「――全員、お目覚めのようだな、諸君」

 虚空に声が響き渡る。
 宇宙のごとき闇の奥から、何者かの声が聞こえてくる。
 どこまでも続く星空のような空間に、透明な壁と床の感触だけが感じられる、何とも奇妙な空間だ。
 その中で、総勢100人を超える男女達が、謎の声に耳を傾けていた。

「私はある条件のもとに、君達を集めさせてもらった。
 パロロワ、と言えば分かるだろう。その部屋に集まっているのは、皆パロロワの書き手達だ」

 瞬間、群衆達がざわめいた。
 お前はどこだ、何ロワだ。どのトリップの人間なんだと。
 名も知らぬ他人同士だと思っていた者同士が、身内かもしれないと分かり、お互いの身元を確信し始めたのだ。

「静粛に。
 ……さて、そんなロワ書き手の諸君なら、こうして置かれた状況にも、心当たりがあるだろう。
 そう、書き手ロワだ。君達にはこれから、書き手同士でバトルロワイアルを行ってもらいたい」

 一瞬、その場が静まりかえる。
 これからお前達に殺し合いをしてもらう。
 その旨で発せられた言葉を飲み込むのに、それだけの間が必要だった。
 だが、それもすぐに終わる。
 やがて巻き起こるのは怒号の嵐だ。
 ふざけるな。何でそんなことをしなくちゃならないんだ。
 殺し合いなんてまっぴらごめんだ。お前こそ死ね。死んでしまえ。
 闇の奥から響く声を、罵倒しなじる言葉の数々が、怒涛のように発せられる。

「まぁ、そうなるだろうな。だが先ほども言っただろう。ここでは静粛にしたまえと」
【Ancient!】

 その時、不意に声が響いた。
 やけによく通る英語の発音が、書き手達の罵詈雑言を静めた。

「――GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOH!!!!!」

 次の瞬間に現れたのは、巨大なティラノサウルスだ。
 書き手達の中にいた誰かが、太古の恐竜へと姿を変えて、雄叫びを上げて立ち上がったのだ。
 たちまち、室内はパニックに陥る。
 慌てふためく書き手の誰かが、巨竜の襲来から逃げ遅れ、頭から丸かじりにされる。
 頭部を失ったその書き手は、力なく牙の隙間から落ち、血だまりの池へと亡骸を沈めた。

「彼は古生物バトルロワイアルの書き手、◆sOMmvl0ujoだ。
 この書き手ロワを進めていくため、私の協力者の1人として、力を貸してもらっている」
「………」

 謎の声の紹介と共に、ティラノサウルスが姿を変える。
 古生物バトルロワイアルの創設者・◆sOMmvl0ujoは、金髪にテンガロンハットを被った、小さな美少女へと変貌した。
 その姿は、実在する化石博物館のマスコットキャラクター・瑞浪Mioに酷似している。
 しかし、先ほどまでの群衆の中には、こんな姿の娘はいなかった。
 あの場に紛れこんでいたのは、もっと普通の人間だったはずだ。大体、女性の姿なのに、「彼」と呼んでいるのは何故なんだ。

「そして今、彼が使っているのは、パロロワメモリと呼ばれるアイテムだ。
 平成ライダーロワ、オーズロワ、あとは変身ロワもあったかな。
 それらのロワに参戦している、仮面ライダーWに登場した、ガイアメモリの技術を応用して作らせてもらった」

 瞬間、虚空に光が走る。
 闇の中に現れたのは、何本ものUSBメモリーだった。
 色とりどりのメモリーには、それぞれにアルファベットがプリントされている。

「このパロロワメモリには、君達が参加していた、それぞれのロワの記憶が詰め込まれている。
 君達にはこれを使用して、殺し合いを行ってもらいたい。
 ただし、一度これを受け入れ、対応するドーパントへと変身したあとは、
 私の意志なしには外すことも、変身を解除することもできない。それは覚えておいてくれたまえ」

 そこまで言い終えると同時に、ぱちん、と音が響き渡った。
 指を鳴らしたような音と共に、100本以上のメモリが散らばる。
 それぞれのパロロワメモリが、まるで吸い込まれるようにして、書き手1人1人のもとへと向かっていく。

【Touhou!】
【Dragon Quest 2!】
【Cinderella Girls!】
【Munenori!】
【Ore-ODIO!】
【New Nishio!】

 あちこちから英語の声が聞こえる。パロロワメモリが使われたのだ。
 否、使わされたと言うべきか。
 書き手のもとへ飛んでいったメモリは、それぞれが書き手の身体へと突き刺さり、強制的に融合したのだ。

「素晴らしいだろう。君達が紡いだ物語の記憶は。君達が作り出した世界の記憶は。
 君達はそれを背負って戦うのだ。君達はそれぞれのロワを背負い、命をかけて戦い合うのだ」

 やがてその場にいた書き手達が、次々と姿を変えていく。
 それぞれのロワに登場した、それぞれのキャラクターの姿へと、書き手達が変貌を遂げていく。

「もしもの時には、そのメモリが爆発し、君達の命を奪うようになっている。
 せっかくの催しなんだ……あまり私を失望させないでくれたまえよ」

 すなわちパロロワメモリとは、参加者の力の源であり、同時に首輪だ。
 このメモリの力があれば、たとえ個体差があったとしても、戦う力を得ることができる。
 しかし、変身は主催者の意志でなければ解くことができず、
 その上下手に逆らえば、命を奪われる可能性があるときている。
 この異常な状況に、声を荒げ反論する者は、もはや誰もいなくなっていた。

「では、そろそろ始めよう。諸君らの健闘を祈っているよ」

 ぱちん、とまたしても音が響く。
 指の鳴る音に合わせて、足元の銀河が光りだす。
 書き手達が見たものは、青く巨大な地球だった。
 そして全ての書き手達は、その地球に引きずられるようにして、光の中へと消えていった。

「……完了です。集められた書き手達全員、バトルフィールドへと転移しました」

 最後に残された◆sOMmvl0ujoが、天井を見上げて報告する。

「そうか」

 ◆sOMmvl0ujoに応じる声と共に、一瞬、そこに光が瞬く。
 光の中から現れたのは、どこにでもいそうな普通の男だ。
 ボイスチェンジャーでも使っていたのだろうか。
 ◆sOMmvl0ujoへの応答の声も、先ほどまでの不気味な声とは、随分と調子が変わっていた。

「あー……やっぱ、真面目な口調って疲れるわ」

 彼こそは感電。
 パロロワ界の名物企画・ロワラジオツアーの人気DJ。
 そしてこの書き手ロワを開催した、主宰陣営の一員である。


【書き手バトルロワイアル4th 開幕】

【【誰か@どこかのロワ 死亡】

【主催:感電@ロワラジオツアー3rd】
【主催:◆sOMmvl0ujo@古生物バトルロワイアル】

※各参加者の身体には、それぞれのロワの記憶が蓄積された、「パロロワメモリ」が融合しています。
 このパロロワメモリの力によって、書き手はドーパントへと変身し、
 それぞれのロワのキャラの容姿と、何らかの戦闘能力を得ています。
 ただし、パロロワメモリは、主催側の意志なしには取り外せず、変身を解除することもできません(主催側は例外)。
 また、このパロロワメモリは、主催者の意志によって爆発し、融合した者を殺害することができます。

※◆sOMmvl0ujoの能力:「古生物バトルロワイアル」の、全参加者の姿へ変身することが可能



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感電 :
◆sOMmvl0ujo :

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最終更新:2013年04月10日 02:11