1.
コーネリア城より北北東へ進んだ後,見えてくるかの洞窟・・・.ひっそりと,まるで人の目から避けるように作られた穴蔵へ,私は一歩踏み入れた.
松明に火を灯し,洞窟の奥へと進んでゆくと,やがて・・・おそらくは人のものであろう,沢山の頭蓋骨が並んでいるのが目にとれた.加えて,私たち人間が話す言葉と同じそれを話すホウキが辺りを歩き回っていた.
…私がこの洞窟に来た目的は,なにも人間の頭骨や人語を話すホウキに会いに来たのではなく,更にその洞窟の奥にいる人物に会いに来たというものなのである.その人物とは,現コーネリア王国が建国されるよりも遥か昔より南亜大陸を見てきた者だとされる.その名はマトーヤ,現在では「魔女」としてこの洞窟に隠居生活をしている人物だが,私が常に持ち歩いている史書によれば,過去においては「妖魔導師」として人々に畏怖されてきた者でもあるらしい.私は,自分が専門とする史学の為に,マトーヤと対話を行いにこの洞窟の中へやって来たのだ.
聞けば,この洞窟の奥にいるマトーヤは相当偏屈な人物だそうだが・・・果たして私の学問の追求に付き合ってくれるのだろうか?更に洞窟の奥へ進んだ私は,つきあたりに出会った.どうしたことだろう,今日は魔女は外出でもしているのだろうか.折角運んだ足が無駄に…と思いかけたその時だった.
「おやおや.久し振りの来客かい.それにしても女の寝床まで足を踏み入れるとは,あんたも色男だねぇ」
と,私が持っている松明よりも数倍明るいランタンを持った人物が背後より現われた.
「これは申し訳なかったです.私は歴史学者,ルカーンと申します.あなたがマトーヤ様,でいいのですね?」
「ああ,いかにも.そ・れ・で,色気づいた若造がわしに何の用さね?」
「あなたがかつて『妖魔導師』だった頃,そしてその過去についてお話を伺いに来たものです」
「わしが帰って来るなり,折角の来客用の部屋でなく,寝床に踏み入れるどころか,人の過去に触れたがいもするとはねぇ・・・.しかしあんたは今,なんと言った?『妖魔導師』だって?その異名を捨てたのは何百年振りだろうねぇ.んーと・・・あんたはまっすぐした性格だ,それに寝床云々の話は水に流すよ.それでもあたし好みの男とは程遠いが・・・かの異名を知っているのなら大した男だよ.よかろう,話してやる.ただし来客用の部屋でだよ,若造」
そして魔女マトーヤは私を来客用の部屋へと導くと,眼鏡をかけ,しわくちゃの手で何か字引きを引きながらこう言ったのだった・・・.
「さてホウキよ.あたしが今言う魔法の言葉で現在の世界地図を描いておくれ.
とくれせ んたぼーび!」
すると,人語を話すホウキは,こう応えた.
「サッサカサーー!とくれせ んたぼーび!サッサカサー!」
かくして岩壁に世界地図が描かれた.そしてマトーヤは私の方を向くと,
「さぁ,若造,聞きたいことはなんだい?」
と話かけてきたので,私は予め用意してあった質問の言葉を引いて,そしてマトーヤに,なるべく穏やかに,かの魔女の機嫌を損ねないように話した.
2.
「では先ず始めに,コーネリア王国建国以前の文明について伺いましょうか.マトーヤさん,あなたが見て来たものを語ってください」
「最初の質問はそれかい.先ずコーネリアという国は,文芸復興ならぬ幻想復興,または幻想ルネッサンスの産物だ.とある災いのせいで滅びてしまった,ある王朝の遺産や文化をまた復活させようとして,夢の都・コーネリアは建国されたんだ」
「成程・・・.その王朝とは,まさしくこの南亜大陸に,確かに存在していたわけですね?」
「あぁ,そうさ.若造,あんたはその王朝について知りたいのであろう?」
「勿論ですとも.それをあなたに語って欲しく,私はやってきたのですから」
「良いぞ・・・,教えてやろう,ロンカ王朝の始まりから終焉を・・・今こそ語ろう.その前に若造,この地図を見てみな.私たちがいるこの世界は・・・大きく三つに分けられる.その内の一つが,この南亜大陸さ」
そう言いながら,マトーヤは先程ホウキたちによって描かれた世界地図の下の部分,まさしく南亜大陸を大きな丸で囲み,非常に丁寧に私に説明してくれた.
