青空が広がる静かな昼下がり。タブ兄弟は冒険と称し森の巣を抜け出しとある場所を見つけました
長兄はみんなのリーダー役、長女は優しいお姉さん。まだわんぱく盛りの弟、妹。歩けるようになったばかりのベビ
発見した場所にある様々なものにサファイアイを輝かせその姿は遊園地に訪れた人間のガキのようです
しかし彼ら、いや責任者ともいえる長兄は親から言われていたことを忘れていました
『森の外の世界にあるものは人間という凶悪な生物のものだから安易に手を出したりしてはいけないミィ』
しかし兄は皆を引率しなければならないはずなのに威厳というか偉くなくてはならないという感情が沸きガキ独自の無謀さというのか間違った方向へ進みました
「人間とかいうのなんかやっつけてやるミィ」この間違った自信や度胸がどんな結末をもたらすかは時間が教えることでしょう
まず彼らが目についたのはとても大きな砂山。普段おままごとで遊ぶようなサイズではありません。彼らは目を輝かせ山頂目指し登山します
しかし砂はさらさらでなかなか昇れず崩れるばかり。体の小さなベビはすでにギブアップしましたが弟はあっさり頂上につき皆を挑発します
「ミィが一番だからここはミィのお山だミィ!!」
山は崩れ跡ばかりで歪なかたちですが弟は一番に大喜び。姉や妹は称賛しますがやはり兄は気に入らない様子
「ミィはお兄ちゃんだから負けるわけにはいかないミィ!!」と隣のさらに高い砂山を登り始めました
姉妹とベビは木みたいな板に腰掛け二人を応援していました
そんな幸せな時間もついに終わりを迎えます。ここは工事現場と呼ばれる人間の所有地で、一般的に危険と認識されている場所なのですから
姉が目を離した隙に妹はこっそり抜け出しあるものに興味を惹かれました
キラキラした線についたまるでお星様のような装飾。夢見がちな妹はそれに飛び付きました
「デギィ!!」
場を引き裂くような悲鳴。姉は悲鳴の方へ向きなおすと妹が血を流しのたうちまわっています
お星様から滴る血。人間はこれを有刺鉄線と呼んでます
「妹ちゃんんん!どうしてこんなことに!」
大量出欠に我を忘れ叫ぶ姉に興奮したのか妹も興奮しゴロゴロ転げ回り、その先にあった未設置の有刺鉄線の山に飛び込みました
「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛」
敷かれた有刺鉄線は転がる妹に突き刺さり絡まって、まるで現役時代の大仁田厚のような凄まじい様相になりました
トゲの鉄線で全身をぐるぐる巻きになり、暴れるからさらに深く突き刺さりはずそうにも子供の力では鉄線を曲げることすら叶わず深々と食い込みます
「今、今お姉ちゃんがはずしてあげるミィだああああ!!」
はずそうと鉄線を握りしめた姉も手から血を噴き出しもはや収拾は不可能です
事を理解できないベビは何かを見つけたようで四角いボックスによちよち歩みを進めます。そして赤い丸を見つけると「チィ~ヤァ~」と可愛らしい小さなお手手で叩きます
ババババババアアアアアアアン!!
