E-6エリア東部にて、大粒の雨が容赦なく降りそそぐ。
冷たい雨を浴びながら砂漠を歩く男は、滲んだ世界であって尚消えることなき太陽のような存在感を放っていた。
男の名は◆c.g94qO9.A。かつてジョセフ・ジョースターの名で紹介されたことのあるジョジョロワ3rd書き手だ。
しかし、今の彼の姿ジョセフのものではない。
彼が最も多く描き、最も輝かせ、最も苦悩もさせている少年の姿だった。
振り続ける雨の中をも物ともせず、黙々と街へと向けて足を運んでいた少年がふと視線をあげると、濃い雨霧をぬい、ゆらりと揺れる影が見えた。
――まるで自分が描いた物語の一つのようだ。
書き手として、自身の作品が再現されている状況に僅かに頬を緩め、そっと魔法の言葉を口にする。
「――――」
ただそれだけで、月の光を遮っていた雨雲に丸い切れ目ができ、スポットライトのように砂漠を照らす。
少年は切り取られた光へと歩を進め、街から現れた影もそれに倣った。
少年の目にうつったのは幾重にも巻いたボロボロの布切れを身にまとった人間だった。
頭は目以外を隠す被り物で包まれており、隙間から覗く緑の髪を除いて、まるで正体が伺えない。
服装の所為で見た目だけでは性別さえも解らない。
「俺はアイディー。今までRPGロワ書き手として生きてきた」
その声からもアイディーが男なのか女なのかを察する事は出来なかった。
本当に不思議な人間――いや、それ以前にこんな服装と第一印象では「人間なのかどうか」すらもわからない。
吸血鬼しかり、柱の男しかり、シュトロハイムしかり、バオーしかり。パロロワでは数多の人外も描かれている。
もしかしたら、目の前の怪人物もまた、そんな人ならぬ者なのかもしれない。
「申し遅れました。僕はかつて“ジョセフ・ジョースター”の名で紹介されたジョジョロワ書き手です。
ですが、あれからもう随分時間が経ってしまいました。
今は僕が書いた彼のように、スタンドの名前を名乗りたいと思っています」
そう思い至りつつも、少年はアイディーへと挨拶を返した。
「スタンド……? そうか。街だけでなく、砂漠に雨とは奇妙だとは思っていたが、これはお前の仕業か」
「その通りです。ジョジョにおけるスタンドは発現当初は暴走の危機もありえる力です。
パロロワメモリで再現された力がどれ程のものか分からない以上、今のうちに確かめておくべきだと思いました」
「なるほど、な」
納得したという風に一度頷いた後、しばしの沈黙。
思うところがあったのか、男はボロ布に包まれた我が身へと視線を落とした後、再び顔を上げ言った。
「ならばこれほどの、天候をも自在に操る力を以って、お前はこの書き手ロワで何をする?」
来た。
ごくり、と、少年は唾を飲む。
彼は書き手だ。
パロロワにおける登場話でのスタンス決定が、後にどれほどの影響を及ぼすのかはよく知っている。
お気に入りのキャラクターたちが、この先どう綴られるかの最初の大きな分岐点、それが登場話なのだ。
書き手なら誰しもが、自分の好きなキャラクターたちが、短命でも長寿でも輝けるようにと愛を、力を込めて描くその瞬間が。
書き手ロワという世界で、遂に書き手である彼自身にもやってきたのだ。
「僕は……」
僅かながらに声が震える。
もしもこの出会いが、少年が描いたウェザー・リポートの登場話の再現というのなら、アイディーはマーダーだ。
広瀬康一にしたってしょっぱなから危険人物に襲われて、助けてくれた恩人を失っている。
殺し合いを描いてきたとはいえ戦士ではない少年の心には、戦うことへの恐怖がないといえば嘘になる。
それでも、書き手として、ジョジョロワ書き手として、己の意志で、自らの手で、光り輝く明日を切り開くことを選んだッ!
