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経絡の交差と2足歩行 - (2010/08/21 (土) 14:40:21) のソース

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体は自然、臨床は対話 【1】体は自然 [2] 動作負荷の分担原則
(5) 経絡の交差と2足歩行
#contents
*1.はじめに
 直立2足歩行のバランスをとるという視点から、足の膝から下の内
踝側で前と横の経絡が交差している理由について考えていきます。

*2.ヒトは、直立2足歩行するサル
 さて、動物学的には、ヒトは直立2足歩行するサルなんだそうです。

 よく、数百万年前のヒトの化石が見つかったとかいう報道がありま
すが、その場合に、類人猿の先祖の化石かヒトの先祖の化石か、どこ
で区別しているかごぞんじですか?直立2足歩行していたかどうかで、
その二つを区別しているのだそうです。

 直立2足歩行という場合の直立というのは、体、つまり背骨が地面
にたいしてほぼ垂直に立っていて、頭がそのてっぺんにある状態で、
2足歩行しているということです。

 そのため、歩くときに頭があまり揺れなくなって、頭が大きくなれ
たのだと考えられているようです。

 つまり、鳥や恐竜も2足歩行をしていますが、体は横向き、つまり、
地面にたいして背骨がほぼ水平方向に伸びています。ほぼ真ん中にあ
る2本の足を支点に、前にある頭や首、後ろにある尻尾や尾羽、その
二つで前後のバランスをとって、2足歩行をしています。

 それで、頭が大きくなるとバランスが取りにくくなるので、頭が大
きくなれなかったようです。

 大きな違いは、バランスの取り方にあるようです。

 そこで、この鳥の歩行とヒトの歩行に直立していることのほかにな
にか違いがないかくわしく見ていくことにします。つまり、なぜ、ヒ
トだけが直立2足歩行できるのかということなのです。

*3.ヒトの足あとの横幅は、胴体よりもせまい
 私が、このあたりに興味をもったのは、会社員時代にロボットの歩
行を調べたときからです。ロボットに2足歩行をさせるのはとてもむ
ずかしいのです。

 私が調べていた1990年ごろに実用化されていた歩行ロボットで
足の本数がいちばん少なかったのは8本足のモノで、大きなガスタン
クの点検用でした。大きなガスタンクのヒビや穴などの点検、とくに
下側の点検は、人間がやるのも大変だったので開発されたようです。

 8本足というと、生き物の世界ではクモですね。そのころ研究中で
足の本数が少ないものには6本足のモノがありました。つまり、昆虫
の足の本数です。

 人間の作る器械は硬いので、同じように外側が硬い外骨格系のクモ
や昆虫の足の本数よりも少ない足本数のロボットの開発は難しいのか
な、などと、そのころは考えていました。

 カニ・エビ、クモ・ムカデ、昆虫などの外側が硬い外骨格系の生き
物で足が6本より少ないものは地球上にはいませんから。

 それで、内骨格系の動物の歩行をいろいろ調べてみることにしまし
た。鳥の歩行とヒトの歩行を調べているうちに大きな違いがいくつか
あることに気がつきました。

 そのうち、体が直立していないこと以外で、いちばん大きな違いは、
足あとの横幅の違いでした。

 ヒトの足あとの横幅は、体の胴体部分の横幅よりも狭いですが、鳥
や恐竜の足あとの横幅は、胴体の横幅よりも広くなっています。鳥や
恐竜の足の形を見ても、横幅を広げ安定させるために横に指が大きく
横に開いた形をしてます。

 鳥は羽があるので、ちょっと見ただけでは胴体の幅よりも狭いよう
に見えますが、羽根は重さが軽いので足で胴体の重さを支えるときに
はあまり負担になりません。

 それで、羽根をむしった状態での胴体の横幅を見ていくと、足あと
の横幅は胴体の横幅よりも広くなります。現在、恐竜は鳥に進化して
生き残ったという説が有力ですが、歩き方という点でも鳥と恐竜は同
じです。

*4.ゾウの足あとの横幅も、胴体よりも狭い
 この足あとの横幅という視点で、動物の歩き方を見ていくと、四足
で歩く動物たちにも、歩くときに足あとの横幅が広いものと狭いもの
の2種類いることがわかりました。

 ワニなどのハ虫類は足あとの横幅が体よりも広く、ホ乳類はゾウの
ように大型のものでも足あとの横幅は体の横幅よりも狭いです。

 また、歩くときの背骨の動きも違います。ハ虫類では、尾びれを横
にふって泳いでいた魚のなごりなのか、背骨を横にふって歩いていま
す。

 しかし、ホ乳類では背骨を縦にふって歩き、走っています。

 ですから、ホ乳類になってから海にもどったイルカやクジラは、海
で泳ぐときにも背骨を上下にふって泳いでいます。

 背骨を上下にゆらして歩き、走れるようになったので、横ゆれが少
なくなり、足あとの横幅を狭くできるようになったし、同時に頭を大
きくできるようになったと考えられます。

