ネイルケアの一幕

「いいお湯でしたー」
湯上りのユマさんの髪の水気をタオルでやさしく取る。
「わー、ユマさん髪の毛さらさら。綺麗ですねー」
「にゃー。あ、ありがとうございますー」
「ふふ、何か気を使ってるんですか?」
「えーとえーと。特別なことはそんなにしてない…と思うんですけど。
きれいになりますようにーて念をこめつつ?」
首を傾げるユマさん。
タオルドライした後でドライヤー用意。
ユマさんの髪から結構距離を開けて、ドライヤーで乾かしていく。
「なるほどー。やっぱり気持ちは大切ですねー」
「玖日さんのもきれいですよっ」
「わ、ありがとうございますー」
ちょっと照れる。
「ひとにしてもらうの新鮮ですー」
ユマさんがえへーと嬉しそうに笑う。
「たまにはいいかなーと思いまして」
丁寧に、綺麗になりますようにーと気持ちをこめてすみずみまで乾かす。
「誰かにやってもらうのって結構自分は幸せだったりするので。
あとだれかにやるのも、ですかねー」
「ですねっ。ですよねっ」
「ですです。それで喜んでもらえるともっと幸せです。
髪いじらせてくださって、ありがとうございます」
「いえいえこちらこそーです」
ふたりでにこにこ。
「はい、気になるところとかありますか?」
「んー……おおー。さらさらです。ばっちりですっ」
「わ、よかったー」
「えへへ。玖日さんはなんていうか、ていねいですねー」
「そうでしょうか?」
「お茶のときもそうだし、見ててなんかこう、気持ちいい?です」
「気持ちいいですか。そう思ってもらえるとうれしいです。ありがとうございます」
「きっと気持ちが丁寧なんだとおもいました」
ほめられて私はちょっと照れる。
「喜んでもらえるといいな、と思いながらやるように心がけてはいますー」
「きっと伝わりますっ……は。そうだ。明日でーとですよねっ。
よかったらお礼にネイルケアなどいかがでしょう」
「ですね、ちょっとでいいから伝わってくれるといいなー」
「デート……ネイルケアですかー。お願いしてもいいですか?」
「はいー。あ、玖日さんのお茶に比べて、ぜんぜん本格的ではないのですがっ」
「そんなことはないと思います!」
言いながらハンドクリーム取り出しすユマさん。
「アロマオイルだとあわなかったりとかもあるので、ハンドクリームでやりますねー」
そっと私も手を差し出す。
「では、よろしくお願いしますー」
「拝借いたしますっ……おー。つめきれいですー。
もしかして普段からお手入れ済みですかー」
「いえー、ぜんぜんほったらかしで見せるのが申し訳ないくらいです」
「いやわたしもそんな、日頃からマメにやったりとかではないですから!
ばんばん見せてください」
「や、ユマさんは手もつめも綺麗ですてきだと思います。
もちろん全部かわいくて素敵なのですがっ」
「おおおお(照れてもじもじします)すてきなおねーさんにすてきと
いわれてしまった!うれしいです」
「とってもすてきですよー」
つめの生え際とかももまれていく。気持ちいい。
「痛かったら言ってくださいねー」
「いえ、とっても気持ちいいですー、こう痛気持い言いというか」
「ちなみにこれはマッサージであってせくはらではないことを主張しておきます)」
「はいー……はう、きもちいいです……」
「よかったですー。あ。そういえば、明日のおようふくって決まってます?」
「ええ、今日時緒さんに見立てていただきましたー…よろしかったら後で見ます?」
玖日:(気持ちよさにひたりつつ)
「わーいぜひぜひ!」
「すごくかわいらしいのを見立てていただきましたー」
「じゃあ、うすーく塗るくらいの方がいいですかね!
ちょっと色味を足すくらいのつもりでっ」
「おおー、おねがいします」
「ぴんくーぴんくー♪あんまり白っぽいのもあれだし、でも赤すぎるのもちがうしー」
ユマさんはいろいろ色を見比べて、ひとつのビンを取り出す。
「じゃん。これけっこう濃く見えるんですが、透明なので塗るとうっすら色がつく感じなのですよー」
「おー、それはすてきです」
まずベースコートから塗ってもらう。
「うまくネイルって塗れないんですよねー……うっすら色がつく感じになると、
どうしてもむらになってしまって……」
「あ、できるだけ一気に塗っちゃうといいですよー。
最近のは乾くの早いから、むらもできやすいですよね」
「そうなのです、なのでなかなか綺麗に仕上がらなくてー」
「わたしも利き手のはよくはみだします…っ。そしてはみだしには綿棒が便利です」
「なるほどー、勉強になります」
「そしてわたし、実は重ね塗りするほうが苦手なのです。たいてい失敗します…(←」
「そうなのですかー。奥が深いですね…」
「玖日さんのつめ、表面も最初からつるつるだしすごくきれいです」
「ありがとうございます」
量を調整して爪先→中央→両端と、ユマさんは鮮やかにマニュキュアを塗っていく。
どんどん綺麗に塗られるのを見つめつつ、ふと聞いてみる。
「…ユマさんは、デートの前とかやっぱり緊張しますか?」
「会う前はいっつもほんとにどきどきしますー。
あんまり会えないから、ほんとにこう、楽しみだったり緊張だったりで」
「そう、ですよね…」。
「……会ってからは会ってからでどきどきしますけどね!」
「やっぱりそうですよねー…すごくどきどきします」
「ねー。……むこうもしてくれてるんですかね><」
「きっと、してくれてると思います…してくれてるといいな」


好きな人のことを考えたときの不安とか、のろけとか聞いたり、聞いてもらったり。
そうするうちにどんどん時間が過ぎていった。


(文協力:ヤガミ・ユマ)


最終更新:2009年05月13日 23:37