324 :2-358:2014/05/11(日) 22:44:56.45 ID:QFRj+f2x
えっと不人気でおなじみの妙高型です。
半年ぶりのアップです。
すいません。丸二日推敲しましたがエロまでたどりつけませんでした。
戒めてとして最前半アップします。
後半も早めにアップします。
妙高型みすてないでぇ
325 :2-358:2014/05/11(日) 22:45:56.04 ID:QFRj+f2x
4-1-1
鎮守府の食堂は喧騒に満ちていた。
喧騒を煽るかのように食欲をそそる香りが食堂に漂っている。
「カレーライス♪カレーライス♪」
謎の節をつけた歌を
駆逐艦娘達が楽しそうに歌いながら配膳口に並んでいる。
金曜日の夕食はカレーライスである。
泊地からほど近い獅南島で夕食を取る艦娘もいるがカレーの日はほとんどの艦娘達がここで夕食をとる。
ここで暮らしている艦娘達全員を収めて余りある大食堂は付属の厨房も含めて鎮守府自慢の設備である。
食堂を仕切っているのは給糧艦『間宮』だが、艦娘達が手伝うことも多い。
「暁、にんじんは残さないんだぞ」
「一人前のレディは好き嫌いなんかないんだから。それにカレーのにんじんは、食べられるし」
「ねぇねぇ、今日のカレーは誰のカレーかな」
「電は鳳翔さんの辛くないカレーが良いのです」
カレーは海軍の定番メニューということもあり普段に増して手伝いを申し出る艦娘が多い。
客船仕込みの葡萄酒を使った飛鷹姉妹の欧風カレー。
豚ばら肉とたくさんのお野菜が入った鳳翔のカレーは正調おふくろの味だ。
意外なところでは酒粕を使った那智の和風カレーや苦瓜の入った伊58のカレーも人気だ。
「今日のカレーは……提督カレー、やったぁ!」
男子厨房に入るべからず、昭和の提督が見たら仰天するだろうが提督の趣味は料理である。
最初は内緒にしていたのだが、最近は良く厨房に立つようになっていた。
材料を刻んだり、具材を煮込んだりしながら戦略を練るのがいいらしい。
特に沖ノ島攻略戦が始まってからというもの、彼は厨房に立つことが増えた。
信頼し可愛がっている艦娘達が己が作った料理を喜んで食べてくれるのが何よりの気分転換なのだ。
今日の提督カレーはバターの香りが芳しいチキンカレーだ。
提督カレーは毎回色々変わる。きちんと手間をかけて作られた提督カレーは艦娘達に人気が高い。
配膳口では割烹着姿も神々しく《艦隊の母》鳳翔が艦娘達にカレーを盛り付けている。
「上々ね」
「メシウマ!」
「はぁ…癒されます…感謝ですね…」
「ほう。これはなかなかのものじゃな」
あちらこちらで艦娘達が楽しげにカレーを平らげていく。
併設されている厨房から提督がその光景を目を細めながら眺めている。
艦娘達との生活。
今の彼にとってかけがえのないものがそこにはあった。
暫く食堂を眺めていた提督は、傍らでいそいそと調理器具を片づけている艦娘に笑いかけた。
「羽黒、手伝ってくれてありがとう」
326 :2-358:2014/05/11(日) 22:47:25.56 ID:QFRj+f2x
4-1-2
「いえ、あの、こちらこそありがとうございます」
恥ずかしそうに羽黒は微笑んだ。
白い三角巾と同じく白いエプロンが彼女の楚々とした魅力を強調する。
「司令官さんのお手伝いはお料理の勉強になります」
「そんなに大したものじゃないよ。でも羽黒が手伝ってくれて本当に助かった」
そう言っていつものように頭を撫でる。
艦娘の頭を撫でて労いや感謝の意を表すのは提督の癖だった。
羽黒は嬉しそうに頬を赤らめた。
―司令官さんの手、優しくてあったかい。
彼女は提督に対して好意以上の気持ちを持っていた。
だが、生来の気弱さからそれを提督に伝えられずにいる。
姉たちや一部の積極的な艦娘達はストレートに提督に気持ちを伝え、それ相応に提督との時間を楽しんでいる。
