おかあしゃあん!おなかしゅいたあ!まんまぁ!おちちちょうらい!
「はいはい、みんな仲良くね。」
チュパ…チュパ…
おいちい!おちちおいちいよ!…げぷう!
もうおなかいっぱい…おひるねしよう!
わたしタブンネ!おかあさんときょうだいたちとなかよくくらしてるの!
うふふ、おとなりのあかちゃんみてたらちっちゃいころをおもいだしちゃった。ほんのちょっとまえのことだけど。おとなりのあのこはもうおはなしもできるからおちちはそつぎょうね。それともおちちがすきなのかな?あまえんぼさん!
わたしはもうおちちはそつぎょうしたの。いまはおかあさんとおんなじごはんをたべて、おはなしもばっちりできるようになったの。きょうだいでいちばんはやかったんだから!えらいでしょ!
チリンチリーン…
あ!いつものスズのコがきた。やさしいおとでわたしたちをいやしてくれるいいコなの!だからニコッ!ってタブンネのかわいいえがおをみせてあげるんだ!スズのコはゴキゲンそうなかおでフワフワうかんでいっちゃう。いちどいっしょにあそんでみたいなあ。
わーい、ごはんがきたよ!タブンネ、ごはんだいすき!いつもニンゲンさんとポケモンさんがもってきてくれるんだ!でもニンゲンさんたちはだれにごはんをもらってるのかな?
ごはんをおなかいっぱいたべたらおかあさんときょうだいとあそぶの。いちばんちっちゃいおとうともごはんをたべられるようになったの!おとうとはあまえんぼさん。でもみんなもおかあさんにあまえたいから、みんなおかあさんにべったりくっついてねるの。やわらかくてあったかくて、とくんとくんってやさしいおとがして、すっごくしあわせなきもちになるの!
そんな…おかあさんとおわかれなんて…。とつぜんニンゲンさんたちがやってきて、わたしたちをべつのところにつれていこうとしたの!。
いやだ!いやだよう!おかあさーん!
でも、おかあさんはかなしそうなかおをして
「うう…ごめんね…りっぱにそだってね…かわいいおちびちゃんたち…!」
っていったの…。おかあさんもじぶんのおかあさんとはなればなれになったのかな…。
タブンネたちがつれていかれたところにはたくさんちいさなタブンネさんがいたの。みんなおかあさんとはなればなれにされたこどもみたい。
ニンゲンさんたちはみんなにおいしいごはんをたくさんくれたの。タブンネたちもあんしんしてごはんをたくさんたべたの。
みんなさびしそうにしてるけど、タブンネはおねえさんなんだもん、くよくよしちゃだめ!
よるになってどこからかタブンネたちにふしぎなこえがきこえてきたの!
「可愛い可愛い子タブンネ達…心配することはありません。貴方達タブンネはお母様のもとを離れ、立派な大人になるべくここでみんなで暮らすのです。沢山ご飯を食べてすくすく育ってくださいね。私も応援していますよ…。」
やさしいこえ…。タブンネたち、ここでくらすんだ!おうえんされてるんだ!…よおし!タブンネ、りっぱなおとなになってたくさんこどもうむ!それだけじゃない!こどもとしあわせにくらして、みんながりっぱなおとなになるまでそだてるんだ!タブンネはじぶんのこどもはじぶんでそだてるもん!そんなタブンネがいたっていいはずだもん!
それからタブンネはいっしょうけんめいごはんをたべたの。みんなもタブンネにまけないくらいたくさんたべてたよ。がんばってたべて、おそとにだしてもらったときはみんなでたのしくあそんで、またがんばってたべて…。
これならみんなりっぱなおとなになれるはず!だってがんばってるんだもん!
「おねえちゃーん!おねえちゃーん!いやあ!おねえちゃんもつれてってー!」
なんで!?なんでタブンネだけみんなといっしょにいけないの?
おとうとたちもないてるよ…。みんなががんばっておおきくなってきたから、もっといいところにつれていってもらえるとおもったのに…なんでタブンネだけのこされるの…?ひどい…。
でもそのときあのふしぎなこえがきこえたの!やさしいこえが…。
「落ち着いて下さい…可愛い可愛い子タブンネ達…。心配は要りません。貴方達はこれから最高のタブンネとなるために旅立つのです。多くの生き物を幸せにするために。皆さんが幸せになるために。…覚えておいて下さい。私はいつでも貴方達を応援していますよ…。」
「ぼくたちもっとしあわせになれるんだ!」
「やったあ!」
「もっとごはんがたくさんたべたい!」
え!?じゃあタブンネはどうなるの?タブンネはしあわせになれないの?
