糞豚たちの夜2・かまいたち編(完結)

…背中がチクチクするミィ。死んでも感覚はあるのかミィ?
「コマコマ、起きてコマ」…ハッ?!
バッと身を起こすと、そこはビーチだったミィ。僕の背中をコマタナがツツいてたミィ。
ゆ、夢オチかミィ。見張りながらいつの間にか寝ちゃったんだミィ。辺りはもう夕闇に包まれかけてたミィ。
随分長いこと寝ちゃったんだミィ。僕が呆然としているとコマタナが
「コマコマ、やっと起きたコマ。もう夕食が終りかけてるコマ。
 人数分用意したはずなのに一匹分余ってるからおかしいなって思って呼びに来たんだコマ」
「夕食…?終り…?た、タブンネB子はどこミィ?!屋敷に戻ってるのかミィ!」
僕の剣幕にビックリしたみたいで、目をパチクリさせながらコマタナは
「コマコマ、お姉さんタブンネはもうとっくの昔に屋敷に戻ってるコマ。
 今頃食堂でボスや他のタブンネさんとご馳走を…」
コマタナの言葉が終わらないうちに僕は屋敷に向かって走り出したミィ。タブンネB子!
僕が寝ている間にB子の身に何かあったら僕は一生自分を許せないミィ!

「B子!タブンネB子ぉぉーっ!」僕は大声でB子を呼びながら屋敷中をどてどてと走り回ったミィ。
ガチャリと音がして食堂らしき部屋の扉が開いたミィ。タブンネB子が顔面クリムガンにして立っていたミィ。
「は、恥ずかしいミィ!そんな大声で私の名前を叫ばないでミィ!」
「ごめん、タブンネB子。無事だったかミィ?」
僕の言葉にB子はぜったいれいどより冷たい視線で
「おかげ様で、この通りピンピンしてるミィ。私を守るとか言いながら、A男ったら気持ち良さそうに寝ちゃって…
 しかも何が嬉しいのか時どきガッツポーズまでしてたミィ。たいした奴だ…ことミィ!」
そ、それを言われると面目無いミィ。タブンネB子の後ろから他のタブンネたちがゾロゾロと
「おいしかったミィ!」「最高のご馳走だったミィ〜」と口々に言いながら出てきたミィ。
「あれ?どっか行くのかミィ?」僕の問いにタブンネB子はウザそうな顔で
「これからミノムッチ村のお祭りに行くんだミィ。ミノムッチ村に住んでるオタチ、オオタチさんたちと
 コマタナちゃんたちの楽しいお祭りなんだミィ。…タブンネA男はついて来なくていいミィ」
お祭り…?!僕はラプラスさんの言葉を思い出したミィ!かまいたち祭り…それが危ないんだミィ!
「駄目ミィ!そこで僕らを殺そうとしているんだミィ!絶対行っちゃ駄目ミィ!」
僕の言葉にタブンネB子は…な、泣いてるミィ?!
「タブンネA男、どうしちゃったのミィ?この間からずっとおかしいミィ。救急医療室に半月も入院するほどの
 大怪我してきたり、変な武器を買い揃えたり…今日だって、優しいポケモンさんたちにひどい事を言ったり…
 私、A男の事がわからないミィ!
 …少しの間、距離をとった方がいいミィ。お互いを見つめなおした方がきっとお互いのためミィ。
 …さよなら!タブンネA男!」
「ま、待ってミィ!タブンネB子!」僕の制止も聞かずB子は行っちゃったミィ。
なんて事だミィ。僕は…僕は間違っていたのかミィ?僕はただ…タブンネB子を守りたかっただけなのに。
…いや。ここで挫けたら意味が無いミィ。僕は、僕はB子を守らなくちゃいけないんだミィ。
僕はキリキザンの「んあー?今ごろ来たのかよ。腹減ってたらなんか作らせるけど」という言葉も無視して
タブンネB子たちの後を追ったミィ。お腹は空いてるけどそれどころじゃないミィ!

