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術伝流操体no.20 - (2010/08/04 (水) 16:39:08) のソース

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術伝流操体・ラクな寝方をすこし強調 (9)横向き寝で、皮膚や重さの操体 

&size(24){&color(green){ 横向き寝で、皮膚や重さの操体}}
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(2)楽な寝方を少し強調 篇  その7 横向き寝で、皮膚や重さの操体
#contents
*1.はじめに
 先回は、横向き寝からの動きの操体でした。今回は、横向き寝から
の皮膚と重さの操体です。体の調子が悪くなると横向きに寝るのがラ
クな人が増えていきます。

 横向き寝からの操体は、橋本先生の本にはあまり出てきませんが、
現在ではよく使うので、しっかり覚えてください。しかも現在では、
動きよりも皮膚や重さを好む人が多く、しかも効果も上がりやすい
ので、臨床の場では不可欠なものになっています。

 横向き寝からの皮膚の操体としては、仰向けやうつ伏せの動きの
ときと同じように、動きの操体を皮膚の操体に置き換えていくもの
と、皮膚の操体独自のものとあります。

 動きの操体のときと同じように、横向き寝の場合に、まずはじめ
に観察するのは膝の曲げ伸ばしで、膝を曲げたほうがラクな人が多
いです。

 はじめは、横向きに寝ながら足を重ねてまっすぐ伸ばしている人
もいます(写真1)が、声をかけて膝を曲げた状態とまっすぐな状
態を比較してもらうと曲げたほうがラクなことに気づく人が多く、
しかも、膝を重ねているよりも膝をずらしてどちらの膝も床に着い
ている状態がラクな人がいちばん多いです。
#ref(ps0809#01.jpg)写真1

*2.動きの操体を置き換えていくもの
**1)横向き膝曲げで、皮膚の操体
 横向き膝曲げの姿勢がラクな場合に、次に観察するのは、上になっ
ている側の足の膝が下になっている側の膝よりも前に出ている(写真2)か、後ろ側(写真3)かです。比較すると、前に出ているほうがラク
な人が多いです。
#ref(ps0809#02.jpg)写真2
#ref(ps0809#03.jpg)写真3

***Ⅰ)上の足の膝が前なら
 上側の膝が前の場合には、上の腰ちかくの皮膚を膝のほうにずらし
ていくのが気持ちよい場合が多いですが、膝と腰の位置関係によって
少しずつ違いが出てくるので、まず膝の位置がいちばんラクな位置に
なっているか確認します。

 上になっている足の小指の4指側か、4指の小指側の指裏関節部の
はじを少し痛くすると、膝を動かして逃げます(写真4)。痛みが減っ
たところがいちばんラクな膝の位置になることが多いです。
#ref(ps0809#04.jpg)写真4

&bold(){ⅰ)上側の大腿に注目する}
 上になっている足の膝の位置が決まったら、つぎに大腿に注目しま
す。ラクな寝方が決まった場合、体がそのときに変えたがっていると
ころは、大腿の延長線上か平行な線上、大転子をとおり大腿と直行す
る線上にあることが多くなります。

 そして、大腿の延長線上や平行な線上に胴体があるか、大転子をと
おり大腿と直交する線上に胴体があるかによって決まってくることが
多いです。横向き寝の場合には、圧倒的に、大腿と平行な線上にある
場合が多くなります。

 具体的には、お尻ちかくの皮膚を膝のほうにずらすときに、気持ち
良さが感じられたり、腹の息が深くなることが多いです。

A)尻の皮膚を膝のほうにずらす
 上側の大転子や腰骨の背中側のあたりに手のひらを置いて、手が滑
らないように、膝のほうにゆっくり皮膚をずらしていきます(写真5)。
かるい力でずらせる範囲で。
#ref(ps0809#05.jpg)写真5

 気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、膝のほ
うへずらそうとする力を加え続けます。

 言葉の通じる人には声をかけて、操者の手がふれていないところ、
たとえば、首を左右どちらに回すと気持ち良さが増えるか聞いて、
気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらいます。

 ふれていない手足も気持ち良さが深くなるような格好を探してもら
います。わずらわしくない範囲で。

 受け手が姿勢を少しずつ変えていくのに合わせて、ちょうどよく釣
り合ったタワメの間になるように、操者も加えている力の入れ方、力
を入れる方向や強さなどを少しずつ変えながらずらし続けます。

