―Premonition―
道化によって倒されたフーリエ・・・,この14番目の戦いで鍵を握る人物.彼はこの14番目の
戦いや,何時とも言い難い真の次元の狭間で,何回も,違ったかたちで現われて来ますね.14
番目の戦いに召喚された私,時を操る魔女・アルティミシアが,フーリエの出現場面を正しい
時系列順に並べてみせよう!
全ての始まりは,フーリエレポートに書かれてある通り,彼がタイムアタックという数遊びを
発見したところから・・・.彼の偉業は,異世界の者たちにまで知られ,結局,彼は異世界に
連れて来られることになります.その異世界こそが,この私たちがいる,最初の幻想が始まる
ずっと昔の世界・・・.今,私たち―私と暗闇の雲とクジャ―が存在するのは,ちょうど第2
次テラホーミング作戦が終結した時点・・・.魔導アーマー・オメガや,幻獣たちが壊され,
殺され,テラという国だけではなく,ガイアさえも消え去った時のなかで・・・「境界の力」
により大暴走したフーリエは,この時に一度この世界から消息を絶っていますね.
フーリエの行方は何処へ?
姿を消したフーリエを捜すために,彼の母,セーラと,彼の父,シドがそれぞれ違った方法で
すが手段は同じの「幻想跳躍」を行って数多の幻想へ旅立った・・・という話でしたね.一方,
肝心のフーリエの消息ですが,この真相を知るために私たちが召喚されたと言っても過言では
ないでしょう.四番目の幻想の探求者,ゴルベーザが紐解いた事実・・・すなわち,フーリエ
が,滅んだはずのガイアとテラを生み出し,またもや二国の間に起こった戦争を,丸く治めて
しまったということ・・・.此処の部分が,今正に明らかになろうとしているのです.全ては
ジャンクション・マシーン・エルオーネの賜物・・・.今こそ,最初の幻想における「魔女」
にとりついて我が役目を果たそうではないか!
最初の幻想が始まるまでのずっと昔の世界にも魔女がいようとは・・・思いもよらなかった….
―The Last Dance―
「境界の力」暴走後のフーリエの行方は何処へ?
フーリエの行方を探る為にセーラとシドは幻想跳躍していったわけですが,これは,なんて哀
れなことでしょうか,カオスレポートに書いてある通り,フーリエは亡くなっていたことにな
っていたのでしたね.最初の幻想のパラレルワールドである「真の次元の狭間」を作り出す,
という荒業もフーリエがやってのけたことでした.
あら,私がこんなことを言っていたら,ますます観測者であるあなた方を混乱させてしまいま
すね.ではいいでしょう,私が最初の幻想における魔女に乗り移って得た事実・・・といいま
すか,フーリエに関する出来事の順番を,時系列順にまとめてみました.
1.
「境界の力」が発動し,第2次テラホーミング作戦終結後に姿を消す
2.
最初の幻想のパラレルワールド(真の次元の狭間,と呼ばれている)を作って,テラとガイアの
戦争を丸く治める
3.
イミテーションのセーラとシドを造り,四番目の幻想の探求者ゴルベーザに旅をさせる
4.
「最終決戦」の為,邦畿の白砂宮に砂時計を,
光の世界に4つのクリスタルを造り,置いて,脳だけの姿になる
5.
闇の世界の深奥で,ディリクレに脳手術を受ける
6.
自分のイミテーションを造り,パンデモニウム城から,
「本物」のセーラとシドと一緒に幻想跳躍させる
7.
アンセーヌを嫁にし,真の次元の狭間の「テラ」で子どもをもうけ,
三人家族で平和に暮らしている
以上が,私が調べ上げた事実です.この中にはクジャやケフカによって明らかになった部分も
入っていますね.これで私の役目も終わり・・・.さっさと自分の城へ帰らせてもらいます.
真・幻想跳躍アルテマでアルティミシアは,八番目の幻想へ帰っていった・・・.
―The Legendary Beast―
最初の幻想が始まる前の,太古の時代・・・.世界の殆どの場所で,原住民による小規模な
集落しかまだ形成されていなかった時代のこと.その世界は北と南に二分されていて,北大
陸には二つ,南亜大陸には一つの文明が生まれ始めていた.
北大陸・・・ガイアと呼ばれる国で生まれたのが自然科学を基調とした科学文明,テラとい
う国で生まれたのが疑似魔法を基調とした魔導文明,そして南亜大陸・・・ロンカという国
で生まれたのが神秘術を基調とした秘術文明じゃった.北の二つの文明は,生まれてからし
ばらくすると急速に発展していったが,ロンカで生まれた秘術文明はゆっくりと成長してい
ったのじゃった・・・
「ねぇねぇ,マトーヤ,もっと昔話を続けてよ!」
ロンカ王朝第一王子,ザイネン殿が,わしに昔話をせがむ.わし,ロンカ王朝宮廷魔導士マ
トーヤは,その日も殿下に昔話の命を国王陛下から受けていた.