「では上の部分・・・北大陸は二つに分かれていたということですね?」
「そうともさ.世界は三つの地域あるいは地方に分かれていたのさ.北の二国と南の一国で,ある時点より文明が勃興した,北大陸の北西の部分・・・そう現在の地図で言えばちょうどオンラクの町に当たるところ・・・」
と言いながら,マトーヤは世界地図の左上を丸で囲み,
「この辺だね,ここは昔,テラという一つの国家じゃが・・・わしの出身地でもあるこの国は,魔導文明が盛んになったところさ.一方,こっち側の・・・」
マトーヤは今度は世界地図の右上を丸で囲み,
「もう一方がガイアという,科学文明が盛んになったところだよ.現在もかの国の末裔が住んでいるらしいね.話を元に戻すが,南亜大陸を昔支配していた国だが,それはロンカ王朝といった.ロンカ王朝は,魔法でもなく科学でもない・・・『秘術』で栄えた国じゃった.現在でもエルフたちがその秘術を伝えているみたいだがね・・・わしはテラからロンカに派遣された宮廷魔導師じゃった」
最後の一言が唐突に言われたので,私は少しびっくりしたが,成程,それでロンカ王朝に詳しいのか,と思った.
私は言った.
「史書によると,マトーヤさん,あなたが妖魔導師になったわけは・・・」
私はその先を続けようと思ったが,マトーヤが突然,そこはわしが話すところじゃ,と言ったので,その先の説明はマトーヤに譲った.
「宮廷魔導師と言ってもねぇ,試験的にわしは選ばれたんじゃ.当時のロンカ秘術王朝は,国の外の世界も知らなければ,という目的の為にわしを王宮に仕えさせるようにしたようじゃ」
「待って下さい,『仕えさせる』とは一体どういうことです?」
私がそう尋ねると,マトーヤは思い出深そうに語り始めたのだった.
「この世界にはかつて,ガイア,テラ,そしてロンカという国々があったわけだけれども,最後のこのロンカという国は,他の二つの国より遥かに大きい国土を誇っていてねぇ・・・.つまりだ,国の力も相当の差があったわけだ.それで,『仕えさせる』ってことだけど・・・,これはテラ国家が下手になって行ったってことなんだ.何故,圧倒的な大きさにロンカはなっていったのか・・・.それは『秘術』について語らなければならないね」
一頻り語ったマトーヤは,椅子からゆっくりと立ち上がり,部屋の奥にある,なんだか良く分からない壺を持って来た.
3.
マトーヤは,部屋の奥から持ってきた壺を,彼女と私の間にある机に,ドン,と置いた.そして彼女が言うことには,
「あんた,わしが持って来たこの壺を怪しいものだと思っているだろ?この壺にはね,『秘術の薬液』が入っているんだよ.だけどこの薬液はあんたが今思っている程,複雑怪奇なものじゃない.これを飲むことで,あるものが見えるようになるのさ」
そう言い終えると,マトーヤは壺から,秘術の薬液・・・をコップに一杯分淹れ,私に差し出した.そしてまた彼女は言う.
「この部屋には,見ての通り,人語を話すホウキが縦横無尽に歩き回っているが・・・,普通のホウキもある.ルカーン,あんたは彼らの区別をどうやってするね?」
マトーヤが私に尋ねてきたので私は思った通りのことを言った.