「わたしたちは…?」
あ、タブンネのほかにもつれていってもらえないコがいたのね。
「おねえちゃん!おねえちゃーん!!おねえちゃああ…あ………くう……すう……」
あれ?みんなねちゃった…。…あっ、みんながいっちゃう!まって、まってえ!!
「待ちなさい。」
え?またあのこえだ…。
「貴女達は選ばれたタブンネなのですよ。寂しいでしょうが気を落とさないで。」
えらばれた…?
「貴女達は彼等とは違う生き方ができると見なされた、素晴らしいタブンネなのです。胸を張って下さい。勿論、私は貴女達のことも応援していますからね…。」
タブンネたち、すごいタブンネなの?がんばってたくさんごはんをたべたから「えらばれた」のかな?
「やったあ!わたしたちトクベツなんだ!」
「あたしもっとごはんいっぱいたべたい!ごはんたくさんもらえるかな?」
そうだよね!タブンネたち、すごいタブンネなんだ!タブンネはぜったいぜったいこどもをたくさんうんでしあわせになる!しあわせなおかあさんになるの!だからみんなもしあわせになってね…!
わたしはタブンネ!からだはまだまだお母さんより小さいけど、それでもだいぶ大きくなったよ。
チリンチリーン…チリンチリーン…
タブンネはお耳がとってもいいの。だからスズのコのいやしの音もとおくからきこえるのよ!すごいでしょ!
きょうもたくさんごはんを食べよう!たくさん食べてげんきなこどもをうまなくちゃ!
きょうはごはんを食べたあとタブンネたちはちがうばしょに連れていかれたの。どうしてだろう?
そしたら、なつかしい声がきこえたの。わすれるわけがない、あのふしぎな声…。
「御機嫌よう…選ばれたタブンネ達。いよいよ貴女達が役目を果たす時が来ましたね。」
やくめ?やくめって?
タブンネは声にきこうとしたんだけど、なんだか急にねむくなっちゃった…。
うふふ!タブンネ、もうすぐおかあさんになれるの!タブンネのおなかの中にはタマゴがあるんだ!
…それはうれしいんだけど…なんでタブンネつながれてるんだろう…。またおそとを走りまわりたいよお…。
…だめだめ!タブンネはもうすぐおかあさんになるんだから、くらいきもちじゃだめ!そうだ!こどもをうんだらみんなでおそとであそぼう!きっとすっごく楽しいはず!…ふふ!かんがえただけでえがおになっちゃう!はやくうまれてきてね、タブンネのあかちゃん!
うーん、うう~ん…
…やったあ!タブンネのタマゴ、これで5コもうまれたよ!タブンネ、やっとおかあさんになれるんだ!
…あれ?タマゴがない…あああ!!タマゴがおくのほうにころがっていっちゃってる!やああ、タブンネ、つながれててとどかないよう!タマゴぉ、タブンネのタマゴ、タブンネのあかちゃん、タブンネのなのぉ!タマゴ、タマゴ、タマゴぉ!おねがい、だれかタブンネのタマゴとってえ!!タブンネ、こどもがほしいよぉ!
うわあああん…だれかぁ…!
ザッザッ…
だ…だれ!?ああっ!いつものニンゲンさんだ!やったあ!ニンゲンさあん、タブンネのタマゴとってぇ!
…えっ!?…いやあああああああああ!!やめてええええ!!タマゴもっていかないでええ!!なんで、なんでえ!!なんでタブンネのタマゴもっていっちゃうの!?タブンネのタマゴなのよう!!おねがい、かえして、かえして、かえしてええええええ!!
タブンネ、こどもたちとずっとしあわせにくらすのがゆめなの!初めてのタマゴ、やさしくあっためてかえしてあげたいの!あかちゃんがうまれたら、ぺろぺろってからだをなめてキレイにしてあげたいの!おいしいおちちをあかちゃんにあげたいのぉ!ふわふわのあかちゃんといっしょにぐっすりねむりたいのぉ!おねがいぃ!タブンネのタマゴおお!!