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
「妹ー!?!?」
突如妹の体が爆発しました。なんとこの鉄線は対大型ポケ用に電流と爆破機構が備えられていたようで先程ベビが叩いたのが
スイッチだったようです
ピンクと赤の肉片や毛が焦げた匂いとともに姉にふりかかります。姉は放心。ベビはミャッキャ!とおもしろかったのかボタンをバシバシ叩いてました
そんなことはいざ知らず弟はベビのよう無邪気に砂山で遊んでいました
穴を掘りそこへ潜ると感じる安心感は生き物のSaGaなのか穴はとても安らぎ、陽の差した砂の暖かさは弟を眠りへ誘いました
ザッザッ…
地を踏む音に我に帰る姉。お兄ちゃん?と耳を澄ますと聴こえてくるのは
「イーブイたんかっわいいでぅーチューしちゃうでぅーむッちュうううううう!」
「キィヤアアア!?イーブリャアァァ!」
聞いたことの無い声、姉はベビを抱え物陰に隠れます。おそるおそる見ると長い腕と二本足。いわゆる人間ですが実際見たこと無い姉には未知の生物
「ブイたん機嫌なおしてねええ!今日もサービスエリアの唐揚げ定食一緒に食べようねええ!」
「…プイッ……きゅう♪」
唐揚げを想像してか幸せそうな顔をするのはポケモンだと理解しましたが人間は謎の生き物のままで恐怖に襲われます
声は姉の隠れている場所の上まで聞こえます。ベビの口を抑えガクガクと震える姉
その時ダルトュットッ!!ブウウウン!という音と共に身を寄せていた物陰が激しく振動を始めました
「ミッ!こわいミィ助けボウェ!?」
背後に凄まじい圧迫感。物陰がこちらに動いてきたではありませんか
「ンーッンー!ミポッ!チィ!!」
口を抑えられて苦しんでいたベビは姉から抜け出しプンプンしていますが姉はそれどころではありません
ボギボギベギ。いわゆる前屈姿勢のまま物陰、いや大きなタイヤに圧迫され骨が砕け散ってました
「なんだ?石でもあんのか?ようし4WD作動!」
物陰は大型トラックであり人間は四駆を起動させアクセルを踏み込みます
バギバギボギベギバギブチュブチュチュ
「モエ゛エ゛エ゛エェ゛エ」
柔軟体操並みの前屈姿勢のままトン単位の圧迫。姉は口から臓物を噴き出し、眼球は飛び出しその様相は凄まじいの一言
ですがそんな様子にベビは相変わらず「?」と言った表情ですがこちらもブパンッとキャタピラに潰されました
「おつかれー。なんか砂山崩れてんぞ」
ショベルカーに乗ったもう一方の人間はベビを潰したことも知らずトラックの人間に挨拶します
「ポケモンにやられたかな?まあ使える分だけでいいから積んでくれ!今日中にあそこ整地しなきゃならんしブイたんお腹すいてるし」
「オーラーイ」
走り出す二台の車両。跡にはピンクと赤の汚い敷物が残されました
この光景に兄はおしっこ漏らし腰を抜かしていました。姉妹、そしてベビの最期を見ていたのですから。ちなみに助けようにもビビって動けませんでした
そして彼にも最期の時が訪れます。三つの影が兄を覆いました
「兄さん、こいつじゃないんですか?山崩したの。鉄線にも同じの絡まってたましたし」
「ああん?ホイホイチャーハン?」
「おいこら免許(立ち入り許可証)見せろ」
ハッサムとカイリキーとドテッコツ。頭に被った黄色いヘルメットからして三匹はここで働いているのでしょう
「あなたがこれらをやったのですか?」
口調は穏やかでも目が殺しにかかってくるハッサムの迫力に兄タブは口が開きません
先程まで持ち合わせていた勇気はどこにいったやら。必死に頭を地にこすりつけます
兄はタブ土下座をまだ知らないはずですが、血に刻まれた防衛手段なのでしょうか
「それで謝ってんのか?」
キレるドテッコツをカイキリーは制し、担いでいた鉄パイプを持ち出しタブのアナルに鉄パイプを躊躇なくぶち込みました
「ミッー!」
「ぶち込みチャーハンぶち込みチャーハン!兄貴を倒す!?あん?」
兄貴は野生の感でタブが♂と気づいたのか性裁を加え始めました
「怯えろ」
「ミッミオオオ!?」
兄といってもまだ子タブクラスの兄タブには地獄の苦しみです。成体でも苦しいでしょうが
必死に体をくねらせ脱出をこころみますが手をハッサムに押さえ込まれそれも許されません
さらにハッサムは兄タブを仰向けにし腹にパンチ一発。普通ならゲロですが刺さったパイプから勢いよく血糞が噴き出しました
「きたねえケツだな」
ドテッコツが尻を叩き罵詈雑言を浴びせます
兄タブはこの辱しめに涙を流していました。「どうしてこんなことするの」そう言いたかったのですが目の前に迫り来る鉄骨により妹達の元へ旅立ちました
「僕事務所から箒もってきます」
「あん」
「はやくしろよ」
三匹はそれぞれの仕事へ戻りました
事務所でハッサムが箒を探していると人間が彼に語りかけました。エーフィがお茶を淹れ人間とハッサムに渡します
「お疲れ。裏の森の伐採計画の前哨今夜やるよ。調べによるとタブンネの群れがいるらしいからナイトレイドする。だからよろしくね」
「(はい。そういやさっきなんですが…エー姉さん通訳を)」
「へえ、ふうん。子タブンネねえ。やっぱいるんだな。ハッサムの話の通りなら害獣処置で堂々やれるか」
人間は不気味に微笑みました
弟は惨劇に気づかずまだ砂の中で穏やかに寝息を立ててました
「ミゥ~今日はオボンだミィ~」
可愛いを通り越して哀れ、可哀想です。こんな場所に潜らなければ死ぬことはなかったのに
ショベルカーは弟ごと砂を掬い上げ先程のトラックに積み始めます
ゴゴゴゴゴ!