「人語を話したり,動き回っているかいないか・・・だけでしか判断出来ません」
そうすると,彼女は,
「それはそうだろうね.あるがままの姿を『視る』ことでしか判断出来ないのだから.だけど,この秘薬を飲むと・・・もっとはっきり彼らの区別が出来るようになるんだ.大丈夫,決して胡散臭いものではないから.その秘薬を飲んでみな」
マトーヤに促されるまま,私は恐る恐るこの秘薬を口にした.すると,一瞬だが視界が歪み,そしてまた元の状態に戻った.私は彼女に言われた通り,部屋を歩き回っているホウキを「視て」みた.すると,なんだろうか,かのホウキの輪郭の中に,光る弧状の線が沢山連なっているのが見えた.
「あんたがこのホウキから『視た』ものは,『生命泉』・・・.生きとし生けるものなら誰でも持っている,生体エネルギーの噴出口さ.今度は動いていないホウキを『視て』ご覧」
彼女に言われるがまま私がそうすると,かのホウキにも,輪郭の中に,さっきとは色が違うが,光る弧状の線が沢山連なっているのを見た.
「この動かないホウキは,ただの『もの』.生を宿していないから生命泉は見えぬ.代わりに,ものであるからこそ見えるものがある.それが,今あんたが視ている『物質泉』さ.これは,ものとしての均衡を保つ為に放出される物質波の噴出口だね」
マトーヤはそう言い終えると,ホウキをしばらく見つめていた私に呼びかけ,そしてまた話し始めた.彼女の方を向くと,先程動き回っているホウキと同じ色の弧状の線の連なりがマトーヤの輪郭の中に見て取れた.これは・・・彼女が言ったことに従うと,今私は彼女の中に生命泉を見出しているということが言えるのだろう.
「今の秘術の薬で出来るのはこのくらいだがね,ルカーン.わしはロンカ王朝で盛んだった『秘術』を身に付けてしまったんだよ.だから,わしは魔女でもあり,秘術を使える者でもあるんだ.秘術の基本は,そうやって物質泉と生命泉を視ることだが,これを応用すれば,物質泉と生命泉を直接いじることが出来る.例えばだよ,難病に苦しんでいる人は,生命泉の秩序が乱れて生体エネルギーの出入りがうまく出来ないでいる.この人の生命泉を秩序が乱れたバラバラの状態から,元あった場所に綺麗に配置してやると,なんとその今までその人が苦しんでいた難病を消すことが出来るんだよ.だがよく考えてみな,秘術はその逆も出来る.全く,使用者にとってはどうにでもなる恐ろしい力だよ.・・・さて,ここまでが『秘術』の説明だ.聞き損ねたことはないかい?」
私が,いいえ,と答えると,マトーヤは早速次に話すべき話題に移った.
「そんなこんなで秘術文明でロンカ王朝がゆっくりと発展していった・・・昔は秘術を乱用しない,徳のある人が沢山いたんだねぇ・・・」
と彼女が感慨深く話し始めたので,私は何も返さずに,ただ聞くだけにした.
「わしがロンカ王朝宮廷魔導師としてロンカに招かれた当時,勿論わしが使えるのは魔法だけだった.秘術なんて,存在は知っていたけど,どんなものかは,さっきまでのあんたと同じく全く知らなかった.始めは,宮廷でもてはやされたさ.かの国にない,魔法を使える者がやって来たんだからね.でも,そこでわしが数々の魔法を使ってみせたのがいけなかったんだろうね.わしは,その当時のロンカ王朝第一王子に気に入られ,その後はかの王子の世話係を国王陛下に命ぜられてね.結局わしはかの王子が成人するまで世話係を続けることになった.王子が成人して,世話係もお終い,と思った時だった.かの王子がわしに求婚しにやって来たんだよ.・・・あ,言っておくけどわしは魔法の力を使う為に,自分の若さを提供してこの老いぼれの身にあるんだからね.だから,わしは思ったさ.こんな老いぼれのどこがいいんだってね.でも,こうも思った.長年世話係を続けると,不思議と愛着が沸いてくるものだよ.わしはかの王子・・・ザイネン王子の求婚に応じた.彼はどう思っていたのか分からないが,わしには魔法を身につける前に溜まっていた情熱が急に沸き上がって来たのか,すぐその場でその情熱を燃やし尽くそうとした.だが,ザイネン王子はすぐには,わしの情熱に応えてくれずにいた.その前に,ロンカ王朝独特な神前の儀というのがあった.その神前の儀だが・・・それはお互いの『眼』を交換し合う,ということだった.あぁ,片眼だけだよ.ザイネン王子は,古から継いできた『秘術の眼』を,わしは,テラの魔法文明を継いできた『魔導の眼』をそれぞれ交換し合った.わしが秘術も使えるのはこれが理由だよ.ほら,近付いて見てご覧.きらきらと水晶のように光っているだろう」
そうしてマトーヤは私に向かって水晶のような眼を見せ付けた.彼女は続ける.
