格闘家達とタブンネ





某格闘ゲームとのクロスオーバーなので、世界観破壊が嫌いな人は読まない方が良いかもしれません。
(投稿時の作者コメント)





―あの世界を震撼させた世界格闘大会から何ヵ月かが経ち、参戦した格闘家達は、傷付いた体を休めるため、大会の結果を報告しに国に帰る者、大会の為国に残してきた家族の元に会いに行く等、皆がまたそれぞれ元の生活に戻り始めていた

そしてもうひとつ、この何ヵ月間の間、ポケモンと名付けられた不思議な生き物が少しずつではあるが地球上に現れ出したのだ
どこからか来たのかは分からないが、人々はこの可愛らしい生き物達に陶酔した
特に、鼠に似た黄色い生き物はピカチュウと名づけられ、瞬く間に犬猫と並ぶ人気ペットにまで登り詰めた
他にはイーブイ、ヨーテリー、エネコと名づけられたポケモンもペットとして人気だ

次第に人々はポケモン無しでは生きられなくなった
愛玩用にするもの、番犬代わりとして飼うもの、進化が発見されてからはその力や能力を生かして仕事をさせたりした
そして何より、その不思議な能力を生かしたポケモンバトルが人気になった、ポケモン世界大会やTV中継もされるようになった

人々はポケモンを愛し、ポケモンも人々を慕っていた

しかし、現実にも動物虐待派がいたように、次第にポケモン虐待派が出てきたのである
ポケモンは人間や動物とは違い、どんなに傷付いても暫く休めば回復するという驚異の体力を持っていた
皮肉にもその能力が災いし、すぐに死んでしまう普通の生き物ではなく、丈夫なポケモンを虐待し、暫く休ませて回復させ、また虐待するという、そんな方法で何度も虐待が可能になるのだ

そんな虐待派の矛先に向けられたポケモンは…
ピンクと白を基調とし、バトルには不向きな能力、二足歩行で短足小太りの豚そっくりなポケモン、タブンネだった

タブンネは他のポケモンに比べ格段に生命力が高くなかなか死なず、また何故かタブンネを倒すとポケモンがよく成長するという。またあちこちに住み着き、沢山の子孫を残すため、至るところでみられ、それ故上記のため人々に狩られているのだ

その能力を生かし、タブンネをサンドバッグ代わりとして使う者も出てきた
もちろん、虐待派とは違いタブンネを虐めたり殺す事が目的ではない。普段の生活では餌をあげたりと可愛がるが、鍛えたい際にはタブンネを呼び出しサンドバッグに、傷付いたら回復させ休めせ、傷が癒えたらまたサンドバッグとして使うのだ
サンドバッグとは違い、タブンネは生きている。逃げたり、防御するタブンネを的確に攻撃するので、実践的な力が付くのだ

タブンネは瞬く間に格闘家達お気に入りのサンドバッグになった

強力な格闘家達に目をつけられたタブンネ達の運命は…


―アメリカ― とある豪邸の中庭

「ミィーッ!ミィィ!ミィッ!!(やめてご主人様!痛いミィ!)」
「おらおらッ!どうだタブンネ、俺の渾身のキックは?」ドカッドカッ

よく目立つ赤い胴着に金髪の男性がタブンネを蹴りまくっていた

「ミィ…ミィ…」ガタガタ
「ミャアァ…」ブルブル
「ミッヒィ…ヒィ…」ビクビク

どうやらこの男性はお金持ちらしく、沢山のタブンネを飼っていた
一匹だけではどうしてもタブンネが疲れてしまうので、日替りでタブンネを変えてサンドバッグにしているようだ

「ミ、ミィ…(痛い、ミィ…)」ガクッ
「おっと、疲れたのか?サンドバッグ係りありがとな、タブンネ!さっ、休憩の時間だ」

男性が蹴っていたタブンネが倒れた。どうやら限界のようだ

「おーい!このタブンネを休ませてやってくれ」
男性が近くにいたメイドに声をかけた
瞬く間にタブンネは担架で運ばれていった
治療されて、またサンドバッグとして使われるのだ

「よーし、お前ら此方に来い!」
男性が中庭で寛いでいるペットのブイズ達に声をかける
オスのイーブイ、ブースター、サンダース、ブラッキー、リーフィア、メスのシャワーズ、エーフィ、グレイシア、ニンフィアが男性を取り囲む
この男性はブイズ愛好家なのだ

「よーしよし、お前らはほんっと可愛いな!」
男性はブイズ達の頭を撫でる

それを見ていたサンドバッグンネ達は
「ミィ…ミィーッ!(もう嫌だミィ!サンドバッグは勘弁ミィ!)」
「ミィーッ!ミィーッ!?(なんでブイズだけあんなに可愛がられてるミィ?!)

