誰か拾って(バッドエンド)

「チィー!チィー!」
ゴミ回収所の側に置かれた段ボール箱。中に2匹の子タブンネがいます。
飼い主に捨てられたのです。
1匹は助けを求めてチィチィ鳴いていますが、もう1匹は痩せ細ってぐったりしています。
果たして誰か拾ってくれる人はいるのでしょうか。

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「おっ、タブンネか。ちょうどよかった」
ダンボール箱を覗き込んだのは、貧乏学生風の若者でした。
「チィチィ…」
子タブンネはちょっと嫌な予感がしましたが、もう1匹がどんどん弱っているので、
とにかく一刻も早く助けが必要です。「拾って」と手を伸ばしました。
「よーしよしよし」
若者は段ボール箱を抱えると、いそいそと学生寮に帰りました。

「おーい、いいもん拾ってきたぞ」「おっ、ナイス」
寮の食堂には学生達が集まっていました。鍋パーティーが開かれるため、
皆それぞれに具材を持ち寄っていたのです。
「毛だけ剃っておくか?」「面倒だ、そのまま入れちまえ」
先に野菜と調味料が入れられた鍋は、既にぐつぐつと煮えたぎっています。
段ボール箱を拾った若者が、子タブンネを鍋に放り込みました。

「チギャァァァァァァァァ!!!!」「ほーら、往生しろや」
絶叫を上げて暴れる子タブンネですが、菜箸で押さえつけられて鍋に沈められます。
「チビィ……チビィィ……」
だんだん小さくなっていく悲鳴を聞きながら、段ボール箱の中の衰弱している子タブンネは
プルプル震えることしかできません。逃げ出す体力もなく、料理されるのを待つのみです。
「おーい、もう1匹も入れようぜ」という学生の声が聞こえてきました………

捨てる神はあっても拾う者は神とは限りません。こうなるのが2匹の運命だったのです。

(バッドエンド・完)


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最終更新:2013年11月07日 23:59
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