例えそこに死が待ち受けていたとしても……。命を奪うこととなりうることに縮みあがってガタガタ震えていたとしても……。
恐怖を背負うことは恥だッ! 恐怖を前に立ち向かうことこそ、勇気なのだッ!
「僕はヒーローとして生きたいんです……ッ! 覚悟がなくともッ! 度胸がなくともッ! この身一つで全てを守れるヒーローでありたいッ!」
「そうか。ヒーロー、英雄(ヒーロー)か。くっくっく」
「おかしい、ですか? 甘いと、思いますか?」
「違うさ。そうじゃない。お前を嘲笑ったわけじゃないさ。ただ、ヒーローという言葉は俺を、俺たちを象徴する言葉でもあるんだ。
英雄とは、勇者とは。それを問いかけ、突き詰め、書ききった、俺たちの、俺の……」
「……じゃああなたは。あなたも……」
「ああ、俺は――」
「殺してでも全てを救う」
ぞくり、と。立ち向かうと選んだはずの恐怖が、形となって少年の前に姿を現した。
布の切れ目から伺えるアイディーの瞳の色は、赤と青のオッドアイ。
右目に漆黒の殺意を、左目に黄金の意思を携えた黒金の英雄。
それがアイディーだった。
分からない、分からない。
少年には、殺してでも全てを救うという男の真意が分からない。
底知れなさを感じた。人の身に収まりきれない大きさを感じた。
一人殺せば犯罪者で、百万人殺せば英雄だと誰かが言った。
つまりはそういうことなのか。RPGロワが行き着いた英雄とはそういうものなのか。
少年には記憶が無い。
パロロワメモリの副作用か、元から読んでいなかったのか、ジョジョロワに関係のある記憶しかなく、RPGロワのことを一切知らない。
だからこそ、知りたいと思った。
自分と同じく英雄を、自分とは違う英雄を“書ききった”と豪語するアイディーのことが知りたくなった。
「アイディーさん、僕とリレーしてください」
少年は右足を引き、左足を前にだし、拳を構える。
自分たちは書き手だ。
互いに互いを理解するには、リレーするのが一番だ。
本来ならばキーボードを叩き、作品を描くところだが、今、彼らにはパロロワメモリがある。
彼らが描いてきた物語の“想い出”を力とできる。
なら、この地でのリレーとは、その力とその力のぶつかり合いだ。
何もおかしいことではない。
同じだ。今までと同じだ。
彼らは、殺し合いを描くことで、殺しあう事で、分かり合うのだ。
「いいだろう。それが、お前の救いになるのなら」
アイディーも蒼と赤の二振りの剣を構える。
支給品、ではない。
パロロワメモリの力を使って内的宇宙より取り出したアイディーの“想い出”だ。
「魔剣ルシエドならぬ、魔剣アシュレーと魔剣ルカ・ブライトといった所か。
来い、ジョジョロワ3rd。正邪の英雄の力を以って、お前に“英雄”を教えてやる」
「言われなくとも。行きます、RPGロワ!」
かくして、戦いが始まった。
先手を取ったのは少年だった。
彼が降らしている雨によって、足場は最悪になっていた。
啖呵を切ったものの、アイディーは泥の濁流に足を取られ上手く踏み込むことができない。
対する少年は、なんと濁流に飲まれるどころか、泥水の上を疾走していた。
波紋だ! 波紋で水の上を歩いているのだ!
少年が雨を降らせていたのは、誰に襲われても対処できるよう、自分に優位な戦場を用意しておく意味合いもあったのだ!
「くっ!」
地面が舗装された街へと逃げようとするアイディー。そうはさせない。
「一気に決めさせてもらいます!」
少年の眼光が怪しく光る。カゼルのように華麗な跳躍を魅せる、少年!
だが遅い、その動作は余りにもスロウリィー!
訝しみつつもアイディーは双剣によるガードを試みるが、それこそが少年の狙い!