―私にはみんなみたいな積極性はないから…それに、もし、嫌いって言われたらどうしよう。
そう思い俯いている日々を続けていたが、二週間程前に見かけた提督と足柄の密事から羽黒の中で何かが芽生えた。
那智も妙高もそれぞれに提督と深い関係にある事を目撃してしまった。
同じ姉妹艦にできたのに。
自己嫌悪と嫉妬が羽黒の胸に渦巻いた。
ともすればそれは暗い悪い方へと彼女を導いてしまっただろう。
だが、ここで彼女は思い出す。
『艦内生活一般心得 宏量大度、精神爽快なるべし。狭量は軍隊の一致を破り、陰欝は士気を沮喪せしむ。』
帝国海軍昭和14年練習艦隊心得が彼女はうじうじするのを止め正面からの行動に出る事を決めた。
まごうことなく彼女は帝国海軍の一員、太平洋を所狭しと暴れまわった甲型巡洋艦なのだ。
そして『見敵必戦』こそは彼女達のモットーだった。
彼女は提督に思いを伝えるための作戦を練った。
そして、機会を増やせば同時に告白できる機会も増える、という結論に達した。
鳳翔にクッキーの作り方を習って以来、出撃の合間や休養日を使い料理の腕を磨いてきた。
特訓のおかげか一通りの事はできるようになり、ここしばらくは提督と肩を並べて厨房に立つことに成功していた。
取りあえず前哨戦に勝利したというべきだろう。
だが、彼女の目標はここではない。
―こ、ここで満足しちゃダメ。
327 :2-358:2014/05/11(日) 22:53:24.20 ID:QFRj+f2x
4-1-3
意を決した羽黒は精一杯の勇気を奮い起こした。
「あ、あの司令官さん」
「ん?どうした」
「あの、その…」
もじもじと先に進まない。
そんな姿の羽黒に何人かの艦娘達が気付いて無言のエールを送る。
照れ屋でおとなしい羽黒はともすれば臆病なイメージが印象に残ってしまう。
しかし、戦場での彼女は勇敢かつ熟練した海古強者だった。
『海の餓狼』妙高型重巡の名に恥じないその戦いぶりとその身を持って僚艦の盾にすらなる仲間思いの性格から姉妹のみならず他の艦娘からの信頼も高い。
目の前で茹蛸のようになる羽黒の頭を撫でている提督も内心の昂ぶりを自覚していた。
艦娘達に囲まれた生活に好意を寄せてくれる艦娘からのアプローチ。
口さがない艦娘達から鎮守府の種馬だのち○こ司令だの呼ばれている提督だがそれ故、余計に博愛主義を貫いてきたし艦娘達も敢えて提督を独占することは無かった。
『海軍士官たるもの港ごとに女がいて、粋な遊びの一つや二つできなくてどうする』
英雄色を好む、という言葉が一種のステータスとして通ってた時代の記憶を根底に持つ艦娘達にとっては、男子たるもの複数の女性にもてることは美徳としてとられているようだ。
現代の女性から見たら男のわがままのそのものだが、何しろ相手は大正昭和の強い女ばかりだ。
艦娘達が自分を好いてくれているのは嬉しい。どの艦娘も愛しい。言うなればお妾さんだ。
だが、かつて連合艦隊を率いていた提督達に及びもつかないひよっこである事を自覚している彼にとってはどうにもこそばゆい現実でもあった。
帝国海軍の将帥たちのように粋にとはいかず、ただの優柔不断になっている自分をなさけなく思ってしまう。
数いる艦娘の中でも羽黒は提督の中では特別の艦娘だった。
カムラン半島沖で彼女に出会ったとき提督は彼女に恋してしまった。
他の艦娘達に抱く感情とそれはちょっと違っていた。
だからこそ余計に自分が羽黒に惚れている事を意識してしまうと他の艦娘達との関係が壊れてしまうようで怖かった。
はっと我に返るともじもじしている羽黒と視線が合ってしまった。
艤装を外し白い前掛けの前に手を組み猫背気味にこちらを見ていた羽黒は提督に一歩踏みよった。
「あの…今夜、お部屋にお伺いしても……いいですか?」
