ある日森を歩いているとタブンネちゃんは何か不思議な輝きを放つ玉を見つけました。
それは紫色に光って、なにやらあやしげな雰囲気をかもしています。
タブンネちゃんはその綺麗な玉を見つけると大喜び、すぐに拾い上げて毎日持ち歩くようになりました。
そしてその頃からタブンネちゃんにある変化が現れました。
今まではほとんど威力がなく、撃っても相手はへっちゃらといった感じで返り討ちにあってきたすてみタックルが急に強くなったのです。
タブンネちゃんは「きっとこのきれいなたまがわたしにちからをくれたんだ」と思って喜びました。
ところがその喜びもつかの間。
調子にのって狩りにやってくるトレーナーを返り討ちにしていたタブンネちゃんの体から少しずつ元気がなくなり、疲れがたまってくのを感じました。
毎日いくら休んでもいくら休んでも疲れはとれません。
疲れはタブンネちゃんがトレーナーを返り討ちにする度にたまっていき、タブンネちゃんはもはやあと一回でも戦えば動けなくなってしまいそうでした。

そんなタブンネちゃんが疲れ切って重い体を引きずりごはんのきのみを探しに行こうとすると、一匹のタブンネがトレーナーにいじめられているのを見つけました。
タブンネはあちこち傷だらけの血まみれで、放っておけば殺されてしまいそうです。
タブンネちゃんは悩みました。
このまま放っておいていいのか悩みました。
タブンネちゃんは自分が攻撃する度に元気がなくなっていくのを知っていました。
後一回でも戦えば死んでさえしまうかもしれないということを知っていました。

でも、それでも。
たとえ自分が死んでしまうかもしれないとしても、それでもタブンネちゃんにはやっぱり仲間を理不尽にいじめるトレーナーが許せませんでした。
タブンネちゃんは残ったわずかな力を振り絞って走り出しました。
走り出すと同時に視界がかすんでくらくらしました。
でも倒れるわけにはいきません。
なんの罪もないタブンネがトレーナーの私利私欲のために犠牲になっていいはずがないのです。
たとえ自分が死んでしまってもかまいません。
この力は神様が仲間を守るために与えてくれたのかもしれないとタブンネちゃんは思いました。
どっかーん!
タブンネちゃんのすてみタックルが決まりました。
ぶつかった相手はどーんと吹っ飛びました。
同時にタブンネちゃんも力を失い倒れました。
やった、やったよ。
タブンネちゃんは心の中で何度もつぶやきました。
最後に仲間をいじめる悪い奴をやっつけることができてタブンネちゃんは幸せでした。

そのはずでした。
「なんだこの豚・・・自分から仲間に突進してきやがって・・・」
頭の上から聞こえてきた言葉にタブンネちゃんは驚きました。
どうして?わるいやつはやっつけたはずなのに。
タブンネちゃんはもうほとんど感覚のない体をなんとか起こしてきょろきょろしました。
後ろにはタブンネちゃんがすてみタックルしたはずなのにぴんぴんしているトレーナー。
そして目の前には、なぜかぴくぴくして血を吐いているピンク色の、見覚えのある小さな、まるで自分とそっくりな姿の、自分が助けたはずの・・・・
「おっ、この豚命の珠持ってるじゃん。ラッキー!」
タブンネちゃんがもっていた綺麗な玉を奪い取るトレーナーの声を聞きながらタブンネちゃんの意識は遠のいていきました。
最終更新:2014年07月08日 00:20