C-7エリアは木々が鬱蒼と生い茂る森林だった。
真夜中の森は何物をも拒むような雰囲気を醸し出している。
耳をすませば、時折吹き抜ける風が木の葉を揺らす音に、波立つ水の音が混じるような場所。
ここを含め、数エリアに渡って広がる湖の湖畔に、一人の"少女"が佇んでいた。
「うーん、なんだかこの外見には見覚えがあるような」
湖面に映る自らの姿をまじまじと眺め、唸る"少女"。
その姿は赤毛のツインテールに、すこしゆったりした和装の少女。
だが、その内面は言わずもがな、少女ではなく数多ある書き手の一人である。
「やっぱりこの姿が割り当てられたかー。まぁ、いいけど」
自分のよく知るキャラクターに扮した自分に対し、少しばかりの感慨も込めて呟く書き手。
そのトリップを◆27ZYfcW1SMと言うが、以後は◆27Zと略させてもらおう。
「東方Projectバトルロワイアル」の主要書き手である彼は、他の誰にも負けないある知識を持っていた。
「……誰かな?」
湖を見つめる自分の背後に忍び寄る何者かに◆27Zはピシャリと言い放った。
「あらら、バレちゃったかー」
特に悪びれる様子の無い声が◆27Zの背後から聞こえる。
振り向いてみると、そこにはセーラー服姿の少女が一人立っていた。
……その手に一丁の銃を携えて。
(……アレは)
◆27Zは思わず目を細めた。
目の前の少女が構える銃は、他でもない◆27Zが登場させたショットガン、SPAS12だったのだから。
「その姿は……どこの書き手だろ? まぁいいや僕は……"アトミック"」
少女の外見でありながら、やはりその内面は男性なのか、なりきる様子も見せずに名乗った。
彼女?こそが新安価ロワの書き手の一人である◆rgd0U75T1.である。
氏が投入した支給品から、その渾名をいただき今に至るというわけだ。
その表情は明るいというよりも、少々うんざり、といった具合である。
「突然で悪いけど死んでくれないかな、っていうか、武器をくれないかなー」
「武器ならあるじゃん、それ」
「あー、これ? ダメダメこんなの」
「は?」
ショットガンのどこが不満なのか、そう言いたげな表情の◆27Zに対してアトミックはつらつらと言葉を並べる。
「そりゃ、威力は凄そうだけどさぁ、重いし画的には地味だし」
やれやれ、という表情を見せながらアトミックは続ける。
「それだったら、もっと派手で画になる武器の方が好きなもんでねー。
せっかくの機会なんだから、普段出来ないようなことでドンパチやりたいってもんじゃない。
この姿になったからには、核爆弾の1発や2発でもぶん投げたいもので」
◆27Zは少しばかり苛立ちを覚えた。
というのも、自らの好きな銃器をこき下ろされたのだから。
そんな◆27Zの心中など知る由もなく、いよいよアトミックがSPASを構える。
その距離は5mちょっと。
「ま、そういうわけだからさ、大人しくやられちゃってよさげな武器をちょうだいよ。
1話退場ってのも同情するけど、しょうがないよね、それがバトルロワイアルだし」
「……なんでもいいけどさ」
久しぶりに◆27Zが口を開く。
「それじゃ、俺は殺せないよ?」
「は?」
アトミックが、何を言っているんだという表情を見せる。
「……セーフティ、外れてないし」
「ウソっ!? 確かに説明書通りにやったはず……」
◆27Zの指摘に、思わずアトミックが慌てる。
そして手にしたSPASのセーフティに視線を落とした次の瞬間。
アトミックの懐に◆27Zが飛び込んでいた。
「うえっ!?」
1秒にも満たない時間で5mの距離を縮められ、アトミックが驚きの声を上げる。
そのまま◆27ZはアトミックのもつSPASの銃身を両腕で抱えると、そのままアトミックの腹を蹴り上げた。
いたいけな少女と化していたアトミックはたまらずSPASを離して倒れてうずくまりゲホゲホと咳き込む。
「……ちょっ、いきなり女の子の腹蹴るなんて……」
「しょうがないよな、それがバトルロワイアルだし」
「くっ……」
自らが言い出したことを逆にやられて、アトミックは黙り込むしかなかった。
