――ざざーん。
波が寄せる
――ざざーん。
波が引いていく。
――ざざーん。
また波が寄せる。
――ざざーん。
地球に海が生まれてからの数億年間、絶えることなく続いてきた繰り返し。
その単調なリズムをBGMに、◆UcWYlNNFZY――"
想いのとと"は目の前にそびえる丘を見上げていた。
「なんやこれ……」
背後には黒くうねる日本海。
目の前にはなだらかにそびえる砂山。
想いのととは、それらに挟まれた砂浜で立ち尽くしていた。
「ひょっとしてあれか? ワイがミニマムなんか?」
確かに、想いのととの姿は彼/彼女が
マルチジャンルバトルロワイアルで生み出した名コンビの片割れ、古手梨花のものである。
幼い少女の身体であるため、確かに小さい。
しかしそれを差し引いても、眼前の砂山は本当に砂で出来ているのか疑いたくなるほどの高さなのだ。
メタ視点から解説するならば、ここは鳥取砂丘と呼ばれる砂浜。
重ねて言うが、砂浜。
砂山の標高は実に四十七メートルで、ウルトラマンより七メートルもでかかったりする。
サイコガンダムもウルトラマンと同じなので、そのでかさが何となく……分かりにくいか。
よく聞く表現でいうならビル12~13階分くらいの高さというやつだ。
標高についてはちゃんと観光案内サイトで確認したので間違ってない、うん。
ちなみに彼/彼女の口調は名コンビのもう一人の片割れ、ニコラス・D・ウルフウッドがモチーフなのだが、それはまた別の話題。
「登るしかないんかなぁ」
サハラ砂漠の一部を切り取って日本海沿岸にセットしたような光景にくじけそうになりながらも、想いのととは砂山を登り始めた。
一歩踏み出すたびに靴が沈み、もう一歩踏み出せばじりじりと下がっていってしまう。
土でも岩でもない柔らかな砂の足場は、少女の体重でも簡単に崩れていく。
「これは……想像以上に……」
砂山の頂上までは地図上の直線距離で二百メートルほど。
斜面なので実際の距離はもう少し長いだろう。
遠足といえば砂丘、砂丘といえば遠足というほどに慣らされた地元の少年少女ならともかく、
砂山どころか海とも縁遠い雛見沢で育った梨花ボディでは、なだらかな砂の斜面を登るだけでも重労働だ。
想いのととはいつしか両手までも動員し、登山というよりは登攀に近い格好で砂山にしがみ付いていた。
そうそう、最初は誰でもそんなもんだ。
足を滑らせたら麓まで直行便なんじゃないかという不安が、想いのととの心を焦らせる。
「よっと!」
ついに頂上に辿り着き、深く息を吐く。
だが、想いのととは砂山の一つを越えたに過ぎない。
想いのととが顔を上げると、そこにはまだまだ砂地が広がっていた。
流石に地平線の果てまでとはいかないが、遠くに見える道路までは1キロ近い距離があり、
それどころか更にもう一つ砂山を越えなければならないのだ。
しかも想いのととの目先にあるのは、高低差約三十メートルの急斜面。
「冗談きついで……」
想いのととがいるのは、馬の背と呼ばれる、砂丘で最も高い地点である。
海から吹く風を利用してパラグライダーが飛べるくらいの高さのポイントだ。
ぶっちゃけ、砂山を登るのが嫌なら単に大きく迂回すればよかったのだが、今更だろう。
第一、今は暗くて周囲の様子など見ていられないのだから。
滑り降りるしかないんかなぁと考える想いのととの横で、突如として砂が隆起した。
砂山の一部が人間よりも一回り大きく膨れ上がる。
さらさらと砂が流れ落ち、そこに姿を現すは、黄金の輝きを放つ――
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∩ i´●`> <´●`> | 「やぁ」
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| l ∪
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「ちよ父やーーーーー!」
砂丘に想いのととの叫びが響き渡る。
砂を割って現れたのは、黄金色に輝くちよ父の姿をしたナニかであった。
百歩譲ってちよ父であるのは見過ごそう。
千歩譲って金色なのも見過ごそう。
だがこのデカさはなんだ?
二メートルは優に超えているではないか!
「な、な、な……」
言葉を詰まらせながら、想いのととはソレを指差した。
想いのととはマルチジャンルバトルロワイアルの書き手である。
マルチジャンルというだけあって、ジャンルもメディアも様々な作品を取り扱ってきた。
しかしこんな前衛的でエキセントリックな不可思議生命体なんかにお目に掛かったことはない。
さてはカオスロワかどこかからの刺客かと疑う想いのととだったが、ソレの口から出た言葉は以外なものだった。
「同ロワの書き手が困っているのなら、お助けする他にないでしょう」
「同……ロワ?」
首を傾げる想いのとと。
するとソレは唐突に180度回転し、つるつるの背面を見せた。
そこには、まるでお菓子のオマケについてくる玩具のように、とある文字が刻印されていた。
――◆b8v2QbKrCM
「……ああ!」
ぽむ、と手を打つ。
確かにのトリップは、想いのととと同じロワの書き手のものである。
「ワイを助けるっちゅーことは、このバトルロワイアルには乗ってないんか?」
「…………」
無表情で見つめ返す◆b8v2QbKrCM。
「……乗っ取るんか?」
「…………」
やはり無表情で見つめ返す◆b8v2QbKrCM。
(考えとることがさっぱり分からん――!)