 受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、気持ち
良さが感じられなくなるまで続けます。

 言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じられるとき
は続けてほしいというサインで、押し返すように感じられるときには
終わりにしてほしいサインです。

 しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。

B)腕や首の動きを加える
 今度は両手を使ってみます。片方の手は「A)尻の皮膚を膝のほう
にずらす」で説明したように、尻の皮膚を膝のほうにずらします。も
う一方の手をどこに置くかです。目を付けるのは、肩をはじめ上半身
です。

 横向き寝で膝を曲げた姿勢がラクで尻の皮膚を膝方向にずらすと気
持ちよい場合には、上半身のラクな動きはおもに二通りになります。

 肩あたりの皮膚も胸のほうにずらしたほうがよい場合と、反対に背
中のほうにずらしたほうがよい場合です。比較すると、背中側にずら
したほうがよい場合がやや多くなります。

 肩を背中側にずらしたほうがよい場合には、体全体を腰椎を境に捻
るように皮膚の張りを作っていることになります。腕を背中側にして
大腿と平行に伸ばすか、肩から大腿と直行する線上に伸ばすかそのど
ちらかが良い場合が多いです。

 肩まわりの皮膚を前にずらすのがラクな場合には、体全体を少し前
屈させながら上になっている側を畳や布団に近づけていく動きになり
ます。

a)胴体が捻れる場合
 胴体が捻れていくのがよいときに、肩まわりの皮膚操体をつけたす
には、あいている手のひらで肩を包み込むようにして滑らないように
し、ゆっくりずれやすいほうにずらします(写真6)。かるい力でず
れる範囲で。
#ref(ps0809#06.jpg)写真6

 気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、片手で
膝のほうへ皮膚をずらすことでうまれる皮膚の張りともう一方の手で
肩の皮膚をずらすことでうまれる皮膚の張りがちょうどよく釣り合う
ように皮膚をずらし続けます。

 言葉の通じる人には声をかけて、操者の手がふれていないところ、
たとえば、首を左右どちらに回すと気持ち良さが増えるか聞いて、
気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらいます。

 ふれていない手足も気持ち良さが深くなるような格好を探してもら
います。わずらわしくない範囲で。

 肩まわりの皮膚のかわりに腕の皮膚ずらしをつけくわえるほうがよ
いという人もいます。

 大腿と上腕が平行の場合には、肩まわりの皮膚をずらすかわりに、
小指側が手のひら側にまわる捻転につながるように腕の皮膚をかるく
ずらしてから手首のほうにずらすとよいことが多く、上腕の皮膚をず
らすのがよい人が比較的多いです。

 大腿と上腕が直交している場合で手指が腰に近いときには、腕の皮
膚を手首のほうにずらしてから小指側が手のひら側にまわる捻転につ
ながるように腕の皮膚をかるくずらすのがよい人が多く、上腕がよい
か前腕がよいかはさまざまなようです。

 直交の場合で手指が頭のほうに伸びているときには、腕の皮膚を手
首のほうにずらしてから小指側が手の甲側にまわる捻転につながるよ
うに腕の皮膚をかるくずらすのがよい人が多くなり、上腕がよいか前
腕がよいかは人により違うようです。

 つまり、ずらす順番は大腿の皮膚ずらしと正反対のほうがあとにな
ります。正反対の方向に皮膚の張りをつくることでタワメの間ができ
るわけですから。

 付け足し方や味わい方、終わり方は今までとほぼ同じです。終わっ
たら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。この場合には、仰向
けになって休みたがる人がやや多いです。

a)と同じ効果を脇腹への皮膚操体で出す
 横向きで胴体が捻れた姿勢がラクな場合には、脇腹の皮膚をずらす
だけで気持ち良さが生まれる場合も多いです。

 上になっている脇腹の腰骨寄りの皮膚をおなか側に、肋骨よりの皮
膚を背中側にずらす(写真7)ことをきっかけにしてみてイイ感じな
ら、続けます。付け足し方や味わい方、終わり方は今までとほぼ同じ
です。
#ref(ps0809#07.jpg)写真7

 脇腹をこういう風に少しずらすだけで胴体を捻ったのと同じ感じが
するのは不思議な感じがしますが、実際試してみると受け手側の感じ
としてはほとんど同じことがわかっていただけると思います。

