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<No.02 ひぐらしのなく頃に鬼隠し編 概要>
ひぐらしのなく頃に鬼隠し編 参考資料(ライトノベル研究会 2002年度文化祭研究発表用)
(諸注意)
- 「ひぐらしのなく頃に鬼隠し編」は、竜騎士07氏および同人サークル「07th Expansion」の著作物です。
- 本作品の全文については各展示摸造紙の前にご用意しています。また、お手控え用の冊子もご用意しておりますので、研究会員までお申し付け下さい。
尚、全文掲載版冊子のラノベ研ブース外への持ち出しはご遠慮下さい。(ご退出の際には、研究会員まで返却をお願い致します)
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※以下、イタリック体は現作からの抜粋。
どうか嘆かないで。世界があなたを許さなくとも、私はあなたを許します。
どうか嘆かないで。あなたが世界を許さなくても、私はあなたを許します。
だから教えてください。あなたはどうしたら、私を許してくれますか?
~Frederica Bernkastel
<プロローグ>
昭和58年 初夏。
……俺、前原圭一は、涙ながらに金属バットを振り下ろしていた。
腕は疲労し、返り血に染まり、心は張り裂けそうになりながらも、それでも俺は作業を止めなかった。
ここ雛見沢での楽しかった思い出を、一つずつ拭いさっていくかのように、一回一回、バットを振り下ろす。
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これで最後だから。これを振り下ろせば忘れてしまうのだから。
君に贈る、………………俺からの、最初で最後の花束。
ひょっとすると、…俺は君の事が、…………………………………好きだった。
<1日目>
東京から電車と車で数時間の位置にある鄙びた山村、雛見沢村。
この村に数週間前に越してきたばかりの俺は、自然に溢れたこの村の中で、愉快な仲間達との生活を謳歌していた。
ショートヘアが素敵な、毎朝律義に家に迎えに来てくれる甲斐甲斐しい女の子。そしてかぁいい(可愛い)ものに目のない、ちょっと変わった趣味を持つ同級生、竜宮レナ(りゅうぐう れな)。
ポニーテールがよく似合う、男友達のようなざっかけない付き合いが出来ることが魅力の、仲間内でのリーダー格。洋モノゲームの蒐集が趣味のクラス委員長、園崎魅音(そのざき みおん)。
八重歯ではにかむ笑顔の裏に、はちきれんばかりのいたずら心を充満させた天真爛漫な少女。しかし実際には年相応のあどけなさも残る、まだまだお子様な妹分、北条沙都子(ほうじょう さとこ)。
さらさらのロングヘアがトレードマークで、思わず頬擦りしたくなるお人形のような笑顔。どこか不思議に落ち着いた感覚を漂わせる、沙都子と同い年ながらも実に好対照なミステリアスマスコットガール、古手梨花(ふるで りか)。
沙都子の仕掛けるトラップ騒動に、お昼の弁当争奪戦。仲間と過ごす日々は毎日がまるでお祭り騒ぎ。それはそれは楽しい生活だった。
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俺は手早く弁当箱を引っ張り出すと、イスを引っ張って彼女らの横に加わっていた。
「…では、魅ぃ委員長の号令でいただきますです。」
始めはとても恥ずかしかったが、そんなのはすぐに薄れた。きっと俺も、この中の誰が遅れても弁当箱を開けないだろう。
年齢も性別も違う。でも、仲間だった。
<■TIPS:うちって学年混在?>
<■TIPS:うちって制服自由?>
<2日目(日曜日)>
レナと魅音に村を案内してもらった俺は、道行く人が皆自分のことを知っている事に驚愕する。地縁の深さゆえ、新参者の顔はすぐにそれと分かるのだ。隣近所の付き合いの密度の濃さに驚くと共に、そのことにほのかな心地よさを感じ出していた。
その後、梨花ちゃんの実家の神社裏で、レナが作ってきた山ほどの弁当を前に、5人でてんやわんやの大騒ぎ。陽が傾くと今度は、レナの秘密の場所であるダムの工事現場跡で「宝探し」にお付き合い。騒ぎに騒いだ、楽しい日曜日だった。
ただ一点、工事現場跡で出会った冴えない風貌の自称フリーカメラマン、富竹ジロウの発言、そしてレナの、普段とは少し違ったどこか突き放したような態度を除いては。
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「さぁねぇ。昔、殺して埋めたバラバラ死体でも確認してるんじゃないすか?