想いのととは内心で頭を抱えた。
表情が読めなくても、同じロワの書き手なら性格くらい分かるのでは?とお思いの方がいるかもしれない。
しかし、彼ら/彼女らに関して言えば、それは"まだ"当てはまらないのだ。
何故なら◆b8v2QbKrCMはそこそこの投下数を記録する一方、新参書き手でもあるからだ。
初投下から現在まで一ヶ月も経過していないのだが、現時点の投下数はロワ内で同率8位(想いのととは第6位)
いわゆる「お前のような新参があるか!」というやつだ。
なお、○ロワにはちよ父は参戦どころか登場すらしていない。
それなのにどうしてこんな色形なのかというと、◆b8v2QbKrCMが春日歩こと大阪を描写した際に、
"大阪がいずれ想像するかもしれない図"として登場した、金色の"死んだ魚のような目をした猫らしき不可思議生命体"に起因しているのだろう。
説明しないと絶対に分からないであろうが、これは大阪がギルガメッシュを遠くから視認した直後のシーンが発端である。
「……んじゃ、びーはち。お助けするって具体的にどういうことや?」
想いのととは適当な名前で◆b8v2QbKrCMを呼んだ。
なにせ○ロワ暦0ヶ月の書き手である。
気の利いたあだ名なんて、まだ付けられてはいないのだ。
◆b8v2QbKrCM――コピペがめんどいので、以下びーはち――は、おもむろにうつ伏せになると、こう言った。
「お乗りなさい」
「……は?」
少女の外見に似合わぬ声色で眉を顰める想いのとと。
びーはちはそんなこと気にかけず、もう一度繰り返す。
「お乗りなさい」
「……」
諦めた様子で、想いのととはびーはちによじ登った。
……つるつるして登りにくい。
どうにかこうにかで、その背中に馬乗りになってみる。
……つるつるして座りにくい。
仕方がないので、うつ伏せになってしがみ付いてみる。
……少しは安定した。
大きな猫型のモノに小さな少女がぺたんと貼り付いている様子は、傍から見れば可愛らしいものかもしれない。
口調が男だとか、黄金だとか、目が死んでるとか、細かいことに目を瞑ればだが。
「それでは、シートベルトを」
「うおっ!」
がしゃんと音を立て、金色の輪のようなものが、想いのととの胴体をびーはちの背中に固定する。
「待てや! これどっから生やした! しかもシートベルトやない!」
「発射しまーす」
「発射!? 発車やのうて!?」
想いのととがびーはちの表面をばしばし叩いて抗議するが、発射プロセスは滞ることなく進んでく。
まず、砂山の頂上で器用にバランスを取っていたびーはちの身体が前のめりに傾く。
「おおっ!」
次に、つるつるの胴体によって少しずつ斜面を滑っていく。
「なんやなんや……?」
更に、斜面を加速。
この時点で想いのととの長い髪は盛大になびき、切り揃えられた前髪も乱れ放題になっていた。
「さっきから嫌な予感が……うお!」
斜面を滑り降り、スピードを維持したまま滑走。
多少の凹凸など気にも留めず、砂を撒き散らしながら次なる山へと迫っていく。
「……待てや」
盆地にできた水溜りを蹴散らし、砂地に咲く花をも蹂躙する。
「おいコラ……」
空気抵抗はすでにピーク。
ジェットコースターじみた勢いで砂山に差し掛かり、なおも減速の気配がない。
「待てゆーとるやろ! びーは……あああああああああ!!」
理想的な速度で砂山を登り切ったびーはちと想いのととは。
理想的な角度で砂山から発射されまして。
理想的な放物線を描きながら宙を舞っておりましたとさ。
めでたしめでたし。
「何がめでたいんやああああぁぁぁ!!」
【鳥取県東部・鳥取砂丘南端・空中/深夜/一日目】
【想いのとと@マルチジャンルバトルロワイアル】
【状態】健康、パニック
【装備】なし
【持物】基本支給品、不明支給品1~3
【思考】
1.とりあえず生きて着地したい
※外見は古手梨花で、口調はニコラス・D・ウルフウッドがベースです
【
びーはち(仮称)@マルチジャンルバトルロワイアル】
【状態】健康
【装備】なし
【持物】基本支給品、不明支給品1~3
【思考】
1.同ロワ書き手は助ける(それ以外不明)
※外見は身長212cm、体重130kg(推定)で金色のちよ父です
※背中にトリップ(◆b8v2QbKrCM)の刻印有り
※中の人の有無は不明
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最終更新:2009年06月06日 00:04