「かかりましたね、アホですか!?」
「何ッ!?」
蹴りはまき餌。双剣により防がれた一撃は次の一撃への布石。ビシッ、と開かれる少年の両の脚。
開かれるガード! 無防備を晒したアイディーは絶体絶命! 訪れた絶好の機会!
この妙技! このバランス感覚! この圧倒的破壊力!
これぞまさに原作でもロワでも屈指のネタキャラにして、でも少年が書いた死亡話では紛れもなくヒーローだったダイアーの十八番―――
「稲妻十字空裂刃(サンダークロススプリットアタック)!」
叩き込まれる必殺のクロスチョップ!
だが! だがだがだがだがだが! 通らない! だが通らない!
クロスチョップは無情にも交差された両の腕に防がれる!
少年の両足で開かれたはずのガードをいかにして回復させたのか?
簡単だ、敵の足に捕らえられたのが双剣であるのなら、その剣を手放せばいい。
双剣を消し両手のコントロールを取り戻したアイディーの防御は間一髪間に合ったのだ。
「流石にこの技では決められませんか」
必殺技を防がれはしたが、少年に動揺はない。
もとより、稲妻十字空裂刃で勝負を決めれるとは思ってはいなかった。
原作的にもジョジョロワ3rd的にもそんなことはありえないだろう。ワムウ? あれは2ndの話だ。
少年の狙いはむしろ、波紋を通すことでアイディーの正体を確かめることにあった。
その点で言えば目論見は半分成功、半分失敗といった所か。
技自体は防がれたが、波紋を通すことには成功した。
溶ける様子がない以上アイディーは吸血鬼や柱の男ではないようだが、今はまだそうとは言い切れない。
あの幾重にも巻かれたマフラー。あれがサティポロジア・ビートルの糸で編まれており、波紋を散らしている可能性も有り得るからだ。
しかし、その推測は、ほかならぬアイディーの反撃で否定されることとなるッ!
「そうか。これが波紋か……」
感心したように呟くアイディーは、な、なんと、少年の耳を疑うような言葉を続ける!
「では俺も、波紋の物真似(ラーニング)をしてみるとしよう」
瞬間、アイディーの姿が消える。
いや、消えたのではない。
それまで砂水に足をとられ思うように動けなかったアイディーが、なんと、足場の悪さを物ともせず、全力で駆け抜け、一瞬で踏み込んで来たのだ!
更には振り下ろされる双剣は銀色の光を帯びているではないか!
「そんな、まさか、波紋!?」
人外かとは怪しんでいたが、よもやアルティメットシングスなのでは……。
一瞬不安に呑まれそうになるも、気力を振り絞り、咄嗟に風を操り、自らを後方に吹き飛ばし回避する。
けれども攻撃はまだ終わってはいなかった。
風を操るというのなら、その風をも切り裂くとばかりに、返す刃で真空の牙が撃ち出される。
「真空斬・双牙ッ!」
「うあああああああああああああ――――ッ!?」
あっけなく切り裂かれる風の防護陣。
重ねられた真空の牙は勢いを落とすことなく、少年へと迫る。
剣気の顎が閉ざされるまさに! 瞬間ッ!
―――――……
――雨が停止した。
止んだのでもなく、弱まったのでもなく、文字通り、雨が停止していた。
ザ・ワールド。
ジョジョを未把握のものでさえ、知っているであろう余りにも有名な時間停止の能力!
しかし、少年のスタンドは天候を操るウェザー・リポートではなかったのか!?
では問おう、彼はいつ名乗った!? いつ、自分のスタンドがウェザー・リポートだと口にした!?
していまい。
ウェザーに倣ってはいたが、彼は一度も自身がウェザー・リポートだとは言っていなかった!
そうだ、彼がウェザー・リポートなはずがない!
彼が描いてきた物語を見るがいい! そこで彼が操ってきたのは果たして天候だけだったか。
天候などという、そんなちんけなものに収まる範囲のものだったか!
冗談じゃない、冗談じゃねえ!
彼は違う。違うのだ。もっと、もっと、もっと大きい!
