不器用なママンネ

私がタブンネを自宅に連れ帰り、面倒を見てから数週間が経過した。
助けて貰った恩からか、タブンネは色々と私の為に尽くしてくれた。
しかし、何ら役には立っていない。
皿を洗えば割る、茶を淹れれば零す、掃除をすれば逆に部屋を汚す。
それらを理解出来ない能無し豚は私の役に立とうと、何かしら手伝っては失敗する。
損益だらけだ。
元々暇つぶしの気紛れで助けてやっただけの豚にこうまでされては私の我慢も限界だ。
そこで私はタブンネとメタモンを交尾させた。
私に懐いているらしいこの豚はメタモンとの交尾もすんなり受け入れてくれた。
結果、大量の子タブンネが生まれた。
私は子タブンネ達をケージに入れ飼育した。
馬鹿な親に似たらしく、毎日ケージの中ではしゃいでは散らかし放題。
まるで養豚所だ。苛々する。

ある日、私はケージから一匹の子タブンネを出した。
透明のビニール袋に入れ、ゆっくり上下させる。
中の子タブンネも面白いらしく「ミィミィ♪」と喜んでいる。
それを親タブンネにも見せてやる。
ビニール袋に入ってはしゃぐ子タブンネを見て、親タブンネもとても嬉しそうだ。
私は喜ぶ子タブンネを一瞥する。
そして子タブンネ入りのビニール袋を振り上げ、親タブンネに叩き付けた。
「ミギィ!!」「ミギャ!!」と親子のタブンネの悲鳴が重なる。
親タブンネは突然の痛みに何が起きたか分からず混乱し、ビニール袋の中の子タブンネは全身を叩き付けられた痛みに「ミィミィ…」と弱った息遣いをしている。
私はお構いなしに次の一撃をお見舞いする。

それから何度も何度も親タブンネの頭に子タブンネ入りのビニール袋を打ち付けた。
室内にはタブンネ達の悲鳴とぶつかる音だけが響いた。
十数回殴り終えると、ビニール袋の中には血溜まりが出来、絶命した子タブンネが沈んでいた。
私はそれを頭から流血している親タブンネに投げつけてやる。
「ミ…ミ、ミィィィィ…」
親タブンネは信じていた私から受けた仕打ちと子タブンネを失った悲しみで泣きじゃくっていた。
子タブンネ達も私の突然の凶行に怯え「ミィィィィ…」と泣き出す。
それが私を苛立たせ、これまで溜まっていた怒りが一気に噴出した。
すぐさま2匹目を取り出す。
「ミ!ミ!ミィ!」
何やら喚いて抵抗しているが、知るか。
袋に入れて親タブンネに叩き付ける。
「ミッ!ミヒィ!」
親タブンネは叩かれる度やめるよう弱々しく鳴くが、聞く耳など持たない。持つ筈がない。
やがて2匹目の子タブンネも息絶えた。
今度は親タブンネの頭上からビニール袋を逆さにして出してやる。
子タブンネの死体と血を頭から被り、ピンクの身体は赤黒く染まった。
2匹の亡骸を抱えすすり泣く親タブンネの耳を掴みこちらを向かせると、
「これからお前が何か失敗する度にこの豚共が犠牲になる。よく考えて生きるんだな」
と告げ、子タブンネのケージを持ち部屋を後にした。
ケージ内の子タブンネ達はいつまでも親タブンネの方に鳴き続けていた。
その後、一週間もしない内に子タブンネ共は全滅した。
最終更新:2014年06月18日 22:32