朝日が差し込む王室のなか,玉座に座るエドガーは,考えていた.そのフィガロ城は玉座の間・王室ではエドガー以外にも,十数名の彼の仲間たちが,皆,あるひとつのことを考えていた.王室の壁に背中を預けていたロックがやがて沈黙を破り,言った.
「なあ,みんな.もう準備はできているんだろ?」
それにつられ,セリスはこう答える.
「そうみたいね.みんな,ちゃんと『おめかし』してるし,手には彼女に渡すプレゼント箱を持っているし.問題は,『どこで』やるのかよね?エドガー」
そう問いかけられ,エドガーは言った.
「去年は私のこの城で行なったが・・・.今年は・・・」
と言い渋る彼を見かねて,セッツァーがエドガーの隣の玉座にドカッと座り,こう言った.
「なんだ,いつものあんたらしくねぇな.要するに,パーティーをどこでやるか迷っているんだろ?それなら,いい案がある」
そこで,リルムが会話に入ってくる.
「キズモノ!一体どこでやるっていうの?去年は色男のこの城でやったし,一昨年はモブリズでやったんだよ?他にみんなが集まれる場所なんて・・・.あ!」
セッツァーは悔しそうに,
「ヘッ,お絵描き先生に先に分かられるとは,俺もおちたもんだな」
とタバコをふかした.リルムを副流煙から守りたいストラゴスは,その場に歩み寄り,
「なんだかハッキリせんのう.結局どこでパーティーをやる方向になったんじゃ?」
と言った.リルムは,
「キズモノ!ファルコンのなかでしょ?」
と言うと,セッツァーは指パッチンをして,
「ビンゴだ」
と言った.

エドガーは玉座から立ち上がり,
「なるほど,ファルコンの中か・・・.空を飛びながらのパーティーも悪くないな.我ながら,思いつかなかったよ」
と,手を広げ,頭を左右に振った.そこで,カイエンが言うことには,
「しかし,安全なのでしょうな?拙者も大分機械には詳しくなったとはいえ,未だに信用に足りぬところがいくつか・・・」
ガウがその言葉を遮り,
「ござる!空見れてみんな嬉しい.だから彼女もきっと嬉しい」
と言った.
それに合わせてマッシュが,
「ああ,そうだぜ,きっと,空を見ながらのパーティは爽快だぜ.安全面は,世界最速の男に全部任せておけばいい」
と言いながら,セッツァーの肩に手を乗せた.エドガーは,
「よし.では今夜,パーティーを行なう.ロックとセリスは先にモブリズへ行って,彼女に今決めたことを伝えに行っててくれ.あとのみんなは,全力でファルコンの装飾とパーティの準備だ!」
と大きな声で言うと,他の皆は,キリッとした笑顔でそれに応えたのだった.そして時間は過ぎ・・・.あっという間に夜になった.

モブリズで様々な話をしながら,ロック,セリス,そして彼女・・・ティナは,まったり過ごしていた.そこで,ロックは不意に懐中時計を取り出し,
「やべぇ!もうすぐファルコンが来る時間だぜ!ティナ,準備はいいか?」
ロックにそう言われたティナは,
「え,えぇ,大丈夫よ」
と答えた.ロックがファルコンの方へ走っていく最中,ティナはふと思ったことをセリスに打ち明けた.
「そう言えば・・・セリス.今年も,私に作ってくれるカクテルって・・・,あのやつ?」
セリスは答える.
「ええ,多分そうね.『あのやつ』だと思うわ.さあ,私たちも行きましょう?今年は夜空を見ながら,地上からは各地であなたの誕生日を祝う夜景が見られるようにエドガーが特別に手配をしたんだって.すごいと思わない?」
「確かに,それはびっくりね・・・」

そして二人がファルコンに入ると,セリスはどこかへ姿を隠し,真っ暗だった艇内にパッと明かりが灯されたかと思うと,「スピナッチ・ラグ」が流れ始め,ファルコンが動き出した.エドガーがティナの手を取り,専用の椅子へと誘導させた.それに次いでロックがカクテル,「ブランデーフィックス」を丁寧に持って来ると,深々と礼をした.ティナの生誕を祝うパーティはこれから盛り上がっていく.今宵,ファルコンではどんなパーティーが行なわれるというのだろうか.

私は,皆に愛されるティナが大好きでたまりません.






最終更新:2012年10月21日 10:38