 横向きで体が捻れる形は、橋本先生が本に書かれた定番の操体とし
ては「仰向け膝たおし」とほぼ同じです。

 胴体の捻れる角度は両方とも同じで、仰向け膝たおしは背中が畳な
どについているのに対し、横向き体捻れは大腿側面が畳などについて
いるだけです。

 つまり、この横向き体捻れで脇腹の皮膚をずらす操体は、仰向け膝
たおし操体のバリエーションの一つで、その中では、たぶん、いちば
ん動きが小さいものになるかなと思います。

b)胴体が前屈する場合
 胴体がやや前屈しながら上側が畳や布団に近づいていく場合には、
あいている手のひらの下部を肩と肩甲骨の境目あたりに置き、手のひ
らで肩関節を包み込んで滑らないようにし、ゆっくりずれやすいほう
にずらします(写真8)。かるい力で動く範囲で。
#ref(ps0809#08.jpg)写真8

 この場合には、肩は胴体をやや前屈させるようにしながら畳や布団
に近づけていく動きにつながる皮膚ずらしが良いことが多いです。ま
た、それに合わせて、尻の皮膚ずらしも体全体をやや前屈させる方向
に向きを変えたほうが良いことが多いです。

 肩の手を肩甲間部に、尻の手を仙骨ちかくにうつし、肩甲間部の手
は頭のほうへ、仙骨の手は尾骨のほうへずらしたほうがよい(写真9)
という人も多いです。
#ref(ps0809#09.jpg)写真9

 両手でつくっている皮膚の張りが合わさって、体全体に円を描くよ
うな感じになりながら、布団や畳に近づけていきます。

 付け足し方、味わい方、終わり方は今までとほぼ同じです。終わっ
たら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。この場合には、うつ
伏せになって休みたがる人が多いです。

&bold(){ⅱ)足首ちかくの皮膚ずらしをきっかけに}
 横向き寝・膝曲げ・上膝前の姿勢からの皮膚の操体は、尻ちかくの
皮膚を膝のほうにずらす操体を気持ちよいという人が圧倒的ですが、
中には足首から先、とくに足の甲の皮膚ずらしをきっかけにするのが
良いという人もいます。

 言葉の通じる人には声をかけて、どちらの足の甲に意識がいきやす
いか、どちらの足の甲の状態が気になるか、どちらの足の甲の状態を
感じやすいかなど聞いて、どちらにするか選びます。上になっている
足の甲を選ぶ人が多いです。

 決めた足の甲の上に手のひらを置いて皮膚をずれやすいほうにずら
すことをきっかけにします。

 上側の足を選んだ場合は親指を足の甲の皮膚を親指側にずらしたり、
足首のほうにずらしたりする(写真10)のが良いことが多いです。
#ref(ps0809#10.jpg)写真10

 下側の足を選んだ場合は、小指側にずらしながら指先のほうへずら
すという動きが良いという人が比較的多いです。後者の動きは基本的
な連動とは違っていて興味深いです。

 付け足し方、味わい方、終わり方は今までとほぼ同じです。

&bold(){ⅲ)膝曲げや、足首背屈から}
 いままで説明した以外でも、たとえば、上になっている膝の大腿前
面の皮膚を胴体のほうにずらしながら、下腿前面の皮膚を膝のほうに
ずらす(写真11)ことをきっかけにすることもできます。
#ref(ps0809#11.jpg)写真11

 これは上の膝の曲がりを深くしながら胸のほうに近づける動きの操
体を皮膚の操体にしたものになります。

 また、足の甲の皮膚を足首のほうへ下腿裏アキレス腱まわりの皮膚
を踵のほうへずらす(写真12)をきっかけにするのがよいという人
もいます。
#ref(ps0809#12.jpg)写真12

 これは、爪先上げ、つまり足首を背屈をきっかけにしたりする動き
の操体を皮膚の操体にしたものになります。いままで書いてきた皮膚
の操体でイイ感じが少ないときに試してみてください。

 実際のやり方は、いままでのを参考に工夫してみてください。

***Ⅱ)下の足の膝が前なら
 下の足の膝が前の場合には、上になっている大腿の皮膚を尻のほう
にずらす(写真13)動きが良いことが多くなります。
#ref(ps0809#13.jpg)写真13

 そして、操体していくとわりと早くに姿勢が変わります。仰向けに
なるか、反対側を下にした横向き寝の場合が多いです。本来はそうい
う姿勢のほうがラクな人が何らかの理由で最初の姿勢がラクに思って
しまったという場合が多いようです。

