私たちのロワはこれからだ!

川辺のほとり、そこに一人の少女がいる。
黒のゴシックロリータの服の姿、低い身長の割に長い黒髪は腰の辺りで揺れている。
その少女は長いことそこに立っているようだった。
その姿はふと気を抜くと消えてしまいそうなほど弱弱しい。

その少女に動きがあった。
手にはS&W M60。それを握ると自らのこめかみへと向ける。

少女の口から言葉が漏れる。
その言葉を聞き取れたなら、こう言っていたことがわかったはずだ。

「私、ネタないし自殺でもしようかな?」

そして、一発の銃声が響――





「君は一体何をしておるのだね!!」

ハウリングとともに大音量の声が響き、少女は動きを止めた。
ゆっくりと振り向く。

そこには一人の青年がいた。一見するとただの人間。
その手にはバッグこそ持っているが、マイクや拡声器の類は持っていない。

「そんな危険なとこはやめたまえ!」

再び響く大音量のハウリングボイス。どうやら拡声器のようなその声は、自前の物らしい。

「うるさい」

少女はそう呟くと、再び川の方に顔を向けた。

「いやはや、これは失敬した」

青年は極普通の声になると気安く少女のもとに進む。
横に並びつつ、少女へと声を掛ける。

「それで、どうして自殺なんてしようと思ったんだい?」

その声は父親のような、教師のような不思議な声音だった。
少女はゆっくりと口を開く。

「私、ロワに出演しても何もネタがないもの。さっさとズガンされるのがいいと思って」
「そんなことはないさ! 君にも何かネタがあるはずさ! ……とりあえず君の名前を聞いていいかい?」
優しく聞くその青年に少女は一瞬目を向け、また、元に戻す。

「人に聞くときは、まずは自分から名乗る物だと思うわ」
その言葉にしてやられたというように額を叩きながら、青年は名乗りを挙げる。

「私の名は◆KV/CyGfoz6。通称カラオケボイスと呼ばれている」

誇らしげに話す青年に少女は目を向ける。
「ああ、あなたオールロワの。うちの子も何人かお世話になっているわ。ありがとう」
「どういたしまして。そういう君は一体どこのどなたかな?」

再び問いただされ、その少女は再び口を閉ざす。
しばらくしてようやく口を開いた。

「私は◆d3hAP9FFr2。断崖道と呼ばれたこともあるわ」
その言葉に青年は一瞬詰まる。その意味は簡単だ。

「ええ、私はオリロワ書き手。今はもうdatの海に沈んでしまった……ね」
少女はそれっきり青年に興味を失ったかの様に再び川を見続ける。
さっきの一瞬が、少女にとって青年から興味を失わせるのに十分な間だったらしい。
しかし青年も諦めない。

「ああ、そうだったね。君のロワは確かに沈んだ。だからどうした?」
青年は少女に声を掛ける。ワザと強い調子で問いかける。

「それで絶望して、こうやって書き手ロワにいるのにも関わらず何もせずにいる気かい?」
少女は青年を見ない。ただ、少女の声だけは響く。

「ええ、そうよ。私の投下を最後にオリロワは沈んだの。
きっと私が勝手気ままにいたずらし過ぎたから」
ふと洩れる言葉、それを敏感に察し、青年は声を掛ける。

「それは……君の本心かい?」
青年の問い。それに対し、少しの驚きと少しの後悔の表情を浮かべ、最後に少女は微笑む。
しかし同時にその表情の影は濃い。

「ええ。本当なら立て直せば良かったかもしれない。でも私にはそれができなかった。
私はリレーがしたかったから。一人で書き続けられるほど、私は強くなかったから。
オリジナルでは新規の書き手が現れるなんて幻想を持つことすらできなかったから」

その言葉を聞き、青年はため息と一つ吐く。それは少女の本心を理解した音。

「なるほど。君の気持ちはわかった。ならばもう一度聞いていいかな?
なぜ、自殺をしようとしたのか……をね」

その言葉に少女もため息を一つ吐く。それは本心を隠すことに失敗した音。
「私がいるとこのロワも駄目になる。そんな気がするから」

少女の言葉に対し青年は声を出さず、ただ少女の前に出る。
その行動の意味が分からず、少女は立ち竦む。

「な、何よ」
「ならば、それを私が阻止しよう。私が君を上回り完結へとたどり着こう」
「……は? あなた馬鹿じゃないの? これはどうみても書き手ロワよ。ただのお祭り企画。絶対完結なんてできないわよ」
「そんなことはないさ。今決めた。私はこのロワでは対主催となって君を完結へと導こうではないか」

自信に満ちた声に少女はたじろぐ。正面にきた青年の目を見、その言葉を本気で行おうとしていることを察した。
最後に諦めの表情を浮かべ、少女は呟く。

「あなた、真性の馬鹿ね」
「ふふふ、そうだとも。オールロワ書き手をなめるなよ」

その気取った、しかし同時におちゃらけた青年の声を聞き、
少女はお手上げとばかりに両手を空に挙げる。

「私の負けね。それで私は何をすればいいの?」
「まずは私について来ればいい。君に新しい道を見せてあげよう」
「……わかったわ。私も見てみたい。見ることができるなら……ね」

そうして少女は青年についていくことを決めた。
青年は右手を差し出し、少女はその手を握る。
そして二人は歩き出す。

「それにしても」
「何?」
「断崖道とは、その大平原の小さなm――ガハッ!……いきなりグーはないだろう」
「みなまで言わなくていいわよ。……一応は気にしてるから」
「いや、君みたいな少女ならまだまだ未来があるだろう?」
「……ふふっ、私の年齢。聞きたいの?」
「……止めておきます。その悪戯っぽい笑顔がコワイデス」
「そう。残念」

はたしてこの二人組、第一放送まで生き残れるのだろうか。
それは誰にもわからない。



【1日目 深夜/新潟県 信濃川川辺】

【カラオケボイス◆KV/CyGfoz6@オールロワ】
【状態】:健康
【装備】:枢木スザクの格好
【所持品】:支給品一式。不明支給品あり
【思考・行動】
基本:打倒、主催!
1:対主催! 対主催!


【断崖道◆d3hAP9FFr2@オリロワ】
【状態】健康
【装備】ゴスロリ服。S&W M60
【道具】支給品一式。
【思考・行動】
基本:無気力
1:とりあえずカラオケボイスに付いていく。

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断崖道 カラオケボイスの適当な設定と目的地
カラオケボイス カラオケボイスの適当な設定と目的地

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最終更新:2009年04月17日 00:23
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