「改めて名乗らせてもらいます。僕は、僕のスタンドの名前は『サヴェージ・ガーデン』……ッ!」
停止した世界で少年は、否、ザヴェージは、自らの真の名前を告げる。
サヴェージ・ガーデン――獰猛なる庭。
雨も風も音も天も地も時も彼にとっては全て武器。
物語を彩り花を添える彼の庭。
時に巨像をへし折り圧殺し、時に一帯を崩落させ水没させるそのダイナミックさ!
純粋な力ではなく駆け引きや能力の相性、更には戦場そのものも利用した、まさに使えるものを全て使うジョジョバトル!
それこそが、彼の書き手の真・骨・頂ッ!
故にこそ、5秒間だけだが、時を止めるのも彼にはたやすい。
スタンド『サヴェージ・ガーデン』の能力は、一口に言えば環境操作。
射程と応用範囲が極めて広い上に、具体的に何をするのか狙いがあればあるほど精密操作可能なのが特徴的だ。
ぶっちゃけてしまえば一エリアくらいなら、瞬間的にはなんでもできる。
まあ環境に働きかけるという性質は、裏を返せば環境に働きかけるというワンクッションを置くしかなく、直接オラオラできないのが欠点ではあるが。
ウェザーに敢えて使わせなかったこともあり、ヘビー・ウェザーの能力も使用不可能だ。
ともあれ、
「今度こそ、これで決着ですね」
敵がラーニング能力者なら、長期戦は不利。
サヴェージ・ガーデンの能力上、ラーニングされた所で一朝一夜に使いこなせるものでもないが、厄介なのには変わりない。
なればこその時止めからの短期決戦。
いくらラーニング能力者とはいえ時を止められた状態で受けた攻撃を身に付けることは不可能。
過程を理解せず、ただ結果としてアイディーは敗れる。
それは彼の辿る“運命”だ。
運命の、はずだった。
「――でもそれは大きなミステイク」
声が、響く。
サヴェージ以外、動くもののいないはずの世界で、声が響く。
まさか、と、先程も抱いた驚愕を再びサヴェージは抱く。
そのまさかだった。
止まった世界、凍りついた世界の中で、彼は、英雄は。
止まることなく歩み続けていた。
止められてしまった真空の刃の代わりに、自らの手で引導を渡すべく疾走し、切りかかって来た。
「くっ!」
ならば、と。止まらぬのなら、と。自らの時間を加速させて回避する。
それでも追いすがられる。時間ごと加速しているはずなのに追いつかれる。
「無駄だ。“時空”そのものであると定義された俺たちに、時空系の能力は効かない」
中でも彼はインフィニティーとまで称えられた時の最果て。
ありとあらゆる時代に繋がり、どの時代にも属さない一つの世界そのものなのだ。
だが、世界がなんだ。
アイディーが一つの世界の最果てだと言うのなら、サヴェージもまた一つの世界の最果てだ。
RPGロワのトップ書き手に、ジョジョロワ3rdのトップ書き手が、押されたままでいられるものか!
それにまだだ、まだなのだ。
正邪の英雄を、善悪をも超えた勇者を書ききったというアイディーとは違い、まだまだサヴェージは書ききっていないのだ。
ヒーローを、書ききれていないのだ。黄金の意思を書ききりたいのだ。
だから、こんなところで負けられない。負けるわけにはいかないんだ!
サヴェージ・ガーデンには夢がある。
ヒーローを書ききるという夢が!
「サヴェージ・ガーデン!」
ヴィジョンを完全に顕にしスタンドが発現する。
直後、辺りを揺るがすような轟音が響いた。否、事実、現象として辺りが揺らいだ。
アイディーの足元が崩れる。サヴェージが倒れた地面が割れる。砂漠の中心に穴があき、そこに全てが吸い込まれていく。
果たしてそれは巨大蟻地獄とでも言うのだろうか。
否、これはサヴェージ・ガーデンの仕業だ。
落ちゆく中、アイディーは見た。そして理解した。
緑なきはずの砂漠の地下で荒れ狂う巨大な植物の根を。
それがどこからもたらされているのかを!