*5.足を中心によせるために
 でもそれだけではなく、足あとの横幅が胴体の横幅よりも狭くなる
ためには、歩くときに足を中心によせる力がつねに働いている必要が
あります。

 実際に靴底の減り方や靴下の破れ方などで見ても、足の指のほうで
は、親指側に力がかかっていることがわかります。

 つまり、踵(かかと)を支点にして足の親指側に力がはいるような
構造と筋肉のシステムがあるということです。

 足の筋肉が伸筋優位で脳性麻痺や片麻痺で内反尖足になるのも、足
を中心によせる力をつねに働かせる必要があるからかもしれません。

*6.下腿での経絡交差のわけ
 私は、足の内側の経絡が膝より下で交差しているのは、足に、この
中心によせる力を発生させている構造とシステムがあるためだと考え
ています。

 足の内側の横にあるべき経絡が骨のほう(体全体でいうと外側のほ
う)に回りながら前にあるべき経絡よりも前に出ようとすると、中心
によせる力が発生するからです。

 手の人指し指・中指・薬指を机などの上に立て、中指を手の甲の側
から人指し指の前に出そうとすると、中心によせる力が生まれること
が確かめられると思います。

 この点から見ても、経絡が筋肉のかばいあい、つまり、負荷分担の
仕組みだということがわかると思いませんか?

 経絡を「体の内外を走る作用力線の通路だ」と見抜いた橋本敬三先
生は、やっぱりすごいなと思います。

 私は、はじめ、足の経絡が下腿で交差しているのが本当かどうかわ
かりませんでした。

 あるとき、足の内側の横の経絡(足厥陰)にそって、直径1,2mmの
シミが2,3cmの幅で点々と出ているヒトにであって、そのことを本当
にそうだなと思うようになりました。

 大腿部は中央あたり、下腿は脛骨粗面(弁慶の泣き所)上、足の甲
は親指と第2指のあいだにむかって、点々とシミが出ていたのです。
目の慢性難病をかかえている方でした。

 こういうのは、経絡現象というそうで、日本でも報告がありますし、
中国では本も出ています。

 自分でも、足首から先に鍼灸したりして、交差していそうだなと思
いはじめていたときだったので、おどろくと同時に理由を考えはじめ
たのです。なにか体にとって不可欠の理由があるに違いないと…。

*7.ロボットにナンバ歩きやモンローウォークを
 1990年ごろと違って、いまは、ホンダのアシモがありますが、ま
だ、鉄腕アトムのような自由な動きはできません。アシモの足あとの
横幅を見ても胴体の横幅よりも狭いとはいえません。

 ソニーのAIBOもホ乳類である犬などのかっこうをしていました
が、足あとの横幅は胴体の横幅よりも広いです。

 現在、2050年にサッカーのワールドカップ優勝チームにロボッ
トチームで勝つことを目指す、ロボカップというプロジェクトが進め
られています。

 私は、2足歩行ロボットで勝つためには、この足あとの横幅が胴体
の横幅よりも狭い歩き方、走り方ができるロボットが開発できるかど
うかにかかっているように思います。

 まぁ、ナンバ歩きができる格闘技ロボットや、モンローウォークが
できる女優ロボットのほうがさきに開発できないと2足歩行でサッカー
ができるロボットの開発は難しいように思いますが。

 とくに、モンローウォークは、足あとの横幅が胴体の横幅よりも狭
くないとなりたたないというか、美しく見えない歩き方ですから。

 なお、ナンバ歩きというのは、同じ側の足と手が前に出る歩き方と
いわれていますが、日本人なら引き戸を開けながら、あるいは、のれ
んをくぐりながら歩くときにしている歩き方です。

 格闘技のときには、相手から見えるというか、相手にさらす体の部
分を細くできるので基本の歩き方になります。

 そういうロボットたちが開発されていく過程で、人間の歩き方につ
いての科学も進歩し、それが医療の分野、リハビリ技術などに応用さ
れるようになることを祈っています。

 その歩き方の科学を創っていくために、経絡の考え方はとても役に
たつだろうなと思います。

*8.おわりに
 これで体にかかる負荷を分担するシステムの中の縦の関係をおわり
ます。

 つぎからは、横輪切りと縦切り以外の負荷分担システムについて書
いていきます。


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