まって、まってえ!いかないでええええ!!タブンネの…タブンネのかわいいあかちゃあああん、あかちゃあああああああん!!いやあああああああああん!!
タマゴぉ、タマゴぉ…!あかちゃん…あかちゃあああん……う…ううう……うわああああああん……………ひどいよお………初めての…タブンネの初めてのタマゴぉ………ぐすん……………。
「あたしのタマゴがあぁ…なんで……」
「あかちゃん…あかちゃん……わたしの…初めてのあかちゃああん……」
みんな…みんなタマゴ、とられちゃったの…?そんな…どうしてタブンネたちがこんな目にあうの…?えらばれたのに…なんにもわるいことしてないのに…。
「御機嫌よう…選ばれたタブンネ達。なかなかにいい仕事でしたよ。マスターもご機嫌のようでした。」
ふしぎな声だ!…それってどういうこと?…ひょっとして、タブンネたちのタマゴがほしいの…?
「おや、貴女はタブンネにしては賢いのですね、…ああ、マスターが目を付けたタブンネでしたか。」
タブンネの目のまえに、ときどきタブンネにごはんをもってきてくれたりしてたみどりと白のキレイなポケモンさんがあらわれたの!まさか…ふしぎな声はこのポケモンさんだったの!?…そんなことより、タブンネたちはこれからどうなるの?
「フフ…そこまでは教えてあげません。辛いでしょうが、今は身体を休めて…。覚えておいて下さい。私はいつでも貴女達を応援していますよ…。」
おうえん…?なんなの?タブンネたちはどうなっちゃうの…?ニンゲンさんとポケモンさんはごはんをくれて、おそとであそばせてくれて、でもタマゴはとりあげて……うう……あかちゃん……もうタブンネつかれたよ……。
…ごめんね…あかちゃん…。
タブンネのおなかにまたタマゴができたよ!
でも……ううん、だめだめ!こんどこそタブンネはおかあさんになるんだから!ぜったい!ぜったい!
いやああ、くさりじゃまあ!タマゴおさえきれないよお!タマゴまってえ!
ううう…けっきょく1コしかとれなかった…。
い…いやあ……あとの4コもタブンネのタマゴ、タブンネのあかちゃんなのぉ!ぜんぶタブンネがそだてるのお!
こうなったら…こんな…くさりぃ……タブンネがこわすもん!ぜったい…おかあさんに…なるもん…!
んぎぃ…んぐう…!あかちゃん…!タブンネのあかちゃん…!
コロコロ…
…!!ああああああああ!!タ…タマゴぉぉ!!
たった1コ…たった1コだけタブンネの手にのこったタマゴ…!初めての…ほんとうに初めてのあかちゃんになるはずの…。
ザッザッ…
あ…ああ……あしおと……やめて……やめてええぇ………。
そのあとのこと…タブンネはよくおぼえてないの…みんなのさけび声がすごかったことしか…
いちどは手にはいったのに…まもったのにぃ……タマゴ……あかちゃん……。
こんどこそ…こんどこそ…タマゴ、まもってみせるもん…!
こんどは2コまもってるもん…!…ごめんね…タブンネにはぜんぶのタマゴはまもれないの…。ゆるしてね…まもれなかったあかちゃん…。
ザッザッ…
ニンゲンさんがきた…タブンネは、タブンネはぜったいぜったいこどもをそだてる!この2コのタマゴはわたさないから!なにがあっても!
あっ…声のポケモンさんもいっしょ…タブンネのおうちのまえにきた…。なにするの…?た…たすけて…くれる…?
「今回もありがとう。」
スッ…
ええっ!?タブンネのタマゴがきゅうにうごいておくのほうに…。
い…いやああああ!!やっと、やっと、やっとタブンネ、おかあさんになれるとおもったのに!やめて、やめてぇ、やめてええええ!やめてよおおおおお!!
なんでタマゴとりあげるのおおおおお…!なんでずっととりあげるのおおおおおおお…!
なんでタブンネはこんなひどいことされるのおおおおおおおおぉぉぉ………。
うっぐ…なんで…なん…でぇ…。
「いつでも応援していますよ…。貴女達の立派な働きをね…。」
タブンネはタマゴがかえるところ…見られないの…?かわいいあかちゃんのかお…見られないの…?
