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術伝流一本鍼no.46 - (2014/02/13 (木) 11:10:20) のソース

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&color(green){術伝流一本鍼no.46 (術伝流・養生の一本鍼・病証編(5))}

&bold(){&size(24){&color(green){上焦の病}}}
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#contents
*1.基本的に
 上焦の病は、体の内側の横隔膜より上におもな症状やツボが出る病で、
呼吸循環器系ともいえます。邪気によることがおおく、手の陰経に引き
やすいです。また、横輪切りの背中の横隔膜より上にもツボが出ます。
症状の出ているあたりの胸側にも出ます。

 中焦の水毒や下焦の瘀血・虚などが原因のことがおおく、そのときは、
腹や、足の陰経・陽経、横隔膜から下の背中側にもツボが出ます。

 また、上焦の下部に水毒がたまることがあり、咳や痰の原因になりま
す。

*2.ツボが出やすいところやねらい目
**2.1. 手の陰経
 まずは、手の陰経から。触診してみて膻中あたりより上の症状は手太
陰、膻中あたりから下の症状は手厥陰に出やすいです。胸郭内部背中側
の症状は手少陰に出やすく、とくにその左側には心臓に関係するツボが
出やすくなります。

 急性症状が出ているときには、鍼では手首ちかくを使います。手のひ
らへの刺鍼は痛いので。咳なら列缺、吐き気なら内関、不整脈なら左陰
郄など。灸では、手のひらや指のツボも使います。労宮、裏合谷、節紋
(母指関節掌側横紋橈側)など。

 症状が長引いている慢性症状のときには、肘ちかくの上腕よりに出ま
す。長引く咳には上尺沢、膻中より下の症状のときや中下焦が原因のと
きは上曲沢に出ていることがおおいです。

**2.2. 背中(陽位)
 背中側の横隔膜より上の1~2行線、督脈、華佗経に出ます。慢性期に
は、2行線や、督脈、華佗経によく出ます。とくに、古いツボは、筋肉
の厚いところ、華佗経や肩甲骨まわりに出ることがおおくなります。

 呼吸器系では、肩甲骨の上半分におおいです。長期にわたる呼吸器系
の病では、胸椎1〜3番あたりの華佗経と、 肩甲骨外側の肩貞に出てい
ることがおおいです。

 心臓系では左肩甲骨の下半分、とくに、下角ちかくに出ます。

 また、水毒や瘀血が原因している場合には、横隔膜より下にも出ます。
中焦の水毒が原因のときは、胸椎7~9~11番ラインの1~2行線、督脈、
華佗経や、痞根に出やすいです。下焦の悪血や虚が原因のときは、腰椎
3番〜仙骨の1~2行線、督脈、華佗経や、腰徹腹に出やすいです。この
場合にも、病が長引いているときの古いツボは、胸椎7~9~11番ライン
では華佗経に出やすく、肋骨のないところでは、華佗経のほか、脊柱起
立筋外側の痞根、腰徹腹に出やすくなります。

**2.3. 胸腹部
 胸腹部の症状の表面ちかくにも出ます。 
  
 呼吸器系では中府、膻中と、それを結ぶ斜め線上で、肋骨を1本上が
ることに外よりに出ます。

 循環器系では左肋骨間で、とくに外下方よりに出ていることがおおい
です。

 水毒や悪血が原因している場合には、腹部にも出ます。水毒が原因の
ときは、中脘、章門など。瘀血が原因のときは、水道や五枢〜維道のあ
たりなど。下腹の虚・冷が原因のときは、関元など。

**2.4.  足の陰経
 中下焦に原因のあるときは足の陰経にも出ます。

 下腹の虚・冷のときには、照海。水毒が原因のときは、地機、節紋(灸)。
瘀血が原因のときは、蠡溝、中封。そういうところに出ていることがお
おいです。

 慢性期には、足の大腿部にも出やすくなります。くわしくは、これから
書いていく「中焦の病」、「下焦の病」を参照してください。

**2.4. そのほか
 腹の表面や背中のシコリの関係から足陽経にも出ます。手陰経のツボ
の表側の陽経に出ることもおおいです。

 下半身に冷えには、足甲の3~4間に出ているツボへの灸が効果的です。

*3.手順
**3.1. 慢性期
 急性期でもその時点で症状が激しくない場合には、この方法でするこ
とがよくあります。

 基本的には、ツボを考慮して慢性期の型の順で刺鍼します。ただ、す
でに表位に症状が出ている場合には、まず手甲の合谷などに引き鍼しま
す。また、胸上部から鎖骨・喉にかけてツボが出ていることがおおいの
で、肩頚のあとに刺鍼し、それから頭散鍼・手甲引き鍼で仕上げます。

