夜明け(よあけ)は粕谷紀子の漫画作品(デビュー作)。少女コミック1975年17号掲載。18ページ。
嵐の夜、出産を控えた母の容態が悪化。折しも嵐のため電話は通じず、長男のユタは、夜12時までに隣町の医者を呼ぶよう父に頼まれ、嵐の中を自転車で出発する。
途中、電話線を修復しに向かう地元の青年たちと口論になり、あわや乱闘となる所だったが、ひとりが双方が気が立っているとなだめ、ユタは再び走り出す。
「気が立ってる?あなたたちにぼくの気持ちがわかるはずがない!」
ユタは、母が少女のように嬉しそうに、弟か妹が出来ることを告げた時の驚き・母の優しさを思い出し、母の手をこの世から消すまいと奮起する。
しかし暗い森で、彼は恐怖を感じ足が動かなくなってしまう。そして、母が死んだときの空想をし、あわててその想像をかき消す。
「母さんもベビーも死なせてなるもんか!!神なんていやしない」
絶対に間に合ってみせる。この丘を越え隣町にさえ着けば、先生の車がある。ついに、町の灯りが見えた。
…しかし無情にも、嵐で倒れた木につまづき、自転車ごとユタは投げ出されてしまう。自転車は壊れ、ユタは水たまりに突っ伏し寒さに震える。
「かあさん、かあさん!ぼくだけが希望をつなぐか細い糸だったのに」
産まれてくるはずだった赤ん坊のことを考えると、ユタはもはや寒さも痛みも感じなくなっていた。
「このままぼくも死んでしまいたい。務めも責めも放り出して、行ってしまいたい」
いつしかユタは眠りに落ち、気が付くと夜明けを迎えていた。自然の大きさを感じ、その大きな力にすべてを任せようと思い、せめて自分の務めを果たそうと徒歩で隣町へ向かう…
すると、車から医師がユタに声をかける。なんとユタの家からの帰りだと言う。真夜中に電話線が復旧し、消防隊から連絡が入ったのだという。心配そうに、母のことを訪ねるユタ。
「安心したまえ。ご無事だよ。そして…かわいらしい妹さんだよ!」
ユタは安堵と喜びの笑みを浮かべた。
(終わり)