いや…いやだぁ…いやあだあぁぁ……………。
ねそべってタマゴをおなかの下にかくせばぜったいにとられないもん…!
タブンネ、あきらめない…ほかのみんなとはちがうもん!
タブンネはぜったいあきらめないもん…!あかちゃんとくらすんだもん…ぜったいにしあわせになるもん…!
ググッ…
い…いぎゃあ…!く…くるしいよお…おもいよお……。これ…ポケモンさんのふしぎなチカラなの…?
や…め…てえ…タブン…ネの…から…だ…こ…わ…れちゃ…う…。
ビシィ…ベキバキ…グチッ…
…あ……あ…あああ……!あああああ……!!
グシャ…グチャア…バチビチビチ…
い゙やあああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!やめでえ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!!
もう…たった1コでいい…たった1コでいいから…じぶんの手とあしでかかえてまもりきるんだ…!
ザッザッ…
ひぃっ…こわいよお…からだがふるえるよお…でも、タブンネはたたかうもん…!タマゴをまもるもん…
こんどはニンゲンさんだけ…ならなんとか、なんとか…!わたしの初めてのあかちゃん…!
ガッガッ!
いたい!いたいよう!つつくのやめてよお!やあん!ゆるして、ゆるしてえ!
タブンネ、おかあさんになりたいだけなのよう!ニンゲンさんにひどいことしたいんじゃないのよう!
らんぼうしないでえ!おねがいよぉ!
「健気で本当に可愛いねえ君は。今回も美味しそうなタマゴをありがとう。
お礼にこれからも食べ物や安全な寝床をしっかり用意してあげるから…ね!」
ドスッ!
いたあい!…あっ…。
「タマゴ、ありがとね。ちゃんとご飯、食べるんだよ。」
……………いびゃあああああああ…!!いじわるううううゔゔゔゔ…
がえじでええええ゙え゙え゙え゙!だぶんねのだまごおおおおお゙お゙お゙ぉ゙ぉ゙……!!
「おかあさん…なんでぼくたちをまもってくれないの…。」
「たべられちゃった…くるしいよお…おかあさん…。」
『おかあさん…おかあさん…おかあさん… おかあさん…おかあさあああああん………』
いやあああああ……ごめんなさい…ゆるしてええええ……。
おかあさん…こんどはぜったいに…ダマゴかえしてあげるからぁ…あああ……。
タブンネ、かしこいってポケモンさんに言われたから、いっしょうけんめいかんがえたよ。
タマゴを1コかかえて、もう1コはうしろにくさと土でなんとかかくしたの。かかえたタマゴがまもれなくても、うしろのには気づかないはず…!
かわいそうだけど、かかえたタマゴをはなせばつつくのだってやめてくれる!きっと!
いたあっ!いたい!いたい!やめてぇ、いたいよお!いやあん、おなかやめてよう…。
ああっ…かかえてたタマゴがあ……。
はあ…はあ…うしろのタマゴ…なんとかかくしとおせたよ…。やった…!ぜったいにこのタマゴ、かえしてみせるんだ!
くさと土でおおってタブンネのからだでかくしてあればばれないはず…!
「フフ…いつもタマゴをありがとう。」
「いやあああ……!!」
「やあああん…!」
うう…1コのタマゴをかくそうとしたらほかのタマゴがかくせないよ…。
…だめよタブンネ!たった1ぴきでもタブンネのだいじなだいじなはじめてあかちゃんなんだから、くらいかおはだめ!
とびきりのえがおでむかえてあげなくちゃ!
早く…早くうまれてきてちょうだい…。かわいいかわいいタブンネのあかちゃん…。
カタ…カタ…
ああ…タマゴの中からおとがきこえてくる…!
もうすぐ…もうすぐ…タブンネ、おかあさんになれるんだ…!うふふ…おもわずえがおになっちゃう!
ね、ね、あかちゃん、うまれたらおかあさんがたくさんたくさんかわいがって、いっしょにおねんねして、おいしいおちち、おなかいっぱいのませてあげるからね!
だからがんばって、タマゴのからをげんきにやぶってうまれてきてちょうだいね!おねがいよ!
タブンネがそう言ったら、タマゴからカタカタってへんじがきたの!
あああ…タブンネさいこうにしあわせ…これがおかあさんなんだ…!あかちゃん、ありがとう…ありがとう…!
