0.プロローグ


言葉の男ウェルは,酒場「叡知バー」で絵画の女オフィーリアと出会い,知り合う.
詩歌の女サピエンタがシャンソンを歌う時,やがて数学の男フーリエは,変換に成功する.

「やはりだ」
フーリエは立ち上がり,声高々に宣言する.
「世界は粒であり波である」
ウェルとオフィーリアは,その時,世界を変える「変換」に気付く.
「ああ・・・.僕たちは新たな世界を言葉として表現しなくてはいけなくなったね」
「そうね,私も,絵を描くことの意味をまた問いただせなければいけなくなったわ」
シャンソンはまだ続く.

今宵も,美しいセッションを奏でよう.


1.咲き乱れるブロッサム


希望は潰えていなかった.
ひとびとは春の兆しを求めていた.

桃色の花びらが,宙を舞う.

"ひとびとは言葉を選ばなければいけない"
その「ひとびと」とは,ヒトであり,神であった.

アテーナイの諸人は,祈り続けていた.
「背後に眠り続ける大山塊『フラッペンシャトー』の呪いから,抜け出したい」
と.

祈りを受けた天の諸人によって,言葉使いがやってきた.
春がやってきたのである.

言葉使いは,亜大陸ディダスカリコンに,言葉の大河をもたらした.
「私のかたわれは何処に行った?
今こそ,夏をこえ,秋をこえ,冬をこえ,春を迎えよう!」

その男は,アテーナイの町近郊に降り立ち,「フラッペンシャトー」へ向かった.

桜吹雪が彼の後ろ側を湛えていた.

(続く)






最終更新:2017年05月09日 17:48