温泉タブンネ

30年ほど前、とある温泉街にタブンネ達が現れるようになった
最初は温泉に入るタブンネがかわいいと観光客や地元の人に可愛がられていたが
店の食べ物を盗む、観光客に襲いかかる、人間用の温泉を占領し中で糞をして使用不能にするなど
タブンネの悪行に頭を悩ませるようになった
困った町の人々が「腕のいいトレーナーを雇って追い払ってもらおう」と考えるようになり始めたころ
ある出来事が起こった
赤ちゃんタブンネを抱っこしたタブンネが源泉の中で茹でられている温泉卵をしゃがんで物欲しそうに見ていると
観光客の男が後ろから押してタブンネ親子を温泉の中に落としたのだ
その男は「でっぷりとした身体で熱湯を目の前にしゃがみこんでいる姿が、上○竜兵に見えてついやってしまった」と後に語る
男の言う上島○兵でもまず入らない70度の熱湯に頭から突っ込んでしまった親子タブンネは
親の方はバシャバシャと必死にもがきいて上がることが出来たが、子供は泳いで登る事が出来ずにそのまま死んでしまった
数分後、温泉卵の担当が子タブンネの死体を回収すると、なんともいい匂いが漂ってきたという
子供をかえしてという縋りつく母タブンネを尻目に、後ろ脚を引きちぎり皮を剥いて肉を齧ってみると
絶妙な温度で溶かされた脂と皮のゼラチン質が半生の肉と混じり合い、何ともいえぬいい味になっていたという
そう、後にこの温泉の名物となる、温泉タブンネの誕生である

温泉街から野生タブンネがいなくなった今では温泉旅館それぞれが出産用のタブンネを飼育している
卵から生まれるや否や、タブンネは十数匹ごとに鉄の籠に集められ、そのまま小型クレーンで70度の源泉に漬けられる
その後、板前さんによって刺身にされ、カラシ酢味噌かポン酢でいただく
子タブンネ達は籠の中でもがき苦しみ、お湯からあがって来た時には目を白く濁らせ舌をだらんと垂らして絶命している
宿泊客は希望なら、出来る工程を見物する事も可能だという
その他にもタブンネ達による身体を張ったリアクション芸も人気だ
特に人気なのはタブンネちゃんの激辛クラボの実まんじゅうニコニコ食いだという、
泣いたら子供を目の前で天ぷらにされるタブンネちゃんの必死な笑顔が笑いを誘う
「皆さんに笑ってもらえてタブンネ達も喜んでいます
 温泉タブンネはここでしか味わえない絶品ですので皆さんもぜひ温泉街にいらして下さい」
と町一番の老舗旅館の女将は笑顔で語る
最終更新:2014年06月24日 20:29