「ミィ…ミィミィ(でもミィ達はサンドバッグにされる代わりに沢山の餌を貰えてるミィ…でも野生だったら餌も食べれず狩られて死んでいくタブンネちゃん達が殆どだミィ…)」

「ミィ…!ミィーッ!」ダダッ
とうとう耐えきれなくなりサンドバッグンネのうち一匹が中庭から逃げ出した
このタブンネはサンドバッグと回復を10回以上繰り返されたタブンネだった
おそらく、可愛がられてるブイズ達とサンドバッグとして扱われる自分達と比べて嫌気が指したのだろう

「あっ!待てったら!」
男性がタブンネの逃走に気づいた
タブンネが格闘家の足から逃げられるはずもない、すぐに追い付かれローキックをくらい派手に転倒した

「ミヤァァァァァァ!!!」
「これでも食らえ!!」ゴォォォォ!!
男性が激しい炎に包まれ、転倒しているタブンネに突進していく
「ミガァァァァァァ!!!!」ゴオオ!

タブンネは瞬く間に火だるまになり、炭になった

「あっ…!すまないタブンネ!でも新しい技を編み出せたぜ…お前の犠牲は無駄にしない、ありがとうなタブンネ」
男性は我に返り、炭ンネに声をかける。しかしその目はタブンネを労る目ではなく、新しい技を開発したという興奮で輝く目だった

ブイズ達が男性の足元にすりより祝福する

残りのタブンネ達はこれを見て震え上がり逃亡をやめるのだった

「よーし!行くぞぉ!」
男性がタブンネ達に近づく
男性はタブンネの耳を掴み立たせる
男性の目はもはや狩るものの目立った
目は物語っていた
(お前が次のサンドバッグだ)

「…ミィ、ミ、ミィャァァァーー!!!!」


―アメリカ空軍基地

打って変わってここはアメリカ空軍基地、沢山の屈強な軍人達の中に、不釣り合いなピンクのだらしない体型の生き物が檻に入れられ運ばれてきた

「これがタブンネか」
物凄い特徴的な角刈り頭の金髪の男性がタブンネに近づいてきた

「ミフーッ!!ミフーッ!!(人間共死ねミィ!出せミィ!)」
このタブンネは生意気な性格のようで、屈強な軍人達に囲まれてもなかなか怯まないようだ

「このまま檻に入れたまま外の練習場に」
角刈り頭の男性が部下の軍人にいい放つ

「分かりました」
部下の軍人がタブンネを入れた檻を運んでいく

「ミガッ!ミガッ!」ガンガン!
タブンネは檻を壊そうとするがタブンネごときに壊せるはずがない
やがて檻ンネは外の広場に出された

「ミィ…!?」

物凄いエンジン音が響いてくる 耳の良いタブンネには物凄い轟音だろう

檻ンネは空を見上げた
飛行機のような物が檻ンネの上に浮かんで制止している

すると、何か黒い塊のような物が檻ンネの上に落ちてくるのが見えた

「ミィミ?(あれはなんだミィ?石かミィ?)」


と、その瞬間

「ミギッ!?」

激しい突風の刃がタブンネの身体を切り裂き、タブンネの体は業火に包まれた
サファイアの目は一瞬で白く濁り、血は蒸発し、ピンクと白の毛皮は真っ黒に燃え尽きタブンネの体は木っ端微塵になった

やがて、飛行機、いや戦闘機は着陸し、軍人達は檻ンネがいた広場に集まってきた

「すごい威力だ…」
「木っ端微塵だぜ…!」

「これが、俺が開発したソニックブーム爆弾だ」
角刈り頭の男性が木っ端微塵になった檻ンネに言いはなった


軍人達は国を守るために、日々新しい兵器を作り出している、しかし、試作品を人間相手に使うわけにはいかない
そのため、実験体にタブンネを使用したのだ
何故かというとポケモンの中でもタブンネは身体の構造が人間に近いためだ

「…ありがとよ、タブンネ。あいつもこれでやっと成仏できるだろうな…」

角刈り頭の男性は静かに木っ端微塵ンネに話しかけた
(続く)
最終更新:2015年08月19日 21:41