マーダー・ザ・スコッパーこと◆shCEdpbZWwは深くため息をついた。
まさかバトルロワイヤル小説に携わっていただけで、本当に殺し合いに巻き込まれるだなんて思いもしなかった。
ガチもんの殺し合いをしたいなんて毛ほども思ったことはない。
日常にほんの少しの刺激を……と、そんな程度に考えていたのだから。
まぁ、巻き込まれたのも理由の一つだが、彼の頭を悩ませているのはそれだけではなかった。
パロロワメモリの力によって与えられた姿、それは彼が予想だにしなかったものであったのだから。
「何故だ……何故よりによってこの姿なんだ……」
「ゆっくり悩んでいってね!!」
彼に与えられた姿は「ゆっくりしていってね!!」のゆっくり霊夢だった。
ゆっくり霊夢になる事自体はおかしくないけど、オプションにゆっくり魔理沙が付いてるとか参加者として有り得ないだろ。常識的に考えて。
「いや東方は好きですよ。でもよりによってゆっくりとは思いませんでした。
一頭身ボディだなんて、ディスアドバンテージもいいところじゃないですか……」
「ゆゆっ!?」
普通の霊夢だとか、東方ロワ的には射命丸の方がピッタリじゃないか。3回執筆したし、動きやすいし。
……あぁ、多分2chロワだからかもしれない。だったらせめてZUNの方が楽なんじゃないかなぁ。
「まぁ、いつまでも姿で悩んでても仕方ないのです。生きて帰るにはどうすべきかを考えなくては」
「ゆっくり考えていってね!!」
ぽいんぽいんと飛び跳ねながら移動する。
慣れない体なのに、案外思い通りに動くもんだなぁと思いながら木陰に身を隠した。
……さて、どうしよう。ゆっくりじゃスペルカードとか無理だよなぁ。というか、やり方もわからない。
じゃあ、これでどうやって戦えばいいんだ。首だけで何か出来るのか?
「出来るとは思えませんねぇ……この体では喋るか飛び跳ねるかが精一杯でしょう」
「そんなことないよ! やってみなきゃわからないよ!!」
ゆっくり魔理沙が励ましてくる。
なんかもう、普通に可愛いじゃないか。ゆっくり。
そういうなら、手とか無い状態で支給品の確認とかやってみようじゃないか。
どこまで体が動かせるか、それを把握するためにも重要だろうし。
彼は頭に引っ掛けてたデイパックを地面に降ろし、チャックを開けようと試みた。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「この姿ってことは、どうもニコロワγ出典のようですね……」
◆czaE8Nntlwこと、『いつもの4人のczaE』は自分の姿を見て、そう呟いた。
緑色の髪にひらひらとした白い服。東風谷早苗になった。
「いやぁ、殺し合いさせられるのは不本意ですが、こういう可愛い姿になれるのはちょっと嬉しいね」
手を開いたり閉じたり、髪に指を通したり、服をパタパタとはためかせたりして早苗さんの体を堪能する。
さらに空中を飛んでみせる。飛べたぞ! やばい、これはすごい。超楽しい。
現実の肉体では絶対に不可能な芸当。それが当たり前のように出来るのは素晴らしい!
―――このパロロワメモリ、自由に取り外せるようにして持ち帰りたいなぁ。……無理っぽそうだけどさ。
ふと、彼女は眼下に、饅頭のような生物が二体いるのを見つけた。
すいーっと地面に降り立って話しかけることにした。
「ちょっとすいません。あなたは殺し合いに乗ってたりしますか?」
「もちろん、乗ってないですよー」
「ゆっくり接触していってね!!」
マーダー・ザ・スコッパーはフランクな口調で返答する。
「それはよかった。あ、私はニコロワγの◆czaE8Nntlwと言います。いつもの4人を出しました」
「ほほう、私は2chロワの◆shCEdpbZWwです。czaさんと言ったら、うちでOPとか書いてた方ですよね」
「あら、shさんでしたか。これは奇遇ですねぇ。せっかくですし、殺し合いに乗ってない者同士でご一緒しませんか?」
「いいですよー」
「ゆっくり共闘していってね!!」
なんとも気持ちのいい会話で、あっという間にチームが結成されましたとさ。
めでたし、めでたし。
……いや、いくら彼らが同業者だからと言っても、少々あっさりし過ぎている。
当人たち以外はその光景に、誰もが違和感を感じたはずだ。
だが、それは二人の考え方がよく似ていたというのが理由として挙げられる。
▼ △ ▲ ▽ ▼ △ ▲ ▽ ▼ △ ▲ ▽
というのも、マーダー・ザ・スコッパーはあくまで『善良な者』を演じていたのだった。
数分前、デイパックを確認した後に、彼は自身のスタンスを決めていた。
「意外だなぁ。この体型のくせして、普通に支給品持てるんだ……」
「努力は実を結ぶんだよ!」
「今のは別に努力してないんだが……」
「ゆゆゆゆ~っ」
彼は謎原理でコルトパイソンを構えて、くるりと手の中(?)で回す。
自分でも予想してなかったのだ。誰もゆっくりが拳銃を扱えるとは思わないだろう。
その意外性に驚きつつ、彼の中で閃いたのだった。
このギャップを最大限利用して、生き残っていく方法が。
そうだ、ステレスマーダーになればいい。
誰が見ても無害にしか見えないこの姿で、殺し合いに乗らない者の中に取り入る。
参加者が大幅に減ったところで協力者を殺害し、なるべく強力な支給品を確保する。
あとは支給品を駆使して上手く立ち回れば優勝は目前だ。これなかなか上手くいくんじゃないのか?