ミノムッチ村は屋敷からそう離れていない場所にあったミィ。祭り拍子やポケモンたちの声が聴こえてきたミィ。
村の中央にはでっかい櫓があってその周りをコマタナ、オタチ、オオタチが
「コマッコマッ♪」「タチェタチェ♪」と歌いながら楽しそうに踊っていたミィ。
タブンネたちもその踊りに混じったりやんややんやと囃したてたりで、平和な、本当に平和な光景だったミィ。
「タブンネA男…」後ろから声をかけられて、振り向くとタブンネB子がいたミィ。B子は僕に諭すように言ったミィ。
「言ったでしょ、A男。ここには優しいポケモンさんたちしかいないんだミィ。
 ぎゃくなんとかとか、毒とか…全部A男の考えすぎなんだミィ。ホラーゲームや悪いサイトの影響を
 受けすぎちゃったんだミィ。もう今日のことは忘れてあげるからタブンネA男も遊ぶミィ。
 コマオタチ祭りを楽しむんだミィ」
「こ、こまおた…?かまいた…」な、なんじゃそりゃミャァアアア!コマタナ+オタチでコマオタチかミィ!
本家真っ青の苦しすぎるダジャレミィ!ってかラプラスさんの聞き間違いかミィ!どうゆう耳してんだミィ!
僕は全身が脱力しちゃったミィ。…しばらくインターネットは控えるミィ。精神にキすぎだミィ。
こうなったらもうヤケクソミィ!歌って踊って精神をリフレッシュさせるミィ!僕は踊りの輪に加わっていったミィ。

そうして夜はふけていったミィ。祭りの定番、焼きソバ(またかミィ)やリンゴ飴も食べて僕は楽しく過ごしていったミィ。
こうしてみると本当に馬鹿馬鹿しい事ばかりしてたミィ。このワルサーPoke38だって、手に入れるのに
あんなに酷い目にあって…そうだ。こんな物もう捨てちゃうミィ。だいたい拳銃なんてポケモンの世界には似合わないミィ。
ポケモンの世界は皆仲良しで、平和ですばらしいものなんだミィ。物騒で硝煙臭いものはあってはならないんだミィ。
僕がワルサーPoke38を投げ捨てようとしたその時。
櫓の上からいつの間にか登ったらしいキリキザンの声が聴こえてきたミィ。
「あー、あー、マイクテス、マイクテス。皆さーん。コマオタチ祭りもいい感じになってまいりました。
 そろそろメインゲストであるタブンネちゃんたちに集まっていただきましょう。
 さあ!タブンネちゃんたちは櫓の前に集まってください!」
キリキザンの言葉にタブンネたちはミッミィッと嬉しそうな声をあげながら櫓の前に集合したミィ。

当然僕とタブンネB子もだミィ。今度はどんな楽しい事がおきるのかミィ?
コマタナたちとオタチ、オオタチさんたちは皆ニコニコしながら僕らを見てるミィ。なんだか照れるミィ。
「よしよし、全員集まったな。
 …殺れ!コマタナども!」『コマーッ!』
キリキザンの合図にコマタナたちが一斉に一匹のタブンネに飛び掛ったミィ。鋭い刃が何閃も輝いたミィ。
「ミヒッ?!ミギャァァアアアア!!」襲われたタブンネはあっと言う間にズタズタのズタボロ肉にされ…
「タチィェエエエエッ!」オオタチさん、いやオオタチの一匹が普段の可愛らしい姿からは想像もできないほど
凶暴な顔つきでズタボロンネに噛みついたミィ。その口からは鋭い牙が覗いていたミィ。
「ミギャバァァアアア!」ズタボロンネの腸が引っ張り出されたミィ。
腸を咥えたオオタチはグルグルと櫓の周りを走り始めたミィ。「ゥビィイイイッ!ミヒョボオオオッ…」
まだ腸が繋がったままなのでズタボロンネは腸で引き摺られて櫓の周りを回転することになったミィ。
高速で回転させられるので血が撒き散らされ、ぼろぼろと内臓のいくつかが零れ落ちていったミィ。
「コマッコマッ♪」「タチェタチェ♪」コマタナとオタチの数匹がその落ちた内臓に集って食べ始めたミィ。
ぶちりと音をたててズタボロンネの首がモゲたミィ。引き摺られる力に首が耐えられなくなったんだミィ。
驚愕に目や口をカッと開けていて…凄まじいデスマス、いやデスマスクだったミィ。

