ネギ嫌い!

俺の家では子供のタブンネを飼っている。
ある日、帰宅したら台所の方でなにやらガサゴソと音が聞こえる。
不審に思い覗いてみると、どうやって開けたのか冷蔵庫の野菜室に顔を突っ込んでいる子タブンネの姿があった。
こちらに尻を向けて、ほとんどひっくり返りそうになりながら盗み食いをしようとしているようだった。
いつも餌のオボンを冷蔵庫に入れているのを見て覚えていたのだろう。
しかし、今俺は丁度切らしたオボンを近所のスーパーへ買いに行き帰宅した所だ。当然冷蔵庫の中にお目当てのものがある筈もない。
俺はなるべく音を立てないようにそっと近づいた。漁るのに夢中の子タブンネは気づかない。
タブンネの真上で「おい」と怒鳴ると、驚いたタブンネは「ミッ!!!!」と素っ頓狂な声を出し、ひっくり返って野菜室の中に落ちた。
俺はそのタブンネの尻尾を掴んで拾い上げ、長ネギでビシビシと叩く。叩くたびに、「ミャッ!ミャァッ!」と小さな声がした。
周りの空気がネギ臭くなる。このタブンネはネギが大嫌いだった。
俺は面白くなって、くたくたになって汁が滲んでいるネギをタブンネの全身にまんべんなく擦り付けた。
目や鼻の周りにも念入りに擦り付けると、みるみるうちにタブンネの目から涙がボロボロこぼれ出して来る。
鼻を押さえて喘いでいるタブンネの顔は、それはもう目に涙、口にはよだれ鼻に鼻水といった酷い有様だった。
かくいう俺も直接嗅いでいないにもかかわらずネギの強烈な刺激に若干涙目だ。
飽きてきたのでネギを二つに折ってタブンネの口に突っ込み、手足を縛ってそのまま放置した。
今日の昼飯はオボンじゃなくてネギだ。涙が出るくらい好きなんだろう?良かったな。
最終更新:2014年06月20日 00:39