誰か拾って(ワーストエンド)

「チィー!チィー!」
ゴミ回収所の側に置かれた段ボール箱。中に2匹の子タブンネがいます。
飼い主に捨てられたのです。
1匹は助けを求めてチィチィ鳴いていますが、もう1匹は痩せ細ってぐったりしています。
果たして誰か拾ってくれる人はいるのでしょうか。

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「何だよ、生きてるじゃねえか。全くルールを守らねえ奴ばっかりだな」
子タブンネを見つけた清掃業者がぶつくさ文句を言います。
「チィチィ…」
何と言われようと、子タブンネは必死です。弱っていく子を助けてと、
小さなお手手を清掃業者に伸ばしました。
「いいよ、面倒くせぇ。このくらいの大きさなら生ゴミ扱いでいいだろ」
そう言いながらもう一人の清掃業者が段ボール箱の蓋を閉め、ゴミ収集車に投げ込みます。
「チッ!?」「チヒィ…」
閉じ込められた子タブンネ達は真っ暗な中でうろたえますが、その耳に機械音が聞こえてきました。
ゴミ収集車の回転板が作動し、ゴミ袋をプレスしていくのです。
「ヂギャァーッ!!」「チヒィィィィ!!」
バキバキと段ボール箱が潰されていき、子タブンネ達は気を失いました。

どれくらい時間が経ったのか、子タブンネが目を覚ますと、段ボール箱は破けて外が見えていました。
「チ……チィチィ!?」
横を見ると、衰弱子タブンネの死体が横たわっていました。全身グシャグシャの無残な有り様です。
「チィ……チィィ……」
泣きながら子タブンネは外に出ようとしますが、全身に激痛が走ります。
辛うじて生き残ったものの、ゴミ収集車に砕かれた体は思うように動いてくれません。
それでも必死の思いで、這いずりながら箱の外に出た子タブンネは愕然としました。
そこはゴミ廃棄場の埋め立て地の中でした。地平線までゴミだらけです。
「チィチィ…!」
呼べど叫べど誰も答える者はいません。このままゴミの中で飢えと苦痛に苛まれながら朽ち果てるしかないのです。
「チィ…!チィィーーー!!」
悲痛な声は、空しく北風に吹き消されていくのでした。

捨てる神あればもっとひどいところに捨てる神あり。「地獄に底はない」というお話でした。

(ワーストエンド・完)


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最終更新:2013年11月08日 00:00
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