

 鍼を抜いてから、患部をゆっくり痛くない範囲で動かしても
らい、辛さや痛みが残っているところがないか確認します。

 残っていたら、残っていた場所の対称点の周りを探して、ツ
ボを見付けます。この場合の対称点は、初めに刺鍼した所の近
くだけ探せばよいと思います。

 見付けたツボに刺鍼し、患部を動かせるようなら運動鍼を併
用します。

 鍼を抜いた後に、また、患部を動かしてもらい、痛みや辛さ
が残っていないか確認します。残っていたら、また、対称点の
近くにツボを探して刺鍼し動作鍼をします。

 以上のことを日常生活に支障が出ない位に改善するまで続け
ます。

 もっとも応急処置の施術時間は30分以内が望ましいので、
それを越えるようなら中止して後始末に行きます。とは言って
も簡単な場合で1回、多くても3回位の刺鍼で良くなることが
多いです。

 後始末を丁寧にするときや、陰経側にも刺鍼したときには、
先ず、頭の散鍼をします。

 陽経側だけの刺鍼のときでも、患部が肘膝の場合には、施術
か所の延長上の手足甲の陽経側に引き鍼します。

 患部が手首足首より先の場合にも、施術か所の手足の甲の陽
経側を調べてツボが出ていたら引き鍼しておきます。

(3)巨刺、上下刺、対角刺の組み合わせ

 足首などの捻挫が酷くて、患部を動かすと痛がられて、充分
な検査ができない場合などには、遠い方から、対角刺、上下刺、
巨刺の順で施術すると、上手くいく場合が多いです。

 例えば、右足首の捻挫の場合には、左手首、右手首、左足首
の対称点の順で、刺鍼します。

 このとき、刺鍼中に辛くない範囲で運動鍼をすると、効果が
より出やすくなります。

 その3か所の刺鍼を終えると、右足首を調べる位は、それほ
ど痛くなく可能な程度には改善していることが多いです。

 この状態で、右足首に残っている、圧痛のあるツボに刺鍼す
ると改善できます。この患部のツボへの刺鍼は、軽くするのが
コツです。

 邪気は最後に刺鍼した場所に集まってくる傾向にあり、強く
刺鍼すると、後で痛みが復活しやすくなるからです。

 そのため、患部のツボへの刺鍼を避け、患部のツボと経絡的
に関連する足指に近い末端のツボを調べ、圧痛の強い所を見付
け刺鍼しておく方が、後で痛みが復活する可能性は少なくなり
ます。

 今回の患者さんは、畳に躓(つまづ)いて足指の付け根を捻
挫された人で、左足の第2指と第3指の間の延長が痛いという
ことでした(写真9)。

写真9

 そこで、左右、上下、対角の対称点を探したら、ツボが出て
いました(写真10,11,12)。

写真10

写真11

写真12

 そこで、対角の右手(写真13)、左手(写真14)、右手首
(写真15)の順で遠い方から順に、対称点に出ているツボに
施術しながら運動鍼をしました。

写真13

写真14

写真15

 そうしたら、患部の痛みは、ほとんど消えていました。そこ
で、患部の末端の井穴を調べたら、第3指の第2指よりの井穴
にツボが出ていました(写真16)。

写真16

 こういう細かいツボの刺鍼も(2)で書いたように、先ずツ
ボの押した痕の上に鍼を置いた後に鍼管をセットしてから(写
真17)刺鍼した方が、効果が上がりやすいです。

写真17

 後始末は、陰経側にも刺鍼したので、頭の散鍼(写真18)を
してから、ツボの出ていた左手2~3間の八邪(写真19)に引き
鍼しました(写真20)。

写真18

写真19

写真20

(4)おわりに

 次回は、頭に刺す技法です。

ーーー 追記:2017.03.21 ーーー
犬に噛まれた痕がこしで消失した例
[巨刺!>http://ameblo.jp/seipon1971/entry-12258426197.html]
ーーーーーーーーーーーーーーーーー


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