『制定語彙』(lakta)はメル7~8 年(1996年ごろ)にかけてアルシェが大々的に作成した文献である。これまでの古アルカには生活に関する多くの語彙が欠けていたり、同じものを意味する複数の語が乱立していたりと非常に混乱していたので、それを整理したものが『制定語彙』である幻字のある語の殆どは古アルカの音の象徴からできた語であり、これらは純粋に自然言語と無縁である。
一方、幻字の用意されていない語の殆どは自然言語由来のものであり、この数は古アルカの語彙としては相当な数があったと思われるが、『制定語彙』が作成されたときは既に自然言語由来の語を排他する傾向にあった。そのため、『制定語彙』の中で幻字が用意されていないものは大体自然言語由来でなく、音象徴によってできたものである。自然言語由来のものは[ɾai](「ライ」)[bande:][ko:mi]など、そう多くない。もっとも、『制定語彙』のころにも自然言語由来の語は多く残っていたが、それらは『制定語彙』に収録されず、歴史の影に隠されてしまっている。また、『制定語彙』には幻字の欄が空白になっていて、意味と読みだけが記されているものもあった。
ともあれ、『制定語彙』の出現によってアルカは飛躍的に表現の幅が広がった。また、『制定語彙』は音象徴からできているため、音象徴を使えば今後も比較的容易に足りない語を作ることができるといった利点もあった。
尚、『制定語彙』に使われた音象徴はメルがきっかけとなってリーザが発案してもので、当時のアルシェ全員とリーザがともに協力して作り上げた。『制定語彙』の作成も全員共同で行い、リーザが編集主幹となり、セレンリディアがその補佐に当たった。
また、『制定語彙』はリーザが幻字とその読みと意味を順にノートに記していったものであり、読みはリーザが耳で聞いたものと内省を通してIPA に変換したものである。後にセレンはそれを参考に『赤アンクノット』を記したが、読みはカタカナで書いた。
『制定語彙』の原本であるリーザのノートは黒緑色のインクで書かれていた。『制定語彙』は使徒全員の手に渡って閲覧されて丁重に扱われたため、このことをきっかけに『制定語彙』はアルシェにとって最も重要な文献になり、同時にこのとき使われた黒緑色がアルシェにとって最も公的な色になった。『制定語彙』は全員が回し読みをしたが、本来ならば写本があったほうが便利である。だが、写本を作った場合は原本を廃棄しなければならないという使徒規則によってそれは叶わなかった。
尚、『制定語彙』は1 年以上かけて全ての使徒に回し読みされた。回し読みの際に予め使徒は『制定語彙』の暗記を命じられていたため、『制定語彙』の内容は全員が暗記していることになっている。また、写本と原本の共存は禁じられているため、『制定語彙』はその一部さえも別所に書き写してはならなかったため、暗記は必須であった。
だが、実際のところ『制定語彙』に収録された語は1347 語である。多くは複合語なので幻字の数は611 字でしかないが、それでもこれを全員が暗記したと考えるのは現実的ではなく、写本の欠片がどこかに存在するものと目されている。
全員に回し読みされた『制定語彙』だが、その後はリーザの手元に戻っていた。時折研究に際して使徒が閲覧していたが、『リーザの日記』によるとメル13 年ラルドゥラの月フルミネアの日(2002/06/19)に事故が起こった。その日、『制定語彙』の原本はメルに貸し出されていた。
メルはリディアから『制定語彙』を受け取って鞄に入れて帰った。ところが帰る途中で雨が降りだし、傘を持ってなかったメルは鞄の中の『制定語彙』を濡らしてしまった。『制定語彙』は水性インクで書かれていたため、およそ4 分の1 が判読不能になってしまった。
リーザはその事件を受けてすぐに『制定語彙』の復旧を試みた。リディアなど、記憶力の優れた使徒の情報を元に『制定語彙』の判読不可能になった部分を耐水性のある紙に油性インクで復旧し、判読可能な部分はそのまま転写した。そして規則通り、原本のノートは焼却処理した。ところが復旧できたのは幻字の字形と読みと意味だけであり、ページの隅にびっしり書き込まれていた中期アルカに関するリーザの貴重な小書きは悉く失われてしまった。

尚、現存する『制定語彙』はリーザの手元にあり、貸し出しは禁止されている。また、原本に記されたIPA はメル0 年ごろに改訂されたものに準拠していたが、写本にはメル4年ごろに改訂されたものが使われた。

参考文献

セレン=アルバザード"『アルカ』"
アルカの部屋 > アルカ 14|fav|zan
初代アルカ(1980)~2003/10/15当時の中期制アルカまでの歴史

最終更新:2008年04月17日 15:14