富竹さんのリアクションが一瞬戸惑った。まずいますい。ついレナたちのような感覚で受け答えしてしまった。
「……嫌な事件だったね。…腕が一本、まだ見つかってないんだろ?」
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「…なぁレナ。あそこで昔、なんかあったのか?」
「ダムの工事をやってたんだってね。詳しく知らないけど……はぅ…。」
「例えばさ、工事中になんかあったとか。事故とか。」
「知らない。」
いやにはっきりした声だった。それは返答というよりも、拒否に近い響きを含んでいた。
<■TIPS:前原屋敷>
<■TIPS:ダム現場のバラバラ殺人>
<3日目>
雛見沢分校にも部活はある。魅音が部長で、レナ、沙都子、梨花ちゃんがメンバー。毎回様々なルールでゲームに取り組むのである。
しかし、これをただのお遊びと侮るなかれ。部活のモットーは勝利第一、全員が餓えた野獣の如くに1位を狙い、一方で敗者には苛烈な罰ゲームが待ち構えているのだ。俺は入部試験のジジ抜きに果敢に挑んだが、部長・魅音の掌の上で踊らされる結果に終わった。
帰宅後、俺は昨日の約束を守ってダム現場に赴き、レナと共にとびっきりのお宝「ケンタくん人形」の発掘に汗を流した。レナは俺の頑張りをとても喜んでくれたが、俺は彼女の目を盗んで、ゴミ捨て場の写真週刊誌の束に目を通す。そこには昨日から気になっていた、ダム工事現場での凄惨な事件の事実が記されていた…。
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「圭ちゃんならさ、ここまで読んでくれる、と思ってたよ………くっくっく!」
誰もが凍り付く。…いや、それは俺だけなのか…。
「賭けだった。圭ちゃんがおてんばさんの早とちりだったなら、負けてたのは私だった。」
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レナも魅音も口にしたくないような「事件」。
好意で隠してくれていることをわざわざ暴こうとしている……。そんな、友人達への背徳感だった。
"雛見沢ダム・作業員リンチ死! バラバラ殺人!!"
…あった!
<■TIPS:雛見沢ダム計画>
<■TIPS:週刊誌の特集記事>
<4日目>
魅音の部活は、何も放課後に開かれるゲーム大会に限らない。優劣を競えるものなら何でも部活として成立する。体育の時間などはまさにその典型例だ。今日の種目はゾンビ鬼、今回は全校生徒まで巻き込んで、いつにも増しての大騒動と相成った。
放課後は再び工事現場跡へ行く予定だったが、途中で再びあの人、富竹さんと出会う。彼は前にもまして意味深なセリフを残し、去って行くのだった。その後、レナとの協力により、ついにケンタくん人形の発掘に成功したが、手元が狂って人形の腕を壊してしまった。ごろんと俺の足元に転がる腕を見て、俺の脳裏には週刊誌で読んだ「嫌な事件」の影が頭を過ぎった…。
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まぁ、一般的な常識人にレナの異常性を理解するのはとても難しいだろう…。適当にケムに巻いておくことにする。
「富竹さんがここで殺されたら多分犯人はあいつです。…せいぜい嗅ぎ回らないようにすることですねぇ。」
意地悪っぽくにやりと笑ってやると、俺はとっととレナの待つダム現場へ向かった。
少し歩きかけて、不意に富竹さんが呼び止めてきた。
「圭一くん、それ、よそ者の僕への警告のつもりかい?」
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"…それは警告のつもりかい?"
