野生のタブンネ達に「楽園」と噂される所があった
そこは囲いに囲われた広い林で地面を多い尽くすように落ちている木の実は好きなだけ食べ放題、
赤ちゃんタブンネも毎日のようにうまれ「ミッミッ、ミッミッ」と可愛らしい声が絶えない
タブンネをいじめる悪いポケモンが楽園に入ってくる事があっても頼もしいハーデリアが追っぱらってくれる
林の真ん中には大きな建物があり、中はとても暖かく
清潔な干し草のお布団で気持ち良く眠ることができる
何の苦しみも危険もなく、毎日を幸せに暮らせるまさに楽園であった
そんな楽園に住まう一匹のタブンネがある日、奇妙なポケモンを目撃する。
深夜に目が覚めたタブンネは、空中に漂う紫の灯りがある事に気づく
少し気になって近づいてみると、その明かりには目のような物がある
ランプラー「こんばんは、お嬢さん」
タブンネ「ポ、ポケモンさんだったのですか?」
ランプラー「はい、私たちはランプラーと呼ばれています」
タブンネ「し、失礼しました。ところで、ここに何かご用ですか?」
ランプラー「ええ、食事をしにきました、ここは私たちの間ではなかなか有名な食事処でしてね」
タブンネ「へえ、そうなのですか、今はオボンの実がおいしい季節ですよ、たくさん食べていってくださいね」
ランプラー「ハッハッハ、お心遣いありがとうございます
しかし私たちにとっては木の実よりももっといい食べ物がここにはあるのです」
タブンネはきょとんとした顔でランプラーを見ている
ここには木の実よりもおいしい物があるの?タブンネはそれを見つけて食べてみたくなった
タブンネ「ここに長くいるけどそれは初耳です、どんな物なのでしょうか?」
ランプラー「すぐにわかりますよ」
その時タブンネはカラカラという台車が転がる音と、その上で木箱に詰められ、ミィミィと騒ぐ生まれたてのタブンネ達の声を聞いた、
やがてそれはタブンネとランプラーの前を通りかかる
台車を押しているのはタブンネが見たことがない両手が鋏になっている赤いポケモンと、肘が刃になっている緑色のポケモンだった
赤いポケモンはランプラーと目が合うと、ぎょっとした顔で台車を押しながら早足で通り過ぎてしまった
タブンネ「…けっこう怖がりのポケモンなんですね」
ランプラー「あいつは火が苦手なのです。」
2匹のポケモンは宿舎の一番奥にあるタブンネたちではとても開けない重い扉を開いて中に入っていった
ランプラー「さてさて、やっと食事にありつけそうですな」
タブンネは何がなんだかさっぱりわからなかった
赤と緑の二人はコックさんで、ランプラーさんは赤ちゃんタブンネと一緒に秘密のごちそうを食べるのかな?
そんなことを考えているとランプラーが扉の方にくるりと振り向いた
ランプラー「さて、やっと食事をとることができますよ」
タブンネ「えっ?」
ランプラー「ほうほう、今日のは粒は小さいけど数は多いですよ、なかなかいけますな」
タブンネ「あの…いったい何を召し上がってらっしゃるのでしょうか?
私には何も見えないのですが…」
ランプラー「ノーマルタイプのあなたには見ることも不可能でしたか
よかったら私の体を通して見てみて下さい、シルフスコープのように見えるようになります」
体を覗き込んでみると、扉の方から白いポワポワした物が飛び出してきて空中をふわふわ漂っていて、
ランプラーの近くにいるものが傘に吸い込まれてるのが判る
タブンネ「へえ…こんなのを見るのは初めてです、どんな味がするのですか?」
ランプラー「そうですなぁ、ここで食べられる物は「辛い」味ですな」
タブンネは辛い物が苦手だったので泣く泣く食べるのを諦めた
少したつと、扉の中の2匹が片手で何かを食べながら出てきた
それはタブンネが知らないすこしぬるぬるした薄ピンク色の塊だった
ハッサム「やっぱり剥きたては美味しいな、」
エルレイド「ところで最近、これを火の中に入れると柔らかくなる事に気づいたんだ」
ハッサム「火は怖いからこのままでいいよ」
エルレイド「あとは成体のタブンネが一頭でいいんだよな」
タブンネは2匹が美味しそうに食べているそれを柵から乗り出して興味津々に見ていた、
そして2匹と目があってしまう
ハッサム「あのタブンネでいいんじゃない?」
エルレイド「そうだな」
タブンネは台車にちょこんと座り、2匹に押されてあの部屋へと向かっていった。
あの白いポワポワの正体と、薄ピンク色の未知のごちそうという期待に胸を膨らませて
満面の笑みで扉の中に入っていくタブンネを、ランプラーは少し哀れに思った
タブンネの聴力を持ってしても中の音が聞こえないほど防音が徹底された謎の部屋
その部屋の秘密を知る者は少ない
ランプラーの文字通り燃えるような食欲は萎えてしまった
だが最後に、タブンネから聞いたオボンの実を拾ってデザートにするのだった
最終更新:2014年06月18日 22:38