見学記録
作成:野瀬光弘(5月23日)

対象:株式会社水口テクノス
〒528-0074 滋賀県甲賀市水口町松尾502-18
URL http://www.biwacity.com/m-tec/

1.会社の沿革(セミナー資料より)
 昭和33年 水口衛生社創業。滋賀県水口町、信楽町から処理を受託(し尿、ごみ)
 昭和56年 株式を取得
 平成11年 「株式会社水口テクノス」に社名変更
 平成13年 生ごみ堆肥化施設を新設(4.9トン/日)
 平成16年 生ごみ堆肥化施設を増設(移築)(22.2トン/日)
 平成18年 RDF施設を新設(20トン/日)

2.事業の内容
(1)生ごみ循環エコロジーシステム
①経緯
 平成15年度に旧甲賀郡7町(現甲賀市・湖南市)から出された家庭系可燃ごみは24,000トンあり、処理場である「甲賀広域行政組合衛生センター」で事業系ごみを含めて、1日160トンの処理を行っている。24時間創業を行っているが、このままでは新しい処理施設が必要になり、行政や住民に負担が生じてしまう。そこで、生ごみを分別し、高熟成堆肥としてリサイクルさせるシステムを開発した。
 このシステムは、会社で畜産関係の水処理にも携わっていた事業統括部の井狩部長がアイデアを旧水口町に提案した。当時の町長は環境に熱心で、平成12年にISO14001の取得に乗り出し、ごみを16品目に分別するといった実績がある。

②導入にあたっての条件
 旧水口町へシステムを提案したときにクリアすべき条件として下記の3つが提示され、その対策を講じた。
  • 住民と行政の経済的な負担を減らす
 →施設建設費は焼却施設に比べて安くつく(30トン/日なら約5分の1)。ランニングコストも安いらしい(定量データは明記されていない)。各家庭は1つ1,000円の密閉式バケツ(補助は4分の1)を購入するか、自分で容器を用意する。
  • 臭気対策をきちんと行う
 →処理施設内のにおいは消臭効果の高い液肥を散布することによって抑えている。各家庭では種堆肥を使うのであまりにおいはしない。
  • できあがった堆肥の需要先を確保する
 →堆肥の余剰はなく、契約世帯が増えているのでむしろ足りないくらい。

③堆肥化のプロセス
 過程でのプロセス要項に従い、サンドイッチ方式で生ごみをバケツなどに投入する。ここで、容器の底に種堆肥を2cm程度の厚さに敷いた上で、生ごみを水切り後に投入し、それが隠れる程度の厚さに種堆肥を入れることを繰り返す。処理できないものとしては、金属、たばこの吸い殻、ビニール袋、プラスチック類、トレー、生け花など。
  ↓
 地域ゴミステーションに設置してある専用回収容器に家庭の生ごみを投入する。
  ↓
 生ごみ専用回収車で週2回各地域ステーションで専用回収容器ごと回収。
  ↓
 リサイクルセンターで草、せん定枝、戻し堆肥などと混合し、一次発酵に約9日間、二次発酵に約40日間かかる。
  ↓
 各家庭に種堆肥を還元する(無料で週1回8リットル…元は10リットルだったが、足りなくなって袋を小さくした)。

④システムの参加者
 約5,400世帯(旧水口町の約70%、甲賀市31,046世帯の約17%)。他にも滋賀県内と京都府下のホテル・スーパーマーケット10軒(京都には安田産業やカンポの施設があるが、なぜか滋賀県へ流れている)。量は滋賀県内の方が多い。
 一般家庭の参加者は、堆肥が無料で入手できることもシステムに参加するメリットとして大きい。自治会長の考え方によって対応は変わってくる。また、外国人居住者の多い地域は参加があまり見込めない(自治体の説明不足?)。

⑤システムの運用
 処理場:5人(パートスタッフ)…50~60歳代の男性
 収集・運搬:5人
 →社員は全部で80人
 実験農場:300坪…いずれ堆肥が余ったときのことを想定してキュウリやトマト等を植栽。
 見学は2005年に約1,300人にのぼった。内訳は市民グループ、行政、中間処理業者の順に多い。
 生ごみ堆肥の成分分析は1ヶ月の1回のペースで実施しているが、データは社内に留めており、公開していない。

(2)他の事業
①廃油回収
 100リットル/日の処理能力がある施設でBDF(バイオディーゼル燃料)化を行い、できあがったら収集・運搬車の燃料に使っている。
②牛乳パック
 甲賀市内の小中学校から紙パックを回収し、洗浄・裁断してから製紙工場へ。
③缶・ペットボトル・ガラス
 缶はアルミとスチールに分けて、ペットボトルは圧縮・減容、ガラスは粉砕してから業者へ。
④廃家電
 粉砕してから鉄などの有用な金属を回収して処分。

3.ISO14001
(1)導入のきっかけ
 旧水口町が平成12年に認証を取得し、取引のあった水口テクノスも必要性を感じて取得した。当時としては滋賀県内の廃棄物処理業者の中ではおそらく初めての試みだった。

(2)メリットとデメリット
 メリットとしては以下の3点があげられる。
  • リスク管理がしっかりできる。
  • 車両事故や会社の電気使用などに気を遣う。
  • 作業の手順をマニュアルによって統一化した。
 毎年パフォーマンスに関しては年間目標を立てて、クリアしたかどうかを確認している。
 デメリットとしては以下の2点がある。
  • 業務の中でいろいろな手間が増えた。
  • ISOの中味を理解してもらうためなど、社員教育がたいへんになった。

4.マニフェスト
 事業系一廃では独自のマニフェストを提案し、平成14年から運用を開始した。マニフェストは次のような構成となっている。
 A票:排出者控 A事業所(排出者)
 A-1票:排出者所在自治体報告用 A事業所から排出自治体へ
 B票:輸送業者控 B業者(収集・運搬業者)
 C票:中間処理業者控 C業者(中間処理業者)
 D票:中間処理場所在自治体報告用 C業者から甲賀市へ
 D-1票:処理責任者各認容 甲賀市から排出自治体へ
 一般廃棄物の処理は市町村の固有事務であるため、事業所から排出された者であっても、その処理確認票(D-1票)は排出元自治体へ戻り、A-1票と突合させることにより、適正処理の確認ができる。現在は年間数千枚の運用実績がある。

5.感想
 生ごみ堆肥化システムは、他にも山形県長井市、埼玉県狭山市、熊本県水俣市などで導入されているが、一般家庭の負担が大きかったりなどデメリットもある。ところが、水口テクノスは密閉バケツに種堆肥を入れるという簡易な方法を開発し、におい対策とコスト削減を実現している。まだ甲賀市内で2割足らずしか参加者がおらず、今後は事業系一廃にもさらに収集範囲を拡大することになる。その場合、長期的には供給過多になる可能性もあり、実験農場での成果を踏まえた需要の開拓は不可欠と考えられる。
最終更新:2006年05月23日 11:31