数年前、巷ではミニタブンネの飼育が流行りだった。
ミニタブンネとは読んで字のごとく小型のタブンネで、ある孤島で見つかった珍しい種だ。
今となっては繁殖に次ぐ繁殖で、近所を歩けばすぐ見つかるような存在となっているが、
当時は物珍しさからか、金持ち連中がこぞって大枚叩いて手に入れたものだ。
タブンネの成体の平均的な大きさは約1.1m。恰幅もいいので、実際愛玩としては少々厳しい面もあったが、
このミニの出現でそれが解消されたわけだ。ちなみにミニの成体は0.2m。ちっちゃくて可愛いね。
そこからブリーダーの間で大量に繁殖されて、安価に一般人でも入手できるようになり、ミニタブ熱は最高潮に上り詰めた。
しかし所詮は一時の流行、現在では当時ほどの熱は残っておらず、ミニタブを飼っている者は少ない。
それもそのはず、ミニタブンネには従来のタブンネと比べていくつか問題点が存在したのだ。
まずは知能。小さい分脳みそも少なめなのか、タブンネに比べて圧倒的におつむの出来が悪い。
物覚えも悪いし理性も薄い。
次に繁殖性。性欲旺盛に加えて卵をポコポコ産むものだから去勢していない個体の飼い主は痛い目に合ってしまう。
気質も難あり。やたら好戦的ですぐに上下関係を決めようとする。故郷の島ではもっとも強いミニタブがリーダーとなり、
食料や繁殖の管理をしていたらしく、強さや優位に固執する性質なのだ。
これらはあくまで一例で、さらに飼育を難儀にする要素が存在するが、まあとにかく生半可な覚悟で飼えるポケモンではなかったので、ブームは廃れた。
さらに、飼えなくなったミニタブが大量に捨てられ、それが野生化し迷惑を振りまく事態に発展してきている。
増えやすく小柄なピンクのあいつは中々に厄介で、そいつらの駆除が俺の仕事なわけ。儲かりますぜ。
今回の以来はさるアパートの大家さん。ゴミ置き場を荒らされるもんだからカメラを仕掛けたら映っていたのはなんとミニタブ!
憎いあん畜生をぶちのめしてくれと熱い言葉を受け取りさあ調査開始。
ミニタブはあんよが短くてすっとろいから現場押さえて尾行が有効なんだけど、大家さんは足腰を悪くしたご老体。俺がやるのだ。
来たるゴミの日、まだ日も昇らないうちからゴミ捨て場のすぐ側のアパートの駐車場で張り込み。車内で耳を澄ましていると、やがてミッミッと甲高い鳴き声。ゴミ袋のこすれる音。
来た来た来ましたよ、音を殺して車のドアを開け、そっとゴミ捨て場に近寄る。幸いなことに、ミニタブはタブンネほどの聴覚は持ち合わせていないので、あっさり現場に到着。
薄汚れた体のミニタブ共が満面喜色で生ゴミを貪っていた。腹が膨れたのか、残りを尻尾に詰めるだけ詰めて、さらに両手で抱えてどこかへ歩き出しだ。ようやくゴーホームってか。
やつらのハウスは近所の廃屋だった。蔦に覆われたその家は、立派な石塀もあり外からは様子が分かりづらい。これは中々発見できないだろうなあ……やるじゃんミニタブ。
しかし俺に見つかったのが運の尽き。神妙にお縄を頂戴するぜ。
石堀の入り口から入り、廃屋をぐるりと一周する。裏手に小さな穴を発見。ここから入ったんだな。
裏口も表口もついでに窓も鍵がかかっていて出入りできそうな場所はない。つまり、やつらの通り道はあの穴だけだ。
あらかたの分析が終わったので一度大家さんに報告。偶然にも廃屋のある土地の所有者が知り合いだったらしく鍵を入手。ラストスパートだ。
穴を強力な粘着テープで塞いでから玄関へダイナミックにエントリー!埃被ってはいるが整然としていたのでミニタブ共は見つけやすそうだ。ビデオカメラを起動し、構える。
と動き出す前から一匹発見! どうやら戸を開ける音が気になって見に来たようだ。馬鹿なやつめ。素早く捕獲し、ゴミ袋に入れてやる。
ミィィィィ! ゴミ袋の中でミニタブが吠えた。そのすぐ後に奥で物音がした。逃げるとでも言ったのかな? 俺には捕まえてと聞こえたよ。
奥へ進むとキッチンがあり、そこにミニタブが集まっていた。ざっと四匹。この十倍はいるもんだと思ってたから拍子抜けだった。
生ゴミがそこかしこに散らばって悪臭がひどかった。こんなところでよく生活できるもんだ。
ミニタブは成体と幼体の体格差があまりないので判別が難しい。最初に捕まえたのがもっとも大きいので、おそらく父親だろう。で、目の前の四匹の中で一番大きいこいつが母親かな。
