**********
とある世界の、とある殺し合いのお話で、とある兄妹がおりました。
その兄妹は偉大なる勇者の末裔でした。
兄はその血に導かれ、彼の世界を包む闇を切り裂き、平和を取り戻しました。
妹は、勇者の血を引きながら無力でした。
最初の殺し合いで、妹は無力な少女のままでした。
美しい女性に、偉大なる竜に、祖である勇者自身に守られながらも
自らに流れる血と誇りを胸に懸命に生き延びていました。
**********
「書き手ロワ4thとかねーよ」
星の瞬く空を見上げながら、とある書き手はぼやく。
「読んで草生やしたり、書いてお祭り気分になるのは有りだけど
参加するとか、マジでねーよ」
彼は国民的ともいえる大作RPGの殺し合いの物語を紡ぐ一人であった。
彼はそのスレッドにて、ある意味カリスマ的人気を誇る殺人者を生み出した。
若干癖っ毛気味の美しい金髪、その上で小さなティアラが星の様に煌めく。
胸元に大きなリボンをあしらった可愛らしいブローチが宛がわれた、ふんわりとしたドレス。
彼はとある兄弟を中心に筆を執っていた。
勇者の血筋に翻弄される、美しくも儚く、そしてどこか混沌とした兄弟愛。
それに魅了される読者も少なくは無かった。
彼に与えられたのは、彼が生み出した『妹』の姿だった。
「…とにかく支給品だけでも確認せな。
合流した相手に眠らされてパンツ仰ぎながらギロチンとかマジ勘弁だし」
どこにぶつけても仕方ない、しかし吐かなければやってられない愚痴をこぼしつつ
支給されたザックの中に手を突っ込み支給品を漁った。
**********
もうひとつの物語での少女もまた、勇者の血を引きながら無力でした。
剣を振い魔物を切り裂くことも、強力な呪文を扱うことも
王族という権力や財産を駆使することもできませんでした。
選ばれし血と環境の下で生まれながら、不要とされた存在。
父も母も乳母も国民からも見られていない存在。
少女は孤独にさいなまれながら過ごしてきました。
そんなある日、少女は『兄』という唯一にして絶対な存在を知りました。
自分とは全く違う『選ばれし者』としての宿命を背負い
父と母と乳母と国民の期待を一身に受け育てられた兄。
しかし、兄も自分とは違う苦しみにさいなまれて生きていたのです。
そして、ひとりぼっちで泣いていたのです。
**********
「これが支給品とか草不回避だから」
彼が手に取ったのはナイフ。
柄の部分はまるで蝶のような装飾で彩られ、刃はギザギザと波打っている。
しかし、彩るのは華やかな蝶ではなく『蛾』。毒々しいまでの紫色に彩られた『毒蛾』である。
そのナイフで切り裂かれた相手は、刃に塗られた麻痺毒により体の自由を奪われる。
書き手たちが少しずつ、リレーのように紡ぎあげていく物語の中で
殺人者の少女が手にしたものと同じ武器。
少女はそのナイフで、己の望みを妨害する敵を、自分と兄の因縁を生み出した相手を沈めていった。
「まぁ、双眼鏡とか鍋のフタとか、ハリセンチョップとかよりはマシかな」
今の自分の姿との、奇妙な因縁を感じつつ、とりあえず護身用にと、そのナイフを手にしてみた。
**********
その殺し合いの地で、少女が求めるものは、愛しい愛しい『兄』ただひとり。
自分の孤独と兄の孤独、それを知ったあの日から、二人はずっと一緒なのです。
人目を忍んで、互いの部屋に忍び込んで、一晩中語り合っている時はもちろん
兄が訓練をしているときも、自分が勉強をしているときも
兄が世界を救う長い長い旅をしているときも
はなれていても こころ は いっしょ
だから しぬとき も いっしょ
**********
―お兄ちゃん―
頭の中で声が響いた。
聞いたことのない、少女の声。しかし、聞き覚えのあるような少女の声。
驚いてうっかりナイフを手から放してしまった。
カシャーン
だれ一人いない、何一つない、暗闇の中、乾いた金属音だけが不気味に響き渡った。
「………気のせいか」
ドラゴンクエスト・バトルロワイアル2ndの書き手◆1WfF0JiNewは、またも一人ごちた。
**********
【一日目・深夜/E-5】
【悪しき世界の人々・ワンダブル(◆1WfF0JiNew)@ドラゴンクエストバトルロワイアル2nd】
【状態】健康
【装備】特になし
【持物】基本支給品、毒蛾のナイフ(@ドラゴンクエストバトルロワイアル2nd)不明支給品1~3
【思考】まさか出場するとは思わなかった
基本:とりあえず安全地帯を探す。さっきの声はなんぞ?
ドラゴンクエスト2のサマルトリアの王女の姿をしています。SFC版基準でお願いします。
最終更新:2013年04月11日 14:10