ぜったいにしあわせになろうね!
ザッザッ…
いけない!ニンゲンさんだ!タマゴをかくさなきゃ!
…あっ、ポケモンさんもいっしょだ…。でもこんどはぜったいにかくしきる!あかちゃんのかわいいおかおを見るの!
ザッザッ…
やった…こっちを見ただけでとおりすぎていったよ…!
あしたにはあかちゃんうまれるはず…!あかちゃん、早くかわいいおかおを見せて…ね!
ふああ…なんだかもうねむくなっちゃった…。じゃああかちゃん、おやすみ…。
カタカタ…カタカタ…
……!たいへん!今にもうまれそう!タマゴタマゴ…。あれ?タマゴはどこ?
………あああああ!!タマゴがおくのほうにうごいてるぅ!なんでぇぇ!?
いやあああああ!!ニンゲンさんたちにばれちゃううう!タマゴぉ、おねがいぃ、こっちにきてえ!
「御機嫌よう。もうすぐタマゴが孵るのですね。」
ポ、ポケモンさん…。おねがい…おねがい!みのがして!タブンネのゆめなの!1ぴき…1ぴきだけでいいからあかちゃんをそだてたいの…!おねがいぃ…。
「いいですよ。見逃しましょう。」
え…いいの?ありがとう…ありがとう…!ありがとうポケモンさん…!
「それより、今まさにタマゴが孵ろうとしていますよ。」
えっ…?
ピキ…ピシピシ…
あっ…。
ピシピシ…パキ…
ああっ…あああ…!
パキパキパキッ…
「ちぃぃ…。」
ああああ…!タマゴの中からちっちゃくてかわいいあかちゃんタブンネが出てこようとしてる…!早くなめてあげなくちゃ…!
ポケモンさん、タマゴとってちょうだ…
フッ…
ひゃああ!え…えええええ!ニ…ニンゲンさん!?なんでぇ!?いきなりでてきたよ!?
あああああ!!だめえええ!それはタブンネのあかちゃんなのぉ!!
「てゅああ……!」
いやああ、あかちゃんいじめないでえ!おねがいおねがいおねがい…!
「ちびぅ…みぶう!みぴいぃ…まぶぅ…。」
やあああん…!あかちゃんさくにしばりつけないでよぉ…!タブンネ、あかちゃんだっこしたいよぉ!
べとべとのあかちゃん、ぺろぺろしてきれいにしてあげたいのよぅ…!おちちあげて、あかちゃんがおいしそうにのむのを…
…あれ?これじゃあタブンネ、あかちゃんにおちちあげられない…?
…いやああああああ!!まって、まって、あかちゃんをはなしてぇぇぇぇぇ!!
このままじゃあかちゃん、おなかすかせて、しんじゃううう!!やだあ、やだあやだあやだあやだあやだああああああああ!!
ポケモンさあああん!たすけてよおおおおおお!!みのがしてくれるっていったのにぃぃ…!!
「…子供の顔が見たかったのでしょう?見放題ですよ。ただし貴女はタマゴを産むことが最優先、
よって期間限定です。…それと、マスターは最初から貴女のタマゴのことに気付いていました。
私が見逃す見逃さないの問題ではないのですよ。それでは。」
いやああ…まってよぉ…。
「応援していますよ…。貴女達がタマゴを沢山産んでくれることを…ね…。」
……………。
なんで……。なんでタブンネはずっと……ずっとずっと……。
・
・
・
あかちゃんは水はもらえてるけど、おなかがすいてずっとないてるよ…。
「あぶう……び…うびぁ…。びうう…。」
もうなくげんきもあんまりないみたい…。
このままじゃあかちゃんしんじゃうよう…。
でもまだあかちゃんはタブンネのおちちしかのめない…。どうすればいいの…?