「神前の儀が終わった後は・・・お互いの情熱を爆発させるかの如く愛し合ったさ.ルカーン,お前さんはこういう話は嫌いかい?・・・まぁいいよ,聞いてくれれば.兎も角,結婚した私たちだが,結局わしは王子の子どもを身篭ることなく,時は流れていった.ロンカ王朝はそこまでは平和な国だったよ.・・・ふぅ,ちょっと長話をしてしまったね」
話が途切れたので,私はマトーヤにあることを質問しようとした.
「マトーヤ様,その頃の世界情勢はどうなっていたのですか?」
と,私が気になったところを訊くと,彼女は,
「あんたは本当に真っ直ぐな人だねぇ.その頃の世界情勢だって?わしが次に話をしようと思っていたことを引き出すとは,あんた,インタビュアーの仕事に向いているかもしれないよ.その頃の世界・・・ロンカでは今語った話が全てだが,北の二国間では,これまた物騒な話だが,互いの文明力を競い合うテラとガイアの国で戦争が起こるかもしれないという緊迫状態が続いていてね.兎に角危ない状態だったんだ.一方,ロンカでは現王が謎の伝染病で倒れ,そのまま亡くなってしまった.後継者は勿論ザイネン王子になって,その妻であるわしが妃ということになった.・・・が,その当時の王室やその他貴族たちが,わしが妃ということを快しと思わなかったらしく,彼らはわしに執拗な嫌がらせをしてきたのだったんだ.そのことをわしから聞いたザイネン王は,彼らを宮廷から追放しようとした.しかしロンカ王朝の特権階級にいた者たちは,更にわしを執拗に苛めぬいた.所謂,内部抗争じゃな.結局わしはそれに抵抗する力も無く,心の病を患って一時的にテラへ帰省しようとした.だが,緊迫状態が続いていたテラにどうやって帰れるだろうか?ザイネン王はわしに,帰るな,と指示をし,わしもそれに従おうとした・・・が,今度はそう指示をした王にまで嫌がらせが起き,わしらは苦汁を舐めることになった.そして,ある日のことじゃ.ザイネン王暗殺計画の噂が流れ始め,国家に更なる危機が訪れた.わしの方はというと,心痛が限界突破し,今でも忘れぬ,嵐の日の明け方のこと,わしは妃の身にもかかわらず,馬一頭に乗って王宮を飛び出し,ロンカ王朝を抜け出してしまったんじゃ.心の病は秘術や魔法ではどうこう出来るものじゃない結果じゃな.三日三晩,わしはアルディ平原を北に上り続け,とある洞窟に辿り着いた.そこでまた三日三晩住み,心の病が幾許か楽になった頃,王宮に戻ろうかと考え,馬に乗りアルディ平原を南へ下ろうとした時じゃ,突如地面が揺れ始めたと思うと,アルディ平原が海へ沈もうとしているではないか.わしは次々に地盤が割れ海と化すアルディ平原をとにかく南へ下り,王国へ着いた.しかし・・・」
マトーヤは突然大粒の涙を零し始めたので,大丈夫ですか,と私が彼女の手をとると,彼女は一言,ありがとう,と言って話を続け始めた.
