夫として、父として

イッシュ地方のとある森に、仲のいい2匹のタブンネが暮らしていた。
この2匹は最近夫婦になったばかりで、いつでも2匹いっしょにいる。

ある日、このタブンネ夫婦が森の中を散歩していると、別のタブンネの声が聞こえた。
その声は非常に切迫した様子で、どうも助けを求めているようだ。
2匹はお互いに顔を見合わせると、コクリとうなずいた。
同じタブンネが危険な目に会っているのかも知れない。
自分たちに何ができるかはわからないが、とにかく行ってみよう。
タブンネ夫婦は声のする方に走り出した。

茂みや木の枝に足をとられながらも走り続けること約10分。
さきほどの助けを求める声は聞こえなくなっていた。
自分たちが到着する前に解決したのかもしれない。
そう思い、来た道を引き返そうとしたときだ。
視界の端に、あるものが映り込んだ。

全身ボロボロで、地面にうつぶせになったまま、ピクリとも動かないタブンネ。
そこから少し離れた場所に立ち、動かないタブンネを見下ろすポケモントレーナー。
そして、タブンネとトレーナーの間で、悠然たる態度で立つローブシン。

何があったのかなど考えるまでもない。
トレーナーとローブシンに気付かれないように、2匹は茂みの中に身を隠そうとする。
しかし、恐怖によって震える肉体がそれを許してはくれなかった。
小刻みに震える体は思うように動かず、草むらに入った瞬間「ガササッ」と音を立ててしまう。
その音をトレーナーとローブシンが聞き逃すはずもなく……

こうしてタブンネ夫婦は出会ってしまった。
自分たちの運命を決定づける相手に。
彼らの、いや、彼の地獄の日々はこうして幕を開けた。


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続く

最終更新:2015年02月18日 20:44