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電気用品安全法
作成:足立(2006.04.11)
電気用品安全法は、平成11年8月に「通商産業省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律」(法律第121号)が公布され、電気用品取締法が改正されて電気用品安全法となり、平成13年4月1日施行された。
改正の背景として、近年では電気製品を生産する技術レベルが飛躍的に向上し、設計・製造が原因で発生した事故が減少していること、海外との安全規制の違いによる貿易障壁があるため、電気製品を海外から日本へ輸出することの妨げになっているということがあげられる。
これらの背景の下、政府は、法改正の考え方として、電気製品が市場に出回る前に政府が事前に安全チェックをする制度を廃止し、今後は「自己責任原則」による、つまり製造事業者、輸入事業者、販売事業者、そして消費者の電気製品に対する安全意識を活用するということとしている。
電気製品安全法では、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とし、製造・輸入事業者には、法律対象になっている製品を製造・輸入するときは、安全を確保するために必要な技術基準に適合する必要があり、特定電気用品においては、登録検査機関の技術基準適合性の検査を受け認証されなくてはならない。また基準に適合した製品にはPSEマーク(表2)を付すことができ、販売事業者においては、マークが付されていない製品の販売を禁止するなど様々な措置(表1)を規定した。なお法律の効力は平成13年3月31日の法律施行以前に製造又は輸入された製品にも遡及し旧法に基づく表示のある電気用品の販売については、当該電気用品の品目毎に、それぞれ、5年間、7年間、10年間の経過措置期間(販売猶予期間)が設けられている。(表3)
経過措置期間内の電気用品については、当該期間内であれば自由に販売することが出来きる。経過措置期間をすぎた電気用品においては事業者が自主検査等を行いその安全性を確認した上で新たにPSEマークを付すことにより販売が可能となる。
また法律対象電気用品で技術基準に適合しないものを製造し・輸入・販売し事業者やマークが付されていない製品の販売をおこなった事業者に対しては、政府が強制的に回収命令(リコール)などを発動し、さらにそれらの命令に違反した場合には、1億円以下の罰金を科すなどの罰則が盛り込まれている。
表1
製品流通前の措置 |
①届出義務 電気用品の製造又は輸入の事業を行う者は、電気用品の区分に従い、事業開始の日から30日以内に、経済産業大臣に届け出なければならない。 |
②基準適合義務 届出事業者は、届出の型式の電気用品を製造し、又は輸入する場合においては、技術上の基準に適合するようにしなければならない。また、これらの電気用品について自主検査を行い、検査記録を作成し、保存しなければならない。 |
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③特定電気用品の適合性検査 届出事業者は、製造又は輸入に係る電気用品が特定電気用品である場合には、販売するときまでに登録検査機関の技術基準適合性検査を受け、適合性証明書の交付を受け、これを保存しなければならない。 |
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④表示 届出事業者は、①②③の義務を履行したときは、当該電気用品に省令で定める方式による表示を付することができる。 |
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⑤販売の制限 電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、④の表示が付されているものでなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはならない。 |
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製品流通後の措置 |
①報告の徴収 経済産業大臣は、法律の施行に必要な限度において、電気用品の製造、輸入、販売の各事業を行う者等に対し、その業務に関し報告をさせることができる。 |
②立入検査等 経済産業大臣は法律の施行に必要な限度において、その職員に、電気用品の製造、輸入若しくは販売の事業を行うもの等の事務所、工場、事業場、店舗又は倉庫に立ち入り、電気用品、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。(販売事業を行うものに関するものは、所在地を管轄する都道府県知事) |