 必要に応じて、凹んで冷えたり虚したりしているところや華佗経など
にある古いツボに灸・灸頭鍼をし、手の指端の灸で終えます。

 灸や灸頭鍼と置鍼を組み合わせてもよいです。うつ伏せで背上部を灸
したあと、あお向けで胸まわりを灸し、手指端の灸で仕上げます。手指
端は目覚ましなので、施灸したあと寝られるときは省略します。表位の
症状があるときや原因が水毒・瘀血のときには、それぞれのツボを付け
加え、座位→うつ伏せせ→あお向けの順で上から下に施灸します。

**3.2. 応急処置
 急性期は慎重に。救急医療と連携も考慮にいれてください。見極めが
大事になります。

 手甲に引き、手陰経の手首に引き、背に引き、頭に散鍼し手甲で終え
るのが基本です。邪気の動き速いので、刺鍼は速め速めにします。

 はじめに表位に症状があれば、ます手の甲に引き、途中で表位に症状
が出たら、手の陽経に引きます。背に引いたあと肩頚に症状が出たら、
肩頚に刺鍼します。

 中焦下焦に原因が予想されるときには、背に引いたあとで、足陰経足
陽経の順でツボをさがし刺鍼します。

 くわしくは、「先急の一本鍼:上焦の急性症状(術伝流一本鍼no.24)」
に書きました。

*4.写真付き症例:長引くカゼでセキがつづく
 カゼが長引き、セキも続いているという人。

 まず診察から。脈は、浮で数で弦(写真1)。

&ref(DSCF1964.JPG)写真1


 腹診では、上衝があり、鎖骨まわりはじめ胸が熱い、上腹部はとても
冷えている状態が目立ちました(写真2,3)。

&ref(DSCF1966.JPG)写真2

&ref(DSCF1969.JPG)写真3

 丹田が虚し(写真4)、足先も冷えている状態でした(写真5)。腹の
左右を比較すると、左のほうがつらい状態でした(写真6)。

&ref(DSCF1974.JPG)写真4

&ref(DSCF1978.JPG)写真5

&ref(DSCF1975.JPG)写真6

 列缺、上尺沢、上曲沢の3つを比較すると、上尺沢の反応が強かったで
す。昔から「長引く咳に上尺沢」と言われている通りだなと思いました。

 上尺沢に刺鍼したら、弾入してすぐから邪気がたくさん出てきました
(写真7)。これだけ邪気があったら、症状が長引いているわけだなとい
う感じでした。はじめ刺鍼したまわりから、そして腕全体から、そのあ
と、おそらく胸からの熱い邪気も出てきました。刺鍼後、胸の熱さがや
わらぎました。

&ref(DSCF1982.JPG)写真7

 そのあと左腕陽経に刺鍼。

 腹、まず横腹、つぎに左下腹の五枢〜維道あたりに出ていたツボに刺
鍼しました。

 操体の橋本敬三先生が書き残してられますが、咳が長引いたときには、
よく鼠径部にスジバリが出ます。しらべて出ていたスジバリに指をあて、
押して方向をさがし、スジをピンと張る状態にしてから瞬間脱力し、ゆ
るめました(写真8)。吉田流按摩の筋揉みと似た技法と思います。

&ref(DSCF1989.JPG)写真8

 鍼でするには、逃げないように押手でスジバリの左右をおさえてから、
斜刺でスジバリの表面にチョンとあてると、ゆるみます。

 つぎにヘソまわりに出ていたツボに刺鍼したら、熱い邪気と冷たい邪
気が両方交互に出てきました(写真9)。はじめ熱いほうがおおかった
のですが、しばらくしてなくなり、冷たいほうがおおくなりました。冷
たい邪気が感じられなくなったときに抜鍼しました。そのあと上腹部に
ふれてみたら、冷感がへっていました。

