季節はずれの花火

「花火あまっちまったなあ、しゃあねえから今日全部つかっちまうか!河川敷いこうブースター」

この辺りでいいか。んっ、あの草の影にいるのは…ママンネとベビンネか。手足を洗ってんのか。よし、ちょっとからかってやるか

「わっ!」
「ミッ!ミィィーッ!」
バシャバシャ
「うわっ!つべてえ!じゃねえか!」
俺に反応してブースターが駆け寄りママンネを突き飛ばした。くそう、パンツの中までビショビショじゃねえか

「もうゆるさねえからな」

俺はベビンネの首根っこを掴みママの前に宙吊りにしてやった
「チッ!チィー!」
叫ぶベビンネを助けようと構えるも、鼻息荒いブースターと俺を交互に見た後とんでもない行動にでた

「ミィ~ミィ~ン」
瞳をウルウルさせながら 赤ちゃん返してお願い って感じか。これが噂の媚か
そうだ、良いこと思い付いた
「僕たち今から遊ぶんだけど付き合ってくれたら赤ちゃん返してあげる」
遊びときいてか パッと明るくなりミッ!とあの胸に手をあてるクソポーズをとった

ママンネは体を振るわせながら直立不動で立っている
「動くんじゃねえぞ!ブースターが子供の運命握ってること忘れんな!」
俺はロケット花火を取りだしブースターに点火してもらった蝋燭から火を灯しタブンネ目掛け放つ

ヒューーー!パンッ!!
「ミィィィィ!?」
花火はママンネの耳スレスレで飛んでいった。音や花火の火にうずくまってしまう
「おらどんどんいくぞ!たて!」
プルプル立ち上がった所を目掛けこんどは3バーストで放ったら土手っ腹に命中した

「ミィヤアアアン!」
熱さと炸裂の衝撃にうずくまるママンネ。あと二十発はあるな、うずくまったままのママンネに次々命中させてやった

なんかウルトラマンレオの特訓みたいだ。笑いが止まらない
ママンネはやけどのヒリヒリを治めようとするためか川に向かうがそこに向けて打ち上げタイプのを放ってやった

バアアアアアン
「ミィィヒッ!」
驚き後ずさりするママンネに向かい俺は言い放った

「タブンネは外へ出て戦わねばならん!何の為だ!?その後ろで他のポケモンが優しく花を摘んでいられるようにしてやる為じゃないのか」
「タブンネまで一緒になってうちでママゴトばかりしていたら一体どうなる!!立て!」

理不尽な説法だが、ママンネはブースターの足元で不安な顔をしているベビンネの為にも立ち上がった

俺は打ち上げ型(バズーカと呼んでる)を叩き込んでいった。パラシュートも混じってたらしくタブンネの体所々にひっかかってる
全身の毛が焦げ、火傷も酷く皮が剥けており、ピンクチョッキは寝タバコで穴を開けたようにボロボロになっていた

「あきてきなあ、なんかねえかなあ」
ガサガサ袋をいじっているとブースターが裾をくわえ引っ張る。なんだい?と聞くと線香花火を加えてきた
「そんなんつまんねえだろ?」
っていうと器用に袋をやぶり一本加え蝋燭に火をつけるとママンネに近づいていった

そしてフラフラしているママの耳の上で立ち止まると…
パチパチ…ポトッ

「ミィギャアアアアアアア!!!」
火の塊が耳に落ちた。さすがに火そのものであり耳にはぼっつり穴が空き、ブスブスといい匂いを漂わせた
「あっはっは!お前天才じゃないか!」
ブースターはフンッと胸を張った
俺達は腹這いのママンネに乗っかり身動きをふせぐと線香花火に火をつけブースターと楽しんだ
「やっぱ線香花火は風流だなあ」
「(うんうん)」

ブースターはかなり扱いがうまく火が一番大きいときに振るい落とす技を得たらしく次々落としていく
「ミ………ミギギ……アア」

もう耳は穴開きチーズのようにボロボロでちょっとしたブラクラのようで鳥肌がたった
ブースターも気持ち悪いのかママンネの耳を食いちぎっていた
もう感覚がないのか耳をちぎられても無反応だったが、生きてるらしく、縛り付けられたベビンネに必死に手を伸ばしている

「ラストォ」
その手に最後の線香花火を落とした

「あと何ある?」
「(くいっ)」
「おお!爆竹か!」

そろそろベビンネもやるか
「おい見てろよママ」
俺は爆竹を一本ちぎりベビンネのケツに刺し点火した
パンッ!と同時にベビンネは絶叫し、転げ回った。衝撃からか小便を漏らし、赤く爛れたケツからは軟便がミチミチ漏れだしていた
ブースターは腹を抱えて大笑いしている

「ミッ……ミアアア!!」
なんと母親が立ち上がりこちらへ向かってきたではないか!母親の愛の力か?おもしれえ!

俺は爆竹に火をつけママに次々投てきした
パパパンパパパパン!!必死に頭を押さえながら爆発に耐える姿は特撮と言うか戦場を感じさせた

満身創痍って感じか。それでもフラフラ歩み寄るママンネへ最後の爆竹に点火し口に放り込み、口を押さえ込む
ボボムボボボムって感じの音がし、口、鼻、目、耳から煙りを噴きママンネは倒れた

デテテテン♪ブースターはレベルがあがった

「あーあ、やっちまったろ」
「(まあね。あ、僕今こわいかお覚えたよ)」
俺たちはベンチに腰掛け、おいしい水で一息ついた

さあてベビンネたんは、と
いつのまにかベビンネは尻から血を流しながらも必死に母親に這ったまま擦りよっていた。母親の顔に触れ チィチィなくとなんとママの手が動いた

まだ生きてやがる。さすがにしぶてえだけあるな、おうし

「ようガキ。これわかるか?」
俺は元気の欠片を取りだし見せた
「これを使えばママ元気になるぞ。ほんとだぞ、触覚当ててみろ嘘じゃないから」
ベビはよちよちと俺の胸に触覚を当て事実と理解すると欠片へ手をのばしてきた
「おしゃあ!」
と俺はベビンネを抱き締めそのまま捨てられていたドラム缶にぶちこんだ

ドラム缶の中で「チィチィ」と天を扇ぐベビンネ目掛けネズミ花火を放り込んだ
「チィヤァー!」
ケツが痛くて動けないから右往左往する火花から逃げられないのがおもしろくねえなあ
ブースターが缶に手をつき僕にも見せてとせがんでくる。だっこして見せてやるとネズミ花火が気に入ったのか飛び降り自分も点火しじゃれはじめた
もらいび、だからねえ

気がつくとドラム缶からは煙りがたちのぼり、覗くと火傷だらけのベビンネも命の火が消えていた

バッグは空っぽだ、帰るか
「(掃除掃除)」
「そうだな。ええといるかな」
俺は天へ向けオレンの実を投げた(ママが持ってたやつ)。それは落下せずに野生のヴォーグルが掴みとった
「おーい!生焼けだけど、ここにタブンネいるから食ってくれ!」

そう叫ぶとヴォーグルは降りてきてママンネを啄みはじめた。ワシボンもいたからベビンネとおやつに持ってきたポフィンも投げ与えてやった

俺たちが花火のゴミを片付け終わる頃にはタブンネ達は骨になっており、ヴォーグルたちも飛び去っていた
骨を拾い川に流し、またこいよと言い残し場を後にした

「さあて、なんか食って帰るか!」
「(ミィバーガーがいい)」
「ご一緒にポテトとシェイクはいかがすか~」

おわり
最終更新:2015年02月18日 20:52