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寒空

深夜のコンビニの外で3匹のタブンネが寒さに震えている。
大人のタブンネが1匹と、まだ幼い子タブンネが2匹。
冷たいタイルの上にすわり込み、実を寄せ合って寒さに耐えている。

親であるタブンネは、暖かそうな店内を見つめるがすぐにあきらめた。
少しでも寒くないようにと、子どもたちを自分のお腹に引き寄せる。
2匹の子タブンネは、お互いの尻尾に手を入れている。
タブンネのふわふわの尻尾の中はそれなりに温かいのだ。

コンビニの店員が店内から出てくるのが見えた。
親タブンネが店員の方を見ると、お互いに目があった。
親タブンネはすぐに目をそらす。人間が怖い生き物だということを実感しているのだ。
店員はしばらくタブンネ親子を見つめていたが、やがて明るい店の中に入っていった。

くぅという音が聞こえた。子タブンネのお腹が鳴った音だ。
子タブンネたちは自分の指をしゃぶって空腹をごまかしている。
空腹というものは寒さ以上に堪えるものだ。
子タブンネたちの「ミィ」という鳴き声が親タブンネをみじめな気持ちにさせる。

先ほどの店員が店から出てきた。
すると、店員はタブンネたちのほうに近づいてくる。
警戒し逃げようとするタブンネたちの前で、店員は手に持った紙袋に手を入れる。
タブンネたちの目の前に2つに割れた肉まんが差し出された。

タブンネたちは肉まんというものを見たことがなかった。
しかし、この寒空と対照的な、ほかほかと暖かそうな白い湯気。
白い皮に包まれたその中身、ジューシーな肉の香りがタブンネの鼻をくすぐる。
タブンネたちののどがゴクリと音を立てる。

店員が空いた手をタブンネの方に伸ばす。
ビクリと身を震わせる親タブンネだったが、店員はタブンネの頭を優しくなでるだけだ。
頭をなでられていると親タブンネの緊張が解けてきた。
緊張が解けたあと、自分たちが空腹であったことを思い出す。

「ミィ」と一声鳴いて、店員が手に持った肉まんをくれるように懇願する。
親タブンネに倣い、子タブンネたちも「ミィ」「ミィ」と鳴き声を上げる。
店員は優しくほほえむと、手に持った肉まんをタブンネに近づけていく。
タブンネはそれを食べようと大きく口を開ける。

「ミ゛ィィ!? ミ゛ゲェッ!? ガッガッ!」

タブンネの口の中に肉まんが強引に押し込まれた。
肉まんの奥に溜まっていた熱々の肉汁が流れ込み、タブンネののどを焼く。
熱さに悶えるタブンネの口から「ゲホォッ!」と音を立てて肉まんが吐き出された。
ぜいぜいと荒い息を吐くタブンネに店員が再び手をのばす。

「ミヒィ……」
親タブンネは子タブンネたちを抱え、その場から逃げ出す。
おぼつかない足取りで「ヒィヒィ」と泣きながら店員から離れる。
タブンネの白い尻尾が暗闇に消えていった。

店員はタブンネたちを見送ると、落ちている肉まんを拾い、袋に包んでゴミ箱に捨てる。
店内からブラシを持ってくると、水をまいてタイルを磨き始めた。
こぼれた肉片や、タブンネ出した食べかすがどんどん流されていく。
汚れが落ちたのを確認すると、店員は店の中に戻っていった。

寒空の下、餌も取れないタブンネたちはどうやって冬を過ごすのだろうか。
冬の星空も、店員も、タブンネ自身も、それは誰にもわからないことだ。

(おしまい)
最終更新:2014年06月24日 20:57