 もちろんそうでなく、この姿勢が本当にラクな場合もあると思いま
す。そういうときには、いままで説明したやり方を参考に操体してみ
てください。

***Ⅲ)膝と膝が重なっていたら
 横向き・膝曲げの寝方でも、膝と膝が重なっている姿勢がラクな
場合には、お尻まわりの皮膚をずらすことをきっかけにするよりも、
膝同士をくっつけ合う動きにつながる皮膚の操体のほうが気持ちよ
い場合が多いようです。

 膝の外側に手のひらを置き、膝のお皿のほうに皮膚をずらす(写
真14)とよい場合が多いです。
#ref(ps0809#14.jpg)写真14

 受け手が言葉の通じる人なら、声をかけていろいろな動きを付け足
してもらいます。この場合には、押し合っている膝を頭のほうに動か
したり、足首を背屈したり、首を臍を見るように前屈したりする連動
がうまれる可能性が多いようです。

 ですから、操体になれてなくて連動がわからない人の場合には、
「膝が胸のほうに動きやすくないですか?足首は反りやすそうに見え
ますが。おへそをみると気持ち良さが増えませんか?」とか声をかけ
てみるのもよいと思います。

**2)横向き寝で手の動きをきっかけに
 横向き寝では足など下半身をきっかけにしたほうがイイ感じのする
ことが多いですが、手の皮膚ずらしをきっかけにすることもできます。
いろいろあると思いますが、代表例を説明します。

***Ⅰ)手のひらを合わせて
 横向き寝でラクな格好で寝た姿勢から、両手のひらを合わせます
(写真15)。
#ref(ps0809#15.jpg)写真15

 合わせた手のひらをまずどちらかに捻転します。イイ感じがするで
しょうか? しない場合には、ほかの動き(関節運動の4種8方向の
中から)も試して、いちばんイイ感じのする動きを選び、操者はその
動きが元に戻らないようにホンの少し強調するように皮膚をずらして
支えます(写真16)。
#ref(ps0809#16.jpg)写真16

 付け足し方などはいままでと同じです。

***Ⅱ)両手小指を手のひら側に
 横向き寝の姿勢から両手を合わせ、両手の小指がどちらも手のひら
側に回るような手首捻転をします。

 つまり、両手の小指側を合わせた部分を中心にして両方の親指側が
手の甲の側に回るような手首捻転をして、だんだん手の甲同士が合わ
さっていくような動きをしてみます。

 イイ感じがしたら、操者はその状態が維持できるように両方の手の
ひらを受け手の両方の手のひらに重ねて、ほんの少し親指側にずらす
ようにします(写真17、18)。
#ref(ps0809#17.jpg)写真17
#ref(ps0809#18.jpg)写真18

 付け足し方などはいままでと同じです。この操体は肩甲間部を開き
たがっている人に喜ばれます。

**3)動きの操体を皮膚の操体にするのは簡単
 いままで書いてきたように動きの操体を皮膚の操体に置き換えるの
は簡単で、手をあてている場所は同じで、そこを動かす代わりに手の
下の皮膚をずらしていくものが多いです。

 そうでないものでも、どこの皮膚をずらすと動きの操体と同じこと
になるか考えていけば、わりと簡単に皮膚の操体に置き換えられると
思います。いろいろ試し、ヤジウマしてみてください。

*3.うつ伏せ寝で目立つところに皮膚操体
 ここまでは、動きの操体を皮膚の操体に置き換えてみました。

 前にも書きましたが、そのためには、動いて動きやすいほうをみつけ
る動診をしなくてはならないので、ためしに動診してみるのさえイヤ
がる人やひどく疲れていたりしてあまり動きたくなさそうなそうな人
にはできません。

 そういう人に対しては、ラクな寝方で寝ている姿を観察し、そこか
ら皮膚の操体をします。寝ている姿に特徴がなくてわかりにくかった
ら、足指を少し揉んで逃げてもらって姿勢をくずしてから観察してみ
るのもよいと思います。

**1)目立つところを探す
 仰向けやうつ伏せでは左右差をおもに利用して観察しましたが、横
向き寝では左右差はあまり使えません。全身をながめて、おおざっぱ
な歪みがなんとなくつかめるような勘を養っていくのが大切です。

 ただ、勘の働かせ方というか、見方のポイントみたいなものはあり
ます。私がよく利用する観察のポイントを説明していきます。自然則
のひとつとして利用してみてください。