「ザイネン王子,ここからは少しばかり小難しい話になりますゆえ,すぐに飽きられてしま
うやもしれませぬ」
「それでもいいから!もっと続きを聞かせてよ!」
北大陸の内,東部で科学文明を発展させたのがガイア国,西部で魔導文明を発展させたのが
テラ国じゃった.中でもガイアの文明発達の速度は目まぐるしく速いものであった.ガイア
アカデミーという学術機関が設置され,更には自衛意思が生まれたのか,ガイア国軍研究所
という施設が出来たのだ.一方,テラ国は魔導文明を更に発達させるために,魔導研究所を
建てた.そこでは,魔物を使役するための術を研究していたようだ.ガイアとテラ,二つの
国はライバル意識を持っていたのか,次々にそれぞれの技術を高いレベルなものにしていっ
たという.
「それでそれで?」
ザイネン王子が更にわしに昔話をせがむ.だが,もうすぐで今日の歴史講義は終わりに近付
いていた.
「殿下.もうすぐお時間がやって参ります.残念ですが,今日はここまでです」
「はぁ~い」
王室を出た時,わしは何者かからの思念が送られてきているのを感じた.わしはその何者が
誰なのかを,逆探知することにした.
"お前は・・・テラホーミング作戦のあとに失踪したフーリエを捜す為・・・旅に出るのです"
テラホーミング作戦?フーリエ?何のこっちゃ・・・.この声をどう捉えるべきか迷ったわ
しは,いっぺん故郷,テラに帰ることにした.これを啓示ととるかもしくは・・・.わしは,
ホウキに乗って,幻獣を使役する民が住まう国,テラへとやってきた.
―Maybe I'm a Lion―
何者かからの思念が,わしの頭の中に送られて来るのを感じた.そこでわし,マトーヤは,わ
しの故郷であるテラへと一時帰省をすることにした.何故故郷かというと,それは言うまでも
ない,魔導文明が発達したかの国で,思念の送り主を突き止める為だ.
テラへ降り立ったわしは,魔導研究所へと赴いた.魔導研究所は,わしがロンカ王朝の宮廷魔
導士として招かれる前に在籍していた場所でもある.だから,わしはこの研究所のOGとなるわ
けだ.当然,後輩もいるわけで,研究所に着くや否や,彼らに歓迎された.懐かしい顔ぶれが
目に付くようだった.
しかし,いつまでも懐かしんではいられなかった.わしの頭の中に残っている残留思念をトレ
ースするべく,魔導具・ホログラムを用い,その思念をわしの脳に焼き付けた主を現すのだ.
球形状をしたホログラムは,わしの手から離れ,やがてその主を映し出したのだった.ところ
が,映し出したのは良かったのだが,ホログラムのデバイスであるタッチキーパネルには,何
も表示されなかった.
そんなわしのトレースぶりを見ていたのか,とある研究員が,これは向こうから送られてくる
情報が送信者の手によりシャットダウンされている可能性がありますね,と言った.ホログラ
ムで,姿は見えているのに・・・.どうしようもないやりきれなさがわしを包み,押し潰され
ているかのようだ.しかし,その研究員がキーを操作してゆくと,彼はこう言った.
「こちら側から,シャットダウンに使われた暗号を解読しています.時機にマトーヤ様側から
何かしらの思念を送ることができるでしょう」
と.やがて,その優秀そうな研究員が全てのシャットダウンキーを解くと,わしに良く分から
ない思念を送ってきた者の正体がデバイスのパネルに表示された.
「ハルカミライ ニ ソンザイスル トキノマジョ,アルティミシア
8バンメノゲンソウニミヲオク トキノシハイシャ」
と.またよく分からぬ言葉が出てきた.アルティミシアという時の支配者がわしに思念を送っ
て来たのは分かったが,「8番目の幻想」というのは何だろうか?わしは兎に角思念の送信を
試みた.
"何故わしにその様なことを強いるのだ"
すると,すぐまたわしの頭の中に思念が送られてきた.以下,わしとアルティミシアとの通信
の詳細である.
"お前はフーリエと幻想を同じくする者・・・.更にお前は後の世に「妖魔導士」として畏怖さ
れる存在・・・.それ故に,私は数多の魔導士からお前を選び出したのだ.光栄に思うが良い,
お前は私の意識に「接続」され,後の世に,否,数多の世界に於いて,伝説の「魔女」として
語り継がれることになるのだ・・・!"
