パパとママが私とお兄ちゃんにタブンネをプレゼントしてくれた。
パパもママも働いていて留守がちだけど、タブンネがいるから寂しくない。
でも、タブンネは私とお兄ちゃんよりもパパとママの方が好きで、パパ、ママが帰って来ると私たちと遊んでいても「ミィミィ」とお出迎えに飛んで行っちゃうのが、ちょっと憎たらしい。
今日もパパ、ママが帰って来るまでタブンネと遊ぶ。
お兄ちゃんが「タブンネの鼻の穴ってどこのあるのかな?」と言って、タブンネの毛をかき分けて探した。口の上の少し盛り上がった所に鳥の鼻の穴みたいな小さな穴が2つ見つかった。
「随分小さい鼻の穴だなあ。これじゃ呼吸がしづらいんじゃないか?広げてやろう」
お兄ちゃんはさっき私たちがジュースを飲むのに使ったストローをタブンネの鼻の穴に挿した。
「ミッ!プヒュプヒュ…」タブンネは不快そうにストローを取ろうとする。
「ストローじゃ細すぎるんだな。じゃあ、あれだ」
お兄ちゃんは台所から漏斗を2つ持って来た。漏斗の管はタブンネの鼻の穴より直径が大きかったので、ギュウギュウ押し込んでいた。
「ミッ!ミィッ!」押し込まれる時は苦しそうに鳴いていたタブンネも、漏斗がしっかり収まるときょとんとしている。
その顔がマヌケっぽかったので、お兄ちゃんと私は笑った。だってブタみたいなんだもの。
それから2人で床に腹ばいになったタブンネの背中に乗って乗り物ごっこをした。
私が前にすわり手綱がわりにタブンネの両耳をギュッとつかむ。お兄ちゃんは後ろから丸まっている触角をピンと伸びるまで引っぱる。
「それ出発だ!」「ミィッ!ミィッ!」タブンネは鳴いて短い手足をバタバタさせるだけでちっとも前に進まないので、私はタブンネの頭を、お兄ちゃんはお尻をバシバシ叩く。
「ミィィィィン」タブンネは一生懸命体をくねらせてじわじわと前に進む。超スローだ。
「今度は逆方向だ」私たちは逆向きにすわり直す。お兄ちゃんはタブンネの尻尾をつかみ、グイッと引いた。「ミャア!」タブンネのお尻が持ち上がり、私たちは床に転がり落ちた。
「やっぱり乗り物ごっこよりブランコの方がいい」私が言うと、お兄ちゃんもうなずき、2人でタブンネを連れて表に出た。タブンネは「イヤ。おうちがいいの」と言うようにフルフルと首を振り足を踏ん張ったが、そんな引き籠もりが許されるわけがない。
タブンネの足をロープでくくり庭の木の枝から逆さに吊す。私とお兄ちゃんはタブンネの触角につかまってブラ~ンブラ~ンと揺れて遊ぶ。「ミィ~ミィ~」タブンネもかけ声をかけてくれる。
「ミゥギャギャギャ!」汚らしい声と同時に触角が切れ、私たちは地面に尻餅をついた。
「やったな!意地悪タブンネめ!」私たちは抗議して木の枝でタブンネをめった打ちにした。
「ミィ!ミィ!ミィ!ミィ!」タブンネの目からジョボジョボ謝罪の涙が溢れる。
次は両手をくくって足を下に吊した。尻尾につかまってやり直しだ。
でも、尻尾もやがてちぎれてしまった。
喉が渇いたので家に入ってミックスオレを飲んだ。もちろんタブンネにもあげる。でも今日はうっかり間違えて、鼻の穴に挿した漏斗にミックスオレを注ぎ込んでしまった。
「ミビュッヒュ~~~ィ!」逆流したミックスオレが漏斗から噴水のように噴き上がった。
きれいな眺めだったので、サイコソーダ、モーモーミルク、きのみジュースなど、いろんな飲み物を注いでみた。「ミギュゲフッギュルルップミィーー!」タブンネも大奮闘だ。
お兄ちゃんと私は遊び疲れてタブンネに両側から寄り添って眠った。眠っている間にタブンネのちぎれた触角や尻尾は再生する。漏斗もいつの間にかはずれて床に転がっている。
ピンポ~ン。パパかママが帰って来たようだ。
私たちはかったるいのでそのまま寝ているが、タブンネはすごい勢いで玄関に飛んで行く。玄関からママの声が聞こえる。
「あらあらタブンネちゃん。甘えんぼさんね。今日もあの子たちの面倒をみてくれてありがとう」
「ミヒッ!ミヒッ!ミヒッ!」タブンネちゃんが必死に何か訴えている。
「あなたが来てくれてからあの子たちはいい子になったのよ」
「ミヒッ!ミヒッ!」
「来週から私とパパは仕事で2週間留守にするんだけど、よろしく頼むわね」
「ミッ!?」
ママと一緒にリビングに入って来たタブンネは責任の重さからか、暗い顔で俯いていた。
私とお兄ちゃんは楽しい2週間を思い、顔を見合わせてニヤリと笑った。 END
最終更新:2014年07月17日 00:30