***Ⅰ)大腿上腕の向き
 うつ伏せの皮膚操体のときにも書きましたが、観察のポイントのひ
とつは、大腿と上腕の向きです。ラクな姿勢で、大腿と上腕の延長線
や、大腿や上腕と手足の付け根で直交する線の胴体を通る延長上にツ
ボが出ていることが多いです。

 このあたり、うつ伏せのほうが分かりやすいので、うつ伏せの皮膚
の操体を読み返して置いてください。

 また、横向き寝の場合には、大腿と上腕に平行な線が胴体と交わる
ところも候補になります。とくに上半身と下半身を前後違う方向にし
て体を捻っている場合には、胴体の捻れる腰椎部分がポイントになり
ます。そこを境に胴体を捻っていますので。

***Ⅱ)背骨の捻れ曲がり
 背骨が捻れていないか曲がっていないかも観察ポイントになります。

 捻れの場合には、下半身の背骨を軸にした回転と上半身の背骨を軸
にした回転を比較するとわかりやすいでしょう。横向き寝の場合には、
さきほど書いたように脇腹、つまり腰椎の部分で捻れるか、そうでな
ければ、首、つまり頚椎の部分で捻れることが多いです。

 背骨が曲がりに関しては、横向き寝の場合には、歪みが少なければ、
背骨が腰と肩のあたりと起点にした懸垂曲線を描きますから、そうい
う懸垂曲線が不自然に折れ曲がっている感じのところを見つけるよう
にするのがポイントになります。

 目で見て折れ曲がりが見つけられない場合には、背骨の上を向いて
いる側に反って指をすべらせてみて、曲泉がスムーズに変化していな
い、ガクッという感じで折れ曲がっているようなところを見つけます。

 左右前後の曲げと捻りが組み合わさっている場合があるのもうつ伏
せの場合と同じです。

 また、腰椎が捻れや曲がりの境目の場合には、脊柱起立筋の脇腹に
もっとも近い痞根や腰徹腹に出るのもうつ伏せと同じで、比較的上に
なっている側が悪いことが多いし、皮膚操体もしやすいです。

 肩甲骨の外端や骨盤まわりも比較的上側にツボが出やすいし、皮膚
操体がしやすくなります。

***Ⅲ)関連する手足を探す
 胴体のツボが見つかったら、関連する手足のツボを探します。

 このあたりも基本的には、うつ伏せの場合と同じですが、やはり、
比較すると上側の手足にツボが出ている場合が多く、皮膚操体もしや
すいことが多いです。

 この場合の胴体と手足のツボの関係は、経絡的な相関で見つけるの
が比較的簡単です。ツボ同士の経絡的関係については、「操体もくも
く」の「体は自然」に詳しく書きましたので、興味を持った人は読ん
でみてください。胴体のツボを探すときにも参考になると思います。

***Ⅳ)首・頭・尾骨を探す
 背骨の延長でも、首や頭、尾骨は、手足がつながっていないので、
胸椎から仙骨までとは探し方が少し違います。このあたりも基本的に
うつ伏せ寝の場合と同じです。

**2)目立つところに皮膚の操体
 ツボが出ていそうなところが見当がついたら、さわってみて、その
中で、表面の皮膚がずれやすいところ、ずらしてイイ感じのするとこ
ろ、ずらすと息が深くなる場所を選びます。受け手が言葉の通じる人
なら相談して決めます。

 胴体から2カ所選んでもよいし、胴体から1カ所、手足から1カ所
選んでもよいです。両手が届く範囲で選びます。

***Ⅰ)手のひらでずらす(写真19)
#ref(ps0809#19.jpg)写真19

 まずは動きの操体を皮膚の操体に置き換えたときと同じように手の
ひらでずらしていきます。1番目に選んだところをずれやすい方向に
しばらくずらしたままにしておきます。

 あいているほうの手は、2番目に選んだところをずれやすい方向に
ずらしておきます。また、手首足首を捻ったり、手足の指を反らした
りするのと組み合わせてもよいです。

 ずらしたままにして、気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入っ
たか確認し、ずらし続けます。付け足しやタワメの間、終え方は、い
ままで書いていたのとほぼ同じです。

 ずらしたあとにできる皮膚の張りを保つこと、2カ所していてその
張りが正反対を向いている場合にはそのバランスを丁度よく保ちイイ
感じのタワメの間が続くことを大切にしてください。