こ、これはどういう事なんだミィ?!また夢かミィ!そう思って触角を引っ張ってみると…い、痛いミィ!
これは現実なんだミィ。でもあまりに酷い超展開ミィ!
僕らが愕然としていると、上からキリキザンの声がしてきたミィ。
「この島は確かに天国みたいな場所さ。一年中暖かくて木の実が生えてて…でもな
 孤島のせいか生態系がおかしくて俺たちコマタナ族やオタチ族、肉食のポケモンが食べるポケモンがいないんだな。
 せっかく引越してきたのにさ。だから『糞豚たちの夜』大ヒットキャンペーンと称してタブンネたちを
 バカンスだのご馳走だの甘い言葉で釣って、この島に誘い込んで俺たちがおいしくいただく事にした。
 それがコマオタ血祭りさ。しっかしまぁ警戒もせずタブンネたちは次から次へとやってくるわ…
 脳内お花畑とは聞いていたが、ここまで釣れまくるとはな!」
そう言うなりキリキザンは櫓にかけてあった布を取っ払ったミィ。…ゾッとしたミィ。
櫓は白い骨…タブンネの骨で組まれていたんだミィ。
櫓の中にはタブンネの頭蓋骨がいくつもいくつもいくつも重なっていて…一体何十、いや何百匹殺されたんだミィ?!
「ミヒィイイイッ…」「嫌だミィ、食べられたくないミィ…」「嘘だミィ…信じられないミィ…」タブンネたちが泣き出したミィ。
さっきまでの平和な雰囲気からこの地獄、現実感が無いのか座り込んでしまって動かないタブンネもいたミィ。
「オイオイ、夕食の時は嬉しそうに「ず〜っとこの島にいたいミィ♪」とか言ってたじゃねぇか。
 ま、確かにお前らはここにず〜っといられるさ。この櫓の一部になってな…」
キリキザンの弄るかのような言葉にタブンネたちは「ミヒャァアアアアン!」「ミィーッ!ミィーッ!」と大声で泣き始めたミィ。
それを見てキリキザン、コマタナたち、オタチオオタチたちは大笑いし始めたミィ。
「コマコマ、本当に大馬鹿コマ!」「こんなおいしい話ある訳ないのにタチェ!」
「どうしようもないポケモンだコマ!」「野生の世界を甘くみすぎタチ!」
「お前らは特にスペシャルゲストだからな!何せ『糞豚たちの夜』のモデルだ。
 コマオタ血祭りも半分はお前らのお蔭だ。あの世でお仲間がさぞかし感謝を込めて歓迎してくれるだろうよ!」
げらげら、げらげら、げらげら…

なんて奴らだミィ。タブンネたちが楽しそうに遊んでいるのを見てコイツらは心の中で嘲笑していたんだミィ。
タブンネは苦しかったり絶望を感じたりすると肉が美味しくなるという損な性質を持ってるミィ。
裏切りのショックでタブンネたちの大部分は心にダメージを受けすぎて放心しちゃってるミィ。
こうやって幸せから一転、恐怖のどん底に叩き落す事でタブンネたちに最大級の絶望を味わわせ
お肉をおいしくいただく事が奴らの狙いだったんだミィ!僕も最後は騙されかけた迫真の演技だったミィ。
こんな事許されないミィ!僕はそう思ってワルサーPoke38を構えたミィ。
「コマコマッ?!」「タチィェッ?!」
コマタナとオタチの数匹がワルサーPoke38を見て、ビビッて飛び退いたミィ。
「ち、近寄るなミィ!近づいたら撃つミィ!ほ、本気だミィ!」僕は必死に叫んだミィ。
「こら、コマタナども!オオタチさんたちはともかくお前らが怯んでどうする!
 所詮タブンネだ、まともに拳銃を使えるはずがない!だいたいお前らははがねタイプなんだから
 一発や二発喰らっても致命傷にならないだろ!それでも誇り高きコマタナ族か!」
櫓の上からキリキザンが怒鳴っても
「コマコマ、でも銃は怖いコマ…」「撃たれたら痛そうコマ…」とコマタナたちは動かなかったミィ。
「来るなミィ!来たら絶対撃つミィ!撃たれたら痛いミィ!血が出るミィよ!」
と僕が脅すと「コマーッ」とコマタナたちは頭を抑えて座り込んじゃったミィ。
これはチャンスだミィ。ワルサーPoke38で脅していけばこの包囲を突破できるかもしれないミィ。
やっぱりこれをゲットしておいてよかったミィ。最後は飛び道具が勝つんだミィ。これからはチャカの時代ミィ!