普段のおどおどした口調とは打って変わった決意の籠った声。
ぎゅっと握られた手が小刻みに震えていた。
今まで逃げていた自分が恥ずかしい。当に答えは出ていたのだ。
羽黒の引っ込み思案な性格を利用して、羽黒に振られる事を恐れていたのだ。
あの慎ましい羽黒が勇気を振り絞って言ってくれたのだ。
答えなければ日本男児ではない。
328 :2-358:2014/05/11(日) 22:55:44.62 ID:QFRj+f2x
夷を決してた提督は出撃前のされと同等の緊張で羽黒に応えた。
「わかった……夕食終了後、2200に私室で待っている」
提督は前掛けを外し、照れ隠しか軍帽を目深にかぶると傍らの給糧艦間宮に声をかけると、そのまま足早に厨房から逃げるように出ていった。
羽黒は俯いたままエプロン裾を握りしめている。
―った……やったぁ。やっと言えたぁ……司令官さんと二人きり。
大きな瞳は潤み、今にも涙が零れ落ちそうだ。
立ち尽くす羽黒の肩が優しくそっと抱かれた。
顔を上げると鳳翔が柔和な笑顔を浮かべていた。
差し出されたハンカチで目頭を押さえると涙が零れる。しばらくの間、肩を抱いていた鳳翔がそっと促す。
「食べましょ。提督のカレー」
羽黒の心中をおもんばかってかそれ以上は何も言わない。
こくりと小さく頷いた羽黒は銀盆を持って食堂のテーブルに向かう。
銀盆の上には鳳翔の用意してくれたカレーライスと副菜が乗っている。
「おい、羽黒。ここだ」「どうしたの?失敗したの!まだチャンスあるか-」「足柄。声が大きいわ……ここ空いてるわよ」
ぽてぽてと心此処に無く歩く羽黒を姉たちが三者三様に呼び止めた。
姉たちは姉たちなりに羽黒の心配をしていたようだ。
ほとんどの艦娘達は食事に夢中で、提督と羽黒との一連のやりとりを見ていたものはごく少数だったが姉たちは一部始終を見ていたらしい。
さすがは姉妹艦である。
ちょっこんとテーブルに向かう羽黒を姉妹たちは神妙な顔で迎えた。
俯いてカレーを見つめる羽黒の表情は見えない。
暫くの沈黙の後、那智が口を開いた。
「その、なんだ……飲むか。今夜は私が付き合うぞ」
無関心なような顔をしてその実、情実細やかな次女が心配げに切り出す。
「い、一回や二回、断られたって大丈夫。チャレンジよチャレンジ!」
聞きようによってはカラ元気に聞こえてしまうところが足柄の悲しいところだ。
考えようによっては彼女が一番提督(の肉体?)に飢えているようにみえる。
だからライバルが減って喜ぶべきなんだろうがそこを励ましてしまうところが三女の良いところなのだろう。
「―提督が羽黒を傷つける事を言ったのなら後でしっかりお説教してあげる」
普段は優しくお淑やかな長女だが、敵に回すとこれほど怖い相手はいない。
提督に理路整然と意見できる娘は霧島と妙高、不知火ぐらいである。
「あ、あのね…」
俯いたまま、優しい末っ子はぽそりと口を開いた。
ゴクリ。
四姉妹の顔に緊張が走る。
「今夜、私室に…来なさいって」
三人の姉は顔を見合わせると微笑ましいちょっと意味深な笑顔で愛妹に言った。
「「羽黒、頑張ってね!」」
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後書き |
330 :2-358:2014/05/11(日) 23:06:43.31 ID:QFRj+f2x
取りあえず羽黒、頑張った。
ダメなのは提督=書き手だ。
部屋のあれこれも、なんというか、全身舐めしゃぶってるのをなんとか
見ていただけるレベルにまとめてます。
…嫁、難しい。浮気の鈴谷と長波に手を出してしまいそう。
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最終更新:2014年05月20日 00:45