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2007年9月 - (2007/09/05 (水) 18:07:19) の編集履歴(バックアップ)


木材情報286 “売り手市場時代”の課題


 大型バイオマス発電施設の相次ぐ稼働率などを背景に、木質燃料チップは「買い手市場」から「売り手市場」へと移行が決定的になった、と言われて久しい。原材料である木くずの質に関係なく燃料チップ化される傾向にマテリアルリサイクルが押され、パーティクルボードメーカーなどは材不足に悩まされている。製紙工場の場合は、木質燃料チップと製紙原料、両方のユーザーであるので、微妙なバランスの上に乗る形となっている。
 パーティクルボードメーカーのなかには、広域的に集荷担当者が木質チップ業各社を訪ね、材の振り向けを依頼する動きも見られる。原料の木質チップの入荷が思わしくないと、精算の一時停止もあり得るので、まさに綱渡り状態の自転車操業を余儀なくされる状況だ。また、関東方面から供給されていた原料チップも、大型バイオマス発電施設の稼働により、先細り傾向に。今後は、原料の木材チップの買値をボードメーカーがどこまで引き上げられるかによって、入荷量が左右されそうだ。
 木質チップ業者にとっては、待望の「売り手市場時代」の到来であるはずが、需給バランスの均衡点を遙かに越える現状では、逆に需要の大きさが常に不安材料となる。
 古材チップ業者の月間入荷量だけを見ると、極端な数字の落ち込みはないものの、業界では「明らかに入荷物の質が悪くなっている」との声が共通して聞かれる。木くずの奪い合いが激化するなか、供給すべき絶対量を確保するため、従来なら積極的に取り扱っていなかったような質の悪い木くずも受け入れているためだ。
 一方、製紙原料用の製品チップを生産する業者の間では「従来にも増して苦労して原料木くずを確保しているのに、製品の売却条件は旧態依然のまま」との不満も。製紙原料用チップは、納品時の検査で一定量が「歩引き」される。需要家は、水分やダスト分を全体から差し引いた量に対して買値をつける。つまり、チップ業者にとっては、手間隙かけて生産した製品が売る段で常に「目減り」することになる。
 今後、「売り手市場」が「本物」となるには、これらの課題の見直しも必要になってくる。

 

※以前にも書いたように、木材チップには一般的な市場がなく、価格と質のバランスについて明確な基準や指標がないので「本物の市場」をどう成立させるか難しいところです。業者間のコミュニケーションや一定の情報公開が大切でしょう。