559 名前:
兔の歌[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 15:37:00.69 ID:ajJuM7Rw0
「使い方の分らないゲーム機を渡されたら貴女はどうする?」
私の質問に、女子生徒はちょっと困ったように眉を潜めてしまう。
なんで、こんな事を質問したのかはわからない。
しばらくの間、私とその女子生徒の間には沈黙の時間が流れる。
そして、タイムリミット。
屋上と校内を隔てる一枚の扉が、開き此方を見て小さく手を振るう女子生徒が一人。
すると、私の隣に座っていた女子生徒は、スッと立ち上がり。
その手を振るう女子生徒の方へと、一歩歩んだ後此方をくるりと振り向いた。
「……使い方が分らなければ……使い方を知っている人に聞けばいいと思います……」
560 名前:兔の歌[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 15:38:09.61 ID:ajJuM7Rw0
そして、今度こそその女子生徒は、踵を返し歩いていく。
「貴女の名前を教えてくれないかな?」
やや、大きめの声で私は歩いていく女子生徒に告げると女子生徒は、顔だけ此方に向け
「……岩崎……岩崎みなみです……」
「ありがとうね。岩崎さん」
そして、今度こそ岩崎さんは、歩いていった。
屋上から私以外が居なくなり、ふと気がつけば冷たかった缶ジュースがちょっと温くなっていた。
私は、その缶ジュースの開け一口飲む……
温いといっても、まだまだ冷たく……喉を潤すには十分な冷たさだった。
「知ってる人って誰かいたかな……」
そう呟いて、また私は缶ジュースを一口飲んだ。
827 名前:兔の歌[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 21:01:25.05 ID:BOE6GXlJ0
使い方が分らなければ
使い方を知っている人に聞けばいい。
確かにその通りなのだけど……
果たして、自由を『使っている』と認識している存在は居るのだろうか?
ゲームとは違う『形』として存在しないモノ。
何人が、自由を得ているのだと分っているのか。
いや、そもそも自由を使うという表現自体がおかしいのかもしれない。
自由は、与えられるものじゃなく己の手で得るモノだと……何処かの誰かが言っていた気がする。
でも……私は何かに束縛されている訳ではない―――――情報統合思念体は貴女を束縛しない。
故に……私の手で自由を手にいれたと言う訳ではない。
情報統合思念体に反逆を企てる事も、無理な話で……
そもそも、人間である私が、情報統合思念体に反逆を企てて何になるのか……
赤ん坊に、小説の本を渡して赤ん坊はその小説をどうするか?
あぁ……駄目だ。思考がぐるぐる回っておかしくなりそう。
「おんやぁ~ 朝倉さんじゃないか」
不意に声をかけられ声の主の方を見る。
小さい。まぁ一言で言い表せばまさにソレだ。
「今、失礼な事を考えなかったかい?」
「気のせいよ。泉さん」
そう、声の主はクラスメイトの泉こなた。
物語の中心に居る人物の一人。
俗にオタクと呼ばれる存在らしいが……その概念が分らない。
不可思議な人で、私との繋がりはほぼ無いのだが……
829 名前:兔の歌[sage] 投稿日:2007/07/22(日) 21:02:38.97 ID:BOE6GXlJ0
「何か用かしら? 泉さん?」
「ん? 別に用は無いヨ。買い物帰りに公園でポツンと
一人ベンチに座ってるクラスメイトがいたから話かけただけだよ」
そういいながら、泉さんは紙袋からコンプ○ィークと書かれた本を私に一度見せた後直ぐに紙袋にしまう。
そして、少々おばさん臭い「どっこいしょー」なんて、言いながら私の隣に腰掛けた。
「何か悩み事かな? かな?」
「………」
「いやいや、無理には聞かないヨ? 誰にでも人に明かせない悩み事ってあるもんだヨ」
何処か、大人びた口調で私にそう言う泉さん。
すると、紙袋とは別のコンビニ袋から紙パックジュースを一つ取り出し私に、ほいっと軽い声と共に手渡される。
紙パックジュースには「濃厚ゲルルンジュース」と、訳の分らない名前が書いてある。
「ためしに買ってみたんだ。遠慮なく飲んで」
そう言いながら、泉さんは「カフェオレ」と書かれた普通の紙パックジュースを飲み始める。
……飲めない。これ本当にジュース? 幾らストローで吸い込んでも中身が出てこない。
「あ、やっぱりそうなったんだ」
にんまりと私を見ながらそう言う泉さん。確信犯らしい。
「いやいや、珍しいモノが見れて眼福眼福。それね……中で固形状になってるから
手で、揉まないとダメなんだよ。いやーそこまで作品に忠実だと思わなかったヨ」
最終更新:2007年07月25日 01:13