と思っていると「タチィェェッ」シュパンッ 僕の手の中からワルサーPoke38が消え失せたミィ。
「おお、オオタチさんのトリックか!これでやっかいな銃は無くなったぞ!」
と上からキリキザンの声。確かにオオタチの手にワルサーPoke38が行っちゃってるミィ!
「か、返してミィ。それは僕のミィ〜!」と僕が駆け寄っても
「タチッ、タチィェッ」「オタチィェッ」とオオタチからオオタチへとパスされていって
僕はオオタチたちの間をどてどてと走り回る事になったミィ…。それを見てコマタナやオタチたちがまた大爆笑してるミィ。
「タチィェッ!」と最後にオオタチが大きくパスした先は…キリキザンだったミィ。
キリキザンは興味深そうにワルサーPoke38を眺めたり触ったりしていたけれどニヤリと笑って僕に銃口を向けたミィ。
僕は慌ててホールドアップしたミィ。ミヒィィイイッ!ひどすぎる運命ミィ!せっかく、せっかくタブンネB子を
守ろうとあんな目にあってまでゲットした銃なのに、それで撃ち殺されるなんて…奴がトリガーを引き、
パァーーーン… 乾いた音がして僕の頭が…なんともないミィ。
上を見てみるとワルサーPoke38の銃口から色とりどりの紙テープや紙吹雪が散ってたミィ。こ、これは…。
「まっ、タブンネなんかにマジもんの銃を渡すわけがないわな。
 こんな玩具で粋がって脅して…恥ずかしくないのかね?生きていて」
そう言ってキリキザンがワルサーPoke38だと僕が思っていたものを櫓から投げ捨てたミィ。
地面に当たってそれはあっけなく壊れ…プラスチックの破片と紙くずの塊になっちゃったミィ。

万事休すだミィ…。コマタナたちとオタチオオタチたちは嬉しそうに涎を垂らしながら僕らに迫ってきたミィ。
「コマコマ、まずはレバ刺しだコマ」「脳みそを食べちゃだめタチ。馬鹿になるタチよ」
も、もう終りだミィ…。僕らはこのまま食べられちゃうんだミィ…。本当の絶望ってこういう事なのかミィ?
その時、僕の背中がギュッと掴まれたのを感じたミィ。タブンネB子だミィ。
B子は涙とさっき惨殺されたタブンネの死体を見て吐いちゃったらしいゲロでグチャグチャになった顔で僕に言ったミィ。
「ごめんなさい…ごめんなさい、タブンネA男…。やっぱりA男が正しかったミィ…。
 A男の言うことちゃんと聞いとけばよかったミィ…。許して欲しいミィ…」
タブンネB子…。そうだミィ。元々といえばコイツのせいミィ。僕があんなに引き止めて、何度も何度も説得して
この島に来てからも気をつけるよう言っていたのに、祭りにも行くなと言ったのに…。
僕はさっきのB子のドヤンネ顔を思い出したミィ。なにが「言ったでしょ、A男」だミィ!
お前を心配して守ろうと散々がんばって、痛い思いも恥ずかしい思いもして…僕は目の前の
ゲロまみれの醜い♀糞豚に対する怒りが体の奥底からムクムクと湧き上がってくるのを感じたミィ。
「た、タブンネA男…?どうしてそんな怖い顔するミィ…?私、本当に悪かったと思って…
 ごめんなさい!ごめんなさいミィ!お願い!許してミィ!」
僕を見て怯えた顔で泣きながらヘコヘコと謝るタブンネB子。泣いて謝れば許してもらえると思っているのかミィ?
お前のせいで、お前のお蔭で、僕までこの島でコマオタ血祭りで惨殺されるハメになったんだミィ!
僕らの様子がおかしいのを目敏く見つけたらしいキリキザンの言葉が降ってきたミィ。
「かっわいそうにな〜、タブンネA男!お前は頑張って警戒してきたのにスィーツ(笑)思考の彼女のせいで
 全てパァだ。しかもA男。知ってるか?お前の目の前の♀タブンネはお前がいない夕食の間
 「タブンネA男の稼ぎが悪いからこんなご馳走食べた事無いミィ!」とか
 「A男みたいな被害妄想の強い彼氏はもうウンザリミィ」とかお前の悪口を言いまくってたんだぜ」
キリキザンの言葉にタブンネB子は狼狽した様子で言ったミィ。