俺のおどけた口調とはどうにも噛み合わない、富竹さんの言葉が引っかかっていた。
<■TIPS:レナってどういう名前だよ?>
<5日目>
部活の仕組みにもようやく慣れて来た俺。そして今日の種目は、俺にも馴染みの深い「大貧民」。しかもしかも、負けた者には男心をくすぐる、めくるめく素敵な罰ゲーム!!煩悩の力に支えられ、俺は今までにない快進撃を続けるが、最後の最後で手痛いしっぺ返しを食らうのであった…。
魅音との下校途中、俺はまたしても富竹さんと出会うが、俺は魅音が富竹さんと親しげに話し出したことに軽い驚きを覚える。魅音の話では、彼は雛見沢に想い人がいて、季節毎に通い詰めているのだとか。彼の正体の一端が明らかになったことで、少し安堵感を覚える俺。
皆で話した、今度の日曜に行なわれる「綿流し」のお祭りが、俄然楽しみになってきていた。
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お、おちつけ前原圭一…!!/心頭滅却! 冷静になって今の状況を分析しろ……!!!
俺は頭のコンピューターをフル回転させ状況判断に努めた。…そして出た答えは非常に単純だった。
「お……俺は勝ぁああぁあぁあつッッ!!!!!」
そして俺は神になった!!!!
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富竹さんに対する一方的な杞憂が消えると、急に肩が楽になった。俺は雛見沢の、夕暮れの空気がこんなにも澄んでいたことを思い出す。
「………ッ、はあぁあぁああぁぁ~!」
肺の空気を全て吐き出し、同じだけ思い切り吸い込む。黄昏の匂いがした。
<■TIPS:回覧板>
<9日目(日曜日)>
綿流しのお祭り当日、俺達5人はいつにも増してのハイテンション!魅音により「綿流五凶爆闘」と命名された部活の場外乱闘は、その名に恥じぬ正にお祭り騒ぎ。クライマックスの射的バトルでは、富竹さんも巻き込み、全員の力で難攻不落の巨大クマを攻略。俺は仲間達と…そしてレナと、最高の思い出を作った。
騒ぎの後には一転して、祭りは厳かな空気に包まれる。梨花ちゃんの奉納演舞を見物した後、皆で布団の綿を沢に流す。これが雛見沢の守り神「オヤシロさま」への感謝を現すのだそうだ。
沢のほとりで仲間とはぐれてしまった俺は、女性と共にいる富竹さんと偶然に遭遇する。そして彼女(後に入江診療所勤務の看護婦、鷹野三四(たかの みよ)さんと判明する)は、祭りの熱気を一気に冷ます、驚きの事実を口にした。4年前のダム工事現場監督バラバラ殺人を皮切りに、この雛見沢では綿流しの夜、毎年必ず人が死ぬというのだ。1年目はバラバラ殺人。2年目は謎の転落死。3年目は病死、4年目…つまり去年は、撲殺。いずれも「ダム建設の関係者ばかりが」「綿流しの夜に」命を落とす。村人の中にはこれを「オヤシロさまの祟り」だと信じている者も少なくないという。
富竹さんはただの偶然と笑うが、俺にはとても笑うことは出来なかった。5年目の綿流し、それはつまり今日のことだ。今晩は何も起こらなければよいのだが……。
~~~~~
富竹さんは何も言わずファインダー越しに俺とくまを捉える。カメラマンの血が、これから起こる奇跡を予見させるのだ!そしてギャラリーも俺の意図を読み取る!
割れんばかりの大歓声!! 圭一コールが巻き起こる!!!
連射が命! 外せば意味もなし!!……ふーーーーーッ!!息を深く吐いてから…止める。
……緊張が止まる。………今だッ!!!!