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③改善命令 経済産業大臣は、届出事業者が基準適合義務等に違反していると認める場合には、届出事業者に対し、電気用品の製造、輸入又は検査の方法その他の業務の方法に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができる。 |
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④表示の禁止 経済産業大臣は、基準不適合な電気用品を製造又は輸入した場合においては危険又は障害の発生を防止するために必要があると認めるとき、検査記録の作成・保存義務や特定電気用品製造・輸入に係る認定・承認検査機関の技術基準適合性検査の受検義務を履行しなかったとき等において、届出事業者に対し、1年以内の期間を定めて届出に係る型式の電気用品に表示を付することを禁止することができる。 |
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⑤危険等防止命令 経済産業大臣は、届出事業者等による無表示品の販売、基準不適合品の製造、輸入、販売により危険又は障害が発生するおそれがあると認める場合において、当該危険又は障害の拡大を防止するため必要があると認めるときは、届出事業者等に対して、販売した電気用品の回収を図ることその他当該電気用品による危険及び障害の拡大を防止するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。 |
資料:電気用品安全法の概要(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/outline/hou_outline.htm
表2 対象電機製品に付される表示
特定電気用品 |
特定電気用品以外の電気用品 |
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構造又は使用方法その他の使用状況からみて特に危険又は障害の発生するおそれが多い電気用品、全112品目 |
特定電気用品以外で法律対象となっている電気用品、全338品目 |
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適合マーク |
※加えて、認定・承認検査機関のマーク、製造事業者等の名称(略称、登録商標を含む)、定格電圧、定格消費電力等が表示される |
※加えて、製造事業者等の名称(略称、登録商標を含む)、定格電圧、定格消費電力等が表示される |
対象商品例 |
電気温水器 電熱式・電動式おもちゃ 電気温蔵庫 電気マッサージ器 自動販売機 直流電源装置 |
電気こたつ 電気カーペット 電気冷蔵庫 電気かみそり 電気たこ焼き器 音響機器 |
※PSE:P及びSはProduct Safety、EはElectrical Appliance & Materials の略
表3 PSEマーク添付の猶予期間
法適用年月日 |
経過措置期間 |
対象家電 |
2006年4月 |
5年間 |
テレビ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、オーディオ機器、電子楽器など259品目 |
2008年4月 |
7年間 |
電気マッサージ器、電気ホットプレート、電気かみそり、電気冷房機、空気清浄機、電気スタンドなど101品目 |
2011年4月 |
10年間 |
マルチタップなど87品目 |
参考:経済産業省>電気用品安全法のページ
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/index.htm
図1 制度の流れ
参考:電気用品安全法の概要(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/outline/hou_outline.htm
経済産業省はビンテージものと呼ばれる電気楽器等については、希少価値も高く、事業者が検査を行うことが困難なものもあるとして、経済産業大臣に申請をして承認を受ければ、PSEマーク無しでも販売することができる「特別承認制度」を設けた。
この制度の創設の背景には、日本シンセサイザー・プログラマー協会が主導し電気用品安全法に反対した音楽家などの多数の有名人などとともに要望書と共に集めた署名を提出したことなどの動きなどがあげられる。
ビンテージ品だけが特例措置となり、一般家電との対応に差が生まれた点について、弁護士で東京経済大学教授の村千鶴子氏は「結局は市場規模が小さく、日常生活への影響も少ないが、声は大きい有名人が多い音楽団体に、お目こぼし的に配慮したという印象で一貫性がない」と分析している。
