第二幕 仲間

ひとしきり町を探し終えた後、二人は城でぼんやりとしていた。
「みんなを探しに行くッスよ…」
やがて沈黙を破るようにワドルディが言う。
「何処へ?」
ワドルディの言葉にポピーは即座にこう返した。
「何処へ行くって言うの!?何処へ消えたか分かんないのに!?」
ポピーは叫んだ。
「でも…でも!何もしないよりマシじゃないッスか!」
「ワドルディ…世の中、可能な事と不可能な事が存在するの!」
「それでもオイラはもう大事なものを失くしたくないッス!」
ワドルディは意外と頑固だ。
ポピーはよく分かっていた、でも…。
彼もみんなを探したくないわけじゃない、ただ…

恐いのだ
ただそれだけ、でも…。

「僕は…」
「ポピーが嫌ならオイラだけでも行くッスよ…!」
ワドルディが言ったその時。
「みんなぁーーー!!!いねぇのかぁーーーーーー!?」
外から鈴のような声が聞こえた。
声に似合わず言い方が粗暴だが…。
「…!?ポピー…あの声って…」
「うん…多分…」
二人は同時に城から飛び出した。
月が恐ろしいほど綺麗だ。
「おーい!誰かいねぇのかぁ!?」
彼は町の入り口近くで叫んでいた。
二人は彼を呼んだ。
「チリー!!!」
彼…心を持った雪ダルマのチリー…はリンッと首につけた鈴を鳴らして、涙目で振り返る。
「ワドルディ…!ポピー…!」
「どーしたんスか?町まで降りてくるなんて珍しいッスね」
チリーは普段、人気の無い雪山に住んでいる。
そして、滅多に町に降りてこない。
「何かあったの?」
「うん…。あのなぁ…」
彼は涙を拭いて言った。
「あのなぁ、いつものように山で遊んでたらボンカースが来て、んじゃあドラコも、ってなって3人でピクニックに行ってな、すげぇんだぞ、虫がうようよの葉っぱわじゃわじゃでなぁ、そいでなぁ途中で小便タイムになってなぁ。でも、おれ小便しねぇからなぁって外で待ってたら、いつまで経っても出てこねえからなぁ、太陽ギラギラで眩しかったんだぞぉ。でなぁ、仕方ねぇから覗いたらな、誰も居ねぇんだよ。で、『大変だ~』って山に帰ったらなぁ、山にも誰もいねぇんだよ。だから…」
「ちょっと待つッス!チリー、もう少し落ち着いて話すッス」
マシンガンのように早口でたてしまくるチリーをワドルディが止めた。
「話を整理するの。つまり、チリーがいつものように山で遊んでいたらボンカースが来たの」
ボンカースはあての無い旅をしているハンマー使いで、半年前にワドルディ達と共に旅をした。
見た目から誤解されがちだが意外と優しく頼りになる。
チリーは彼にとてもよくなついている。
「それで、ドラコも一緒にピクニックに行ったんスね?」
ドラコはアイスドラゴンの子供でチリーは彼を兄のように慕っている。
「で、虫がいっぱいいて、緑が生い茂っていたの」
「そして、途中でトイレ休憩にしたんスね?」
「うん」
チリーは頷いた。
「でも、チリーは雪ダルマだからトイレに行く必要はなかったの。だから、外で待ってた…今日はお天気で太陽も眩しかったのにね」
「けど、いつまで経っても誰も出てこなかったッスね?だからチリーは覗いてみた…」
「だけど、誰もいなかったの…。で、チリーは山へ帰った。そしたら…」
「ミスターフロスティやマスターペンギンまでもいなかった、と」
フロスティもマスターペンギンもチリーの父親的存在。
チリーの口の悪さはマスターとボンカースより伝染したものだ。
「うん、そういうことだぞ」
「ポピー…」
「ワドルディ…」
二人はお互い見合って頷いた。
「チリー、行くの!」
ポピーが言った。
「何処にだぁ?」
「みんなを探しに…ッスよ!」

こうして、彼らは夜明けと共に旅立った。
その後にどんな『脅威』が待っているとも知らずに…。

最終更新:2010年02月19日 15:06
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