むんずと掴み、袋の中へ。
残り三匹の反応は多様で、一匹は逃げ出そうとして例の粘着テープに捕まった。もう一匹は俺に向かって威嚇を試みている。精一杯の怒り声で肩を怒らせる様は最高にこっけ……可愛らしいぜ。
最後の一匹は両親を助けようと袋に向かってぴょんぴょん跳ねている。ミニタブには珍しい反応だ。バネブーみたいじゃん。
いつまでもにらめっこというわけにはいかないので次は俺のターン。つま先が鉄で覆われた特殊なブーツを履いた足で威嚇するチビの顔に一蹴。
歯を砕きながらつま先は奥まで到達、そのまま蹴り抜くとチビの体は壁に叩きつけられた。確実に即死だ。ゴミ袋の中の両親の叫びがいいBGMだ。
兄弟の死に怖気づいたか、跳ねていた方のチビは真っ青な顔で穴のほうへ走り出した。しかしそこには先客がいるんだなあ……しかも顔から粘着テープに突っ込んでるから窒息死してるぽいけど。
まってよ~と明るい声で一歩一歩踏みしめて近づく。ヤケクソ気味にチビは振り向き、俺のブーツに噛み付いた。言うまでもなく歯が折れた。
ミィィィ! と完全に戦意喪失した様子のチビに俺はお菓子を差し出した。困惑した様子のチビ。うまいゾ! と俺。
俺が兄弟殺しの鬼畜野郎であることを忘れてしまったのか、チビはお菓子をひったくって一心不乱に食い始めた。ンミィィィって、うまいぃぃぃって言ってるみたいで好きじゃねえなあ。
あっという間に平らげると、チビは挑戦的な目で俺を睨む。おかわりかい、このいやしんぼ! 持ってけドロボー!
五つ目に手をつけたあたりで、ようやくチビは己の不調に気づいたようだ。グルグルと腹が鳴ったかと思うと、チビのケツから大量の下痢便が噴射された。勢いはとどまることを知らず、さらに
口からも吐瀉物の洪水だ。それが止まるころには、チビの命も一緒に流れ出てしまったようだ。残ったのはげっそりとしたチビの肉だけ。
殺タブ用の餌をそんなバクバク食うからだぜ、マヌケ。
一方で袋の中の両親は暴れに暴れて疲れ果てた様子。ぜえぜえ肩で息をしているのが袋越しに見える。メインディッシュとして「駆除」してやりたいが、こいつらには別の使い道がある。
タブンネ虐待協会傘下である俺の駆除会社は、ミニタブを規定数協会に差し出すことで全面的なバックアップを受けている。回収個体数は少ないが、一匹ごとに生い立ちや性格などをまとめた
レポートを添付しなければならないので、少々面倒くさい。しかしそのおかげで仕事も回してもらえるしこんないい靴まで支給されるのだ。ビバ協会!
でもまあ、一匹ぐらいつまみ食いしてもいいだろう。俺だって虐待協会の端くれ、魔がさしちゃうことだってあるさ。と、父親のほうを取り出し、抱き上げる。
ちっちゃいおてて振りましてかわい……引っかかれちまった! くそったれ! 激情に身を任せ、ミニタブを床に叩きつける。いきなりだったのでミニタブは受身も取れず、肺の中の空気をすべて吐き出してしまったようだ。
驚いた表情のミニタブと目が合う。すかさず、咳き込むミニタブのお顔をふみふみ。手で足で必死に押しのけようとするが力及ばず。そのまま踏み殺すのももったいないのでチビのゲロとクソ掃除の雑巾として
使ってやろう。嫌がるそぶりも気にせず拭いて拭いて拭きまくる。たいして綺麗にはならなかったが、ミニタブが心底嫌そうに鼻を押さえてるからよしとしよう。
あまりの臭さに涙を流すミニタブが可哀想過ぎるので慰めにペニスを
つんつん。靴先の冷たさが気持ちいのか、ミニタブの一物が徐々に天へと勃ち上る。変態かよこいつ……。
ドン引きもそこそこに、すっかり恍惚とした表情のミニタブの睾丸を全力で蹴り抜いた。最初数秒、呆然とした表情でこっちを見ていたミニタブだったが、すぐに歯を食いしばり泡を吹き始めた。白目をひん剥き、
まるで地獄に突き落とされたかのような表情だ。ああたまらん。しかし、余興はここまで。ビデオカメラを切り、ミニタブを袋にしまい直す。
大家さんに仕事終了の電話を入れた後、協会の死体処理班と連絡を取る。ここまでやっても協会は金銭を要求してこないからありがたい。
それもこれも、すべてはミニタブちゃんのおかげ。袋の中でいまだ痙攣を繰り返す変態とその妻に感謝の投げ唾を飛ばし、俺は帰路についた。
最終更新:2016年03月05日 12:46