「そ、そんなつもりじゃ…私、タブンネA男の悪口なんか言うつもりなかったミィ。
 …アレはただのノロケのつもりで…そんな、そんな悪意たっぷりに言ってないミィ!」
って事は言った事は確かなんだミィ。守ろうと必死だった♂に言う言葉がそれかミィ?
僕のいかりのボルテージはどんどん上がっていったミィ。周りのコマタナたちやオタチオオタチたちが
面白い事が始まったと言わんばかりにニヤニヤしながら僕らを見てるけど、そんな事どうでもいいミィ。
今の僕にはこの♀糞豚に対する憎しみしかなかったミィ。そんな僕にキリキザンが言ったミィ。
「あ。そうだ。こんな事も言ってたなぁ。
 「A男は夜も弱いんだミィ。私アレじゃあ満足できないミィ」
 「今まで付き合ってきた♂の中でもA男は最悪のタブンネミィ」
 「ムカツくから今三股かけてるミィ。どっちもA男よりお金持ちでイケポケモンミィ!」」
「クックックッ…。ボス、巧すぎコマ」「面白すぎるコマ!」
「見るタチェ、あの♂タブンネの顔…顔面クリムガンだかダゲキだかワケわかんない事になってるタチ!」
ギャラリーの言葉は耳に入らなかったミィ。僕の頭の中ではキリキザンが言った
「タブンネB子が言った事」がぐるぐるといつまでも回り続けていたミィ。
タブンネB子はそんな僕と櫓の上のキリキザンを交互に見つめて
涙をポロポロ零しながら、口をパクパクさせながら言ったミィ。
「違う…違うミィ…。私、あんな事言ってないミィ…。三股なんてしてないミィ…。
 タブンネA男が、A男が初めてのポケモンミィ!キリキザンが嘘吐いてるんだミィ…。
 お願い、A男。私の話を聞いてミィ。私を信じてミィ!」
「…僕がそうやって何度もB子を説得しようとした時、タブンネB子は僕の話を聞いてくれたかミィ?」
僕の言葉にタブンネB子は全ての色を失ったような顔でがくーんと座り込んじゃったミィ。
「タブンネA男!お前もとんだ性悪♀タブンネにブチ当たっちまったなぁ。ポケ事ながら同情するよ。
 ほれ、これは俺からのプレゼントだ!これでタブンネB子を好きにしな。
 俺たちは空気を読めるから、恋ポケ同士の邪魔はしないさ。好きなだけやれよ」

そう言ってキリキザンが僕のすぐ横に何かを落としてきたミィ。
それは所々血錆が付いたり刃が欠けたりしてるボロボロの鎌だったミィ。
なるほど。確かにキリキザンは空気を読めるポケモンミィ。いい物をくれたミィ。
僕がボロ鎌を持って近づくとタブンネB子はヘタリ込んだままの無様な格好で
「A男…A男…何するミィ?やめて!そんな…嘘ミィ?お願い、正気に戻ってミィ!A男ぉぉぉ!」
と泣き叫んだミィ。今さら後悔したって遅いんだミィ!
僕は逃げようとお尻を向けたタブンネB子の背中に鎌を叩き込んだミィ。
ドカッという豪快な音がして鎌はB子の背中に刃の半分ほど沈み込んだミィ。
♀糞豚が何事かを大声で喚いたけど、僕は構わず二回三回と鎌を振り下ろしていったミィ。
ボロ鎌な上に♀糞豚の血で滑ってなかなか思うように刺せなかったけど
数回繰り返す事によって♀糞豚の背中を穴だらけにできたミィ。
「た…タブ……A男ぉ……」♀糞豚はまだ意識があるらしく何事かを呟いていたミィ。
うるさいミィ。黙れミィ。そういえばこの♀糞豚は自分の尻尾を自慢にしてたミィ。
『見て!このかわいい尻尾…タブンネA男もカワイイと思うミィ?』つくづくウザい♀糞豚だったミィ。
僕は♀糞豚の尻尾を切り取り始めたミィ。ボロ鎌なのでなかなか切れないミィ。
しかも♀糞豚がミギャアミギャアと喧しいミィ。イラついたので両手足を鎌で一刺しずつしていったら少しは静かになったミィ。
最後の方は強引にブチブチと引き抜いて♀糞豚の尻尾をギャラリー(どんなポケモンだったっけミィ?)に
投げ渡すとギャラリーたちは尻尾をズタズタに切り裂いたり泥遊びに使ったりで
瞬く間に雑巾以下の代物にしていったミィ。「…ミフゥアアアア…」♀糞豚がそれを見て何事かを呟いたミィ。
その声の調子は憎しみに染まった僕の心を少しだけ癒してくれたミィ。