***Ⅱ)指でずらす
 次は、ツボをこまかく特定して指先、正確には指腹などを使って皮
膚をずらします。

 この場合には、まずツボを直径1cmほどの範囲で特定します。

 手のひらで皮膚操体をしていれば手のひらをあてるところは直径数cm
ほどに特定できていると思います。その中でいちばん凹んだところを
探します。直径数cmの円の縦横斜めに横切るように指を滑らせて、
いちばん凹んだところを見つけます。

 押してイヤな感じがしたらあたりです。が、麻痺して痛まないこと
もあります。そういうときは、まわりも押してみていちばん凹んでい
るか確かめればよいと思います。

 場所が細かく特定できない場合には、1本の指でなく、4指の先、
というか4指の指腹を使っても構いません。

 横向きからよく使うのは、脇腹から腰椎にかけて、胸椎の背骨の上
側、首まわりの3か所のツボのどれかに指先の皮膚操体をしながら、
それと関連する手足のツボに指圧したり指反らししたりという組み合
わせです。

 肩甲骨から頭寄りに体幹部のツボが出ていた場合には、手のツボ、
手指との組み合わせが多いです。

 例えば、背骨の脇のツボへの皮膚の操体と指反らしの組み合わせ
(写真20)、
#ref(ps0809#20.jpg)写真20 

首の横のツボへの皮膚操体と手の指反らしの組み合わせ(写真21)、
#ref(ps0809#21.jpg)写真21  

首の横のツボへの皮膚操体と前腕のツボへの指圧の組み合わせ(写真22)など。
#ref(ps0809#22.jpg)写真22

 体幹部のツボが肩甲骨下縁より下に出ていた場合には、足のツボと
の組み合わせが多いです。例えば、横腹のツボへの皮膚操体と下腿の
ツボへの指圧の組み合わせ(写真23)など。
#ref(ps0809#23.jpg)写真23

 これも足の指反らしなどと組み合わせてもよいのですが、操者の手
がゆったりとラクに足指に届かないと気持ち良さが生まれにくいです。

それよりも、横腹のツボと同じように下腿や大腿などのツボも皮膚操
体という組み合わせのほうが多くなります。また、足のツボに手が届
かないときには胴体のツボを二つ組み合わせたりもします。

 そのほかにも、横向き寝寝からの皮膚の操体は、いろいろ工夫でき
ます。受け手が違和感を感じるところと体の上下左右対角の対称点を
選んで、その2カ所に皮膚の操体をするというのもよくします。

 いろいろ試しヤジマウして、面白い方法を見つけてください。

 細かく言うと、指先でのずらし方もいろいろあります。ツボの上に
皮膚がかるくピンと張った状態が作れればよいのですから。

 例えば、親指と人指し指で間の皮膚を張る方法(写真24)は、ま
るで鍼の押し手を広げたような感じで、鍼灸をしたことのある人なら、
こういう方法のほうがやりやすい可能性が高いです。
#ref(ps0809#24.jpg)写真24

 鍼を打たずにただ押し手をほんの少し広げるだけで、ツボが変化し、
受け手の症状が改善したりするので、びっくりされるかもしれません。
手陰経のツボに押し手を広げる皮膚操体をして、おなかのシコリがゆ
るんだりします。

 また、横向きだけでなく、仰向けやうつ伏せでも指先での操体は効
果的ですし、臨床上よく使います。上手になれば、細かいツボに対し
て鍼灸とほとんど同じ効果を上げることも可能です。

 ただし、ツボの場所なども鍼灸と同じくらい正確に特定できないと
効果が出にくくなります。そのあたりの詳しい説明も必用になります
ので、別の機会に「指先での皮膚の操体」という題で解説したいと思
います。

*4.横向き寝から重さの操体
 横向き寝からの重さの操体は、仰向けやうつ伏せと違って、片側の
肩や腰が畳についているので、上側の肩と腰を使って体重をかけます。

 受け手の上側の肩の前側と後ろ側、上側の腰の前側と後ろ側、その
4カ所に操者の体重をかけてみて、いちばん引き込まれる感じのする
ところか、言葉の通じる人ならいちばんイイ感じのするところを選ん
で、そこにしばらく体重をかけたままにすることをきっかけにします。

 比較すると、腰の前側にかける場合(写真25)と
#ref(ps0809#25.jpg)写真25

肩の前側(写真26)が多くなります。
#ref(ps0809#26.jpg)写真26

 そして、腰にまず重さをかけたら肩の前後2方向、肩にまず重さを
かけたら腰の前後2方向に試しに重さをかけてみて、イイ感じが見つ
かったら、イイ感じのほうに重さを軽くかけるのを付け足します。