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「で?その翌年の綿流しの晩にもまた人が死ぬわけですよね…? 今度は誰です?」
「さぁてね………圭一くんは誰だと思うかな?」
「は……はぁ!?」
/「別にはぐらかしたつもりはないんだよ圭一くん。つまり……その翌年の綿流しってのはつまり…。」
「今日よ。」
富竹さんの躊躇をあっさりと女の人が片付けた。……じっとりとした汗を誘う、嫌な風がどっと吹く。
<■TIPS:ダム推進派の夫婦の転落事故>
<■TIPS:古手神社の神主の病死>
<■TIPS:主婦殺人事件>
<■TIPS:無線記録>
<10日目>
綿流し翌日。俺は普段通りに、いつもの仲間達と「犯人当て」のカードゲームに興じていた。そんな俺の前に、ちょっと異様な風体の中年男性、大石蔵人(おおいし くらうど)と名乗る男が姿を現す。興宮署の警部であるというその男の口から、俺は信じられない事実を告げられる。
……昨晩、富竹さんが、自ら喉を掻き毟って失血死。
……富竹さんと共にいた女性は行方不明。
そして彼は、事もあろうに俺達の仲間や、更には村中の人間が事件に関与している疑いがあると言い、暗に協力を求めてきた。みんなに余計な負担をかけないためにと、俺は彼との接触を秘密にすることには渋々応諾したものの、何とも言えない不安感が俺の心に影を落とし始めていた。
彼との長話を終えて部屋に戻ると、この日の部活は既に終わりかけていた。この日を境に平穏な日常が終わりを告げようとしていたことに、この時、俺はまだ気付いていなかった…
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「その写真の男性は昨晩、お亡くなりになりました。」
頭の中が真っ白になる。
……え? 富竹さんが…どうしたって?
「よりにもよってね、お亡くなりになられたのが昨日なんですよ。つまり綿流しの当日。………前原さんにはどういう意味があるのか、わかりますよね?」
「意味って、…意味なんか……。」
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「煙に巻くなよ!魅音は俺の大切な仲間だぞ!」
/「言ってもいいですが…気を悪くしないで下さいね?」
「言えよ!!」
男は少し躊躇した。目線を車外へ躍らせ、少し思案してから口を開く。
「雛見沢で起こった一連の事件は、村ぐるみで引き起こされている可能性があるのです。」
<■TIPS:犯人は4人以上?>
<■TIPS:操作メモ>
<11日目>
大石警部から聞かされた不快な情報のせいで寝不足気味の俺、今日の昼休みは爆睡モード。しかし机に突っ伏している間に、魅音とレナが「鬼隠し」について不穏な会話をしているのを聞いてしまう。
更に、昨日の犯人当てカードゲームの部員カードの中に、俺達5人の誰でもない「悟史」という名前のカードを見付けてしまうが、その事についても口を噤むレナ。俺の不安は深まるばかりだった。
俺は下校中、意を決してレナに事の真相を問い詰めるが、逆にレナの方から、俺に秘密はないのかと詰め寄られる。その際の、普段のレナとは明らかに違う鷹のような鋭い眼光に、俺は戦慄を覚えるのだった。
帰宅後、自宅に大石警部から電話がかかってくる。不安に苛まれていた俺は、1人が死ぬと同時に1人が消えるという「鬼隠し」伝説への見解などについて、彼と一心不乱に話し込んでしまう。……そしてそれゆえ、父親に指摘されるまで気付くことは出来なかった。レナが、小1時間もの間、俺の部屋の前で立ち尽くしていたらしいことに……。
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「誰、あのおじさん。」
「し、知らない人だよ…!」
「知らない人がなんで圭一くんに用があるの。」
「お、…俺が知りたいよ!」
「じゃあ何の話をしていたの!
「みんなとは関係のない話だよ…!
嘘だ。
「嘘だッ!!!」
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俺の返事がなかったが、部屋にいることはわかっていたので、親父はレナにあがってもらった。…そして俺の部屋は2階の奥だと教えた。……レナは親父にお礼を言って、階段を上がった…。
そして小1時間して。…お茶を持って上がって来た親父とすれ違い、帰って行った。
階段を上がってから、小1時間。それから親父とすれ違って、帰宅。
じゃ……じゃあ、…階段を上がってから…帰るまで……レナは…どこに居たんだよ…?