「みゃ……うぎゅ…ぐぴいぃ…。」
あかちゃん…くるしそう…。
だれか…だれでもいいからたすけてよお…。
タブンネじゃああかちゃんをそだてられないよお…。
「うるさい!じぶんだけこどもうんでおいてないてるんじゃないわよ!」
「いいきみ!あーあ、ずるいママのせいでおなかがすいてしんじゃうなんてかわいそうなあかちゃん!」
う…う…。なんでみんなタブンネをいじめるの…。
なんでタブンネはしあわせになれないの…。
ひどい…ぐすん…ひどいよおぉ……。
「びゃう…ぴゅいぃ……ばぶ…ぶう…。」
やめてえ…。そんなくるしそうなおかおでタブンネを見ないでぇ…。
タブンネ、あかちゃんのこんなおかおが見たかったんじゃないのに…。
うう…うえええええええん………。
「ばび……ぴ…。」
いやああん!あかちゃんしんじゃうよおぉ!
あたらしいタマゴなんかうんでるばあいじゃないのよう!
「タマゴを貰いに来ましたよ。」
ポケモンさあん、おねがい…たすけてぇ…たすけてぇ…。
あかちゃんくるしそうだよう…。
くるしそうなあかちゃんなんて見たくないでしょう…?
「フフ…タマゴありがとう。」
きいてよお゙お゙お゙!!だすげでよお゙お゙お゙お゙…!!
「うるさいのよ!さっさとあきらめなさいよ!
わたしたちにこどもなんてむりなのよ!…うう…。」
いやだもん…タブンネ、こどもそだてるもん…!
タブンネの、タブンネだけのかわいいこども…。
ゆうがたになったらもうあかちゃん、ぜんぜんなかないよ…。
やああああ…おねがいだれかあ…。
「ふぃ…ぉ…」
…あかちゃん…?
「…おぢ……ぢ……。」
あかちゃん…!おちち…?おちちほしいの?
まってね…!おかあさん…がすぐ…に…こんな…くさり…こわ…し…て…うぐう…。
おち…ち…おなか…いっぱい…のませて…。
「………。」
もう少し…もう少しだけがんばって…あかちゃん…!
うぎい…もうあさになっちゃったけど…タブンネ…あきらめ…ない…もん…。
はあ…はあ…あかちゃん…。
ザッザッ…
ニンゲンさんとポケモンさんがきたけど、かんけいないもん…!
タブンネはあかちゃんをたすけるんだもん…!
プチッ ポイッ
ニンゲンさん!?あかちゃん、かえしてくれるの?
や…やった…!あかちゃん、あかちゃん、あかちゃん…!
つめたい…さむかったの?さあおかあさんのおちち、いっぱいのんで!ね!
「………。」
あかちゃん…?どうしたの?おかあさんのおちち、おいしいよ?
…ね?おねがい…ね?おちちのんでちょうだい?
「………。」
…あかちゃん…?ねえあかちゃん、へんじしてよう!
かわいい声、おかあさんにきかせて!おねがい!
「………。」
え…あかちゃん…?タブンネの耳にはなにもきこえないよ…?
うそだよね…?げんきがないだけだよね…?
タブンネはじまんのしょっ角をあかちゃんにおそるおそるあててみたの…。
でもあかちゃんからはなんにもかんじない…。
うそ、うそ…。あかちゃんのとくんとくんっていのちの音…。
タブンネがおかあさんにぎゅーってくっついて、
やさしいきもちがつたわっていつもあんしんしてたあの音…。
「………。」
……!!……あ…ああ…。うそ…うそ…うそ…。
…うびゃああああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……………!!!
ゆめ…タブンネのゆめ…
あかちゃんにかこまれていっしょにねんねして、
おちちせがまれたらじゅんばんよってやさしくなでて、
おなかいっぱいになったあかちゃんがにぱってわらって…。
タブンネ…の……ゆ…め…。
………。
まだ…あき…ら…め……。
「………。」
あかちゃあん、どうしたの?おなかすいたの?
よしよし…。ほうら、おかあさんのおちちだよ!
おなかいっぱいになるまでのんでね!
「………。」
あかちゃんおなかいっぱい?
うふふ、いっぱいのんでえらいよ!なでなでしてあげる!
おなかいっぱいになったらおかあさんといっしょにおねんねしようね!
ぎゅうーっておかあさんとくっつくと、すっごくあったかいよ!
おかあさんのむねのところから「とくんとくん」って音がするでしょ?
おかあさんがげんきであかちゃんのそばにいるってことなの。
おかあさんはずっといっしょにいてあげるからね。
ずーっとしあわせにくらそうね!タブンネのかわいいかわいいあかちゃん…!