中古品販売業者等がPSEマークの付されていない製品を販売するためには、新たにPSEマークを取得する必要がある。PSEマークは、製造事業者が自社で添付することが前提であり、販売店が中古品に付けるためには、製造事業者として経済産業省に届けを出す必要がある。さらに、製品1つ1つに電気的な加工を行い(これで製造したとみなされる)、絶縁耐力試験等定められたチェックを行い、その記録を3年間保存する。特定電気用品は、第三者機関のチェックを受けなくてはならない。そのためハードオフやソフマップなど、PSEマークのない商品の買い取り・販売を終了すると発表した店も出ている。
図2 中古品販売業者のPSEマーク添付のための手順
こうした業者の負担をできる限り軽減するため、経済産業省は検査に必要な機器の無料貸出、事業者からの要請に応じて無料で出張検査サービス等の措置を講じた。しかし業者等は、「われわれは中古品を毎日仕入れている。検査の処理能力から、検査が遅れれば、その分、倉庫代などが負担増となり、そうなれば、結局は廃棄せざるを得なくなる」「そもそも中古販売業者を製造事業者として登録させ、自主検査をさせること自体に無理がある。われわれは中古販売のプロだが、製造事業者ではないのに、検査をすれば、製造事業者とみなされる。事故が起きた際に責任を問われても、そこまでは負えない」との意見が出ている。また民主党の川内博史衆院議員も「一体、誰のお金で検査機器を買い、無料貸し出し、出張検査サービスをするのか。全部、国民の税金だ。自分たちの過ちの尻ぬぐいを、国民の税金でやるのは本末転倒」と経産省の対応を批判している。
またPSE問題を考える会(代表 小川浩一郎)は経産省の周知不足で、4月までにPSEマークを付ける余裕がないなどとし、同法見直しや4月以降もPSEマークがない中古家電を販売できるよう猶予期間を延長することを求めていた。
それを受けて、経済産業産省は中古品販売業者などがPSEマークを付けるための検査機器が全国的に不足していることを重視し、電気用品安全法の対象外であるレンタルの形式が整っていれば、PSEマークがなくてもレンタルとみなし、事実上の販売を当面の間認めることにした。
①引き渡した中古品は販売ではなくレンタルとみなし、4月以降も事実上販売可能 ②レンタル後のPSEマーク付与や、レンタル期間終了後の無償譲渡を容認 →レンタル期間終了後に、自主検査でマークを取得してから無償譲渡、レンタルする際に契約書を交わすことなどは義務づけず、レンタル終了後に自主検査を実施したかどうかも販売業者の善意に委ね、積極的なチェック体制は取らない ③業者間の取引にPSEマークは不要 ④検査機器の使い方や届け出の方法など業者向け講習会を全国で実施 ⑤当面の措置は「数カ月間」とする |
中古品販売業者への救済措置 |
(1)不十分な告知・周知
2001年の電気用品安全法施行以来、実際に法律が適用されるまでの猶予期間は5年間あったが、経済産業省の告知・周知は十分ではなかったとの意見が関係業界や政界からでている。経済産業省も、関係業界に説明したり、官報などで告知してきたとしながらも、「説明が十分に行き渡っていなかったかもしれない」と、告知不足を認めている。また、中古品販売店からは、「1月の終わりごろ、業界の噂で知った。経産省から指導もなかった」との意見が出ている。
また、法の適応される範囲についても、衆院予算委分科会での議員からの「中古品が同法の対象になることは、法令集のどこにも書いていない。だれが、いつ、どこで決めたのか」との質問に対して経済産業省から、「改定前の電気用品取締法以来、中古品は排除されていないと解釈し、行政をすすめてきた。法令集は、よく確認してまいっていません」と、法令集にもとづく根拠を示せなかった。このように、法の適応される範囲が、不明瞭であったため周知が遅れたとの意見も出ている。経産省が周知を内部で検討し始めたのは昨年10月に一部中古品販売業者の問い合わせがあったからであり、実際に、経済産業省がホームページ上に中古品が、電気用品安全法の対象であることを明示したのは今年の2月10日のことである。
(2)在庫処分の問題
家電用品安全法施行後に製造された製品にはPSEマークがついているため、猶予期間が終わっても販売に支障はないが、それ以前に製造された製品は、中古品販売業者が販売を続けるには、新たに製造事業者として国に届け出たうえ、自社で安全試験を実施しなければならない。製造物責任(PL)法による責任や、他社製品を自社製品として販売することで商標権の問題が生じる恐れもあり、そこまでやる業者は少ないという意見もある。
2006年4月に経過措置期間が終了した電化製品には、家電リサイクル法の対象となっている家電4品目(テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機)が含まれており、処分するにはリサイクル費用等の経費が多くかかる。よって、売れ残った商品等の在庫を処分しようと、不法投棄をするような業者がみられることも予想される。
表4 家電リサイクル法4品目の不法投棄件数
テレビ |
エアコン |
冷蔵庫・冷凍庫 |
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