<■TIPS:本部長通達>
<12日目>
寝覚めは最悪。昨日のレナの奇怪な行動のせいで、俺は憔悴しきっていた。体調不良ゆえの過敏症のせいではないかと考えた俺は、村の医院・入江診療所へと足を運ぶが、そこで、行方不明となった女性がここの看護婦であったことを知る。あの日の事件からどうにも逃れられない俺。
帰り道、大石警部に昼食に誘われるが、当然それは口実で、彼と事件の情報交換を行なう。そこで俺は、3人の仲間、そしてレナの衝撃的な過去を聞かされ、不安は益々募る一方であった。
帰宅後、魅音とレナが手製のおはぎを持参してお見舞いに来てくれた。会話の中で二人の瞳の色が変わったことに不安を覚えつつも、俺の思い過ごしと気を取り直し、おはぎの味を確かめにかかった。……数分後、俺は大いに後悔することになる。まさかあんなものをおはぎに仕込んでくるなんて、俺には正気の沙汰とは思えなかった……。
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「竜宮レナさんは昨年まで茨城の郊外にお住まいでした。まぁ確かに、いずれの被害者とも直接の面識はありませんが…。」
煮え切らない言い方だ。何か関係があると言うのか…!?
「実は調べてみたら、竜宮さんは引越しの少し前に、学校で謹慎処分を受けているんですよ。何でも、学校中のガラスを割って回ったんだとか。」
「レ、レナが!? ………学校中のガラスを割った!?!?」
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「もぐもぐ。………………ん、」
俺の予想は的中したようだ。俺の舌が何かに触る。
食べるものとは少し違うようだったので、取り合えずそれを指につまんで取り出してみた。
…………………これは、…なんだ?
それが何かを頭が理解する前に、俺は食べかけのおはぎごと、それを力いっぱい投げ付けた!!!
<■TIPS:自殺を誘発するクスリは?>
<■TIPS:脅迫>
<13日目>
もはや誰一人信用できない。最近では、誰かにつけられているような…見られているような気さえする。俺にはまだ、全てを忘れて皆に受け入れてもらうという選択肢も残されていたが、大石さんに聞かされた皆の不穏な過去が、俺にその選択を躊躇わせていた。俺の中のもう一人の自分が、甘い考えを追い出せと、俺に警鐘を鳴らし続けている……。
この日は、普段通りに行なわれようとしていた部活も参加を断り、一目散に家に帰る。両親を危険に巻き込むわけにはいかないので、両親を頼るわけにもいかない。俺は万一の時に気付いてもらえるよう、両親に伝えるだけのことを伝え、また事件の情報を残すことに腐心する。そして何としてでも、一人で生き延びる決意を固めるのだった。
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レナたちを疑いながらも…同時にかばうような、そんな二律背反の気持ちはさっきからずっとあった。不審な行動・言動をあれだけ目の当たりにしながらも、こうして朝日の中にいると全部ウソなんじゃないかと思えて……いや、思い込もうとしてしまう。
俺は仲間を疑っている?
かばっている?
命を狙われている?
いない?
本当にずれた論点だった。自らが置かれている現状を思えば…そんなのはとっくの昔の論点のはずなのだ…。
<■TIPS:元気ないね。>
<14日目>
レナとの登校を避けるため、今日から早朝登校を始めるが、危うく白いワゴン車に轢かれかかり、俺は身近に危険が迫っていることを実感する。早朝の教室にて、昨日の考えでは理想の武器と思われた金属バットを無事確保。周囲に対して常に警戒を怠らないよう努める。
帰り道、背後にただならぬ気配を感じ、振り返るとそこにはレナ。俺の警戒した様子に怯えるレナだが、それは俺の様子が去年の「悟史」と同じだからだと語る。そして直後、彼女は以前の鋭い眼光の持ち主に豹変。更には家に帰り着くと、レナもいないはずの空間に、ありありと人の気配を感じる俺。もはや何が現実なのか分からなくなりかけていた。
夜半、大石さんとの電話の中で、おはぎの中身の保存も白ワゴンのナンバー記憶も出来ていなかったことに気付き、俺は自分の迂闊さを悔やんだ。その電話の最中、弁当の重箱を抱えてレナが俺の家を訪問してくる。美味しそうな夕食の提案に心を許しかけた俺だが、俺はふとある事実に気付く。「なぜレナは、今日俺の家が両親不在であることを知っているのか?」
血の気が引いた俺は、反射的にレナを追い出し、慌てて大石さんとの電話に戻る。直後の彼の話では、レナは茨城時代、「オヤシロさま」の話を口にしていたという。ふと窓の外を見ると、先ほど振り出した雨の中でずぶ濡れになりながら、レナは何かに取り憑かれたかのように、一心不乱に謝罪の言葉を口にし続けていた……。
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そうだ、針の件だけじゃない。今朝の車の轢き逃げの件も話しておこう。
「あ、あと大石さん、それだけじゃないんです。…実は今朝、」
……あの車は絶対に俺を狙った。数々の状況証拠からそうだと断定できる。
「その車のナンバープレートは見ましたか? こちらでも探して見ます」
しまった…!!あの時は怒りにまかせて怒鳴りつけただけで…ナンバーは見なかった…。
しかし…針にせよナンバーにせよ何たる失態!