 2番目に重さをかけることを付け足すのがイイ感じがしない場合に
は、一つのところだけに重さをかけ続けます。

 2番目の重さかけを付け加えるのがイイ感じの場合に、肩と腰の両
方に重さをかける組み合わせは、

①下半身が前、上半身が後ろ(写真27)
#ref(ps0809#27.jpg)写真27

②下半身が前、上半身も前(写真28)
#ref(ps0809#28.jpg)写真28

③下半身が後ろ、上半身も後ろ

④下半身が後ろ、上半身が前

の4種類になります。比較すると、①と②が多く、その場合は、タワ
メの間の時間、つまり、この重さの操体をしている時間が長めになり
ます。③と④は比較的少な目で、操体している時間も短めのことが多
いです。

 2カ所目に重さをかけるのは軽くで、あくまでも1番目のほうに重
さを充分かけることが初めは大切で、そういう状態から重さの操体を
始めます。

 もっとも、その割合が少しずつ変化していくことも多いです。引き
込まれていくように感じるときは重さのかけ方が足らないときで、押
し返されたように感じたときは重さをかけすぎです。

 重さの配分を受け手のその時の状態に合わせて変えながらちょうど
よいタワメの間が続くようしていきます。

 気持ち良さが感じられるか、腹に息が深く入ったか確認し、体重を
移した状態を続けます。

 言葉の通じる人には声をかけて、首を左右どちらに回すと気持ち良
さが増すか聞いて、気持ち良さが深くなるように首を動かしてもらい
ます。両腕や両足も気持ち良さが深くなるような格好を探してもらい
ます。わずらわしくない範囲で。

 操者が体重をかけている場合には、受け手が姿勢を少しずつ変えて
いくのに合わせて、ちょうどよく釣り合ったタワメの間になるように、
操者も体重の掛け方を少しずつ変えながら支え続けます。

 とくに、2カ所に重さをかけている場合には、重さのかけ具合の配
分がイイ感じになるよう調整します。また、受け手が倒れないように
支えてあげたほうがよい場合もあります。

 受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、気持ち
良さが感じられなくなるまで続けます。

 言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じられるとき
は続けてほしいというサインで、押し返すように感じられるときには
終わりにしてほしいサインです。

 終わったら、しばらくラクな姿勢で休んでもらいます。①、③、④
は仰向けになることが多く、②はうつ伏せになることが多いです(写
真29)。
#ref(ps0809#29.jpg)写真29

 この操体は、こんなので効果があるのかなという感じを受ける人も
いると思いますが、実は、現在の臨床の場では大変効果が出る場合が
多いです。

 うまく決まると、これ一つで受け手から「今日はもう充分です。こ
れ以上するよりも休みたいです」という言葉が出るくらい効果があが
ることもあります。そういうわけで、じっくり練習して身に付けるよ
うにしてください。

*5.おわりに
 以上簡単にですが、横向き寝からの皮膚の操体と重さの操体を解説
しました。

 次回は、今までの寝方別の操体を組み合わせて、寝た姿勢での操体
を連続して行う方法を説明します。

 この寝た姿勢での連続操体は、臨床の場で操体を使う上で、もっと
もよく使う中心的な方法になります。じっくり練習してしっかり身に
付けてください。


   つぎへ>>>術伝流操体no.21


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*お知らせとお願い
**術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集
 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、[[術伝流のモデル]]をみてください。

 症例を少しずつ増やして、ゆくゆくは深谷先生の「お灸で病気を治し 
た話」の写真入り版のような感じにしていきたいと思っています。

 よろしくお願いします。

**感想など
 感想などありましたら、[[「術伝」掲示板>http://jutsuden.bbs.fc2.com/]]に書いてください。

 また、「術伝」掲示板でも、旧掲示板「養生の杜」と同じように、
養生についての雑談や症例相談などもしていきたいと思っています。

 よろしくお願いします。

**間違いなど
 間違いなど見つけた方は、[[術伝事務局>jutsuden-jmkk@yahoogroups.jp]]あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

**「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集
 「術伝」では症例相談用メーリングリスト( [[術伝ML(muchukand)>http://groups.yahoo.co.jp/group/muchukand/]])
の参加者を募集しています。

 よろしくお願いします。




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