1.憧れのチョコボスーツ


ある日の獣ヶ原にて・・・.

「がう!がうがう!リルム,まて~い」
「野生児なんかには捕まらないんだからね!」
「チョコボ,まて~い」
「わしもそんな簡単には捕まらんゾイ!」
日が一番高く上りきった後,ガウ,リルム,そしてストラゴスは獣ヶ原にて鬼ごっこをしていた.リルムとストラゴスは,チョコボスーツを着て,鬼であるガウから逃げていたのだ.

この世界に緑を取り戻せて,早数ヶ月・・・.今日は,獣ヶ原で皆集まって再会する,そんな約束の日だった.そんな日も,午後を迎えていた.

他の皆より早く集まった三人を,遠くからジッと見ている男がいた.その男にいち早く気付いたストラゴスは,彼に歩み寄り,話しかける.
「のう,ゴゴ.お前さんも来てたのか」
しかし彼は,
「のう,ゴゴ.お前さんも来てたのか」
と返した.ストラゴスは,また例のものまねか,と思いゴゴの隣に座った.
「なぁ,ゴゴよ.お前さん・・・実は,自分も鬼ごっこに混ぜて欲しいと思っとるんじゃろ?ほれ,チョコボスーツなら貸すゾイ」
ゴゴは即答する.
「別にそんなものがなくとも鬼ごっこなどできるだろう」

ストラゴスは,
「なんじゃ,連れんのォ」
と,また鬼ごっこに戻って行った.


2.耐えきれるか?


「はう!ござるだー!」
「あ,キンニク男!久しぶりー」
ガウとリルムが,それぞれカイエンとマッシュの姿を認め,呼ぶと,ゴゴはそれまで少し俯いていた顔を上げた.彼は立ち上がり,大変珍しいことに自分から人の輪のなかへと入って行った.そして開口一番,
「久しぶりに俺にものまねをさせてくれないか?」
と言ったのだった.マッシュは,
「へぇ・・・,珍しいな.ゴゴが自分からものを言うなんて.何かあったのかい?」
しかし,ゴゴは黙ったままだ.
「どのようなものまねをするのでござるか?」
カイエンがそう問うと,ゴゴは言う.
「ズバリ・・・,お前たちの・・・技だ!」
と.彼は続ける.
「初めてお前たちに会った時,なんてものまねのし甲斐があるやつらなんだと思ったのでござるよ.俺は,お前たちの技を磨き,そして今日の日にやっと完成した!」

…一瞬の沈黙の後,マッシュが言った.
「ゴゴ・・・,どうしてお前は,そんなに他人のものまねばかりしたがるんだ・・・?一見,すごく個性的に見えるのに・・・」
「はーい!リルムもキンニク男に賛成!」
しかし,ゴゴは何も答えないままだった・・・.


3.ポーカーフェイスな俺


また訪れた沈黙の後,リルムが
「あっ,見て見て!ファルコン号!」
と,空の一点を指差した.これで場の空気はいくらか和んだようだった.やがてファルコン号が着陸し,エドガーとロック,そしてセッツァーが昇降口から出てきた.エドガーはマッシュと再会の喜びを分かち合っていたし,ロックはガウとリルムのことをからかっていた.一方,セッツァーはというと・・・.

「なに?今度ファルコン号の操縦をさせてくれ,だと?・・・冗談にも程があるな.ゴゴよ.お前はそこまで他のヤツのものまねをしたいって言うのか?」
ゴゴは答える.
「ああ.それでこそものまね士だからな」
その会話に,ロックとエドガーが入って来た.
「この集まりを計画したのは,ひょっとして・・・お前か?ゴゴ」
「レディたちがもうすぐファルコンから降りて来る.皆,ゴゴを問い詰めるのは無しにしようぜ.レディたちにそんな見苦しい場面を見せたくないし,それにひょっとしたら彼からサプライズがあるのかもしれないし」
エドガーがそう言うと,その場にいた全員が,ゴゴの方を見た.この時,彼はどんな表情をしていたのだろう?


4.ミステリーワルツ


「それで?最近ロックとはうまくいってるの?セリス」
「ええ,ティナ.彼と同じ,トレジャーハンターになったくらいだもの」
「素敵な話ね」

獣ヶ原に敷かれたレジャーシートにて,ティナとセリスが紅茶を飲みながら喋っていた.そこへ,何気無しに一人の声が加わる.

「ティナこそ,モブリズの子どもたちを世話してばかり?」
その声にティナは反応する.
「え,えぇ,そうよ,セリス.私はずっとこのままでいいかなぁって・・・」
そこで,セリスが言う.
「へ?私,今なんか言った?」
ティナが返した.
「え?モブリズの子どもたちを・・・って・・・」
「私,そんなこと言ってないわよ?」
ティナは,一瞬ビクッとして,セリスに抱きついた.
「じゃあ誰が・・・?」
ティナがそう言い,続けた.
「セリス.あなた,本当にいつでも頼りになるわね.ロックが羨ましくなってくるわ」
と.そこで,セリスはティナに対し,
「な,なにを言っているのよ,ティナ・・・!」
と言ったが,ティナは,顔を横にふるふる,と振り,
「私,そんなこと言ってないわ」
と返したのだった・・・.


5.ブリリアントなゴゴ


思えば,独りの時は長かった・・・.今,獣ヶ原に集まっている,愛すべきあいつら・・・は皆,なんて個性的なやつらばかりなのだろう.独りで洞窟に閉じ篭っていた時の俺を,遥かにブリリアントなものにしてくれた.なんてものまねのし甲斐があるのだろう・・・.

そもそも,ものまねというのは,独りだけでは成り立たない.俺じゃない誰かが,必ず必要なのだ.誰かがいないと成り立たない「ものまね」なのに,長らく俺は独りでいた・・・ということか.ふふっ,我ながら矛盾したことをやってしまったな.

あいつらがいるから,今の俺がいるんだ.もう独りでいることは無しだぜ?

しかし・・・俺も,ものまね道を歩んで何年にもなるが,俺自身の「個性」は何処に行ったんだろうな?さっきマッシュが言った通り,こんな俺にも個性があるのなら・・・.俺は・・・.


その時,ゴゴは,自身の頭部をすっぽり隠す被りものを脱ぎ,素顔をさらして一旦離れた仲間たちの方へ歩いて行った.






最終更新:2013年09月19日 22:14