「北か! E6北東は砂漠が途切れ森となっている……。そこからここまで根を伸ばしてこさせたというのかッ!」
肥大成長した植物により地盤を砕き、砂漠ごと崩落させる。
その発想の大きさに流石のアイディーも驚愕する。
このままではまずい。どこに落ちていくのかは分からないが、落下というのはRPGでも洒落にならない。
基本ダメージを食らったりはしないが、ダンジョン攻略に大きな支障が出る可能性が高い。
ゲーム脳を排除して言うのなら、つまるところ生き埋めにされかねないのだ。
しかし、サヴェージの目論見は、もっと恐ろしいものだった。
―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「なんだ、この音は。このうえまだ何かあるというのかッ!?」
生じた断層に必死で魔剣アシュレーを突き刺し、なんとか大穴に呑まれずぶら下がっていたアイディーが、不穏な空気に顔色を変える。
顔を打つ雨粒。滴り落ちる水滴。そして聞こえる轟音。水の音。
音が聞こえるのは上からではない。
下だ、下からもだ。
降り注ぐ雨水だけでなく、下からも水が勢い良く流れこんでくるッ!
だがこの水はどこから生じた? 地下水脈を“偶然”掘り当てたというのか?
いや、違う、そうではない。
これは狙って起こされた事象だ。
サヴェージのスタンドの効果範囲はエリア丸1つ分。
彼はそれを用いて砂漠だけでなく、街も、森も、湖も含んだE6エリアの地上と地下をずたずたにした!
この水はE6北部の湖から引いてきたのだ! おまけに街部分の水道管からまで水を誘導してきている!
北部森林の根を肥大成長させることで、地盤を崩し地下に大穴を開け、大自然のトンネルを構築!
脆くなった地表は森林を支えきる事ができず崩れ落ち、雨により増水した湖もまたトンネルへと流れこむ!
いくら波紋により水の上を歩けるからといって、鉄砲水の勢いには敵うまい。
そもそも水だけでなく、崩落した街の瓦礫や森の木々混ざりの土石流に襲われるのだ。
圧死や溺死よりも先に、漂流物による激突死さえありうる。
逃げ道はない。今のアイディーは竪穴に剣一本でぶら下がった状態だ。
数分あれば登れないこともないが、上下より迫り来る土石流は、もう目の前だ。
よしんば逃げようとしても、こちらと同じく、波紋で断層にくっついているサヴェージが許すまい。
逃げようにも足は底をつかず、辺りはすべてに壁に囲まれていて、上下からの挟み撃ち。
インフレロワ書き手である水銀ニートがいれば焦熱世界・激痛の剣(ムスペルヘイム・レーヴァテイン)乙、と諦めていたはずだ。
けれど、ここにいるのは水銀ニートではない。アイディー・ウィンチェスターだ。
セイヴァー<<救い、切り開く者>>なのだ。
なればこそ、運命はまたしても覆される。
「アクセス(双剣覚醒)Lv1ッ!」
束ねられた双剣。閃光に包まれる世界。変身。白い装甲。蒼いゴーグルと靡くマフラー、展開される胸部機関……。
そこから先は、あまりの眩さにサヴァージには何が起きたのか、直接目にすることは許されなかった。
ただ、見てはいなくとも、どうなったのかは分かった。
肌に感じたのは膨大な熱風。
開けたのは広大な世界。
壁も、水も、砂もなく、雨雲さえも吹き飛ばされて、目に映るのは黄金に輝く満月のみ。
何もなくなってしまった世界の淵で、大の字になりながらサヴェージは息を漏らした。
「……――ああ、そうか。僕は、負けたんですね」
サヴェージが舞台の活用者なら、アイディーは舞台の破壊者だった。
RPGロワの地図を一目見れば本編を読むまでもなく一目瞭然だろう。
パロロワ界広しといえど、あそこまで、MAPが虫食い状態までになっている場所はあるまい。
ここまで語ったのなら言うまでもないだろう。
回避不可能と悟ったアイディーは、ならばと彼を閉じ込め殺しにかかったE6エリアという名の破壊してピンチを脱したのだ。