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「……ご、ごめんレナ。……今、なんて?」
「え? 何が?」
「今さ、…………何が好き?って聞いたんだよ?」
数瞬後、俺はあまりに無防備に先を促したことを後悔する。あまりに呆気ない回答だからこそ、……俺はその意味するところが理解できずにいたのだ。
「…豚骨ショウガ味。」
<■TIPS:二重人格???>
<■TIPS:セブンスマートにて>
<15日目(土曜日・最終日)>
もう誰一人信用することをやめた俺。早朝、魅音から金属バットの使用を咎められるが、逆に魅音のこれまでの行動を詰り返す。その時見せた魅音の危機迫る表情に、俺はもう何度目になるか知れない戦慄を覚えるのだった。
授業後、その場に留まることは危険だと判断した俺はすぐに校舎を出るが、帰り道で人の気配を感じ、振り返るとそこには再びレナ。しかし今日は最初から明らかに様子がおかしい。そしてその右腕には……斧。もう間違いない、レナは、俺に明確な殺意を抱いている……!!!
逃亡の最中、大石さんから聞いたレナの過去がフラッシュバックする。そんなわけがあるものか……しかしレナは容赦なく俺を追い詰める。必死の思いでどうにかレナを振り切ることには成功するが、今度は何の変哲もない一般市民までが俺に迫り来る!!
……意識を失った俺が目を覚ますと、そこは自分の部屋で、傍らにはレナと魅音。全て悪い夢だったのか?そんな思いもつかの間、二人の様子が徐々におかしくなり始める。魅音の口から語られる「監督」なる人物の存在。そして魅音の腕に怪しく光る注射器。もう駄目だ、俺はこの2人に殺されてしまう……!!
……数分後。無我夢中の状態から解き放たれた俺の目に映ったのは、血の海に横たわる、レナと魅音の変わり果てた姿だった。俺は悲しみを堪え、何としても生き延びることを決意する。既にあの「白いワゴン」と何人かの男たちが俺の家の前に来ている。時間がない。俺は最低限の情報を時計の裏に隠し、二階の窓から外へと逃げ出した……。
数時間後。大石のもとに、前原圭一から一本の電話が入る。しかしその時点で、全ては最早手遅れとなっていた……。
<エピローグ>
※以下、全文を原作より抜粋。
昭和58年6月。
某県鹿骨市の寒村、雛見沢で女子生徒殺人事件が起こった。
容疑者は、前原圭一(1X歳)
容疑者は自宅にクラスメートの女子2名(竜宮礼奈・園崎魅音)を呼び寄せ、金属バットで撲殺。
犯行現場は自宅2階の容疑者の自室だった。
室内は凄まじい返り血に彩られ、被害者ともみ合った形跡が認められた。
また、犯行現場とは別に、玄関、居間、台所でも荒らされた形跡が認められた。
玄関では、靴箱と壁に激しい打撲 の痕跡。
凶器のバットによるものと断定。痕跡に血液反応が出なかったことから、犯行以前に破壊したものと推定。被害者の逃走を阻止するため、容疑者が威圧行為を行なった可能性がある。
居間では絨毯が剥がされ、投げ捨てられていた。
これは被害者ともみ合った際のものとは考え難く、その真意は不明。
台所ではゴミ袋が破かれ、その中身が床にばら撒かれていた。
ゴミは周囲に飛散し、容疑者のものと思われる手形も発見された。
容疑者は何らかの理由でゴミを出し、それを掌で叩いたものと考えられる。その真意は不明。
また、冷蔵庫に貼り付けられていたメモには「針がなかった?」と記されていた。意味不明。
念のためゴミを探すが、針は発見できなかった。