「ミッ?なんなんだミィ!?」
揺れや振動に気づいても後の祭。逃げようにも崩れた砂に足や手をとられ動けません。息も苦しくなってきました
そして振動が止むと何かが自分ごと動いてる感じがします。トラックは目的地に向け走り出しました
「助けて!助けて!助けてミィ」
誰も助けません。兄達はすでにこの世にいないのですし、両親も森でなんかしてるのでしょう
それでも必死にもがきなんとか砂から顔を出すと風景が凄い速さで動いていました。風の匂いも知らない匂い。恐怖が心を支配しだします
「怖いミィ!お兄ちゃんお姉ちゃんパパママー!!」
叫んでも誰も助けてくれません。でもこの弟は勇敢というか無謀というかバカで場から逃げ出す為に80kmで走るトラックから飛び降りる凶行にでました
飛び降りた先には落下死しか待ち受けてないように思われましたが神はさらなる試練を与えました
バンッ!!
後方を走っていた別のトラックが弟タブを撥ね飛ばしました。運転手は大音量+ナビ内蔵DVDでドレディアのイメージDVDを見ていた為まったく気づきません
今はドレディアがプールで乳液のシャワーかけられながらヨツンバイになるシーンです
色んな意味で危険な運転手です
吹き飛ばされた弟は道路の端に落下しました。頭は陥没、腕はあらぬ方向にねじまがり足は皮だけで繋がっています
腹部は裂け腸が飛び出しなんとも言えぬ姿
「……ミッ…ミゲッ…」
なんということでしょう弟は死んでませんでした。タブ生命力なのか悪運が強いのがここまでくると凶悪運や極悪運レベルです
まったく動かない体。断続的な痛みは精神にすら安らぎを与えてくれません
潰れてなかった片目に写るのは青い空白い雲。さっきまでと同じ空なのにどうして どうして 涙すら出ません
そして視界に入った黒い影、楕円のようなそれは多数のバルジーナ。アニメの量産型エヴァンゲリオンのように空を旋回し 一気に降下
バタバタ羽音に合わせブチブチ腸を引きちぎられ目玉を抉りとられ肉という肉を饕られる。その痛みはかつて負った擦り傷等の軽傷とは比べ物になりません
肉が弛緩していない活け作りがいいのか心臓や脳をよけバルジーナは肉を堪能する
「い…だ…いミィ」
死にたい、死にたくない。そしてようやく心臓に嘴が降り下ろされ弟は解放されました
こうして五兄弟はその幼い命を散らせました。誰が悪いのかなんて今更どうでもいいのです。兄も、姉も、弟達も言い争いなんてもうできないのですから
……
………
陽も沈み夕日がさす森。一匹のタブンネが石のテーブルに木の実を並べていました
「まったく、もうご飯の時間ミィのにあの子達ったらミィ」
「ははは、ママは心配性だミィ。お兄ちゃんお姉ちゃんが着いてるんだから心配ないミィよ。子供は暗くなってから泥だらけで帰ってくるミィよ」
もう一匹のタブンネは実を抱えながらも笑顔です
「お隣の奥さまから最近人間による開発が進んでるって話をきいたミィ。ここもいずれ…」
「そうかミィ」
闇が辺りを支配しだした頃。パパは子供達の捜索に向かう為群れの仲間と出掛ける用意を済ませていました
「気を付けてミィ。いってらっしゃいパパ」
「いってきますミィ、ママ!」
パパ達はドスドスと巣を後にしました
森の入り口辺りでタブ達は強烈な光を浴び歩みを止めました。光に慣れてきたタブの視界にいたのは人間とそのポケモン
そして人間は口を開きます
「ミィつけた」
終わり
最終更新:2014年06月29日 14:03