そんなアトミックを見下ろしながら◆27ZはSPASをアトミックに向けた。
「あ、あとさっきのセーフティだけど、あれデタラメだから」
「なっ、だ、騙し……」
「あんな遠くからセーフティがかかってるかどうかなんて分かるわけないっての。
そもそも、説明書頼みじゃなくて銃の扱い知ってればそんなのに惑わされずに済んだのに」
「うぎぎ……」
痛いところを突かれて、再びアトミックは黙り込んでしまった。
一方で、◆27Zは高揚感を覚えていた。
一つは、◆27Zが扮する小野塚小町というキャラクターの力――距離を操る程度の能力を実際に使えたこと。
ダメ元で使ってみたこの力のおかげで一瞬のうちに5mの間合いを詰めることが出来たのだ。
生身の身体では絶対に出来ない芸当をこなせたことが◆27Zの意気を上がらせた。
もう一つは、自らが本物のSPASを手にしたことだ。
銃器に対して並々ならぬ愛情を持つ◆27Zとて、現物を扱える機会などそう巡って来ることではない。
そんな銃器に対する憧れをぶつけられたのが、パロロワという創作の場だ。
それをまさか自分が実際に手にできるとは、とこの時ばかりは◆27Zは主催者に感謝したのだった。
◆27Zには危惧していることがあった。
パロロワというものは、様々な人気作品をクロスオーバーさせて行う企画だ。
そして往々にして、銃火器などとは比べ物にならぬほどの破壊力をその身に宿す参加者が参加している。
銃火器だって活躍することはあれど、各作品のキャラクターが持ち技をぶつけ合うことの壮大さに比べれば派手さでは見劣りしかねない。
もちろん、大技のぶつかり合いという要素もまたクロスオーバーの一つの醍醐味であろう。
……だが、たとえば核爆発だったり、超火力の武器でいくつものエリアが甚大な被害を受けたり……
勢いよく派手なのはいいが、元々のバトルロワイアルの空気感が少しずつ薄れているのが寂しかった。
まるでピンクや水色のクリームをコテコテに塗りたくったアメリカのデコレーションケーキのようなもの。
彼は今のパロロワがそうしたものになりつつあること、ひいては硝煙の匂いが薄れかけていたことを少しばかり憂いていた。
そんな状況に一石を投じるとするならば……
「……どうするんです」
SPASを向けられてへたり込んだアトミックは口を尖らせる。
そんなアトミックを見下ろす◆27Zはスッと左手を差し伸べた。
「……どういうつもりで?」
「別に殺すつもりはない。殺してしまえばそれまでだから……それなら」
そう言うと構えたSPASをポンポンと軽く叩いた。
「教えてやるよ、銃の正しい使い方」
【C-7 森の湖畔/1日目・深夜】
【◆27ZYfcW1SM@東方ロワ】
【状態】:健康
【外見】:小野塚小町@東方Project
【装備】:SPAS12@東方ロワ(バックショット 7/7)
【持ち物】:基本支給品、不明支給品1~3
【思考・状況】
基本:銃火器の素晴らしさを他の書き手に触れて回る
1:アトミックに銃の正しい使い方を叩きこむ
2:自分でもぶっ放してみたいかも
※小野塚小町の能力である、距離を操る程度の能力を身につけています
【アトミック(◆rgd0U75T1.)@新安価ロワ】
【状態】:健康
【外見】:琴弾加代子@バトル・ロワイアル(漫画)
【装備】:なし
【持ち物】:基本支給品、不明支給品0~2、SPASの弾薬(バックショット8発、バードショット15発)
【思考・状況】
基本:このお祭りを楽しみたい
1:もっと派手な武器が欲しい
<支給品紹介>
【SPAS12@東方ロワ】
イタリア製の散弾銃。重さは4キロほど。
猟銃ではなく、対人ように意識して作られたもので、セミオートとポンプアクションの切り替えが可能。
東方ロワと同様に2種の弾薬が支給されている。
バックショットは7mm程度の弾を6~9発ほど発射するもので、バードショットは3mmほどの弾を数百個発射する。
読み方は「スパス」。余談だが、筆者はずっと「エスパス」と読んでいました。パチスロ屋かよ。
最終更新:2013年04月10日 02:16