"わしの精神に溶け込むつもりか・・・.フーリエとやらを捜して,なんとするつもりか?"
"14番目の戦いにおける唯一の真実を突き止めた勝者となり,更にこの戦いの時間圧縮をして,
未来永劫,私一人しか存在し得ない世界を作ること!"
…アルティミシアの意識がわしの精神を蝕んでゆくのが分かってきた.段々と意識が朦朧とし
てくる・・・.デバイスのパネル画面には,良く分からない図形や数式が表示され,最後には,
アルティミシアの意識が完全にわしの精神を支配するまでに至ろう・・・としたその時だった.
「待て!そんなこと・・・させてたまるものか!」
アルティミシアの意識がわしの精神に完全に溶け込む前に,誰かがホログラムのスイッチを消
した.しかし,「接続」はまだ続いていた.アルティミシアの声のみが聞こえる・・・.
「お前は・・・ケフカによって倒されたフーリエ!どうしてこんなところに・・・まだ幻想が
始まりもしていないのに,どうやってこの世界の今の時点に幻想跳躍してきた?」
「クジャが・・・僕を蘇らせてくれたんだ.そして彼の時空魔導である,真・幻想跳躍アルテ
マで,[いま,ここ]にやって来れた.未来の僕はクジャをテラから遠ざけたけれど,今の僕は
その時の僕じゃない.これでアルティミシア,あんたが時系列順に並べてくれた僕の人生に新
たな項目が加わったわけだ」
わしはフーリエとやらの少年に助けられた・・・のか?
―The Extreme―
「マトーヤと私は時間的にも,空間的にも遥か遠いところで繋がっている.フーリエ,お前は
どうやって私の偉業を止めるつもりですか?」
未来の魔女アルティミシアがわしを通じてフーリエに問いかける.わしは最早,かの魔女とフ
ーリエの「媒体」に過ぎぬのか・・・?
「僕はなんの持ち物を持たずに来たわけじゃないよ.それにアルティミシア,あんたと戦うの
にぴったりなものが,此処魔導研究所に五萬と並んでいるからね!」
フーリエは魔導研究所の中にいる魔物から,一体の魔物を選び,こう叫んだ.
「幻獣王レオー!四番目の幻想でリヴァイアサンにその異名をとられる前に,この私に力を貸
し給え!ジャンクション・レオー!」
レオーとは・・・確か獅子の姿をした幻獣であったな・・・,と思っていると,フーリエの体
が薄やいで見えてきた.わしが,お主,大丈夫か,と問うと,彼はこう言った.
「マトーヤさん,大丈夫だから.あなたはロンカ王朝の為に尽くさないといけない人だ.
でも・・・」
わしは返した.
「確かに,宮廷魔導士じゃからの.でも・・・なんじゃ?」
すると,フーリエは,
「大変失礼なことを言ってしまうけれど,ロンカ王朝は・・・もうすぐ滅びる運命にあります.
マトーヤさん,これはあなたがどんなに努力をしようとも変えようのない未来です.
ごめんなさい」
と言った.わしは始めこそ驚きを隠せずにいたが,フーリエの言うことを信じる他なかったこと
を,後々知ることとなる.
「フーリエよ,わしのことは気にせんでいい.それよりも,どうしてロンカ王朝が滅びるという
ことを知り得たのだ?」
フーリエは黙して,この世界から,アルティミシアがいる世界へ旅立っていった.
… … …
彼が旅立ってしばらく経つと,わしは自分の意識を完全に取り戻した.大分前の話になるが,研
究所の皆は,わしが「接続」を受けた時点で全員ともが魔導研究所から逃げていた.意識を取り
戻した,ということは,遥か未来に在するアルティミシアとフーリエとの何かしらの勝敗が決ま
ったということだろうか?
…思えば不思議なことが立て続けに起こったものだ.わしは,ロンカ王朝―フーリエが「もうす
ぐ滅びる」と口にした国―に戻り,ザイネン王子の宿題を見てやり,彼に歴史の講義をせねばな
らない.滅びる国,か・・・.大きな災いが待ち受けている国へと,わしはホウキで向かった.
ザイネン王子にこれまで語ってきた昔話や,これから話すつもりの昔話も,これからこの世界で
起こることについて興味がお在りなら,それは別個の物語として,わしがお主らに語って見せよ
う.その時まで,さらばだ,観測者,と呼ばれる者たちよ.
最終更新:2012年03月07日 15:55