小さな彼らの小さな冒険は、まだまだ始まったばかりだ。
「…あぢぃ…」
チリーがぼやいた。
「チリー…これで38回目ッスよ…」
ワドルディが言った。
「細かいの…」
ポピーが言ったが、彼もかなり疲れているようだ。
「…だって…あぢぃもん…しかたねぇだろ?」
「まだ春先なのに…なんなんスかねぇこの暑さ…?」
「さぁ?どっちにしろ暑いの…」
「あぢぃ~…。暑い、熱い、厚い、篤い…!」
「…漢字がおかしいッス…」
ワドルディが活字ではないと伝わらない突っ込みを入れた。
さて、彼らがあまりの暑さにぼやいていた頃…。
『…何故、奴らを消した?』
暗い闇の中で巨大な『影』が言った。
『消したのではありません…』
その隣で別の『影』が言った。
表情は分からないが笑っていると思われる。
『では、何故奴らは消えた?』
『ですから、消えたのではないのです』
『影』はたっぷりと間をあけ言った。
『姿を変えてやっただけです』
『姿を…?なるほどな…』
『影』はそう言って何故か笑った。
『しかし、何人を逃してしまいました』
『即刻、始末しろ』
『はっ!』
ブィンッ…と音をたて1つの『影』が消えた。
残った『影』は言った。
『さぁ…宴の肴を楽しもうではないか…』
その後、その場にしばらく不気味な笑い声が響いていた。
一方ワドルディ達は…。
「…あぢぃ~…」
「42回目ッス…」
「細けぇ事言うなよぉ~」
チリーはそう言って顔を上げた。
「…お?」
「…え?どーしたんスか?チリー」
「家がある…」
「え!?」
ワドルディとポピーも慌ててチリーの目線の先を見た。
「何処ッスか!?」
「何処なの!?」
「あそこ」
「見えないッス!」
「同じくなの!」
「お前ら背がちっちゃ過ぎなんだよぉ!」
仕方ないのでしばらく歩くと、なるほど、こじんまりとした一軒家があった。
「休ませてもらうの?」
「その前に人住んでるんスか?」
「人じゃなかったら何が住んでんだぁ?ユーレーか?バケモンかぁ?」
「恐い事言わないで下さいッス!」
「…こえーのか?」
チリーが言った。
「…当たり前じゃないッスか…」
ワドルディは少しだけ不機嫌そうに言った。
「誰かいないのぉ~!?」
間延びした声でポピーが言った。
返事は返ってこない。
「空き家ッスか?」
「多分そうだと思うの…」
…と、その時。家の戸がぎぎぃ~っと開いて中から皺の刻み込まれた老婆が現れた。
「出たァァァァァァァァァぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
叫ぶワドルディ&ポピー。
「ただの婆さんじゃねぇか」
あくまで冷静なチリー(ただ単に鈍いだけかもしれないが…。)
「…子供が3人…。こんな所で何やってんだい?」
老婆が言った。
「あ…あの、僕たちちょっと旅をしてる者なの。少しだけ休ませてもらいたいの…」
ポピーが恐る恐る言った。
「あぁ、いいとも。さぁ中にお入り、疲れたろう?」
老婆は意外とあっさり答えを返した。
「ありがとうございます!」
3人はほぼ同時に頭を下げた。
「じゃあ、おばあさん、ここでずーっと一人で暮らしてるの?」
「あぁ、そうだよ」
「ふ~ん…」
結局、彼らは休ませてもらった上にお茶までごちそうになっていた。
「あっ、おばあちゃんボク達そろそろ行くの。ごちそうさまでした」
「そうかい?じゃあねぇ…」
老婆はそう言って立ち上がった。
「なーに?」
「なぁに…すぐ終わるよ、なにせ…」
老婆がメキメキと音をたてながらその姿を変えた。
「…!?うっ…うわぁぁぁっ!?」
『なんせ、貴様らは今ここで我に始末される運命だからな!』
闇の響きを含んだ男の声だった。
「くっそぅ!罠ッスね!?」
『その通りだ!』
山小屋の中で、突然戦いが勃発した。
多分、老婆がメキメキ言うシーンを書きたかっただけです。
最終更新:2010年02月19日 15:13