――ここはどこだ。
 誰かがそう呟いた。
 しかし不思議とその声は冷静だった。
 文章作品の中とはいえ、彼らにとっては見慣れたシチュエーションだったからだろうか。
 その場には既に数十名の人間が集められていたが、その中でこの状況に既視感を感じていない人間はただの一人も居なかったろう。
 普通ならこういう状況に立たされた時人という生き物は、何かの間違いだとかドッキリ企画だとか好きなように理由を付けて現実逃避を計るものなのだろうが、彼らに関していえばそんなことはまったくなかった。というかこの状況に心当たりが有りまくりだった。
 自分たちは何度も何度も、この状況を見てきた。いや、読んできた。
 或いは『書いてきた』というべきかもしれない。

 「なあなあ、これあれだろ、絶対」

 誰かがやけにワクワクしたような口調で言った。
 彼がそうも楽観的でいられたのは、この不可思議な状況に招かれている人間に知り合いがあまりにも多すぎたからだろう。
 しかも同じ趣味を持った人間たちだ。
 これで緊張感を持つ方が無理という話だった。
 ……そもそも、こういうシチュエーションと参加者チョイスにすら覚えがあった。確か今頃、ちょうど某所で通算四度目にもなるこの企画の開催が熱望されていたころだった気がする。正直実際にここまでリアリティを追求してくるとは思わなかったが、此奴等(ぱろろわぜい)なら仕方ない。

 「書き手ロワ4thwwwwww」
 「あれですか、遂にパロロワは実写版に踏み切ったんですか」
 「クソだわ」

 なんと肝の据わったことだろうか。
 心の底から大爆笑しているやつまでいる。
 中にはこの状況、つまりバトルロワイアルを引き起こすきっかけとなった人物、主催者が誰かを考察し始める連中までいた。

 「でもあれでしょ、どうせ何処かで帰してくれるってやつでしょ」
 「これだけの書き手集まるとか多分今後無いだろうし、終わったらカラオケ行こーぜ」

 しかし流石の彼らも、あくまでこれは書き手バトルロワイアル4thという企画の為のロケでしかないと認識していた。
 ロワ終了後どうするかまで企画し始める者。
 あの作品のあのキャラが萌えると談義する者。
 ひっそりとマジキチトークを繰り広げる者。
 そんな彼らを見てどん引きする者。
 お世辞にも、それが彼らの知る『オープニング』の風景でないことに気付く者は誰もいなかった。
 盛り上がりが徐々に高まり、最高潮に達しかけたところでバカ騒ぎめいてきた現状を見かねたのが遂にその人物が姿を現した。

 「ちょっと待って、ほんとに君たちいい加減にして」

 現れたのは、おそらくパロロワ業界でも一二を争う知名度を誇るだろう生ける伝説書き手・感電だった。
 さすがの彼でも、参加者たちがここまで恐怖とは無縁の連中揃いであるとは予想できていなかったらしい。
 非常に困ったような心底引いたような何ともいえない微妙な表情で登場した彼に、参加者の何名かがフレンドリーに話しかけた。

 「感電じゃん」
 「実写書き手ロワ4thとかクソなんだよなあ」
 「いやもうほんと待って。これドッキリじゃないから。理由は明かせないけどマジもマジの大マジだから」

 主催者・感電が必死に話を聞くよう訴えるが誰一人聞く耳を持たない。
 とうとう我慢の限界に達したのか、感電は陳腐なスイッチを取り出した。
 一切躊躇することなくそれを押すと、会場の中の、中心からはやや外れた場所にいた書き手の首が弾け飛んだ。
 しーんと沈黙が満ちる。
 ガチじゃん、草生やせないやつじゃん、と誰かが漏らした。
 すると感電はいい仕事したぜとばかりの笑顔を浮かべて、参加者たちに殺し合いのルールを説明し始めた。
 しかしそれは今まで数多くのロワに携わってきた彼らにすれば聞き飽きたもので、後でルールブック見るからいいわと大抵の参加者が流し聞きだった。幸いにもパロロワに深く携わっていたからこそ、普通ではありえないような落ち着いた対応をすることが可能だったのだ。

 「じゃあこれから君たち会場に転送するから。お前らルール破って死んでも俺一切責任取んないからね」

 悪態をつきつつ感電が片手を静かに掲げた。
 すると会場の端々から、少しずつ招かれし書き手たちが消えていく。
 おおー、と歓声があがった。
 やはりワープという超科学の技術に触れるのは新鮮だったらしい。

 感電さん何者なんだよと比較的まともな人たちは思った。
 まともじゃない人たちは「ワープとか、あの作品のあのキャラなら地面蹴っただけでやっちゃうからね」とか宣っていた。
 そうこうしている内に彼らは次第に数が少なくなっていき、ついに最後の一人の書き手が消え、広場には静寂が戻る。
 ふう、と感電がため息をついた。
 しかしその時だ。
 首輪を爆破されたある書き手の死骸を、邪魔だからと感電が消し去ろうとした。
 感電という名前の通り、限りなく超高熱の電流で骨も残さず焼き尽くす、有る意味ではもっとも慈悲深い手段での死体抹消。







 ――――――――そのとき、不思議なことがおこった




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 「ちょ、なんすか。皆川さんリアルで増えるんですか」
 「いや、俺もよく分かんないっすわ。とりあえずもう一体くらいまで増えれそうなんで、一人会場に向かわせとく」
 「クソなんだよなあ。リアルでも人の企画で増殖やらかすとか普通ありえないんだよなあ。あれ、もう一人は?」
 「は? 決まってんだろ。帰るよ当然」
 「やっぱクソだわ」
 「つーわけでじゃあの。DVD出来たら呼んで」

 こうして、一人の書き手が死んだ。
 しかし、一人の書き手は二つの生命に分裂を果たした。


                 r' ̄i
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     ̄つ    '⌒'           ,r─‐‐''
     (´              ,r──'
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 一人は戦場へ。

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 一人は、自宅へ。


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 【◆DcpHZ8xnZA@俺ODIOロワ  死亡】
 【◆DcpHZ8xnZA(2)@俺ODIOロワ  生存確認】
 【◆DcpHZ8xnZA(3)@俺ODIOロワ  生還】

 【主催:感電@パロロワ全般】

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最終更新:2013年04月07日 18:04