1.トレハン・ロックとセリスI
私たちはいつも一緒だ.何をするにしても,常に一緒.私の生涯を捧げた最愛の彼に,ある日,こんなことを言われた.
「俺と一緒に,また世界を旅してみないか?」と.
そうして私はルーンナイト・セリスから,トレジャーハンター・セリスになって,その日から彼・・・ロックと,世界を旅をすることになった.常勝将軍でもなければ,世界を救う勇士でもない,一端の冒険家に連れられて私は,あの日から旅立ったんだ・・・!自分の意志で.
「心地良い風の匂いがするな.今日も良い旅が出来そうだ」
その彼・ロックが,私のすぐ横でそう言った.
「待って,ロック.私たち,旅の準備が全然出来てないじゃない.これからどうするつもり?」
私がそう訊くと,彼はこう返した.
「この森を抜けると,大きな港町に着く.旅の準備は,そこですればいいさ」
世界には,まだまだ私の知らない都市があると言うのね.でもロック?そんな,知らない場所に行って一体どんなものをみつけようと言うの?トレハン駆け出しの私には,全然想像つかないわ・・・.
2.あの日から
…思い返せば・・・.あの日から,「私」という人格が変わりつつあることはうすうす気が付いていた.
この世界に緑を取り戻せたあの日から数日間,他の皆には内緒で私たち・・・私とロック・・・は,行方をくらまし,ロックの故郷の村で,永遠の愛を誓い合った.その日の翌日だった.ロックから「俺と一緒に,また世界を旅してみないか?」と言われたのは.
私とロックは,互いに守り守られる関係にいた.だから,私はまだナイトでも良かったんだけど,でもそれは,悪の脅威がいた頃の話.魔法の力が消え去った現在,その目的は終わったんだ.じゃあどんな関係になったかって?勿論,「互いに愛し愛される関係」よ.
ロックと一緒のトレジャーハンターになって,新しい自分をみつけようと精一杯頑張っている積りの私だけれど・・・.未だ私の納得のいくトレジャーまでもみつからないの.同じことをロックにも言ってみたんだけれど,「自分で決めた道だろ?そういうのは自分で何とかみつけるもんだぜ?」って怒られちゃった・・・.ごめんちゃーい・・・.
3.トレハン・ロックとセリスII
森を抜けると,ロックが言っていた通り,大きな港町があった.遠くからでも,港に停泊している船が何隻も見えるくらいの,本当に大きな港町だ.港町まで歩いていく間,私たちは色々なことを話した.その港町からどれくらい船が出ているかという旅に関係する話から,宿屋のベッドはどうなっているのかということまで,本当に話題が色々だった.
港町の宿屋に着いた私たちは,宿屋の受付の人に,どのお部屋にされますか,と訊かれた.ロックは,迷いなくダブルの部屋を選んだ.お金がちょっとかかるけど,そんなことは気にしない気にしない.私たちの間には,這い入るものなど何もないのだ.そうよね?ロック.
「ああ,そうだな.俺たちはいつも一緒だからな.ところでセリス」
「なに?」
「町を散歩がてら,色々と情報収集して来ないか?」
「ええ.あなたと一緒なら,私,なんだってするわ」
こうして,私たちは宿屋を出て港町へと繰り出した.
ロック・・・!私,今,とても幸せよ.あなたと一緒にいるだけで,こんなにも幸せを感じるなんて・・・.まるで夢みたい・・・!
4.私のトレジャー
その港町は,とても活気が良く,潮風がとても気持ちが良かった.私とロックは,二人でフリーマーケットに訪れていた.彼は,私にアクアマリンのブローチを買ってくれた.私は,どうしてアクアマリン?,と訊くと,ロックは穏やかな口調でこう答えた.
「今日だろ?お前の誕生日.3月10日は・・・」
私は一度絶句した.
自分の誕生日を忘れるなんて―――
ロックは続ける.
「それにほら,3月の誕生石であるアクアマリンは永遠の若さと魅力を象徴するって言うじゃないか」
私は言う.
「ロック,私・・・,自分の誕生日,忘れちゃってた.ちょっと前までは,すごく大切にして,忘れないようにしていたのにね.・・・忘れてしまったのはきっと・・・あなたが私の生活を夢中にさせてくれたおかげね.愛してるわ,ロック.やっと見つけたわ.私のトレジャー」
ロックは,嬉しそうになって,聞いてきた.
「それは良いな.良かったら聞かせてもらえないか?」
私は答える.沢山の,私なりの愛を込めて.
「・・・それは,あなたよ,ロック.あなたと一緒にいる時間もそう・・・」
彼は私を抱きしめ,次の瞬間,口づけを交わした.・・・交わしている最中,私はアクアマリンのブローチを握りしめながら,願っていた.
「この愛が永遠に続きますように」
と.
最終更新:2013年03月10日 18:49