&ref(DSCF1990.JPG)写真9

 より温めるため、上腹部に出ていたツボへ補の鍼をしました(写真10)。
補すときには、ゆっくり、おおきく、鍼を動かします。撚鍼のときは、
ゆっくり撚鍼しながら、ついでに、鍼柄を摩擦することもつけくわえま
す。指をしっかりあてて撚鍼するのではなく、なかば鍼柄に指をすべら
せる感じで摩擦しながら撚鍼します。刺鍼後しらべたら、まわりと変わ
らない温度になっていました。

&ref(DSCF1993.JPG)写真10

 また、弦だった脈もゆるんでいました。

 足の陰経の地機あたりに出ていたツボへも、補の鍼をしました(写真11)。

&ref(DSCF1995.JPG)写真11

 足の陽経は、脛骨脇に出ていたツボにサッと刺鍼しました。

 うつ伏せになってもらい、胸椎の左華佗経に出ていたツボ、左痞根あ
たりに出ていたツボに、順番に刺鍼しました。

 足への刺鍼は省略し、座位になってもらいました。

 座位では、 まず、肩甲間部を触診しました。胸椎3あたりの華佗経が
指一本分くらいの穴があいている感じに凹んでいました。胸椎7番あた
りのラインに左右ならんでツボが出ていて、右が実で、左が虚でした
(写真12)。

&ref(DSCF2004.JPG)写真12

 はじめは右側を痛がっていましたが、かるく押したり揉んだりして
いるうちに消えていきました。そして、左の奥にあった縦長の骨のよ
うなシコリが目立ってきました。

 まずは、胸椎7番あたり左のシコリ、左右に逃げないように押手で
左右から挟むようにしてから斜刺で刺鍼しました(写真13)。骨のよ
うな硬さがゆるみ、弾力が出てきました。

&ref(DSCF2006.JPG)写真13

 胸椎3番あたりの華佗経にツボは、長引く咳のためだと思います。
熱、頭痛、項背の強張りがおもでセキがあまりでないときには、大椎
まわりにはツボが出ますが、胸椎3番の華佗経に出ることは少ないです。

 この胸椎3番あたりの華佗経のツボは虚していたためか、抜こうと
すると痛がられるので、弾鍼したりしながら長めに刺鍼しました。そ
したら、しばらくして温まってきたので、抜鍼しました(写真14)。

&ref(DSCF2008.JPG)写真14

 それから、首肩まわり、とくに大椎まわりを指をすべらせてしらべ、
出ていたツボに刺鍼しました(写真15)。

&ref(DSCF2017.JPG)写真15

 そして、胸の前側。カゼのときは、膻中のわきから肋骨1本あがるご
とに、外よりにツボが出ていることがおおいです。しらべたら、左2か
所に出ていました。順に刺鍼(写真16,17)。浅いところなので、弾入
したらすぐ横ゆらし弾鍼などをし、すぐ抜鍼します。

&ref(DSCF2019.JPG)写真16

&ref(DSCF2020.JPG)写真17

 胸上部から鎖骨まわり、前頸部などを指でかるくこすり、赤みが出た
ところに散鍼しました(写真18)。熱が出たがっているところです。

&ref(DSCF2023.JPG)写真18

 頭も左が熱かったので散鍼しました(写真19)。

&ref(DSCF2022.JPG)写真19

 手甲は1~2間にツボが出ていました。カゼのようなときには、合谷
のツボは母指よりに出ていることがおおいです。ツボをしらべるときに、
母指に押し付けるのと、示指に押し付けるのとを比較します。案の定、
母指よりのほうを痛がっていました。合谷母指よりに引き鍼しました
(写真20)。

&ref(DSCF2026.JPG)写真20

 邪気がさり、刺鍼したまわりがほんのり温まってきたときに抜鍼しま
した。『杉山真伝流』の「邪気の至るや緊にして疾く、穀気の至るや徐
にして和す」という感じを味わえ、おもしろかったです。

 カゼの場合でも、症状がおもく、座位がつらいときには、座位でした
ことも、うつ伏せなど寝た姿勢でします。


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 くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。

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