「ロンカ王国は,先王が倒れた原因の謎の伝染病で,国中の皆が死滅していたんじゃ・・・.わしが急いで王宮へ戻ると,ザイネン王が―わしの夫が―虫の息で,わしにこう語り,息を引き取ったのじゃった・・・.『マトーヤ,君が王宮を飛び出していったのを責めるつもりはないよ.ただ,もし二人一緒にいたら,秘術と魔導の力で,この病から民を救えたのかもしれないね・・・.最後に言わせてくれ・・・・・・・・・.君を愛して悪かった・・・・・・・・・済まない・・・』わしは・・・夫・ザイネンの言葉を聞き,悔んだ.自分自身を.わしがもっと強い心を持っていたのならば・・・と」
そう語り終えて,マトーヤは深呼吸をした.
4.
マトーヤが語ってくれたのは,ロンカ王朝滅亡の歴史と,彼女自身の壮絶な過去だった.私は史書と照らし合わせながら,簡単なメモをとっていた.史書にない事実・・・ロンカ滅亡の過程の部分は,特筆すべきものであろう.私はマトーヤが深呼吸を終えるのを待ちながら,次に尋ねることをまとめ挙げた.
やがて,数回の深呼吸を終えて,マトーヤはゆっくりと顔を上げて言った.
「次に話して欲しいことはなんだい?ルカーン」
私はメモを見ながら言った.
「マトーヤ様が先程仰ったことですが・・・現在のアルディの海は,昔は陸地だったのですか?」
「そうさね.ロンカ王国もアルディ平原に存在していたんだ.わしが三日三晩,心の病を鎮める為に使った洞窟は,正しく此処さ.そう,アルディ平原は王国と共に海に沈んでしまったんじゃ・・・」
「それで・・・マトーヤ様はどうされたのですか?」
「わしは・・・兎に角自分が許せなかった.わしが国を離れたせいで王国は滅んだに等しいと思った.わしは自責の念から,過去に在った国と似たものを作り上げようと思った.その国の名は,コーネリア・・・.今現在,存在する国じゃな・・・」
「なるほど・・・,コーネリアは実はマトーヤ様が作られたものだと?」
「いやぁ,わしはただ,この身に宿る秘術と魔法の力を用いて,現コーネリアの周辺におった原住民たちを喚んだだけさね.国作りは彼らがやってのけたことさ」
「しかし,コーネリアが『夢の都』と呼ばれる所以は・・・」
「へぇ,コーネリアはそんな風に呼ばれているのかい」
「マトーヤ様,あなたはただ原住民を喚んだだけではないはずです.そうでないと,あの様な秩序ある国には育たないはず・・・」
マトーヤは,しばらく沈黙した後,こう答えた.
「聞きたいかい,わしがコーネリアでなく,何故こんなところで隠居生活をしているのか」
私は勿論,はい,と答えた.
「わしは秘術と魔法の力を合わせて,『業魔』というものを作った・・・.業魔・・・始めの内は,人々は業魔にとり付かれたように集まってきたさ.業魔とは,人の造りし魔物のことじゃ.次々に業魔によって造られた魔物を狩ろうと,南亜大陸中から人々が集まってきた.やがて人々は,その魔物を産み出すことの出来るわしを畏怖し始めた.その時点で国としての体裁は出来上がっていたから,わしは業魔を亡きものにし,人々の持つ闘争本能は失われ,今に至るような国が出来たんじゃよ」
「その『業魔』を作ったことで・・・マトーヤ様,あなたは妖魔導師として人々から畏怖されたのですね?」
「あぁそうさ.ルカーン,最後にわしからあんたに一つ聞いてもいいかい?」
「どうぞ,なんなりと」
「この二つの眼で見てきたもの,作ってきたものは,幻想に過ぎぬものものなのじゃろうか」
「いいえ,マトーヤ様,あなたの歩まれた道,そして作られたものは,確かに存在するものです.私はあなたの記憶を記録し,後世に伝えましょう.決して幻ではない,確固たる物語を.語り続けましょう,あなたという真実を」
最終更新:2015年05月05日 13:11