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循環資源の国際移動 - (2006/05/23 (火) 11:01:32) の編集履歴(バックアップ)


循環資源の国際移動

作成:野瀬光弘(5月23日)

1.アジア各国の経済成長

 アジア地域では、昭和40年から30年以上にもわたって、世界の他の地域よりも高い経済成長を続けてきた。図1(省略に示したように、東アジアでは日本に比べて中国、韓国ともおおむね高い経済成長率を維持している。他にもインドネシア、マレーシア、タイなどの東南アジア諸国での経済成長が特に高くなっており、「アジアの奇跡」とも呼ばれている。平成9年から11年にかけて、韓国やタイなどで通貨危機が起り、一時的にマイナス成長となったものの、その後はV字回復をして、安定的な成長が続いている。

 こうした経済成長は、途上国によくみられる一次産品の生産から、付加価値の大きな製造業、サービス業への産業転換が進んできたことが大きな理由となっている。この地域の労働賃金が安いこともあり、海外の企業が東アジア地域に生産拠点を移転し、世界の主要な工業生産地となっている。

 日本からも、昭和60年代の円高の進展を受けて、アジア諸国への生産拠点の移転が盛んになってきた。図2(省略に示すように、日本企業の現地法人数は、アジア地域において急速に増加している。平成に入ってからは、中国の市場経済への移行を受けて、特に中国の現地法人数の伸びが著しくなっている。製造業における海外生産比率も、図3(省略に示すように年々増加している。

 図4(省略に示したように、昭和56、平成313年の各時点における東アジアの貿易額をみると、中国、香港、日本、NIEsASEAN4(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)の間はいずれも増大の一途をたどり、総額は1,043億ドルから、3,331億ドル、7,029億ドルへと20年で約7倍となった。20年で日本の輸出は約6倍(51億ドル→309億ドル)、輸入は約10倍(47億ドル→450億ドル)となった。日本とNIEsとの貿易は昭和56年から平成3年で急速に拡大し、ASEAN4との関係も同様に着実な増加傾向がみられる。また、日本と中国との貿易は、平成3年から平成13年にかけて急増している。

 同地域間における一般機械と電気機械の貿易量の推移を図5(省略に示す。平成2年に比べて平成12年には、日本による一般機械と電気機械の輸入のうち、中国からはそれぞれ約32倍(1億ドル→32億ドル)、約58倍(1億ドル→58億ドル)、NIEsからはそれぞれ約5.7倍(18億ドル→103億ドル)、約2.7倍(40億ドル→106億ドル)、ASEAN4からはそれぞれ約12倍(5億ドル→60億ドル)、約9倍(11億ドル→97億ドル)といずれも増加が著しい。

 この背景としては、日本から東アジア、東南アジア諸国に生産拠点が移転することで、部品や製品の形での輸入が増えたことがあげられる。

2.アジア各国の循環資源の輸出入状況

 アジア主要国における平成15年の再生資源の純輸出量を表1(省略に示す。値がプラスとなっているのは輸入より輸出が大きい状態、マイナスは輸入のほうが大きい状態を示している。日本は、アルミを除いて純輸出国となっている。韓国、台湾、中国をはじめ、アジア諸国は概ね再生資源の順輸入国となっている。日本以外にも、ヨーロッパ等からも循環資源を輸入している。

 中国は、鉛以外のいずれの品目でも純輸入量が最も大きくなっており、アジア最大の再生資源需要国となっている。

 日本からのアジア地域への循環資源の輸出量は、いずれも近年増加している。急増した代表的な品目としてはプラスチックくずがあげられる。

 プラスチックくずについては、平成9年以降増加を続けており、以前は香港への輸出割合が多かったが、それ以上に中国への輸出が急増している(図5・・・省略)。なお、図6(省略に示すように、香港経由で中国へ輸出されている分が多く、実質的には大部分が中国で消費されているものと推計される。日本からのプラスチックくずの輸出量は、平成16年には85万トンにのぼり、中国向けが減少した代わりに香港が急増した

 日本からの廃プラスチックのフローについてみると、平成15年には、日本の廃プラスチック総排出量1,001万トンに対して、マテリアルリサイクルされた量(164万トン)のうち、輸出によるものが68万トンと約3分の1を占めるに至っている。リサイクルが海外への依存を強めている傾向がうかがえる。

 古紙についても同様に輸出が増加した(図7・・・省略)。特に、平成8年から9年にかけて、同12年から13年にかけての台湾、中国、タイへの輸出増加が著しい。こうした海外の需要に支えられて、だぶつきがちであった古紙も循環するようになり、古紙回収価格も一時的に上昇した。

3.循環資源の流動拡大の要因

 国際流動が拡大している背景としては、大きく下記の3つに整理することができる。

①アジア各国の経済成長に伴い、天然資源より安価な原料として、循環資源の需要が拡大したことがあげられる。石油や金属などの資源は、中国をはじめとする新興工業国における消費が急増していることを受けて、近年価格は上昇傾向にある。こうした価格上昇も受けて、より安い循環資源を受入れる流れとなっている。日本国内では、人件費がかかったり、環境対策等に多くの投資がかかることから逆有償となっているものでも、こうした国では有償として取引きがされている。図8(省略に示したペットボトルの例に見るように、国内では無価物つまり逆有償となるのものが、海外では有価物となるため、一般的な輸出とともに不法輸出の要因となっている

②日本などの輸出側の事情として、廃棄物の適正処理の観点から資源回収が進められたことがあげられる。容器包装リサイクル法などを通じて、回収される品目は増加しており、それらが量的にまとまって集まるようになっており、国内の市場で回しきれなくなっている。古紙などは、中国への輸出が拡大した平成14年以前には、国内でだぶついており、逆有償に近い状態であったが、中国への輸出が増大するにつれ、有価での取引がなされるようになっている。

③国内産業の空洞化があげられる。日本のメーカーでも、組み立て工程をアジアに移転する事例が多く、部品等も現地で生産・調達することとなる。この製品が日本に輸入され廃棄された場合には、国内では製造工程がないために、同じ製品に利用する場合には、移転先に輸出して利用する必要がでてくる。

 ブラウン管テレビは、家電リサイクル法の対象であり、フロントパネルに使われている鉛ガラスもリサイクルすることが求められるが、回収された鉛ガラスはブラウン管テレビ以外には用途はなく、海外に輸出せざるをえない。

 また逆に、海外のリサイクル・廃棄物処理の体制が未整備であることから、海外の工場で発生した廃棄物の一部を日本に輸入して処理するケースも出てきている。

参考文献・ホームページ
(1)小島道一(2005)アジアにおける循環資源貿易.アジア経済研究所,183p
(2)http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/committee/d/18/youri18_ap06-1.pdf(経済産業省ホームページ)
(3)プラスチック処理促進協会:プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況2003年版
(4)http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/3r_policy/policy/pdf/grobal/ref_12.pdf(経済産業省ホームページ)
(5)http://eco.goo.ne.jp/business/csr/global/clm26.html(「寺園淳「日本から中国へ 循環資源の越境移動」環境gooホームページ」