……例え生き残ってもその肉体じゃ戦えないんじゃないかって? いいや、そんなことない。
早く移動したければ案外可能だし、道具も謎原理で不自由なく扱える。
なんというか、一般人と比べて何ら劣る点が無いなと感じた。
いや、むしろ他のキャラクターでは決して有り得ない優位点があるじゃないか。
そう、ゆっくり魔理沙の存在だ。彼女は安定した私の味方だ。意思疎通は完璧に取れる。
彼女にも武器を持たせれば有利に戦えるし、いざとなったら犠牲になってもらえばいい。
そう、こんな体でも満足に戦えるのだ。怯える必要はどこにもない。
(そんなわけで皆さんには悪いですが、遠慮なく私が生き残らせてもらいましょう。
優勝した後に『全員を元通りにして』とでも頼めば問題ないでしょうし。多分)
マーダー・ザ・スコッパーとゆっくり魔理沙は不敵な笑みを浮かべた。
あいにく、その微笑みはいつも通りのニヤニヤした顔と大差がなく、気づく者は誰もいないだろう。
〇 ● ◎ 〇 ● ◎ 〇 ● ◎ 〇 ● ◎
また、いつも4人のczaEもいかにも『無害そうな人物』を装っていただけであった。
……ここは創作の世界ではない。現実とリンクした世界なんだ。
そうなると殺し合いに乗るものは少ないだろう。みんな理性のある一般人なんだから。
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● ● 悪いですが、この殺し合いでは常識に囚われてはいけないのですよ!
" ▽ "
そう、だからこそ私は普通の人とは違うスタンスで行くつもりなのだ。
善良そうな早苗スマイルで対主催同士の仲間を集めて、隙をついて全滅させる。
装備は固まり、圧倒的に有利な状態で殺し合いを終わらせることが出来る。
(裏切るのを前提に徒党を組むのは気が引けますが……本当に危険な人物に優勝を譲るわけにはいきませんからね……!
もちろん、私が生き残った暁には、全員を蘇らせるつもりですからね。だからこの裏切り計画は仕方のないものですよ。
……あとついでに、パロロワメモリが欲しいっていうのもありますけどね……それは成り行きによりますね……)
彼女は心の中で不敵な笑みを浮かべた。
にこやかな笑顔に裏でまさかそんなことを考えているなんて、気づく者は誰もいないだろう。
まさか最初に出会った相手がステマ(ステレスマーダーの略称)をしているとは、お互い予想もしていなかっただろう。
常識に囚われてはいけない、と頭ではわかっていても、そんなことを想定出来る者はいない。
果たして、この常識の枠から大きく外れた二人+一体は今後どんな展開が待ち受けているのだろうか。誰もわからない。
【一日目・深夜/A-3・街中】
【チーム:二人はステマ!!】
【マーダー・ザ・スコッパー(◆shCEdpbZWw)@2ちゃんねる・バトルロワイヤル】
【状態】健康
【外見】ゆっくり霊夢
【装備】
【所持品】基本支給品0~2、コルト・パイソン@現実
【思考・行動】
基本:ステレスマーダー
1:いつも4人のczaEと行動。
2:参加者が減って来たらマーダーに。
※ゆっくり魔理沙が付いてます。個別の意志を持ちますが、マーダー・ザ・スコッパーの思い通りに動かせます。
【いつも4人のczaE(◆czaE8Nntlw)@ニコニコ動画バトルロワイヤルγ】
【状態】健康
【外見】東風谷早苗
【装備】
【所持品】基本支給品1~3
【思考・行動】
基本:ステレスマーダー
1:マーダー・ザ・スコッパーと行動。
2:参加者が減って来たらマーダーに。
最終更新:2013年04月26日 19:05