「………。」
………。あさになったけど…あかちゃん…やっぱりうごかない…。
あかちゃん…ほんとにしんじゃったんだ…。
タブンネ…しあわせになんかなれないんだ…。
もう…いやあ…。
ザッザッ…
タマゴ、またとられちゃった……。
タブンネはこれからもずっとずうっと、タマゴをとられるだけなんだ…。
あかちゃんをそだてるなんて…はじめからむりだったんだ…。
ひどい…。
ひどい…ひどい…。
……………ひどい…………。
わたしはタブンネ。この家に入れられてからずうっと
タマゴを産まされては取り上げられ、産まされては取り上げられを繰り返しているの…。
いやあああ…またタマゴが産まれそう…。
産みたくないよぉ…。辛いよぉ…苦しいよぉ…。うぐうぅ………。
「やあああああ!いやああああん…!」
「タマゴいやああああ!いやよおおおお…!産みたくないのぉ…!」
タマゴは産まれたら必ずニンゲンさんやポケモンさんが来て持って行っちゃうの…。
タブンネ、自分の赤ちゃん一匹しか見たことないよ…。
その赤ちゃんも…タブンネの目の前で…お乳も飲めずに…。
…最後に「おちち…」って…。
うううう…。お腹が空いて苦しかったんだよね…。
ごめんね…。ごめんね…!
ここのタブンネは絶対にお母さんになんかなれないの…。
タブンネには分かっちゃった…
タブンネ達のタマゴを外のニンゲンさん達はみんなで美味しく食べてるのよ…。
でもタブンネにはどうしようもないの…。ずっとここにいるしかないのよう…。
「いやああ!タマゴ、出て来ないでぇ!」
「うぎいいいいい!!はあっ…はあっ…、助けて…助けてえええ…!」
うええええん…うぐうぅ…。ひぃ…ひぃ…。
タマゴなんか産みたくないよおおお……。
うぐ……ひっく…ひぎっ……。あ…ああ…タマゴが産まれちゃう…。
やああ…やああ…ううっ…うああ…うぐううああああ゙ぁ゙ぁ゙…!
……うう…全部で5コ産まれちゃった…。
また持って行かれちゃう…。
みんな叫んでも意味がないってとっくに分かってるけど、
それでも泣いたり叫んだりするの…泣くしかないの…。
しかもタマゴを側に置いておくと苛められるから
もう誰もタマゴを守ろうとしないの…。
タブンネも…もう、いや…。
今日もタマゴ取られちゃった…。
うっ…ぐす…。ポケモンさんがゴキゲンそうな顔してる…。
なんで、なんでタブンネ達はこんな目にあうの…?
なんにも悪いことした覚えないのに…。
誰かこのかわいそうなタブンネに幸せを下さい…。
ガチャン!
夜になって、突然タブンネの鎖が外れて目が覚めたの!どういうこと…?
ギィ…
えっ…?扉が開いた…、外に出られる…?タブンネ、自由になれるチャンス…?
ザッザッ…
あっ…向こうからニンゲンさんが来ちゃう…!早くあっちに逃げないと…!
ドテッ
いたあい!
うう…ずっと走ってなかったから体が重いよお…。
早く、早く逃げなきゃ…。
ゾワッ…
ひぃっ!?なに?今の…。
ひゃ…ひゃあああ…黒い目が暗闇からタブンネを見てるよ…。怖いよう…怖いよう…。
グググ…
うぎゃああ…!頭…締め付けられて痛いよお…!
なにこれぇ…!体もつぶされちゃう…!
…そうだ…思い出したよ…確かこれはあのポケモン…さんの…
パアン!パアン!パアン!
ぎゃあああ!!痛い!痛い!なにか飛んできたよう!
やめてぇ、やめてえ!!血がいっぱい出ちゃうう!タブンネ、ボロボロになっちゃうよお!!
びゃあああ!ごめんなさい…!ごめんなさ…びぎっ!ぐぎぃ!!うぎゃあっ…!
…うぎいぃ…もう…限界……。タブンネ…ここで死んじゃうんだ…。
うう…ううう……おかあさん…おとうとたち……あかちゃん……。
ザッザッ…
「コイツか…。」
ニンゲン…さん……?いつものニンゲンさんじゃ…ない…みたい…。
「~~~。」
た…たす…け……。
………。
続く(第一章終了)
最終更新:2015年02月20日 17:14