荒らされてはいなかったが、引越し以来、開放したままになっているガレージのシャッターが閉じられていた。
シャッターからは容疑者の指紋を検出。その真意は不明。
容疑者は犯行現場から逃走したが、警邏中の警察官(雛見沢駐在所)が電話ボックス内で倒れているのを発見する。
発見時、容疑者は意識不明の重体。直ちに村内の診療所に搬送し手当てをしたが、意識は戻らず24時間後に死亡した。
検死の結果、直接の死因は出血性ショック死。自らの爪で喉を引き裂き、その結果の出血 で死に至ったと断定した。
先週に発生した富竹氏事件の異常な死に方との酷似に、警察は関連性があるものとして捜査を開始する。(ただし、地元からの強い要望により非公開捜査)
異常な死に方に何らかの薬物の使用を疑うが、富竹氏事件と同様に一切検出されない。
当初はあまりの不可解さに、衝動的な突発的犯行と断定していた。
だが、容疑者の犯行直前までの奇行が次々と露呈するに従い、捜査方針は変更されることとなる。
親しかったグループとの離縁 。孤立。意味不明の言動。犯行の数日前からは金属バットを持ち歩くようになっていた。
攻撃的な言動、独り言は学校でもしばしばみられ、クラスメートが実際にその一部を聞いている。
犯行の前々日には、両親に自らの死をほのめかす発言もしていた。
警察は、これらの状況から、この事件が突発的なものでなく、数日前から予定された計画的犯行の可能性があるとして捜査を開始する。
その後、容疑者の自室から直筆のメモが発見された。
メモはB5の大学ノートを半分に裂いたもの2枚で構成され、まるで隠蔽するかのように、壁時計の裏に貼られ、隠されていた。
内容は別添の通り。
警察は事件と密接に関係するものとして重視。容疑者が何らかの事件に巻き込まれていた可能性があるとして再び捜査方針を転換した。
だが、その後なんの手がかりも掴めず、メモそのものの信憑性 も疑われるようになる。
この事件は突発的 なものなのか、計画的なものなのか。
真相もわからず進展もなく、事件は文字通り迷宮入りの様相となった。
だが……後年。
このメモにひとつの不審 が浮上した。
2枚のメモは、B5のページを半分にしたものが1枚ずつではなく…。
元はB5の1ページに書かれたものを…何者かが、”真ん中の数行を削除するために”破り捨てたのではないか…というのだ。
文字の大きさと、破かれた部分から推定して、削除されたのは2~3行。
削除した人物は容疑者以外である可能性が高い。
また、時計裏に付着していた大量のセロテープ跡から、”メモ以外にも何かが貼り付けられていたのではないか”との憶測も出た。
第一発見者は、かねてから事件との関係を噂される疑惑の刑事。大石蔵人。
任意で事情聴取をしたが、メモの破損については否定する………。
容疑者のメモ
私、前原圭一は命を狙われています
なぜ、誰に、命を狙われているのかはわかりません。
ただひとつ判る事は、オヤシロさまの祟りと関係があるということです。
レナと魅音は犯人の一味。他にも大人が4~5人以上。白いワゴン車を所有。
(ここまでが1枚目。ここから下は真横に破られている)
(ここからが2枚目。ここから上が真横に破られている。)
どうしてこんなことになったのか、私にはわかりません。
これをあなたが読んだなら、その時、私は死んでいるでしょう。
…死体があるか、ないかの違いはあるでしょうが。
これを読んだあなた。どうか真相を暴いてください。それだけが私の望みです。
前原圭一
(No.03へ続く)
最終更新:2011年11月04日 02:48