あるところに、優しいタブンネと瀕死のコイキングがいました。
コイキングは陸の上で苦しそうにパクパクと口を開けたり閉じたりしています。
「コッ……コッ……」
「……みぃぃ……」
タブンネはコイキングを哀れに思い、いやしのはどうをかけましたが
コイキングはどんどん衰弱していきます、タブンネは負けじといやしのはどうをかけつづけました。
「ココッ……コッ……」
すると、コイキングが時折何か言いたげに少しだけ激しく動くようになったので、
タブンネはいやしのはどうの効果が出たと思い、嬉しくなってひたすらいやしの波動をつづけました。
「………」
しばらくつづけていると、突然コイキングがピクリとも動かなくなりました、
タブンネが驚いて触角で触れてみても何も感じることが出来ません。コイキングは死んでしまっていました。
そもそも、初めからコイキングは怪我をしていたわけではありませんでした、
陸上では息が出来ないから苦しんでいたのです、いやしのはどうで元気になれる筈がありません。
「み、みぃぃぃ!?」
ようやくそのことに気が付いたタブンネはピクリともしないコイキングを持って、
少し奥に見える大きな川に駆け寄って、そこにコイキングを投げ込みました。
ですが、コイキングはプカプカ浮かぶばかり……もう死んでしまっているようです。
「みぃ……」
タブンネが肩を落として川に背を向けると、
突然背後から巨大な水音が聞こえてきてタブンネはびっくりしてふりむきました。
「――ギャオォォォォ!!」
そこでは怒り狂ったギャラドスがこちらを睨みつけていました、
先程のコイキングはこのギャラドスの子で、急にいなくなったので川中を探したのに見つからず、
そんな状況で突然タブンネに死体を投げ込まれるのを見てしまったのでギャラドスはタブンネに子を殺されたと思ったのでしょう。
「みっ、みぎぃぃ!? みぃぃぃ!!」
タブンネは顔面蒼白になり、必死に自分は治そうとしただけだと言いましたが、
状況からしてもそんな言い訳がギャラドスに通るはずもなく――
「ビギャア゛ア゛ア゛!!」
ギャラドスは川から飛び出すと、タブンネの下半身を食い千切りました、
タブンネは普通の一生を経験する時には絶対味わうことのないような激痛を味わい、喉が潰れるのも構わず叫びます。
そして、ギャラドスは下半身の無いタブンネを川の中に捨てました、
水がしみるようでタブンネは激しく泣き叫びますが、そうしていられるのも時間の問題です。
「ミィッ、ミギィィッ!!」
自分の体が沈んでいくのに気が付いて必死に手を暴れさせ抵抗しましたが、
それによって川を染めるほど血が流れだし、だんだん意識が遠くなっていって――
――最後は、そのまま沈んでしまいました。
ギャラドスはそれを一瞥すると、子の亡骸を加え川を上っていきました、供養するのでしょう、
……このように、間違った方向の親切は自分も相手も不幸にしてしまうことがあるので気を付けましょうね。
- 哀れなタブンネだな -- (名無しさん) 2017-02-09 07:38:54
最終更新:2015年12月21日 16:53