自らが生み出したヒーロー、蒼炎のナイトブレイザーにアクセス――変身し、粒子化速砲バニシングバスターで周囲を吹き飛ばしたのだ。
超高圧の土石流も、逃げ場を防ぐ断層も、全て、蒸発させたのだ。
巻き込まれていたならサヴェージとて生きてはいなかっただろう。
大崩落に対しては生き延びる策を練っていたとはいえ、それであの一撃を防げたとは到底思えなかった。
だというのに生きているというのなら、それは彼が見逃されたからだ。
彼を護り、今こうして、大地へと横たえさせた英雄に救われたからだ。
「僕を、殺さないでいいんですか?」
一瞬垣間見た変身ヒーローじみた姿を既に解き、再びボロ布を纏ったアイディーへと問いかける。
「言ったはずだ。殺してでも、救う、と。お前が書き手として救われるなら、俺はお前を殺そう」
「……そう、ですか」
「もしも救いが欲しいのなら。自らの手で、明日を掴むことができないと諦めてしまった時は、俺を呼べ。
この一撃で、俺はお前を救ってやる」
己の意志で、自らの手で、光り輝く明日を切り開くことができないと思ってしまった時。
筆が折れ、黄金の意志が朽ち、ヒーローとして生きられなくなった時。
それはサヴェージという書き手にとっての死だ。
その時は、止めを刺してやると。地獄を終わらせてやると。この英雄はそう言っているのだ。
「最後に聞かせてください。あなたが書ききった英雄とはどんな存在なんですか?」
「俺が書いた英雄とは。俺が書いた勇者とは……救われぬものを救うものだよ」
そうして、勇者は去った。
物語にて、多くを殺し、多くを救った勇者は、この地でも、そうやって生きていくのだろう。
その背に向かって、少年が抱いたのは怒りだった。
ああ、いいさ! いいとも、やってやるとも!
呼ぶものかと。覚悟を誰かに預けたりなどするものかと。
あなたが殺してでも救うというのなら、僕は守り通して救うのだと。
残された少年の意識は、今はまだ、ヒーローを描き途中の少年は意識は、問答無用に止められた雨振る世界にて、勇者に宣戦布告すると同時に闇に飲まれた。
【一日目・深夜/E-5街(元E-6との境界あたり】
【サヴェージ・ガーデン(◆c.g94qO9.A)@ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd】
【状態】ダメージ(小)、精神疲労(大)、気絶
【装備】なし
【持物】基本支給品、不明支給品1~3
【思考】
基本:ヒーローとして生きる
1:……
※外見は広瀬康一です@ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない です。
※波紋を使えるようです
※スタンド:サヴェージ・ガーデン
破壊力A スピードE 射程距離A 持続力A 精密機動性? 成長性A
最大1エリア分環境を瞬間的に操れます。
どう操りたいのか具体的なイメージがあればあるほど精密性は上がり、なければ下がります。
あくまでも環境を操っての間接的な攻撃しかできません。
【アイディー・ウィンチェスター(◆iDqvc5TpTI)@RPGキャラバトルロワイアル】
【状態】ダメージ(小)、残量フォース0%
【装備】なし
【持物】基本支給品、不明支給品1~3
【思考】
基本:救われる書き手を救う
1:救われぬ書き手を殺してでも救う
2:頼まれれば腕試しや修行に付き合う
※ゴゴ@ファイナルファンタジーⅥの服を纏ったユーリル@ドラゴンクエストⅣの姿をしています
※フォースレベル1:アクセスlv1 蒼炎のナイトブレイザー@RPGロワに変身できます。
ウィスタリアスセイバーとナイトフェンサーの代わりに、魔剣ルカ、魔剣アシュレーと名付けた剣を使っています
※E-6エリア一帯が消滅しました。
最終更新:2013年04月19日 01:04