次は耳と触角ミィ。これらはタブンネにとって命なみに大事な器官ミィ。
というかこれで危険を察知できなきゃ死ぬんだから耳と触角=命と言っても過言ではないミィ。
それに大事なチャームポイントだから大事にしているタブンネは多いミィ。この♀糞豚もそうだったミィ。
僕は同じタブンネだから、どうやったらタブンネが嫌がるか苦しむか熟知しているんだミィ。
僕は♀糞豚の触角同士をくっ付けて片方の耳を切り取り始めたミィ。
こうすれば自分の耳が切り取られていく音がよく聴こえて痛みも倍増ミィ。
「ミッバァアアアア!!」♀糞豚が今まで以上に勝る勢いで絶叫し始めたミィ。
でも背中を滅多刺しにされて血も流れて体力を失っているのですぐ静かになっていったミィ。
ボロ鎌を鋸みたいに使って片耳を切り取り、ついでにもう片方も取ってマランネにしてやったミィ。
あ、そうミィ。マランネだったら両腕があったら駄目ミィ。僕は両腕を切断しようとしたミィ。
僕が非力なタブンネな上に鎌がボロなので、途中で骨か何かに食い込んだまま鎌が動かなくなってしまったけど
周りにいたポケモンさんたちが両腕を切断するのを手伝ってくれたミィ。優しいミィ。頭に切れ込みも入れたミィ。
正真正銘のマランネになって血の海に横たわる♀糞豚を見ていると僕はまだ何か足りないと思い始めたミィ。

マランネは頭で交尾するんだミィ?って事は入れる穴が必要ミィ。
でもこの♀糞豚の穴は小さすぎて頭なんか絶対に入らないミィ。
じゃあ穴を拡張するミィ!僕は♀糞豚の穴をボロ鎌でザックザックと切り開いていったミィ。
まだ息があったらしく♀糞豚はもはや元タブンネとは信じられないほど醜い声で「ウビャァギグガァアアゴバアアアアアア!!」
と叫んだミィが、腹の三分の一まで切り開かれるとついに力尽きて心臓が止まったミィ。触角で聴いてわかったミィ。
僕は…やり遂げたんだミィ。…でも、何を?

「よくやったな。って言うかやりすぎだな。こんな醜い物食べる気になれねぇもん」
「子供の情操教育上も悪いタチェ。下品なタブンネらしい殺り方タチ」
元♀糞豚だったマランネの死体を見つめる僕に何者かが声をかけてきたミィ。
「おいタブンネA男。聞いてるか?おい、無視すんなよ」
そう言われるなり背中に鋭い、熱い感触がして血が流れたような気がしたけれど僕は振り向かなかったミィ。
いや、振り向けなかったミィ。体が何故か動かなくて…そういえば僕のタブンネB子はどこ行っちゃったんだミィ。
僕が命をかけても守ると誓ったB子。僕の大事なB子。いったい何処行ったんだミィ。置いてかないで欲しいミィ。
「ダメだこりゃ。完全にイカレちゃってるわ。ちょっと煽っただけで恋ポケにここまでして
 勝手にぶっ壊れて…本当、タブンネってのはどうしようも無いなぁ」
「コマコマ、ボス。どうするコマ?このタブンネさん食べちゃっていいコマ?」
「いいぜ。…いや、ちょっと待て。丁度いいや。その前に俺がここでパーフェクト辻斬り教室してやるよ。
 お前らよく見とけよ。これが本家本元の辻斬りだあ!」
「キャー!ボス!待ってましたコマ〜!」「久しぶりに良いもの見れるタチェ!バッサリいくタチェ!」
僕の周りでワーワーとよく聴こえない声がして、僕の首筋が急に冷たくなって
それから熱くなって目の前が暗く暗く何もかもが暗く……

糞豚たちの夜2 かまいたち篇 終(BGM:遠い日の幻影)

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最終更新:2011年05月14日 03:00
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